
こんにちは!
今回は北欧神話より運命の女神ノルンを紹介するよ!



運命を司る存在は神話に必須よね
彼女はどんなキャラクターなの?



ノルンは人々の運命を定める女神たちの総称で、
「彼女」ではなく「彼女たち」なんだ!



ウルズ、ヴェルザンディ、スクルドの
3姉妹がもっとも有名じゃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「北欧神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
厳しい自然環境が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、黄金の糸やルーン文字が刻まれた木片を用いて人々の運命を定めた、様々な種族から構成される女神ノルンのうち、もっとも代表的な3姉妹であるウルズ・ヴェルザンディ・スクルドをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 北欧神話にちょっと興味がある人
- 北欧神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 北欧神話に登場する「運命の女神ノルン」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「北欧神話」って何?
「北欧神話」とは、北ヨーロッパのスカンジナヴィア半島を中心とした地域に居住した、北方ゲルマン人の間で語り継がれた物語です。
1年の半分が雪と氷に覆われる厳しい自然環境の中で生きた古代の人々は、誇り高く冷徹で、勇猛で死もいとわない荒々しい神々を数多く生み出しました。
彼らの死生観が反映された「北欧神話」の物語は、最終戦争・ラグナロクによって、神も人間もあらゆるものが滅亡してしまうという悲劇的なラストを迎えます。
現代の私たちが知る神話の内容は、2種類の『エッダ(Edda)』と複数の『サガ(Saga)』という文献が元になっています。
バッドエンドが確定している世界でなおも運命に抗い、欲しいものは暴力や策略を用いてでも手に入れる、人間臭くて欲望に忠実な神々が引き起こす様々な大事件が、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。


「北欧神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


運命の女神ノルンってどんな神さま?
運命の女神ノルンがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
総称 | ノルン Norn ※複数形は「ノルニル」(Nornir) | ||
---|---|---|---|
名称の意味 | より合わせる 秘密に伝えるなどとの関連も | ||
神格 | 運命を定める女神 | ||
構成 | アース神族や妖精族(アールヴ)、小人族(ドヴェルグ)など様々 | ||
性別 | 女性 | ||
正式名称 | ウルズ Urðr | ヴェルザンディ Verðandi | スクルド Skuld |
名称の意味 | 運命 | 現在 存在 | 未来 必然 |
その他の日本語表記 | ウルズル ウルド | ヴェルダンディ ヴェルサンディ | 特になし |
勢力 | おそらくアース神族? | ||
主な拠点 | 世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)の根元にあるウルズの泉(Urðarbrunnr) ※「ウルザルブルン」とも | ||
親 | 不明 | ||
配偶者 | 不明 | ||
子孫 | 不明 |
概要と出自
ノルンは北欧神話に登場する運命を定める女神たちです。
複数形でノルニル(nornir)と呼ばれる彼女たちは、『古エッダ』の「ファヴニールの言葉」によると、神々のみならず妖精族(アールヴ)や小人族(ドヴェルグ)など、さまざまな種族・社会階層の出身者から構成されていました。
その数は非常に多かったとも言われており、幸福や成功を約束する「善良なノルン」もいれば、貧困、病気、短命を定める「悪いノルン」もいたのだとか。
わたしたち人間族も、この世に生を受ける前には必ずノルンたちのもとに行き、「寿命」や「運命」を定められた上で生まれてきたとされています。


『ノルン』1901年 PD
爪にルーン文字を刻んだ彼女らが与える「定め」の拘束力は絶対で、その決定は神々ですらも覆すことが出来ませんでした。


-ユグドラシルの下にいるウルズ、ヴェルザンディ、スクルド
1882年 PD
そんなノルンたちのなかでも特に有名なのが、ウルズ(Urðr)、ヴェルザンディ(Verðandi)、スクルド(Skuld)の3姉妹でしょう。
長女であるウルズの名称には、もともと「編む者」や「織姫」といった意味がありましたが、それが転じて彼女は「運命」や「宿命」を司るようになりました。
ヴェルザンディは3姉妹の次女で、その名は「生成する者」や「現在」、あるいは「存在」といった意味をもっています。
末っ子のスクルドの名は「義務」や「未来」、「必然」を象徴し、彼女だけは最高神オーディン(Óðinn)に仕える戦乙女ヴァルキュリア(valkyrja)の一員にも数えられています。


木片にルーン文字を刻むことで人々の運命を定めた3姉妹の力は非常に強力でした。
そのため、『古エッダ』の「巫女の予言」に登場する「神々の黄金時代を終わらせた3人の巨人の娘」の正体は、実はこのウルズ、ヴェルザンディ、スクルドのことだったのではないかとも考えられています。



たしかギリシャ神話にもモイライ(Moirai)と呼ばれる
運命の女神がいたわよね



こちらも同じく、クロト(Clotho)、ラケシス(Lachesis)、アトロポス(Atropos)の3姉妹が有名じゃの



「運命の3女神」って世界共通の厨二設定なのかもね!
ノルン3姉妹が関わった主なストーリー



3姉妹の活躍をみてみよう!
3姉妹の基本業務:世界樹ユグドラシルの生命維持
人々の運命を定める役割をもつ、ウルズ、ヴェルザンディ、スクルドの3姉妹。
しかし彼女たちは、四六時中誰かの行く末を占っていたというわけではなく、普段は割と穏やかなルーティンワークをこなしていました。
ノルン3姉妹は、世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)の根が伸びる先にある、「ウルズの泉(Urðarbrunnr)*」のほとりに美しい館を建てて暮らしたと言われています。
※「ウルザルブルン」とも
その泉の水はとても神聖で、中に入った者は誰でも、卵の殻の中にある薄皮のように白くなるとされました。



さらに泉の水は、現世のあらゆる水の源でもあったそうよ


『ウルザブルンルの 3 人のノルン』1895 年 PD
北欧神話の世界そのものであり、すべての神々や人間、妖精や小人が暮らすこのユグドラシルですが、実は脅威となる存在によって、日々その樹体を痛めつけられていました。
ダーイン(Dáinn)、ドヴァリン(Dvalinn)、ドゥネイル(Dúneyrr)、ドゥラスロール(Duraþrór)と呼ばれる4頭の牡鹿はユグドラシルの枝をうろつきまわり、毎日その樹皮や若芽をむしって食べています。
世界樹の根の1本が伸びる先、霜と氷の国ニブルヘイムにあるフヴェルゲルミルの泉に棲む飛竜ニーズヘッグ(Níðhǫggr)は、ユグドラシルの根をこれまた毎日かじっていました。







そんなことしたら、自分たちが暮らす世界が
枯れてダメになっちゃうね
と思うところですが、ここで登場するのが今回の主人公・ノルンの3姉妹。
ウルズ、ヴェルザンディ、スクルドが「ウルズの泉」から汲んだ水を毎日ユグドラシルの根にかけてその成長を促すので、すべての生命が息づく世界樹が枯れてしまうことは永遠にないとされているのです。





割と身勝手な奴が多い北欧神話では、
こういう裏方の苦労人も現れるのね~
基本的には、これから生まれる人間に寿命と運命を定める役割を果たしたノルンですが、いわゆる「英雄」と呼ばれるような逸材が誕生した際には、彼女たち自らが本人を訪ねることもありました。
ヴォルスング一族のシグムンド(Sigmund)の息子で、英雄シグルズ(Sigurðr)の異母兄弟にあたるヘルギ(Helgi)が生まれた時のこと。
ノルン3姉妹は生まれたばかりの彼のもとに現れ、名だたる王となる運命を告げると、ヘルギのために黄金の「運命の糸」を撚りあげたと伝えられています。
このヘルギは成長して後、父シグムンドを討ったフンディング(Hundingr)を倒したことで一躍有名になりました。
このヘルギ、実は3度も転生して1人の女性を愛するという稀有な運命を辿っているのですが、それはまた別のお話。
別のお話はコチラ!




北欧神話をモチーフにした作品



参考までに、「北欧神話」と関連するエンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、北欧神話に登場する運命の女神ノルンについて解説しました。



「運命」を司る神さまにありがちがけど、
意外と活躍の場面は少ないのよね



世界観を説明するインフラ的な要素でもあるから、
名前だけは至るところで見られるんだけどね!
パパトトブログ-北欧神話篇-では、北の大地で生まれた魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「北欧神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 山室静 『北欧の神話』 ちくま学芸文庫 2017年
- P.コラム作 尾崎義訳 『北欧神話』 岩波少年文庫 1990年
- 杉原梨江子 『いちばんわかりやすい北欧神話』 じっぴコンパクト新書 2013年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかる北欧神話』 文庫ぎんが堂 2017年
- 松村一男他 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2012年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 中村圭志 『世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探求倶楽部編 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講』 新潮選書 2022年
- 池上良太 『図解 北欧神話』 新紀元社 2007年
- 日下晃編訳 『オーディンの箴言』 ヴァルハラ・パブリッシング 2023年
他…
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