
こんにちは!
今回はギリシャ神話より戦いの女神アテナを紹介するよ!



今回はオリュンポス12神の紹介ね
彼女はどんなキャラクターなの?



彼女は最高神ゼウスと知性の女神メティスの娘で、
「戦争」や「軍略」の他、ありとあらゆる事柄を司ったんだ!



古代ギリシャで最も敬愛された女神
と言っても過言ではないぞぃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、最高神ゼウスの頭をかち割って全身武装で生まれてきた「知恵」と「戦い」を司る神格で、ありとあらゆる文化的・技術的な事柄を守護し、古代ギリシャで最も敬愛されたと言っても過言ではないバリキャリ女神アテナをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「戦いの女神アテナ」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


戦いの女神アテナってどんな神さま?
戦いの女神アテナがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
正式名称 | アテナ Αθηνη |
---|---|
名称の意味 | 都市国家アテナイまたはアテネとも |
その他の呼称 | アテーナー パラス・アテナ(Pallas-Athena) ※意味は諸説あるので後述 トリトゲネイア(Tritogeneia) ※リビアのトリトニス湖に由来するなど諸説あり |
ラテン語名 (ローマ神話) | ミネルウァ(Minerva) |
英語名 | ミネルヴァ(Minerva) アテナ(Athena) |
神格 | 戦争の女神 軍略の女神 英雄たちの守護神 機織りの女神 紡績の女神 織物の女神 芸能の女神 技巧の女神 工芸の女神 知恵の女神 馬の飼育と乗馬術の女神 航海術の女神 造船術の女神 建築の女神 ペンキ塗りの女神 都市の守護神 平和の女神など |
性別 | 女性 |
勢力 | オリュンポス12神 |
アトリビュート (シンボル) | アイギス(Αιγίς) ※山羊皮製で中央にメドゥーサの首が括り付けられた「盾」、「イージス」とも ※胸当てのような形の防具の場合も ゴルゴネイオン(Γοργόνειον) ※怪物ゴルゴンが象られた絵や彫刻で、魔除けみたいなもん 兜 鎧 槍 オリーブの樹 |
聖獣 | フクロウ 蛇 鶏 |
直属の部下 | 勝利の女神ニケ(Νίκη) |
敬称 | パルテノス(処女神) グラウコピス(輝ける目の君) ポリウーコス(都市の守護神) ポレメドコス(戦の担い手)ほか多数 |
主な拠点 | オリュンポス山 |
信仰の中心地 | アテナイ ほかギリシャ全土 |
親 | 父:雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ) 母:知性の女神メティス(Μῆτις) または 父:海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)とする説も |
兄弟姉妹 | 便宜と策略の神ポロス(Πορος)とも ※ほか、異母兄弟姉妹が無数 |
配偶者 | なし ※アテナは処女神 |
子孫 | なし ただし、間接的に アテナイの王エリクトニオス(Ἐριχθόνιος) |
由来する言葉 | ・アテネ(Αθήνα) :ギリシャ共和国の首都で同国最大の都市。女神アテナの名称から。 |
同一視 | 戦いの女神ネイト(Neith) |
概要と出自
アテナはギリシャ神話に登場する戦いの女神です。
彼女は古代ギリシャ全土で最も崇拝され、重要視された神格の1柱で、現在のギリシャの首都「アテネ(アテナイ)」の名称の由来にもなっています。
世界遺産として名高い「パルテノン神殿」もアテナに捧げられた建造物であり、彼女は古代から現代に至るまで、ギリシャの地を最もよく見守っている女神といえるでしょう。


『パラス・アテナ』1657年 PD
そんなアテナは、一般に雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ)と、知性の女神メティス(Μῆτις)の娘とされています。
彼女の誕生シーンは、それ自体がギリシャ神話のエキセントリックさを雄弁に物語っているので、ここでは、その当時の様子をダイジェストで押さえてみましょう。
女神アテナのぶっ飛んだ誕生秘話
妻メティスの協力もあり、無事に父である農耕の神クロノス(Κρόνος)とティタン神族を討伐して、ギリシャ世界の王に君臨した最高神ゼウス。
しかし、祖父である天空の神ウラノス(Οὐρανός)を失脚させて王座に就いた父クロノスを、さらに権力の座から引きずり下ろし、現在の地位を手にした彼には、



メティスが最初に生むのは、強く賢き女神
しかし、その次に生まれる男の子が、ゼウス
を玉座から追放するであろう



お前もわしらと同じ目に遭うのじゃ、ざまぁみそらせぇ!
という不吉な予言が授けられていました。


『神々とタイタンの戦い』1600年 PD
ほどなくして、女神メティスの妊娠が発覚――。
祖父や父と同じ末路を辿りたくない、せっかく奪い取った絶大な支配力を手放したくない、そう考えたゼウスは、誰も想像し得ないようなナナメ下方向の対応策をとります。
彼は、身ごもった妻メティスを、丸ごと飲み込んでしまったのです。



わしごといくんかーーい!!
2番目の子どもをつくらなければ良いだけでは、と思ってしまうところですが、この時の主神は冷静さを欠いていたのでしょう。
しかし、女神メティスはその後も生き続け、夫の体内で無事に女の子を出産しました。
それこそが、今回の主人公アテナ。


『パラス・アテナ』1898年 PD
彼女はすくすくと成長し、母から受け取った兜や鎧、盾や長槍を装備して、まだ見ぬ父の頭部へと移動します。
このとき主神ゼウスは、これまでに経験したことがない、前代未聞の激しい頭痛に苦しんでいました。
彼は、鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος)に、斧で自分の頭をかち割るよう命令。
鍛冶神が言われた通りにすると、ぱっくりと開いた主神ゼウスの頭部から、完全武装で身を固めた女神アテナが、雄たけびをあげながらこの世に誕生したのです。


『アテーナーの誕生』1688年 PD
アテナ誕生の詳細はコチラ!!





活字だけでは絵面が思い浮かばない、とんでもない状況だね!



当のわたしも、ワケが分からなかったわよ
経緯はどうあれ、古代ギリシャ世界に爆誕したアテナは、父ゼウスの「力」と母メティスの「知恵」を兼ね備えた、バランスの取れた万能型の女神として崇拝されました。
その性格は、自然現象の擬人化というよりも、むしろ倫理的・社会的観念の象徴としての色合いが強く、アテナはやがて国家の守護神、社会秩序の維持者として、その名をギリシャ全土に轟かせることになります。
また彼女は、広義では知恵・芸術全般の女神として、父ゼウスを補佐しました。


『ミネルヴァとユピテルの勝利』1706年 PD
今回の主人公アテナは非常に人気のある神格でもあるため、その誕生秘話や由来譚には、さまざまなパターンが存在します。
ここでは、彼女の出自にまつわるいくつかの「諸説」を、ざっくりと箇条書きでまとめてみました。
- その誕生地はボイオティアのトリトン川(Τρίτων)で、出産には先見の神プロメテウス(Προμηθεύς)や伝令の神ヘルメス(Ἑρμῆς)などが立ち合ったとする説
※別名の「トリトゲネイア(Tritogeneia)」はこの設定に由来するとも - 「明るい眼をしている」という共通点から、彼女を海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)とトリトニス(Tritonis)の娘とする説
- 翼の巨人パラス(Πάλλας)の娘で、のちに父の命を奪い、その皮をアイギス(Αιγίς)*の材料とし、翼を自らの足に取り付けたとする説
※山羊皮製で中央にメドゥーサの首が括り付けられた盾、「イージス」とも - 海神トリトン(Τρίτων)の養子として、彼の娘パラス(Πάλλας)と共に養育されたとする説
※武芸の稽古中にパラスを死なせてしまい、彼女の名を自身の名に付け加えたとも
などなど…
特に、アテナには「パラス・アテナ(Pallas-Athena)」という有名な別名がありますが、その由来は上記のいずれかの「パラス」に結びつけて説明されることが多いようです。
※「パラス・アテネ」とも


『無知に打ち勝つミネルヴァ』1591年頃 PD
戦いの女神のさまざまな役割
アテナは「戦争」や「軍略」と関連が強い女神として知られていますが、彼女はこの他にも、以下のような種々様々な事柄を司り、数多くの創造と発明を成し遂げています。



仕事を選ばない女神アテナの、
担当一覧をざっくりと押さえてみるのじゃ
自然と農業の女神
- 鋤や鍬、熊手の発明
- オリーブの樹の創造
- 牛馬の飼育法、馴らし方(轡)の発明
- 乗馬術の発明
技術と学問の女神
- 「数」の発明
- アウロス(αὐλοί)*などの楽器の発明
- 斧や槍の発明
- 戦車の発明
- 航海術の発明
- 造船術の発明
- 「火」の使用法の発明
- 建築の守護
- ペンキ塗りの守護
- 油絞りの守護
女性の手仕事の女神
- 機織りの守護
- 紡績の守護
- 織物の守護
- 刺繍の守護
- 彫刻の守護
ほか、技巧と工芸全般の守護
※あくまで古代の基準


『馬を調教したアテナ』1688年 PD
国家と法の女神
- 都市国家の守護
- 「氏族」や「家」の守護
- 主要な祭典の守護
※「パナテナイア祭(Παναθήναια)」や「アパトゥリア祭(Ἀπατούρια)」など - 法と秩序・裁判の守護
※アレオパゴス(Άρειος Πάγος)での裁判で、票が同数なら被告有利に裁決したなど



彼女は、鍛冶の神ヘパイストスと共に「技芸と工業の守護神」とされ、エルガネー(erganê)という名でも呼ばれたそうよ



他にも私は、「芸能」や「知恵」といった要素も司ったわ
ほぼほぼ全人類の仕事の守護神なのよ
とはいえ、アテナといえばやはりコレ!「戦争」と「軍略」の女神
頭を使う難しい案件から文化的なアクティビティまで卒なくこなし、某有名な子猫のキャラクター並みに仕事を選ばないことで有名になった、(たぶん)世界最古のバリバリキャリアウーマン・アテナ。
しかしながら、そんな彼女の代名詞となる役割と言えば、やはり「戦争」と「軍略」が挙げられることでしょう。



…あれ?
オリュンポス12神の1柱で「戦いの神」って、
他にもいなかったっけ…?
――仰る通り。
オリュンポスの神々にはもう1柱、戦いの神アレス(ΑΡΗΣ)という神格がその名を連ねています。


『ウルカヌスに驚かされるマルストヴィーナス』1827年 PD
一見するとキャラ被りしているようにも思えるこの2神ですが、アテナが「知恵」を司り、「軍略」や「兵法」を用いて戦う軍神であったのに対し、アレスは戦争の「荒々しさ」や「破滅的な側面」を象徴する存在とされました。
無益な殺生に飢えていて血を求める、「戦略」や「正義」「秩序」とは無縁の、残忍で獰猛な破壊の神――。
「戦い」のために戦い、あちこちで戦争の火種をばらまく、人間たちの命を奪い去ることが大好きな、純粋な暴力と残虐さの神――。
それが、軍神アレスの本質的な属性です。
古代ギリシャの人々は、アレスが好むような無秩序でルールのない戦争を野蛮視する傾向にあったので、相対的に冷静な戦いを重んじるアテナの地位が向上し、神話のあらゆる場面で、「勝利するアテナとボコボコにされるアレス」という構図が描かれました。



あのアホみたいに好戦的ではなく、
国家の利益や秩序を守る慎重な戦神なのよ



戦争は養護するけど、無益な殺生は戒めるわ



人気の出る役割で羨ましい限りですよ、本当に!




『マルスとミネルヴァの戦い』1771年 PD
永遠の処女神として
今回の主人公アテナについては、もう一つ、確実に言及しておかなければならないポイントがあります。
それは、彼女が永遠の純潔を誓った処女神であるということ。
生まれた時点で男性というもの(ゼウス)に絶望していたのか、他に崇高な理念があったのか分かりませんが、いずれにせよアテナは「恋愛」や「結婚」といった概念を拒否していました。
愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)がもたらす「愛欲」の力には、不死の神々も、死すべき人間たちも、誰一人として抗うことができないとされています。
しかし、唯一、処女を守り通すことを誓った
の3神だけは、彼女の誘惑を退けることができると信じられていたのだそうです。


『ヴィーナスの誕生』1485年頃 PD



パルテノン神殿の「パルテノン(Παρθενών)」にも、
「処女」や「乙女」といったニュアンスの意味があるのよ






アテナは、当時の女性の仕事であった「機織り」から、男性の役目であった「戦争」まで一手に掌握し、女性性と男性性の双方に秀でた女神として、古代ギリシャ世界に存在しました。
彼女が終生「処女」を貫いたこともまた、その特異な地位と無関係ではなかったのかもしれません。
当時の芸術家たちは古代美術において、そんなアテナの決意を示すかのように、思慮深く、威厳のある姿で彼女を描きました。
その顔立ちは美しくも厳しく、口元はきりっと結ばれていて、優美な雰囲気のなかにも男性的な力強さを備えた体格で表現されています。
また、アテナは自身の処女性を強調するため、常に布の衣服か全身鎧を身にまとい、兜やアイギスの盾、長槍を携えて人々の前に姿を現しました。


『パラスとケンタウロス』1482年頃 PD



他にも、アテナの「知恵」を象徴するフクロウや、
蛇、オリーブの枝などが描かれたのじゃ
アテナが関わった主なストーリー



アテナの活躍を見てみよう!
都市の守護権をめぐって海神ポセイドンとバチバチにやりあう
基本的には「知恵」と「分別」のある女神として冷静に振る舞い、どこぞの軍神のように破天荒な真似をすることはなかった女神アテナ。
しかし、そんな彼女にも、どうしても譲れないものがありました。
それが、「都市国家の守護神」としての矜持です。
オリュンポスの神々がそれぞれの領地を分け合っていた時代、アテナと海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)は、アッティカのとある都市の宗主権を巡って激しく対立しました。
2神は、どちらが現地の守護神として相応しいのかをはっきりさせるために、神々や人間たちが見ている前で、それぞれの「力」を競い合うことにします。


『アテナとポセイドンの競争』1748年 PD



具体的には、市民に贈り物をして、
より喜ばれた方が勝利というルールよ
最初に動いたのは、海王ポセイドン。



おらぁぁぁぁぁぁ人間どもぉぉぉぉぉ!!
偉大なるオリュンポス神の力を、とくと見やがれぇぇぇぇ!!
ここぞとばかりにイキり倒した彼は、自慢の武器である三叉の鉾を豪快に振り回して地面にぶっ刺し、アクロポリスの丘に大穴をぶち空けて大量の塩水を噴き出させました。



おらどうじゃ!これでいくらでも海水が手に入るぞぃ!!
ぐえははははは!!!
この時、ポセイドンが地面を穿った痕跡は、現在のアクロポリスでも見ることができるのだそうです。
なんでも、南風が吹くと、地下から波の音が聞こえてくるのだとか。


-ポセイドンがアクロポリスに三叉槍を突き刺した場所ともされる
出典:Melissopetra CC BY-SA 4.0
一方アテナは、終始淡々とした表情と所作で、アッティカの地に「オリーブの木」を植えました。
この木の実は食用にもできる他、油がよく取れ、丈夫な樹体は食器や武器の素材にも適しているという優れものです。
――そして、審判の時が…。



普通に考えて、アテナ様やろ



んだんだ、アテナ様に守護神になってもらうっぺ



海水なんかいくらあっても飲めへんっちゅうねん、
アホかあのおっさん
こうして、勝負には女神アテナが見事勝利し、アッティカ地方の首府は彼女の名にちなんで、「アテナイ(現アテナ)」と呼ばれるようになりました。
アテナが最初にオリーブをもたらした場所には、今でもその木が植えられているのだそうです。
以降「オリーブ」は、アテナイ市民の生活を助ける必需品としてのみならず、その経済基盤を支える重要な輸出品としても活躍しました。


-アテナイのアクロポリス 1846年 PD



ふざけるな小娘ぇぇぇぇぇぇぇ!!
この結末に唯一納得していなかったポセイドンは、怒りに任せて大洪水を引き起こし、アテナイ西のトリアシア平原を海の底に沈めてしまったと伝えられています。



この洪水は、実際の歴史上の出来事なのだそうじゃ
また、アテナとポセイドンはこの他にも、アルゴリス地方のトロイゼンの領有権を巡って争ったことがあります。
さすがに、この時ばかりは主神ゼウスが調停に入り、その地は2神の共同所有という形で運営されることになりました。



トラブルの度に洪水が起こったら、
神々も人々もたまったもんじゃないよね!


『ポセイドンとアテナイの所有権を争ったアテナ』1512年 PD
先述した役割からも分かる通り、非常に頼りがいのある姉御肌の女神であったアテナは、当然ながら古代ギリシャ中の人々に愛されました。
ここでは、そんな彼女の誕生にまつわる、とある逸話をご紹介します。
アテナがこの世界に姿を現し、その素晴らしい力を発揮すると、ギリシャの各都市はこぞって



ぜひとも、我が街の守護神となって頂こう!!



よっしゃ!わしらが一番先に彼女をお祀りするでぇ!!
と奮起しました。
「アテナ誘致大作戦」における神殿の建築競争に一番乗りで勝利したのが、ロードス島の人々です。
しかし彼らは、祭儀に必要な「火」を持たずに供犠を執り行い、女神を迎える一連の儀式を見事に失敗してしまいました。
※実際にロードス島では、アテナの祭儀で「火」を用いなかった。この話はその起源譚でもある。
その隙を突いてアテナ神殿を完成させ、つつがなく祭礼を完了させたのが、他でもないアテナイ市であったと伝えられています。
それゆえにアテナは、アテナイを自らの拠点に定め、すべてのギリシャの中で最も寵愛したのだとか。



という、自分たちに都合の良い逸話を、
各都市が語り継いだのじゃ



言うまでもなく、このお話はアテナイ市で流行したものよ
戦ったり応援したり罰したり、真面目な処女神の忙しい日常
ここでは、さまざまな役割を担う女神アテナが活躍した神話の名場面を、ざっくりダイジェストでご紹介します。



まぁ私レベルになれば、名誉ある武勇伝しか残っていないわよ



お話の詳細は個別の記事で解説しているから、
良ければそちらも見てみてね!



なお、時系列順にはなっとらん個所もあるので、
そこらへんはゆるく受け取ってほしいぞぃ


『アテナ』19世紀 PD
神々の好き放題に巻き込まれた女性を罰し、伝説の怪物メドゥーサの誕生に関わる
メドゥーサ(Μεδουσα)は豊かな髪の毛に定評のある、非常に美しい人間族の女性で、女神アテナへの忠誠と生涯の純潔を誓っていました。
しかしある時、彼女は海神ポセイドンに見初められ、よりにもよって処女神であるアテナの神殿で愛されたうえ、神の子をその身に宿してしまいます。
聖域を汚され、重大な裏切りを受けて激怒したアテナは、メドゥーサを蛇髪の邪悪な怪物の姿へと変貌させました。
彼女は、後に英雄ペルセウス(Περσεύς)によって討ち取られ、その首は「ゴルゴネイオン(Γοργόνειον)*」と呼ばれるデザインのモチーフにも採用されています。
※怪物ゴルゴンが象られた絵や彫刻で、魔除けみたいなもん




『メドゥーサの頭部』1600年 PD
鍛冶神の強烈なセクハラに遭い、優秀なアテナイ王の誕生に関わる
女神アテナが武具を鍛えなおすために、鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος)のもとを訪ねた時のこと。
愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)を妻に迎えながら相手にしてもらえず、極限まで欲求不満が溜まっていた鍛冶神は、よりにもよって処女神である彼女に欲情し、理性を失って襲いかかります。
ヘパイストスは、当然の如くボコボコにされて退散しますが、アテナの太ももには、彼が射出した体液がべっとりとこびりついていました。
彼女は、嫌悪感丸出しで「それ」を拭い取り、拭きとるのに使った羊毛を地面に投げ捨てます。
すると、ヘパイストスの体液を受け取った大地の女神ガイア(Γαῖα)が懐妊し、そこから半人半蛇の赤ん坊が誕生しました。
彼は、エリクトニオス(Ἐριχθόνιος)と名付けられてアテナの養育を受け、後に優秀なアテナイの王となっています。




『ヘパイストスの進撃を嘲笑するアテナ』1555年-1560年頃 PD
機織り勝負で人間に敗北したアテナ、罰として相手を「蜘蛛」に変える
リディアのコロポンと呼ばれた小さな町に、名もなき平民の娘アラクネ(Αραχνη)が住んでいました。
彼女は、自身の機織りの腕前に大変な自信をもっており、その高慢な自尊心は、やがて手工芸全般を司る女神アテナに対して、喧嘩を売るまでに肥大化します。
アラクネは女神に機織り勝負を挑み、作品の出来自体では事実上勝利。
しかし、そのことでアテナの怒りを買った彼女は、「神々への不敬」という論点ずらしの罪状で罰され、「蜘蛛」の姿に変えられてしまいました。




『織女たち』1657年頃 PD
天然の露天風呂に入っていたくせに、現場を目撃した相手の視力を奪う
テーバイに住む若者テイレシアス(Τειρεσίας)は、ある日偶然にも、森で水浴を行う女神アテナの姿を目撃してしまいます。
処女神である彼女はこの侮辱に激しく怒り、彼から目の「光」を奪い去ってしまいました。
さすがにやりすぎたかなと反省したアテナは、テイレシアスに正確無比な「予言の力」と、並の人間のそれを超えた「長寿」を与えます。
その後、彼は7世代にもわたって生存し、盲目の予言者として数多くの人々に的確な助言を与えました。




『死の国のオデュッセウスと予言者テイレシアース』1780年-1785年 PD
巨人との大戦争で重要な役目を果たし、ラスボス戦にも果敢に挑む
オリュンポスの王ゼウスと大地の女神ガイアの対立によって生じた、宇宙の支配権を賭けた大戦争「ギガントマキア(Γιγαντομαχία)」。
女神アテナは、神々の力のみでは滅ぼせないとされた巨人族ギガンテス(Γίγαντες)に勝利するために、半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)を戦場に召喚するという、非常に重要な役割を果たしています。
また彼女は、追い詰められて敗走する巨人エンケラドス(Ἐγκέλαδος)をシチリア島の下敷きにしたり、巨人パラス(Πάλλας)をバラして皮を剥ぎ取り、自分が使う盾の材料にしたりと、非常に華々しい戦果を挙げました。
さらに、最高神ゼウスと最大最強の怪物テュポン(Τυφών)が争ったラストバトルの際、ほとんどの神々は敵を恐れ、自身を動物の姿に変えてエジプトへと逃亡しましたが、主神と共に唯一戦場に残ったのがアテナであったと伝えられています。


1844年-1861年
出典:ニューヨーク公共図書館 PD




ちなみに、同じく戦いを司る神であったアレスは、レピドトス(lepidotus)という名の魚*の姿に変身して、尻尾を巻いて敵前逃亡をかましました。
※アレスと同一視された、エジプト神オヌリス(Onuris)と関連付けられた聖なる魚



武神として、その名に恥じぬ働きをせねばな(チラッ



……
戦いの女神アテナはこの他にも、
- 人類最初の女性パンドラ(Πανδώρα)に、機織りの技術を教える
- 名医アスクレピオス(Ασκληπιος)に蛇髪の怪物メドゥーサの血を与える
- 不義の子である調和の女神ハルモニア(Ἁρμονία)の結婚祝いとして、媚薬を染み込ませた「長衣」を贈り、その子孫に災いが降りかかるよう仕向ける
など、数々のユニークな逸話を残しています。


『美徳の園から悪徳を追い出すミネルヴァ』1502年 PD
英雄たちの守護神アテナ!彼女が手を貸した人物を一覧でご紹介!
最後に、英雄たちの守護神として数々の人物を守り導いた女神アテナの、いわゆる「英雄遍歴」をざっくり一覧でご紹介しておきます。
- ヘラクレス(Ηρακλής)
-
皆さんご存じ、結婚の女神ヘラ(Ἥρα)にイビり倒された伝説の苦労人。
言わずと知れた「12の功業」などで有名。
- ペルセウス(Περσεύς)
-
ヘラクレスの曽祖父にあたる半神の英雄。
「メドゥーサ退治」などの伝説で有名。
- テセウス(Θησεύς)
-
伝説的なアテナイの王、そして国民的な英雄。
「ミノタウロス退治」などの逸話で有名。
- イアソン(Ἰάσων)
-
イオルコスの王子で、アルゴー船の船長。
コルキスの金羊毛を求めた「アルゴナウタイ(Ἀργοναῦται)」の冒険などで有名。
- ベレロフォンテス(Βελλεροφόντης)
-
コリントスの王で、有翼の天馬ペガサス(Πήγασος)の飼い主。
「キマイラ退治」などの武勇伝で有名。
- カドモス(Κάδμος)
-
フェニキアの王子で、ドラゴンスレイヤー。
女神アテナの助言に従い、スパルトイ(Σπαρτοί)の誕生と都市国家テーバイの創設に関わった。
パパ、ときどきトトのゆるっと神話…【建国の父で妻は美しい女神、でも超絶苦労人】テーバイの王カドモス【ギリシャ神話】 | パパ、ときどきト… 今回はギリシャ神話よりテーバイの王カドモスをご紹介!フェニキアのテュロスの王子は、妹エウロペがゼウスに攫われたことで人生が狂い始める!テーバイ建国の父、そして調… - ディオメデス(Διομήδης)
-
ティリンスの領主で、「トロイア戦争」におけるギリシャ側の優秀な戦士。
アテナに導かれ、軍神アレスの脇腹に風穴をあけるなどの活躍を果たした。
- オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)
-
イタキ島の王で、「トロイア戦争」でギリシャ側を勝利に導いた英雄。
女神アテナは、彼が故郷に戻るまでの10年にわたる旅路を導いた。
※ホメロスの『オデュッセイア』の物語 - テレマコス(Τηλέμαχος)
-
イタキ島の王子で、オデュッセウスの息子。
アテナに導きにより、戦争から戻らぬ父を捜索する旅に出る。
- クレイトス(Κλείτος)
-
ソニー・コンピュータエンタテインメントのSCEサンタモニカスタジオが開発したコンピュータゲーム『ゴッド・オブ・ウォー (God of War)』シリーズの主人公。
女神アテナは、父親でもある主神ゼウスを滅ぼそうとするクレイトスを、陰になり日向になり支えた。
created by Rinker¥45,800 (2025/08/25 21:45:01時点 楽天市場調べ-詳細)
ほか多数!!



言うまでもないが、最後の項目はジョークじゃぞぃ



でも、クレイトスのモデルは
力の神クラトス(Κράτος)とされているわよ


『ペルセウスに盾を貸し与えたアテナ』1697年 PD



ご覧の通り、アテナは「トロイア戦争」でギリシャ側
の味方をして、様々な人物に手を貸しているよ!



「トロイア戦争」については別途まとめる予定だから、
楽しみにしていてね
ギリシャ神話をモチーフにした作品



参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する戦いの女神アテナについて解説しました。



どメジャーな女神だけあって、
役割やエピソードも盛りだくさんだったわね



ギリシャ全土で愛されたのもうなずける、
マルチな活躍っぷりだったよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…