
こんにちは!
忙しい人のための神話解説コーナーだよ!
この記事では、忙しいけど北欧神話についてサクっと理解したいという方向けに、『エッダ』をベースにした神話のメインストーリーをざっくりとご紹介していきます。
とりあえず主だった神々の名前と、ストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
個々の神さまについての詳細は個別記事で解説していますので、良ければそちらもご覧ください。



とりあえず大まかな流れをつかむというコンセプトじゃ
補足情報は【Tips】として解説しとるが、
読み飛ばしても全然OKじゃぞ



関連記事のリンクを貼っているから、
気になった方はそちらもチェックしてね



ではさっそくいってみよう!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 北欧神話にちょっと興味がある人
- 北欧神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 北欧神話のメインストーリーをざっくりと把握できます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、今回ご紹介する物語のストーリーラインを、箇条書きでざっくりまとめておきます。



ぱっと見で把握してね



何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
今回ご紹介する『最終戦争ラグナロク』のストーリー
- 極寒のフィンブルの冬が三度も続き、人間のあいだには戦乱が巻き起こり、世界はすっかり荒廃してしまう。
- 2匹の狼スコル(Sköll)とハティ(Hati)が太陽の女神ソール(Sól)と月の神マーニ(Máni)を飲み込み、世界は天変地異に見舞われる。
- 大地が揺れてすべての枷がちぎれ飛んだことで、捕えられていた狡知の巨人ロキ(Loki)らも束縛を解かれ、アース神族への復讐に動き出す。
- 霜の巨人と炎の巨人ムスッペル(Múspell)、ニヴルヘルの死者たちが連合軍を結成して神々の世界に侵攻。光の神ヘイムダル(Heimdall)が角笛ギャラルホルン(Gjallarhorn)を高らかに吹き鳴らすと、ついに最終戦争ラグナロクが開始される。
- 巨狼フェンリル(Fenrir)は最高神オーディン(Óðinn)を丸のみにして復讐を果たすも、その息子の森の神ヴィーダル(Víðarr)によって討伐された。
- 雷神トール(Þórr)と大蛇ヨルムンガンド(Jörmungandr)は3度目の因縁の対決を行うも、壮絶な相討ちに終わる。
- 豊穣の神フレイ(Frey)は魔法の宝剣を手放していたので鹿の角1本を武器に戦いに参加し、炎の巨人スルト(Surtr)の剣によって一撃で葬られる。
- 隻腕の軍神テュール(Týr)はニブルヘルの番犬ガルム(Garm)と戦うも、相討ちによってその人生を終える。
- ヘイムダルとロキも真っ向から戦うが、この勝負も相討ちとなった。
- 神々も巨人もほぼ全滅、最後まで立っていたスルトが炎の剣をヴィーグリーズ(Vígríðr)の野に放ち、神々の世界と世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)は炎に包まれて滅び去る。
- 滅びた世界に新たな大地が生まれ、オーディンの息子であるヴィーダルと復讐の神ヴァーリ(Váli)、トールの息子であるモージ(Móði)とマグニ(Magni)が生き残った。
- 唯一生き延びた一組の人間の男女、リーヴ(Líf)とレイヴスラシル(Lífþrasir)は、ラグナロク後の世界に繫栄する次なる人類の祖となった。
そもそも「北欧神話」って何?
「北欧神話」とは、北ヨーロッパのスカンジナヴィア半島を中心とした地域に居住した、北方ゲルマン人の間で語り継がれた物語です。
1年の半分が雪と氷に覆われる厳しい自然環境の中で生きた古代の人々は、誇り高く冷徹で、勇猛で死もいとわない荒々しい神々を数多く生み出しました。
彼らの死生観が反映された「北欧神話」の物語は、最終戦争・ラグナロクによって、神も人間もあらゆるものが滅亡してしまうという悲劇的なラストを迎えます。
現代の私たちが知る神話の内容は、2種類の『エッダ(Edda)』と複数の『サガ(Saga)』という文献が元になっています。
バッドエンドが確定している世界でなおも運命に抗い、欲しいものは暴力や策略を用いてでも手に入れる、人間臭くて欲望に忠実な神々が引き起こす様々な大事件が、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。


「北欧神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


主な登場人物



この物語の登場人物(神)をざざ~っと挙げておくぞい
詩篇Ⅵ:最終戦争ラグナロク
―前回までのあらすじ
光の神バルドル(Baldr)の死によって、「世界滅亡の予言」が現実のものとなりつつあることを確信した神々。
さらなる「知識」と「知恵」を求めた最高神オーディン(Óðinn)は、知識の巨人ヴァフスルーズニル(Vafþrúðnir)のもとを訪ねて知恵比べを行いました。
自身の最期を知った主神は、巨狼フェンリル(Fenrir)を魔法の紐グレイプニル(Gleipnir)で捕縛し、地中深くに封印します。
一方、アースガルズの神々との関係が悪化していた狡知の巨人ロキ(Loki)は、海神エーギル(Ægir)の館で開催された酒宴を散々引っ掻き回して外の世界に逃亡。
ロキに対する怒りが頂点に達したアース神たちは、彼を捕えて岩に縛り付け、額に蛇の毒が滴る状態にしたまま最終戦争ラグナロクの到来まで放置することとなりました。
こうしてすべての条件が整ったいま、世界はもはや「最後の日」の訪れを大人しく待つほかありません。



今回はついに北欧神話篇最終回「ラグナロク」よ



北欧神話らしさここに極まれりってやつだね!
お知らせ
ご紹介している「北欧神話」の物語は、『古エッダ』や『スノリのエッダ』を原典としますが、これらは必ずしも物語順には描かれていません。
もともとは、それぞれが口頭で語られた単独の「詩」なので、「出来事」や「神々のプロフィール」単位で配置されており、物語の時系列が明示されているわけではないのです。
そのため、文献や登場人物の状況、アイテムの所持状況から時系列を推定する必要があるのですが、これがなかなか難しい…



例えば以下のような感じじゃ
- ヴァン戦争でオーディンが投げたのがグングニルなら、それがもたらされた場面にヴァン神族のフレイがいるのは矛盾する
※普通の大槍だったとする説もある - ヴァン戦争のきっかけとなったグルヴェイグを貫いたのがグングニルなら、これまた順番が前後する
※この場合の「槍」は、集団での暴行の暗喩とする説もある
などなど…
どうにかまとめようとした筆者は発狂しかけたので、このシリーズでは、
- できるだけスムーズに理解しやすい
- 可能な限り矛盾が生じない、納得しやすそうな
流れで物語をご紹介しています。





序盤と終盤のメインストーリーは固まってるけど、
それ以外は自由度が高いオープンワールドゲーみたいなもんかな



だから難しいツッコミはしないでね☆
ついに到来した神々の黄昏!神々と巨人は決戦の地に集う!
「北欧神話」を「北欧神話」たらしめる最大の要素、あらゆるものが炎に包まれて滅亡する「最終戦争ラグナロク」。
堂々たる最終回となるべきこの物語は、『スノリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」の記述をベースにしてご紹介します。


-ラグナロクの戦いの様子 PD
終わりの始まりはちょっとした天候不良からやってきます。
太陽の光が輝きをひそめ、日差しが弱くなってきたかと思うと、極寒のフィンブルの冬が三度も続き、夏はその間に一度もきませんでした。
雪があらゆる方角から降り、霜はひどく、風はきついので、太陽はそこにあるだけで何の役にも立たなかったと伝えられています。
身を切るような風と冷たい霜はすべての者を苛立たせ、最高神オーディン(Óðinn)が散々引っ掻き回した人間の世界はすっかり荒廃してしまい、各地で戦乱が起こりました。


この時の様子は、『巫女の予言』で以下のように語られています。
兄弟同士が戦い合い
殺し合い
親戚同士が不義を犯す
人の世は血も涙もなきものとなり
姦淫は大手を振ってまかり通り
鉾の時代、剣の時代が続き
楯は裂かれ
風の時代、狼の時代が続きて
やがて、この世は没落するならん
『古エッダ』―「巫女の予言」
やがて、2匹の狼スコル(Sköll)とハティ(Hati)が、普段追いかけまわしていた太陽の女神ソール(Sól)と月の神マーニ(Máni)をついに飲み込み、世界はいよいよ本格的な天変地異に見舞われました。


また、このとき海の向こうには、死者の爪から造られた巨大な船ナグルファル(Naglfar)が浮かんでいます。
舵をとる者の名はフリュム(Hrymr)で、この船にはロキをはじめとした霜の巨人の軍勢が満載されていました。
さらに灼熱の世界ムスペルヘイムからは、炎の巨人スルト(Surtr)に率いられたムスッペル(Múspell)の軍勢が馬を駆ってやって来ます。
彼らが駆使する独自の陣形は、神々をも恐れさせたと伝えられています。


『燃える剣を持つスルト』1882年 PD
アースガルズと地上世界を結ぶ唯一の道は、虹の橋ビフレスト(Bifröst)と呼ばれました。
炎の巨人の軍団がそこを渡ると、その橋は脆くも崩れ、砕け散ってしまいます。
アース神族に仇なす者たちは一路、ヴィーグリーズ(Vígríðr)と呼ばれる野を目指しました。
そこには、フェンリルとヨルムンガンドもやって来ます。
また、このときロキは霜の巨人族のみならず、娘である冥界の女王ヘル(Hel)から預かった死霊の軍勢をも率いていました。




-ビフレスト 1910年 PD
一同に会した霜の巨人と炎の巨人ムスッペル(Múspell)、ニヴルヘルの死者たちが連合軍を結成して神々の世界に侵攻。
事態を察した光の神ヘイムダル(Heimdall)が角笛ギャラルホルン(Gjallarhorn)を高らかに吹き鳴らすと、ついに最終戦争ラグナロクが開始されました。
このとき、オーディンは真っ先に「ミーミルの泉」に馬を馳せ、知恵の巨人ミーミル(Mímir)の助言を求めたと言われています。




-角笛を吹くヘイムダル 1905年 PD
世界の終わりを肌で感じた世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)は震え、天も地も、恐れおののかぬものはありませんでした。
アース神族の神々と戦死者の魂エインヘリヤル(einherjar)の一団は、甲冑に身を固め、決戦の地ヴィーグリーズを目指して進軍を開始します。


最高神オーディン V.S. 巨狼フェンリル
ラグナロクにおいてオーディンが対峙するのは、ロキがもうけた3人の子の1人で、かつて自身が魔法の紐グレイプニル(Gleipnir)で捕縛した巨狼フェンリルです。
黄金の甲冑と兜を身にまとい、大槍グングニル(Gungnir)を握ったオーディンは8本脚の愛馬スレイプニル(Sleipnir)に跨って敵陣に突き進みます。
彼に対する怒りが爆発したフェンリルもまた、下あごは地に上あごは天に届くほど大きく口を開けて、目と鼻から火を噴きながら迫ってきました。


-オーディンとフェンリルの戦い 1905年 PD
両者はしばらくのあいだ死力を尽くして争いますが、次第に戦い疲れてしまったオーディンは、あっけなくフェンリルに丸のみにされて命を落としてしまいます。
ついに積年の恨みを晴らしたフェンリルでしたが、残念ながら彼自身も、この戦場でその一生を終えることになりました。
知識の巨人ヴァフスルーズニル(Vafþrúðnir)の予言により、オーディンの復讐はその息子である森の神ヴィーダル(Víðarr)によって果たされると定められていたからです。
彼はこの日のために、人間が靴を作る際に捨てた三角形の革の切れ端を集めて繋ぎ合わせた、鉄のように固い「革靴」を準備していました。


『フェンリルとオーディン』1895年 PD
ヴィーダルは、今日まで丹精を込めて作り上げた渾身の装備を身に着け、一目散に戦場を駆け抜けます。
いくら予言が絶対のものとはいえ、父であるオーディンを死の運命から救う可能性に賭けてみたかったからです。
しかし、そんな彼の視線の先には、死にゆく父、そして最高神の姿が。
やはり、予言に定められた運命には抗えない。
一瞬落胆しかけるヴィーダルですが、今はそうも言っていられません。
彼には、今まさに果たすべき役割があるからです。
ヴィーダルは父の仇であるフェンリルの口に足を突っ込むと、お手製の頑丈な革靴でその下あごをガッチリと抑えつけます。
彼はそのままフェンリルの上あごを手で持ち上げ、一気に力を込めて顔面を引き裂いてしまいました。
こうして、ヴィーダルに定められた復讐の使命は無事に果たされたのです。


-ヴィーダルとフェンリル 1908年 PD








雷神トール V.S. 大蛇ヨルムンガンド
オーディンの息子である雷神トール(Þórr)の相手は、ロキの息子の一人である大蛇ヨルムンガンドです。
霜の巨人の王ウートガルザ・ロキ(Utgarða Loki)の一件で因縁が生じた両者は、ついにその決着をつけることになったのです。
兄フェンリルと共に神々の国に乗り込んだヨルムンガンドは、アースガルズの大地を洗い流してしまうような大津波を起こし、その巨体から吐き出される毒は、死の霧となって空と地上を覆います。


『トールとミッドガルドの蛇』1905年 PD
これを迎え撃ったトールは、大槌ミョルニルを大蛇の頭に叩き込み、ついにその命を奪うことに成功しました。
しかし、これは最後の戦いにして、これまでアース神族から虐げられた巨人族にとって唯一の復讐のチャンス、ヨルムンガンドもただでは転びません。
彼は、最後の力を振り絞ってトールに猛毒の霧を吹きかけ、そのすぐ後に息を引き取りました。
手痛い一撃を受けたトールは9歩後ずさると大の字で地面に倒れ、その姿のままで、戦いと波乱に満ちた生涯を閉じます。
こうしてトールとヨルムンガンドの因縁の対決は、壮絶な相討ちによって幕を下ろしたのです。


-予言されたトールの死 1895年 PD




豊穣の神フレイ V.S. 炎の巨人スルト
ヴァン神族の豊穣の神フレイ(Frey)が戦う相手は、炎の巨人スルトです。
平和を愛しながらも勇敢で力強い神であった彼は、オーディンやトールと共に戦いの最前線に立ちました。
素手で巨人を倒したこともあるフレイでしたが、今回は状況的に圧倒的不利と言わざるを得ません。
なぜなら、彼は最愛の女性ゲルズ(Gerðr)を妻に迎えるために、愛馬ブローズグホーヴィと強力な魔法の宝剣を、従者スキールニル(Skírnir)に譲渡していたからです。
結局フレイは鹿の角1本を武器にこの未曾有の戦いに身を投じる羽目になり、スルトが携えた太陽のように光り輝く炎の剣に敵うはずもなく、その命を落としました。


-ラグナロクにおけるスルトとフレイの戦い 1895年 PD
フレイがかつて所有していた宝剣は、唯一彼を傷付けることができる武器とも言われていました。
そのため、スルトが使ったという「炎の剣」は、もともとはフレイの宝剣だったのではないかとも考えられています。
いずれにしても多くの神々や人々に愛された光属性の貴公子フレイは、「戦士としての成功」と「愛する人との生活」のどちらが男にとっての幸せなのか、おおいに議論の余地のある話題を残してこの世を去りました。


軍神テュール V.S. ヘルの番犬ガルム


『ÍB 299 4to』より テュール PD
フェンリルの一件で右腕を失ったうえ、それを評価されるどころか「人々を調停できない者」とディスられ、それでもアース神の1人として真面目に戦いを司った律儀で健気な軍神テュール(Týr)。
隻腕となった彼は、勇敢にも残った左手に剣を握り、最後の戦いの最前線に立ちました。
テュールの前に立ちはだかるのは、死者の世界ニブルヘルの番犬ガルム(Garm)です。
フェンリルに負けず劣らずの巨体をもち、胸元には乾いた血をべっとりとつけたその狂犬は、容赦なくテュールに襲い掛かりますが、彼も失った右腕をかばいながら左手の剣1本で必死に応戦しました。
しかし、いくら力強い軍神といってもコンディションが最悪であることは事実。
テュールはガルムに喉笛を噛みちぎられて致命傷を負いますが、戦士としてのプライドから最後まで抗い、ついに両者は相討ちとなって果てました。


光の神ヘイムダル V.S. 狡知の巨人ロキ
光の神ヘイムダルが対峙するのは、アース神を裏切って敵陣についた狡知の巨人ロキです。
両者の関係はもともと険悪だったわけでもなく、利害が一致すれば行動を共にすることもありました。
雷神トールの大槌ミョルニル(Mjölnir)が霜の巨人の王スリュム(Þrymr)に盗まれた際、ヘイムダルはロキに、「トールに女装させて潜り込ませれば?」と非常に効果的な助言を与えたりもしています。
その一方、ロキが愛と美の女神フレイヤ(Freyja)の首飾りブリーシンガメン(Brísingamen)を盗んだ際、ヘイムダルがその後を追って互いにアザラシの姿に化けて戦ったという伝承も残っています。
また、『古エッダ』の「ロキの口論」では、いつも背中を濡らし、寝ることもなく神々の見張り番をするヘイムダルを、揶揄しているとも心配しているともとれるロキの姿が描かれました。
いずれにしても一筋縄ではいかない、好悪入り混じる複雑な感情を互いに抱えた両者は死闘を繰り広げ、激しいぶつかり合いの末に、ついに相討ちとなって倒れます。


-火でアース神を脅かすロキ 1985年 PD




ついに決着!スルトの炎により、神々の世界はついに炎に包まれて終わる!そして再生へ…
神々も巨人も死力を尽くして奮戦しますが、ほとんどすべてが敵と相討ちになり倒れてしまいました。
アース神族も巨人族もほぼ完全に滅んでしまったところで、最後まで立っていたのが炎の巨人スルトです。
彼が巨大な炎の剣をヴィーグリーズの野に放つと、全世界は火の海となって燃え上がり、世界樹ユグドラシルもついに炎に包まれ、大地は海の底へと沈んでいきました。
戦いに乗じて死者の魂を貪り食った悪食の飛竜ニーズヘッグ(Níðhöggr)は、その翼に大量の戦死者を乗せて逃げるように飛び立ちますが、結局は重さに耐えきれず墜落していきます。




-スルトの炎に包まれた世界 1905年 PD
こうしてついに、『巫女の予言』に歌われた通り、神々の世界は完全に滅び去ってしまったのです。
しかし、北欧神話の物語はここで終了ではありません。
一度は滅びたはずの世界ですが、海中から緑の美しい大地が浮かび上がり、そこには種を撒かずとも穀物が育ちました。
太陽はすでに飲み込まれていましたが、女神ソールは一人娘を遺していたので、母の役目を彼女が引き継ぎます。
そして、生まれ変わった地上には、ひとり、ふたりと何者かの姿が。
オーディンの息子である森の神ヴィーダルと復讐の神ヴァーリ(Váli)、トールの息子であるモージ(Móði)とマグニ(Magni)はこの戦いを生き延びました。
彼らの手には、雷神が遺した大槌ミョルニルが握られています。
ニブルヘルの冥界からはバルドルと盲目の神ホズ(Hǫðr)も戻って来たようです。
一同は、かつてアースガルズにあった広場イザヴェル(Iðavöllr)に腰を下ろし、ヨルムンガンドやフェンリルのこと、先の戦いのことを話しました。
かつての時代を懐かしんだ彼らはその後、黄金に輝くギムレーの館に住んだと言われています。
一方、人間にも1組の男女の生き残りがいました。
ホッドミーミル(Hoddmimir)と呼ばれる森に身を隠し、朝露で生命を繋いでいた彼らの名は男性がリーヴ(Líf)*1、女性がレイヴスラシル(Lífþrasir)*2といい、2人はラグナロク後の世界に繫栄する次なる人類の祖となったのです。
※1「生命」の意、※2「生命を継承する者」の意


-ラグナロク後の世界 1905年 PD
北欧神話をモチーフにした作品



参考までに、「北欧神話」と関連するエンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、北欧神話の物語「最終戦争ラグナロク」について解説しました。



いや~、さすがと言うほかない
オリジナリティ溢れる最終回だったわね



『巫女の予言』ver.では細かい部分の設定が異なるものの、
大きな話の流れは同じだよ!
パパトトブログ-北欧神話篇-では、北の大地で生まれた魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「北欧神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 山室静 『北欧の神話』 ちくま学芸文庫 2017年
- 谷口幸男訳『エッダ-古代北欧歌謡集』新潮社 1973年
- P.コラム作 尾崎義訳 『北欧神話』 岩波少年文庫 1990年
- 杉原梨江子 『いちばんわかりやすい北欧神話』 じっぴコンパクト新書 2013年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかる北欧神話』 文庫ぎんが堂 2017年
- 松村一男他 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2012年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 中村圭志 『世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探求倶楽部編 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講』 新潮選書 2022年
- 池上良太 『図解 北欧神話』 新紀元社 2007年
- 日下晃編訳 『オーディンの箴言』 ヴァルハラ・パブリッシング 2023年
他…
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