あらすじでわかる『アルゴナウタイの冒険』|かんたんギリシャ神話入門

当ページのリンクには広告が含まれています。
あらすじでわかる『アルゴナウタイの冒険』
とと(父)

こんにちは!
かんたんギリシャ神話入門の時間だよ!

ことと

今回は、イオルコスの王子イアソン
名だたる英雄たちの冒険活劇…

ことと

『アルゴナウタイ』の物語をあらすじで紹介するわよ

ヒヒ

コルキスの「金羊毛きんようもう」を探し求めた男たちの旅路
そして意外過ぎる結末に要注目じゃ

とと(父)

ではさっそくいってみよう!

※本編の内容は、イアソン個人の記事と同一のものです。

目次

王子イアソンの誕生と旅立ち

イアソン(Ἰάσων)はギリシャ神話に登場する人間族の英雄です。

彼は、イオルコスの王アイソン(Αἴσων)と王妃アルキメデ(Ἀλκιμέδη)の息子で、同国の正当な王位継承権者でもありました。
※母親が誰かについては諸説あり

しかし、イアソンがまだ幼い頃、彼の叔父にあたるぺリアス(Πελίας)が父王を権力の座から引きずり下ろして王位を簒奪さんだつ

アイソンによって逃がされた彼は、ケンタウロス(Κένταυρος)*の賢者ケイロン(Χείρων)のもとで養育されることになりました。
※ギリシャ神話に登場する半人半馬の種族で、複数形はケンタウロイ(Κενταυροι)

ベルテル・トルヴァルセン『金羊毛のイアソン』1803年
ベルテル・トルヴァルセン
『金羊毛のイアソン』
1803年 PD
ヒヒ

アイソンの没後、イアソンがまだ幼かったため
ぺリアスが王位を継いだとも…

ヒヒ

シンプルに、先王クレテウス(Κρηθεύς)の後に
ぺリアスが即位したとも言われておるぞぃ

優秀な師のもとで文武両道の英才教育を受け、立派な青年へと成長したイアソンは、ある時、叔父ペリアスに王位の返還を求める決意を固めます。

田舎町に住んで農作を好んだ彼ですが、今こそ父アイソンの役目を受け継がんと立ち上がったのです。
※海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)に犠牲を捧げる祭儀に呼び出されたため、故郷に向けて旅立ったとも

そんなイアソンが故郷への道を進んでいると、途中、氾濫したアナウロス川の前で立ち往生している一人の老婆がいました。

ギリシャの川のイメージ
イアソン

なんやばあさん、ここを渡れんで困っとんのか

イアソン

ほんなら、わしの背に乗りぃ

親切な彼はその老人を背負うと、安定した足取りで流れの速い川を渡り切り、何食わぬ顔で歩みを再開します。

イアソンはこの時、片方のサンダルを流れにとられて失いましたが、本人はそれを少しも気に留めてはいませんでした。

老婆

………

城壁のイメージ

そんなこんなで故郷イオルコスに到着した若者は、この地を治めるぺリアス王に謁見えっけんし、

イアソン

やぁ叔父貴おじき、道理に従って、わしに王位を譲ってくれや

と、単刀直入に申し出ます。

ぺリアス

ギョギョギョギョギョ~‼

イアソンの姿を一目見たぺリアスは、予想以上に動揺した素振りを見せました。

自身の権力が脅かされることになったから、それだけが理由ではありません。

実は彼、数日前に王権に関しての神託をうた際、神から

アポロン

あ、お前、片方だけサンダルをいた男に滅ぼされるで

という託宣たくせんを受けていたのです。

ギュスターヴ・モロー『イアーソーンとメーデイア』1865年
ギュスターヴ・モロー
『イアーソーンとメーデイア』
1865年 PD

その時はたいして気にも留めなかったペリアスでしたが、ここまでドンピシャな人物が目の前に現れると、さすがに笑って受け流すわけにもいかなくなるというもの――。

彼は、狼狽ろうばいを悟られぬよう平静を装いながら、様子を探るようにイアソンにこう聞きました。

ぺリアス

仮に~、仮にだぜ…?

ぺリアス

お前さんが、市民の一人の手によって
滅ぼされるという予言を受けたとする

ぺリアス

そしてお前さんには、
その人物をどうとでもする権力があるとする

ぺリアス

この時、お前さんなら、どうする~?

普通のしょうもない人間なら、

しょうもない人間

えっ、そんなもん、前もってそいつを
始末しちまえば安泰じゃないっすかぁー

と回答して、自らがその運命を辿ることになるのでしょう。

しかし、単なる偶然の思い付きか、神々による守護と導きか――。

不思議な質問を投げかけられたイアソンは、即座にこう言って答えました。

イアソン

うーん、わしなら、音に聞く「金羊毛きんようもう
を取ってくるよう命じますかねー?

金羊毛のイメージ

この「金羊毛きんようもう」というのは、コルキスの地にある軍神アレス(ΑΡΗΣ)の聖域にて秘蔵されている伝説のアイテム。

かつて、雲と雨の精霊ネフェレ(Nephelê)が、命を狙われた我が子を救うために遣わした「空飛ぶ黄金羊」の毛皮で、現在は聖域内の森にある一本のかしの木にるされ、決して眠ることのない獰猛どうもうなドラゴンによって護られているという代物です。

「コルキスの金羊毛きんようもう」の由来譚ゆらいたんはコチラ!

竜に護られた宝物を奪ってくるなど、常人にはとても成し遂げられない無理難題というもの――。

ぺリアスは、この旅の途中でイアソンが命を落とすことを見越して、彼にとんでもない条件を提示しました。

ぺリアス

う~ん、それ、ナイスアイデ~ア☆

ぺリアス

金羊毛きんようもう」をゲットしてこれたら、
大人しく王位を返還しちゃうぜ☆

金羊毛の守護竜
金羊毛の守護竜のイメージ
Canvaで作成

流されるままに妙な仕事を引き受けてしまったイアソンは、

イアソン

この先がどうなるにせよ、
「船」がないと話にならんやんけ

と考え、腕利きの船大工として知られたアルゴス(Ἄργος)なる人物に助けを求めます。

召喚を受けた彼は、戦いの女神アテナ(Αθηνη)の助言を受けながら造船を進め、五十ものかいを有する大型の帆船はんせんを完成させました。

女神はその竣工しゅんこうを祝して、ドドナ*かしの木から切り出した「ものを言う木片」を船首に取り付け、この船を建造者の名にちなみ「アルゴー号」と名付けるよう勧めたと伝えられています。
※ドドナは主神ゼウスの聖域の一つで、この地のかしの木は風に揺らぐ葉音によって神託を伝えたとされている

ヨハネス・ヘヴェリウス「星図に描かれたアルゴー船」1690年
ヨハネス・ヘヴェリウス
「星図に描かれたアルゴー船」
1690年 PD

船の装備が完了した後、さっそくイアソン船長がこの旅に関する神託を求めると、神の声を聞いたアルゴー船は

アルゴー船

ギリシャ中から最も優れた戦士たちを集めて、
フルメンバーで出発した方がええんちゃう?

と答えました。

イアソン

そういうわけで、このわしが必死こいて
集めたメンバーが以下の面々じゃ

英雄だらけ!「アルゴナウタイ」のそうそうたる参加者たち!

スクロールできます
名称概要
ティピュス(Τῖφυς)アルゴー船の舵取り。
オルフェウス(Ὀρφεύς)伝説的な吟遊詩人ぎんゆうしじん
音楽家で竪琴たてごとの名手。
ゼテス(Ζήτης)北風の神ボレアス(Βορέας)の息子たちで、空戦対応が可能な有翼の戦士。
父の名をとって「ボレアダイ(Βορεάδαι)」または「ボレアデス」とも。
カライス(Κάλαϊς)
カストール(Κάστωρ)主神ゼウス(ΖΕΥΣ)の息子たち。
2人合わせて「ディオスクロイ(Διόσκουροι)*」とも。
※「ゼウスの子」の意
ポリュデウケス(Πολυδεύκης)またはポルックス
テラモン(Τελαμών)アイギナ島の王アイアコス(Αἰακός)の息子たち。
ペレウスはトロイア戦争の英雄アキレウス(Ἀχιλλεύς)の父。
ペレウス(Πηλεύς)
ヘラクレス(Ηρακλής)主神ゼウスの息子で、言わずと知れた古代ギリシャ最強の英雄。
テセウス(Θησεύς)アテナイの王子で、牛頭人身ぎゅうとうじんしんの怪物ミノタウロス(Μινώταυρος)を退治した英雄。
イダス(Ἴδας)メッセニアの王アパレウス(Ἀφαρεύς)または海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)の息子たち。
2人合わせて「アパレーティダイ(Ἀφαρητίδαι)*」とも
※「アパレウスの子たち」の意
リュンケウス(Λυνκεύς)
アムピアラオス(Ἀμφιάραος)テーバイ攻めの七将しちしょうの一人。
カイネウス(Καινεύς)
パライモン(Παλαίμων)鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος)の息子とも。
ケフェウス(Κηφεύς)
ラエルテス(Λαέρτης)イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)の父。
アウトリュコス(Αὐτόλυκος)伝令の神ヘルメス(Ἑρμης)の息子で狡猾な盗人。
若き日のヘラクレスにレスリングを教えた人物でもある。
アタランテ(Ἀταλάντη)美貌と技に優れた俊足の女狩人。
メノイティオス(Μενοίτιος)
アクトール(Ἄκτωρ)
アドメトス(῎Αδμητος)夫婦そろって「死」を克服したこともある、ヘラクレスのマブダチ。
アカストス(Ἄκαστος)
エウリュトス(Εὔρυτος)伝令の神ヘルメスの息子。
メレアグロス(Μελέαγρος)アタランテの恋人で、カリュドーンの猪狩りの中心人物。
アンカイオス(Ἀγκαῖος)二代目アルゴー船の舵取り。
エウフェモス(Εὔφημος)海神ポセイドンの息子で、水上を走る能力を授けられていた。
ポイアス(Ποίας)弓の名手で、後にヘラクレスに引導を渡す役割を果たし、遺品として彼の「強弓ごうきゅう」を受け取る。
ブテス(Βούτης)後に愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)の愛人となり、息子にシチリア島の王エリュクス(Ερυξ)を得る。
パノス(Φάνος)酩酊の神ディオニュソス(Διονυσος)の息子たち。
スタピュロス(Στάφυλος)
エルギノス(Ἐργῖνος)海神ポセイドンの息子。
ペリクリュメノス(Περικλυμενος)ピュロスの王子で、さまざまな動物に変身する能力を有した。
後にヘラクレスに故郷を襲撃されて死亡する。
アウゲイアス(Αυγειας)太陽神ヘリオス(Ἥλιος)の息子。
ヘラクレスによる『12の功業』のひとつ、「アウゲイアスの家畜小屋掃除」に登場する人物でもある。
※採用する説によって時系列が矛盾する
イピクロス(Ἴφικλος)
アルゴス(Ἄργος)アルゴー号を創り上げた船大工。
エウリュアロス(Εὐρυάλος)
ペネレオス(Πηνέλεως)
レイトス(Λήϊτος)
イフィトス(Ίφιτος)
アスカラポス(Ἀσκάλαφος)戦いの神アレス(ΑΡΗΣ)の息子たち
イアルメノス(Ἰάλμενος)
アステリオス(Αστέριος)
ポリュペモス(Πολύφημος)
ヒュラス(Ὕλας)ドリュオプス人の青年で、ヘラクレスの従者兼恋人。
イドモン(Ἴδμων)予言者。

など諸説あり

ロレンツォ・コスタ 『アルゴー船』1490年
ロレンツォ・コスタ
『アルゴー船』
1490年 PD
ことと

単独で主役を張るレベルの人物も含めた、
本当に豪華なキャスティングなのよ

こうして、完璧な準備を整えた「アルゴナウタイ」の戦士団は、ついにコルキスの地を目指して出航します。

あらすじでわかる『アルゴナウタイ』の物語

とと(父)

イアソンの活躍を見てみよう!

ことと

それぞれのお話の詳細は個別記事でも解説しているので、
良ければそちらも見てみてね

最初の寄港地!「女性」だけが暮らすレムノス島!

イオルコスの地を出発したアルゴナウタイの一行は、黒海方面へと船を進める過程で、エーゲ海に浮かぶレムノス島を訪れました。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次