
こんにちは!
今回はギリシャ神話より返愛の神アンテロスを紹介するよ!



なんだか分かるようで分からない役割ね
彼はどんなキャラクターなの?



彼は軍神アレスと美神アフロディーテの息子で、
要するに「相思相愛」や「相互愛」を司ったんだ!



恋愛版『ジャスティス・リーグ』、
「エロテス」の一員でもあるのじゃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、軍神アレスと美神アフロディーテの息子の一人で、「相思相愛」や「相互愛」を司り、兄エロスらと共に母直属の部隊「エロテス」に所属して、「愛欲」の力を倍増させた有翼の神アンテロスをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「返愛の神アンテロス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


返愛の神アンテロスってどんな神さま?
返愛の神アンテロスがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
正式名称 | アンテロス Αντερως | |
---|---|---|
名称の意味 | 返される愛 報われる愛 両想い 相思相愛など | |
その他の呼称 | アンテロース | |
ラテン語名 (ローマ神話) | アンテロス(Anteros) | |
英語名 | アンテロス(Anteros) | |
神格 | 返愛の神 報われた愛の神 両想いの神 相思相愛の神 | |
性別 | 男性 | |
勢力 | ギリシャの神々 | |
アトリビュート (シンボル) | 金の棍棒 鉛の矢 羽飾り 蝶の羽など | |
同僚 | 愛の神エロス(Ἔρως) 欲望の神ヒメロス(Ἵμερος) 性欲の神ポトス(Πόθος) 両性具有の神ヘルマフロディトス(Ἑρμαφρόδιτος) 甘言とお世辞の神へディロゴス(Ἡδυλόγος) 結婚式の神ヒュメナイオス(Ὑμέναιος)など ※彼らをアフロディーテの単独の子とする場合も | 有翼の愛の神々エロテス(Ερωτες) |
主な拠点 | オリュンポス山 | |
親 | 父:戦いの神アレス(ΑΡΗΣ) 母:愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ) または、 父:海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ) 父:海神ネリテス(Νηρίτης) | |
兄弟姉妹 | 愛の神エロス(Ἔρως)とも 恐怖の神デイモス(Δειμος) 恐慌の神フォボス(Φοβος) 調和の女神ハルモニア(Ἁρμονία) ほか、異父兄弟姉妹が多数 | |
配偶者 | なし | |
子孫 | なし |
概要と出自
アンテロスはギリシャ神話に登場する返愛の神です。
「返愛」という言葉はあまり一般的ではないので、彼が司る役割がいまいちピンとこない方もいるかもしれません。
アンテロスの属性を説明した英語表記「requited love」には、「報われた愛」という意味があります。
つまり彼は、日本語で表現すると、「相思相愛の神」や「両想いの神」ということができるでしょう。


Canvaで作成



説明は回りくどいけど、なかなか縁起の良い神格だったね!
アンテロスが人々の感情にもたらした影響について、古代ギリシャの哲学者プラトンはその著書『パイドロス』の中で、以下のように記しました。
相手と一緒にいる時は、互いの心の痛みや苦しみは和らぐ。
しかし、ひとたび離れると、焦がれるような恋しさが生じ、その人の胸には愛のイメージ・アンテロス(愛に対する愛)が宿る。
本人はそれを「友情」だと思い込んでいるが、実のところそれは、恋人同士が抱く感情とほぼ同じもので、まだその勢いが弱いだけである。
つまりその人は、相手に会いたい、触れたい、口づけを交わしたい、抱きしめたいと願っているのだ。
そして、その人の願望は、おそらく程なくして叶えられる。
プラトン『パイドロス(Φαῖδρος)』よりちょびっとだけ意訳



筆者個人としては、恋愛初期の心の
機微を描いているようにも感じたわよ



元が英文なうえ「哲学」って難しいから、
間違ってたらゴメンね!!
報われる愛を象徴したアンテロスにはその一方で、「愛」に興味がない者や、他人の「愛」に応えない者を罰する「復讐者」としての一面があったとも言われています。



個々人の価値観は自由じゃろ、とも思うがのぅ
そんなアンテロスは、戦いの神アレス(ΑΡΗΣ)と愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)の息子として誕生。
兄弟姉妹には愛の神エロス(Ἔρως)のほか、恐慌の神フォボス(Φοβος)や恐怖の神デイモス(Δειμος)、調和の女神ハルモニア(Ἁρμονία)などが生まれています。
※異父兄弟姉妹を含めると他にも諸説あり
このほか、海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)と海神ネリテス(Νηρίτης)の「相互愛」の結果として、アンテロスが生じたとする説も唱えられました。


ImageFXで作成



さらに、アテナイの崖から身を投げた外国人の怨霊を
アンテロスとして崇拝した、なんていう逸話もあるそうだよ!
兄エロスの遊び相手でもあったアンテロスは、お互いに似たような描写がされることも多く、その特徴には「金の棍棒」や「鉛の矢」、「蝶の羽」などが挙げられます。
2人はそれぞれ、反対位置に相対するように描かれるケースが主だったようです。
自他共に認める仲良し兄弟のアンテロスとエロスは、母アフロディーテが率いる有翼の愛の神々「エロテス(Ερωτες)」の一員でもありました。
彼らはその名の通り、「愛」にまつわる様々な事柄を司った翼をもつ神々の集団で、アフロディーテとエロスがもたらす「愛欲」の影響力を倍増させたと伝えられています。
その数は著述家によっても様々で、主なメンバーには、以下の名称が挙げられました。
- 愛の神エロス(Ἔρως)
- 返愛の神アンテロス(Ἀντέρως)
- 欲望の神ヒメロス(Ἵμερος)
- 性欲の神ポトス(Πόθος)
- 両性具有の神ヘルマフロディトス(Ἑρμαφρόδιτος)
- 甘言とお世辞の神へディロゴス(Ἡδυλόγος)
- 結婚式の神ヒュメナイオス(Ὑμέναιος)
などなど。
※彼らをアフロディーテの単独の子とする場合も


『 Eros and Anteros with Psyche Looking at Them』1810年–1860年
出典:メトロポリタン美術館 PD






恋愛版『アベンジャーズ』みたいな御一行ですが、彼らは純粋に詩的な創作によって生み出された存在であり、独自の神話は特に存在しないとされています。



今回はこれで終了だよっ!



少なっ!



「独自の神話がない」というのが特徴の神さまもおるのじゃ
ギリシャ神話をモチーフにした作品



参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する返愛の神アンテロスについて解説しました。



役割が役割だけに、恋愛成就のお守り
とかには採用されなかったのかしら



愛の象徴としてモチーフにされているし、
なくもなさそうだけどね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…