こんにちは!
今回はギリシャ神話より「冥界」を紹介するよ!
今回はロケーションの紹介記事ね
ギリシャ神話における死者の世界だったわよね?
そうなんだ!
冥界の王ハデスと女王ペルセポネが治める、
暗い地下の国なんだよ!
びっくりするくらい設定が細かいので、
ざっくりと概要を押さえていくぞぃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、ギリシャ神話における「死後の世界」で、冥王ハデスと女王ペルセポネによって統治され、4つの領域と5つの河川を有した設定豊富な地下の王国「冥界」をご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「冥界」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


「冥界」ってどんな場所?
「冥界」がどんな場所なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
「冥界」の概要
「冥界」とは、ギリシャ神話における“死後の世界”です。
そこは、死者の魂が最期に赴く場所で、太陽の光が届かない暗く陰鬱な領域であり、冥王ハデス(ΑΙΔΗΣ)とその妻ペルセポネ(ΠΕΡΣΕΦΟΝΗ)によって統治されていました。


『冥界のユノ』
1626年-1630年 PD
冥界の具体的な位置とその入り口については、いくつかの説があり、
- 大地を取り囲む大河オケアノス(Ωκεανος)の彼方、この世界の西の果て≒ギリシャ北西部イピロス地方のテスプロティアを流れる、アケロン川(Αχερων)の付近に入り口がある。
- ペロポネソス半島南端に位置する、タイナロン岬(Ταίναρον)の洞窟に入り口がある。
などの伝承が残されています。
古代ギリシャの人々は、
「西の果て=世界の終わり」と考えていたんだよ!
現実に存在するロケーションに神話の舞台を重ねるのが、
ギリシャ神話の特徴なのじゃ


『冥界のアイネイアスとシビュラ』
1630年 PD
通常、「死後の世界」と聞くと、生ある人間には簡単に行き来できない、隔絶された土地というイメージを抱くことが多いでしょう。
しかし、ギリシャ神話の物語においては、神々はもちろん半神や普通の人間といったさまざまなキャラクターが、何らかの使命を帯びて“死者の王国”へと足を踏み入れています。
メジャーな話だけでも、
以下のような逸話が残っているわよ
- 酩酊の神ディオニュソス(Διονυσος)が、亡き母セメレ(Σεμέλη)を救出するために冥界に乗り込んだ。
- 『12の功業』に勤しむ半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)が、冥界の番犬ケルベロス(Κέρβερος)を捕獲するために冥府へと降った。
- 伝説の吟遊詩人オルフェウス(Ὀρφεύς)が、亡き妻エウリュディケ(Ευρυδίκη)を地上へと連れ帰るために冥界に赴いた。
- アテナイの王テセウス(Θησεύς)とラピテス人の王ペイリトオス(Πειρίθοος)が、女王ペルセポネに求婚するため死者の国へと旅立った。
- 海の女神テティス(Θετις)が、息子アキレウス(Ἀχιλλεύς)を不死の存在へと変えるため、冥界を流れるステュクス川(Στυξ)の水にその身を浸した。
- すべての冒険を終えたイタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)が冥府へと降り、ミュケナイの王アガメムノン(Ἀγαμέμνων)や半神の英雄アキレウスといった、かつての戦友たちと語り合った。
- 半神の英雄アイネイアス(Αἰνείας)が冥界で亡き父アンキセス(Ἀγχίσης)と再会し、彼の子孫が後のローマ建国の祖となることを聞いた。
などなど…


『テティスがアキレスをステュクス川に浸す』
1630年-1635年 PD
身も蓋もないことを言うと、出入り口の警備は
割とガバガバなんだよね!
では、「冥界」が具体的にどのような場所であったのかというと、実は、もともと設定らしい設定はほとんどありませんでした。
初期のギリシャ人は、
死者の魂は、善悪に関係なくぜ~んぶ
同じ場所に行くらしいぜぇ~
「冥界」は夢も希望もない陰鬱な場所で、死んだ後は影のような存在として、「無」に等しい時間を過ごすんだってよ
と信じていたのだそうです。
逆に言うと、「地獄的な刑罰」の概念もなかったのじゃな


『Diana Hunting and Proserpina in the Underworld』
おそらく17世紀初頭
出典:メトロポリタン美術館 PD
それから時代が下がると、死者の魂は「審判」を受け、“生前の行いによって行き先が分かれる”という冥界観が徐々に構築されていきました。
次は、古代ギリシャ的「冥界」の基本構造と、その役割・機能を確認してみましょう。
「冥界」の基本構造と機能
ギリシャ神話における「冥界」は、少なくとも以下の4つの領域に分かれていました。
「冥界」を構成する4つの領域
| 名称 | エリュシオン (Ἠλύσιον) |
|---|---|
| 概要 | 神々に愛された英雄や選ばれし者、生前の行いが善良で敬虔であった者たちが導かれる死後の楽園。 |
| 「マカロン・ネソイ(μακάρων νῆσοι)*1」あるいは「祝福された者の島」、「エリュシオンの野」や「ネソス・レウケ(Νησος Λευκη)*2」とも。 ※1「至福者の島」の意、※2「白い島」の意 | |
| 永遠の春が続く温暖な土地で、ここに住む魂は「労働」や「病気」、「争い」といった苦しみのない生活を送る。 | |
| 簡単に言うと「天国」や「極楽浄土」、エジプト神話なら「葦の原野」や「アアルの野」に近い場所。 | |
| 冥界の審判官(The Judges of the Dead)の一人であるラダマンテュス(Ῥαδάμανθυς)によって統治されており、数多くの著名な英雄たちの魂が暮らしているらしい。 ※支配者は農耕の神クロノス(Κρόνος)とも | |
| 世界の西の果てに位置するとも、冥界の一部として地下に存在するとも考えられた。 |


『エリュシオンの野』
1903年 PD
| 名称 | アスフォデルの野 (ἀσφοδελὸς λειμών) |
|---|---|
| 概要 | 特に善いことも悪いこともしなかった、大多数のごく普通の魂が導かれる死後の世界で、中立的な領域。 |
| 「アスポデロスの野」とも。 | |
| 別にもてなされることも罰されることもなく、ただひたすら平凡なので特に書くことがない。 | |
| 「アスフォデル」の名を冠した花もある。 |


出典:Charly G. CC BY-SA 4.0
| 名称 | 嘆きの原野 (The Fields of Mourning) |
|---|---|
| 概要 | 叶わぬ恋に苦しんだ者、無慈悲な愛によって衰弱した者の魂が導かれるとされた領域。 |
| 「悲しみの野原」とも。 | |
| ここにやって来た亡霊は、人知れぬ道や暗いギンバイカの森を彷徨い、死後もなお生前の悲しみを忘れることはないとされる。 | |
| なぜ「恋愛関係」だけ別枠で場所が設けられたのかは分からないが、不思議なことに、ここの住人のほとんどは女性であったらしい。 |


『エコーとナルキッソス』
1903年 PD
| 名称 | タルタロス (Τάρταρος) |
|---|---|
| 概要 | 神々に対して著しく不敬虔な行為を働いた者、血の繋がった親の命を奪った者など、最悪の重罪人が投獄された原始の奈落。 |
| 元は、オリュンポスの神々に反逆した者たちを拘禁する施設として利用され、ティタン神族(Τιτηνες)の面々などが幽閉されている。 | |
| ここに堕とされた魂は、生前の行いに応じたバラエティに富む「永遠の刑罰」を科され、終わりのない苦しみに苛まれ続けることになる。 | |
| 「天」と「地」の距離と同じくらいの地下深くに位置するとされる。 | |
| 簡単に言うと「地獄」で、この地に閉じ込められた人間は、いずれもぶっ飛んだヤベェ奴ばかり。 |




作者・年代不明 PD
一口に「冥界」と言っても、善人が報われる場所から悪人が裁かれる場所まで、いろいろとあったってわけね
「冥界」を流れる主要五大河川
4つの領域で構成された「冥界」には、以下の5つの河川が流れていました。
| 河川の名称 | 象徴と概要 |
|---|---|
| ステュクス川 (Στυξ) | 「誓約」と「憎しみ」を象徴。 |
| 冥界を7周する川で、神々が“決して破れぬ誓い”を結ぶ場でもあった。 | |
| この水に浸した身体は「不死」を得ることができたとも。 | |
| アケロン川 (Αχερων) | 「苦悩」と「悲嘆」と象徴。 |
| 死者の渡し守カロン(Χαρων)が亡者の魂を運ぶ川。 | |
| 日本でいう「三途の川」。 | |
| コキュトス川 (Κωκυτος) | 「嘆き」と「慟哭」を象徴。 |
| 人の命を奪った者の魂を運ぶ川。 | |
| ピュリプレゲトン川 (Πυριφλεγεθων) | 「火」を象徴。 |
| 肉親の命を奪った者の魂を運ぶ川。 | |
| シンプルに「プレゲトン川」とも。 | |
| レテ川 (Λήθη) | 「忘却」を象徴。 |
| 死者の魂はこの川の水を飲むことで、生前の記憶を完全に失うとされた。 |


『ステュクス川を渡るカロン』
1515年-1524年 PD
密着!古代ギリシャ世界における“死後の旅路”!
この項目では、一般的な人間の魂が死後、どのような段取りで「あの世」へと向かうのかを、ざっくりとフロー形式で確認してみましょう。


「地獄の渡し守カロン」 PD
一通りの裁判が完了すると、死者の霊魂は、判決に応じてそれぞれ以下のように取り扱われます。
| 判決 | 移送先 | 概要 |
|---|---|---|
| 善人 | 祝福された者の島エリュシオン(Ἠλύσιον) ※要するに死後の楽園。「至福者の島」とも。 | 労働も病気も存在しない場所に神々と共に住み、幸福な生活を送る。 |
| 普通の人 | アスフォデルの草原 ※表記は「アスポデロスの野」とも | 死者の渡し守カロン(Χαρων)に引き渡されてアケロン川を渡り、楽しくも苦しくもない世界で、来世に向けて魂の浄化を受ける。 ※オボロス硬貨を持っていない死者は冥界に入れない。日本でいう「六文銭」。 |
| 彼らはこの段階でレテ川(Λήθη)の水を飲まされ、地上での生と生前の記憶をすべて忘れてしまう。 | ||
| 悪人 | 原始の奈落タルタロス(Τάρταρος) | 人の命を奪った者はコキュトス川(Κωκυτος)を、特に肉親の命を奪った者はピュリプレゲトン川(Πυριφλεγεθων)を経由して冥府に連行。 |
| 遺族からの赦しが得られない限り奈落の底に突き落とされ、そこで一定期間、あるいは永遠の罰を受ける。 ※再審制度もあったらしい |


「死者の裁判官」
紀元前4世紀頃 PD
ある意味“公務員”?
「冥界」に関わる神々を一挙ご紹介!
ギリシャ神話における「冥界」で日々その務めを果たし、「死」にまつわるあらゆる業務を担当した忙しい面々――。
ここでは、「テオイ・クトニオイ(Θεοί Χθόνιοι)*」とも総称された、ほとんど公務員のような冥府の神々をざっくり一覧にてご紹介します。
※「地下の神々」の意


『カロンがステュクス川の向こうに魂を運ぶ』
1861年 PD
主要な神格については個別記事も用意しているから、
良ければそちらも見てみてね!
「冥界」の支配者・秩序維持を担当する神々
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 冥界の王ハデス (ΑΙΔΗΣ) | 言わずと知れた死者の王国の統治者。 |
| 兄弟であるゼウス(ΖΕΥΣ)、ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)と籤引きで支配領域を決めた際、暗い地下世界の担当になった引きの悪い男。 | |
| 恐ろしいイメージがあるが、オリュンポスの神々のなかで最も一途、かつ真面目で厳格な性格をした“まともな人物”。 | |
| 冥界の女王ペルセポネ (ΠΕΡΣΕΦΟΝΗ) | ハデスに誘拐され、騙されて「柘榴の実」を食べたことで冥府に属することになった女性。 |
| 夫とともに死者の魂を支配するが、母親である豊穣の女神デメテル(ΔΗΜΗΤΗΡ)がブチギレてストライキを起こしたため、年の3分の2(8ヶ月くらい)は地上で暮らしている。 | |
| 農耕の神クロノス (Κρόνος) | 基本的には、オリュンポスの神々に敗れてタルタロス(Τάρταρος)に投獄されているはずだが、伝承によっては死後の楽園エリュシオン(Ἠλύσιον)の統治を担当している。 |


1896年
出典:ニューヨーク公共図書館 PD
「死者の審判」を担当する司法系神々
・冥界の審判官(The Judges of the Dead)
上述した死者の裁判を担当する神々。
| 名称 | 生前の地位 | 主な功績 | 裁判における役割 |
|---|---|---|---|
| アイアコス (Αἰακός) | アイギナ島の王 | 人間同士はもちろん、神々の諍いすらも仲裁した公正な裁判官。 | ・ヨーロッパ出身者の魂を裁く ・冥界の門の鍵の管理 |
| 神託に従って祈りを捧げ、ギリシャ全土を大干ばつから救ったこともある。 | |||
| 非常に敬虔で正義感の強い人物。 | |||
| ラダマンテュス (Ῥαδάμανθυς) | クレタ島の王子 クレタ島の裁判官 | 公正な裁判官として名声を獲得し、「正当防衛は無罪」などの画期的な法律を数多く制定した。 | ・アジア出身者の魂を裁く ・祝福された者の島エリュシオン(Ἠλύσιον)*を統治したとも ※労働などが存在しない死後の楽園的なところ |
| 周辺の島々をその人徳によって支配下に置き、これらの統治を息子や部下たちに任せることで、法の及ぶ範囲を劇的に広げた。 | |||
| 権力闘争による冷遇などにも武力で応じない、冷静な人物。 | |||
| ミノス (Μίνως) | クレタ島の王 | 優れた法律をいくつも制定した、有能な立法者として有名。 | 上記二人の判断が分かれた場合の最終判決者 |
| アテナイの王子テセウス(Θησεύς)と牛頭人身の怪物ミノタウロス(Μινωταυρος)、伝説の工匠ダイダロス(Δαίδαλος)などの物語にもたびたび登場する、人間の割には準レギュラーに近い人物。 | |||
| 上記二人は文句なしの人選だが、この男が純粋に立派な人物であったかは大いに疑問が残る。 |


『死者を裁くミーノース、ラダマンテュス、アイアコス』
1828年 PD
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 伝令の神ヘルメス (Ἑρμης) | ただでさえ、主神の尻拭いなどの仕事で忙しい彼だが、ギリシャ全土の「死者の魂」を冥界の入り口へと導く業務まで請け負っていた。 |
| 死者の渡し守カロン (Χαρων) | 「死者の魂」を小舟に乗せて、冥界へと運ぶ役割を担った。 |


『アケロン川のほとりの魂たち、冥界のヘルメス』
1898年 PD
「冥界」の自然環境と境界を構築した神々
| 河川の名称 | 象徴と概要 |
|---|---|
| ステュクス (Στυξ) | 「誓約」と「憎しみ」を象徴。 |
| 冥界を7周する川で、神々が“決して破れぬ誓い”を結ぶ場でもあった。 | |
| この水に浸した身体は「不死」を得ることができたとも。 | |
| アケロン (Αχερων) | 「苦悩」と「悲嘆」と象徴。 |
| 死者の渡し守カロン(Χαρων)が亡者の魂を運ぶ川。 | |
| 日本でいう三途の川。 | |
| コキュトス (Κωκυτος) | 「嘆き」と「慟哭」を象徴。 |
| 人の命を奪った者の魂を運ぶ川。 | |
| ピュリプレゲトン (Πυριφλεγεθων) | 「火」を象徴。 |
| 肉親の命を奪った者の魂を運ぶ川。 | |
| シンプルに「プレゲトン川」とも。 | |
| レテ (Λήθη) | 「忘却」を象徴。 |
| 死者の魂はこの川の水を飲むことで、生前の記憶を完全に失うとされた。 | |
| タルタロス (Τάρταρος) | 重罪人を幽閉し、永遠の刑罰が科せられた「地獄」のような場所。 |


『死者の川』 PD
これらの存在は、ひとつの「ロケーション」であると
同時に、人格をもった一個の神格でもあったのじゃ
地下世界には、原初の闇エレボスもいたよ!


懲罰や復讐を担当した実行部隊の神々
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 復讐の女神エリニュス (Ἐρινύς) | メガイラ(Μέγαιρα)、アレクトー(Ἀληκτώ)、ティシポネ(Τισιφονη)の三姉妹で構成される神々で、特に親の命を奪った罪人を追いかけまわし、気が狂うまでその罪を咎め続けたとされる恐ろしい存在。 |
| 紆余曲折を経て、慈悲深き女神エウメニデス(Εὐμενίδες)の地位を与えられたりもしている。 | |
| 死の神タナトス (Θανατος) | 「死」をもたらす無慈悲な存在として忌み嫌われたが、彼が担当するのは「眠るような穏やかな臨終」。 |
| あくまでも運命に定められた仕事をしているだけなのに、やたらと悪者扱いされたり、英雄に邪魔されてボコボコにシバかれたりする損な役回りの男。 | |
| 戦死をもたらす悪霊ケレス (Κηρες) | 「残酷な死」や「暴力的な死」を象徴する嫌な精霊の集団。 |
| 魔女が呪いをかける際に冥府から召喚したりする。 | |
| 死者の魂は彼女たちに捕らえられたが、ケレスが人間に直接手を下すようなことはできなかったとされる。 |


『オレステスの後悔』
1862年 PD
「冥界」とも繋がる副次的な要素を担当した神々
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 夜の女神ニュクス (Νύξ) | 太古の「夜」の女神で、冥界の住処から現れ、暗い霧を空に引きずりながら姿を現した。 |
| 眠りの神ヒュプノス (Ὑπνος) | タナトスの兄弟で、冥界の境界にある静寂の領域に住んでいた「眠り」の神。 |
| 夢の神々オネイロイ (Ονειροι) | 「夢」の精霊で、夜になると冥界から二つの門のうちの一つを通って現れた。 |
| 角の門を通った者は偽りの夢をもたらし、象牙の門を通った者は真実の使者であったとされる。 | |
| 運命の女神モイライ (Μοῖραι) | クロト(Κλωθώ)、ラケシス(Λάχεσις)、アトロポス(Ἄτροπος)の三姉妹で構成される「運命」の女神たちで、ハデスの玉座に仕える大臣として描かれることもあった。 |
| 魔術の女神ヘカテ (Ἑκάτη) | 魔法、降霊術、そして死者の亡霊を司る女神で、冥府の化け物たちを引き連れて地上を闊歩する趣味があったらしい。 |
| 神託の神アムピアラオス (Αμφιαραως) | もともとは人間で、テーバイ攻めの七将の一人に数えられたが、後に地下世界の「神託」を司る神へと姿を変えた。 |
| 神託の神トロフォニオス (Τροφωνιος) | ボイオティア地方のレバデイア近郊の洞窟で、地下世界の「神託」を司ったとされる元人間。 |


『運命の三女神』
19世紀 PD
「冥界」の“恐ろしい部門”を担当した存在たち
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 冥界の番犬ケルベロス (Κέρβερος) | 冥府の門番を務めた有名な三頭の犬。 |
| 彼のおかげで死者の世界は「入ることはできても出ることはできない」とされたが、実はその警備はガバガバで、「眠り」と「甘いもの」に弱いという欠点を抱えていた。 | |
| 人喰いの怪物エンプーサ (Εμπουσα) | 若い男性を誘惑して血肉を食らう、美女の姿をした悪魔。 |
| 燃えるような髪をもち、その両足は片方が真鍮製、もう片方がロバの脚であったらしい。 | |
| 蛇の怪物ラミア (Λάμια) | 若い男性を誘惑して血肉を食らう、美女の姿をした悪魔。 |
| 「蛇」の尾のような下半身を備えていたが、もともとは普通の美しい女王であり、神々のゴタゴタに巻き込まれて化け物になったとされる。 | |
| 人喰いの怪物モルモリュケイア (Μορμολυκια) | 若い男性を誘惑して血肉を食らう、美女の姿をした悪魔。 |
| 悪霊カコダイモネス (Κακοδαίμονες) | 冥界から現れ、さまざまな害を及ぼすと信じられた悪霊たち。 |
| 呪いの精霊アラエ (Αραι) | 特に家系にまつわる「呪い」や「血の復讐」に力を発揮した精霊たち。 |
| さまざまな人々の報復の祈りに応えたとされる。 | |
| 冥界の女神メリノエ (Μηλινοη) | ハデスの娘で、冥界から幽霊を地上に連れ出して人々を苦しめる、恐ろしく趣味の悪い女性だったらしい。 |
| 彼女の体の片側は漆黒、もう片側は真っ白であったとされる。 | |
| 悪夢の精霊エピアレス (Επιαλης) | 「悪夢」をもたらすとされた迷惑な精霊たち。 |
| 人喰いの怪物エウリュノモス (Ευρυνομος) | 腐敗した亡骸から肉をむしり取る腐肉食生物で、ハゲワシの皮の上に座る青黒い肌の男の姿で描かれた。 |
| ハゲワシや肉食バエなどの腐肉食動物と関連付けられていたらしい。 |


『ケルベロス』
19世紀 PD
その他の「冥界」の住人たち
| 名称 | 概要 |
|---|---|
| 冥界の果樹農家アスカラポス (Ασκαλαφος) | ハデスに仕える果樹農家だったが、神々のゴタゴタに巻き込まれてミミズクの姿に変えられた気の毒な青年。 |
| 冥府の牛飼いメノイテス (Μενοιτης) | ハデスが所有する牛の世話をしていた心優しい青年だったが、半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)との遭遇により、心に深い傷を負ってしまう。 |
| 死の女神マカリア (Μακαρια) | ハデスの娘で、「祝福された死」を象徴したとされる。 |
| 海の精霊レウケ (Λεύκη) | ハデスに愛されたため冥界へと連れ去られ、死後、祝福された島エリュシオン(Ἠλύσιον)で「白ポプラ」の木に変えられた。 |
| コキュートス川の精霊ミンテ (Μίνθη) | ハデスの数少ない浮気相手の1人で、ペルセポネまたはデメテルに踏み潰され、「ミント(薄荷)」の草に変えられた。 |
| 冥界の精霊ケウトニモス (Κευθωνυμος) | メノイテスの父とされた冥界の精霊だが、具体的な役割はよく分かっていない。 |
| 冥界の侍女ダエイラ (Δαειρα) | 女王ペルセポネに仕えたとされる女性で、エレウシスの秘儀(Ἐλευσίνια Μυστήρια)*と関連があったとされる。 ※農業崇拝を基盤とした実践的宗教で、輪廻転生を信じるなどの特徴があった。 |
| 冥界の精霊ゴルギュラ (Γοργυρα) | アケロンの妻で、アスカラポスの母。 |
| 冥界の精霊オルフネ (Ορφνη) | |
| 冥界の精霊ランパデス (Λαμπαδες) | 女神ヘカテに仕える精霊たちで、冥界の松明を持つ仕事をしていたらしい。 |
| エレウシスの秘儀と関連があったとも。 |


この他にも、以下のようなクリーチャーたちが「冥界の門」に描かれ、死者の世界の守護者として機能したそうよ
「冥界の門」に描かれたモンスターたち


『パラスとケンタウロス』
1482年頃 PD
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する「冥界」について解説しました。
ロケーション解説としては、これ以上のボリューム
になるトピックは他にないでしょうね
こと「死後の世界」については、めちゃくちゃ設定が
細かくて登場人物も豊富なんだよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










































