
こんにちは!
今回は北欧神話より狡知の巨人ロキを紹介するよ!



神話のあらゆる場面に登場する名キャラクターね
彼はどんなキャラクターなの?



彼は霜の巨人の一族ながら最高神オーディンの義兄弟となった存在で、神々に様々な害悪と利益をもたらしたんだ!



「北欧神話のトリックスター」と呼ばれておるのじゃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「北欧神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
厳しい自然環境が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、霜の巨人の一族にしてアース神族の一員に迎えられた狡知の神で、破天荒な振る舞いで神々に大ピンチと莫大な利益をもたらし、最終戦争ラグナロクのきっかけをも作った北欧神話のトリックスター・ロキをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 北欧神話にちょっと興味がある人
- 北欧神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 北欧神話に登場する「狡知の巨人ロキ」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「北欧神話」って何?
「北欧神話」とは、北ヨーロッパのスカンジナヴィア半島を中心とした地域に居住した、北方ゲルマン人の間で語り継がれた物語です。
1年の半分が雪と氷に覆われる厳しい自然環境の中で生きた古代の人々は、誇り高く冷徹で、勇猛で死もいとわない荒々しい神々を数多く生み出しました。
彼らの死生観が反映された「北欧神話」の物語は、最終戦争・ラグナロクによって、神も人間もあらゆるものが滅亡してしまうという悲劇的なラストを迎えます。
現代の私たちが知る神話の内容は、2種類の『エッダ(Edda)』と複数の『サガ(Saga)』という文献が元になっています。
バッドエンドが確定している世界でなおも運命に抗い、欲しいものは暴力や策略を用いてでも手に入れる、人間臭くて欲望に忠実な神々が引き起こす様々な大事件が、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。


「北欧神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


狡知の巨人ロキってどんな神さま?
狡知の巨人ロキがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
正式名称 | ロキ Loki |
---|---|
名称の意味 | 閉じる者 終わらせる者 |
その他の日本語表記 | ローキ |
敬称や肩書・別名 | ロプト ロギ(Logi) ※もとは火の神とも トリックスター ずる賢いアース 神々の中傷者 神々の欺瞞者 神々の敵 狼の父ほか多数 |
神格 | 悪戯者の巨人 悪神 狡知の神 |
性別 | 両性具有(変幻自在) |
勢力 | 巨人族 ※立場はアース神族側 |
持ち物 | 空飛ぶ靴 魔剣レーヴァテイン(Lævateinn)を作ったとも |
親 | 父:霜の巨人ファールバウティ(Fárbauti) ※「危険な打者」の意 母:霜の巨人ラウフェイ(Laufey)またはナール(Nál) ※「葉のあるもの」の意 |
兄弟姉妹 | ビューレイスト(Býleistr) ヘルブリンディ(Helblindi) |
義兄弟 | 最高神オーディン(Óðinn) |
配偶者 | 魔獣たちの母アングルボザ(Angrboða) ロキの妻シギュン(Sigyn) |
子孫 | 巨狼フェンリル(Fenrir) 大蛇ヨルムンガンド(Jörmungandr) 冥界の女王ヘル(Hel) 8本脚の駿馬スレイプニル(Sleipnir) ※山の巨人の馬スヴァジルファリ(Svaðilfari)との間の子 ナリ(Nari)またはナルヴィ(Narvi) ヴァーリ(Váli) |
概要と出自
ロキは北欧神話に登場するトリックスターです。
彼は霜の巨人ファールバウティ(Fárbauti)とラウフェイ(Laufey)またはナール(Nál)の息子で、兄弟にはビューレイスト(Býleistr)とヘルブリンディ(Helblindi)が生まれています。
上記の出自からも分かる通り、ロキは純然たる霜の巨人の一族です。
しかし、彼ははるか昔、最高神オーディン(Óðinn)と血を交えて義兄弟の契りを結びました。
そのため、私たちが知る神話の物語では、ロキは基本的にアース神族の一員として描かれています。


-魚網を持つロキ PD


そんなロキについて、『スノリのエッダ』の『ギュルヴィたぶらかし』では、次のように説明されています。
彼はアース神族のうちに数えられているが、ある人々は言う―
彼はアース神族の中傷者、または神々と人間にとっての欺瞞と恥辱の張本人だ。
~中略~
ロキは外貌は美しく上品だが、気性は邪悪で、いたって気まぐれだ。
彼は術策に優れ、あらゆる場合に対して戦術をもつ。
彼はしばしば神々を非常な困難に陥れたが、しかしその狡知によっていつも彼らを救い出した。
~以下略~
山室静 『北欧の神話』 ちくま学芸文庫 2017年



詳しくはこれから紹介するけど、
完璧かつ端的にロキの性格がまとめられているね!
実際に、ロキは神話のなかで頻繁に予測不可能な行動をとり、その度にアース神族や自分自身を大ピンチに陥れたりもしています。
その一方、
- 自己保身
- 好奇心や悪戯心
- 純然たる悪意
から生じた彼のアクションは巡り巡って、アースガルズの神々に大槍グングニル(Gungnir)や大槌ミョルニル(Mjölnir)などの、代替性のない貴重な品物をもたらすこともありました。


しょっちゅうしょうもない事をしているけど、たまにとんでもない見返りを持って帰る。
だから普段の素行の悪さは大目に見てもらえる。
これこそが、ロキが『北欧神話のトリックスター』と呼ばれるゆえんなのです。



このキャラは本当に独自過ぎるわよね~
そんな独自過ぎるロキは巨人の国ヨトゥンヘイムに住んでいた時代、魔獣たちの母アングルボザ(Angrboða)を妻に迎え、彼女とのあいだに巨狼フェンリル(Fenrir)、大蛇ヨルムンガンド(Jörmungandr)、冥界の女王ヘル(Hel)の3兄妹をもうけました。
しかし、この家族は「ロキの子どもたちが神々に災いをもたらす」という予言を信じたオーディンによって引き裂かれ、それぞれが生き延び、最終戦争ラグナロクでの復讐の時を待ち続けることになります。
この子どもたちの出生については異説も存在し、『古エッダ』の「ヒュンドラの歌」では、菩提樹で焼いた女性(≒アングルボザ)の心臓を食べたロキが3体の怪物を生み出した、という設定になっています。


また、アースガルズに移った後のロキはシギュン(Sigyn)とも結婚しており、彼女との間には、ナリ(Nari)またはナルヴィ(Narvi)とヴァーリ(Váli)という2人の息子が生まれました。


さらに、優れた変身能力をもつロキは両性具有の存在でもあったようで、彼は紆余曲折あって、山の巨人の馬スヴァジルファリ(Svaðilfari)とのあいだに8本脚の駿馬スレイプニル(Sleipnir)を生んでいます。
彼は後に、最高神オーディンの愛馬として活躍しました。


『ロキとスヴァディルファリ』1909年 PD


そのほかにもロキは、神話の物語にたびたび登場する魔剣レーヴァテイン(Lævateinn)を自ら鍛えて造り上げた、とも言われています。


神話の中で、最も謎に満ちた、気心の知れない神とされるロキ。
オーディンや雷神トール(Þórr)にも決して劣らぬ活躍を見せ、何なら最多登場回数を記録しているかもしれない彼ですが、そんなロキが民間で崇拝された形跡はあまり見られないのだとか。
日本に北欧神話を広めた詩人・文芸評論家の山室静先生によれば、ロキのキャラクターは異教時代*の末期になって、おそらくキリスト教の「悪魔」の観念を取り入れながら形成されていったものと考えられるそうです。
※キリスト教が支配的になる前の時代のこと


-焼いた心臓を食べるロキ 1911年 PD
それゆえか、彼の性質は神話の終盤に向かうほど邪悪さを増し、ロキは最終戦争ラグナロクのきっかけとなる大事件を起こして、アースガルズの神々とも完全に敵対する運命を辿りました。



最後の方だけエラくガチめの敵意をもっているのは、
「悪魔」の設定があったからなんだね!



北欧神話は、地味にキリスト教の影響が色濃いのじゃ
ロキが関わった主なストーリー



ロキの活躍を見てみよう!
北欧神話のトリックスター・ロキ!
その破天荒な人生の軌跡とは!?
神話のあらゆる場面に登場し、予測不可能かつ無軌道な行動で場を翻弄した北欧神話のトリックスター・ロキ。
彼の破天荒な振る舞いは時に大ピンチを招きましたが、それと同時に、神々に貴重な「魔法の品物」の数々をもたらしました。
ここでは、そんなロキの滅茶苦茶な活躍の軌跡を、ざっくりとダイジェストでご紹介します。



ロキの登場場面は本当に多いので、
本記事では簡略化してお伝えするよ!



詳しい内容は個別の記事に書いてあるので、
良ければそちらも見てみてね
雷神の美しき妻の頭を丸刈りに!?
償いに奔走したロキは最強の魔法アイテムを持ち帰る
ある日、雷神トール(Þórr)の妻・美しきアース女神シヴ(Sif)の自慢の金髪を丸刈りにしてしまったロキ。
怒り狂うトールの許しを乞うために償いの品を必要とした彼は、イーヴァルディの息子たち(Ívaldasynir)から、
- 黄金のかつら
-
黄金の糸で作られた「かつら」で、頭に乗せると皮膚にぴったりと張り付いて本物の髪の毛のように美しく伸びる。
- 大槍グングニル(Gungnir)
-
投げれば必ず標的に命中し、いかなるものをも貫いてしまう文字通りの神アイテム。
柄の部分は聖なるトネリコの木である世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)から成り、穂先にはルーン文字が刻まれている。
- 魔法の帆船スキーズブラズニル(Skíðblaðnir)
-
どの方角に向けても常に追い風を受け、陸でも空でも自由に走ることが出来る不思議な船。
しかも、大勢の神々が一度に乗れるほどの大きさをもちながら、折りたたんでポケットに入るサイズにも出来る優れもの。
を譲り受ける。


加えて、この品々をネタに鍛冶の小人ブロック(Brokkr)とシンドリ(Sindri)のプライドを煽ったロキは、彼らからさらに、
- 黄金の猪グリンブリスティン(Gullinbursti)
-
黄金の猪で、その名は「恐るべき歯をもつ者」の意。
どんな馬よりも速く走り、空中や水中も自在に移動可能、その輝きのおかげで暗い闇夜でも道に迷うことはない。
- 黄金の腕輪ドラウプニル(Draupnir)
-
その名は「滴るもの」の意。
9夜ごとに同じ重さの腕輪を8つ生み出す黄金の腕輪。
- 大槌ミョルニル(Mjölnir)
-
「粉砕するもの」という意味の名をもつ、アース神族にとって最強の対巨人用決戦兵器。
投げれば百発百中の命中精度を誇り、ひとりでに所有者の手に戻ってくるうえ、決して壊れることなくコンパクトサイズに収縮も可能。
を詐取することに成功。
後の物語でもおおいに活躍する、伝説級の魔法アイテムがアースガルズの神々にもたらされた。


このエピソードの詳細はコチラ!




アース神族一丸となって詐欺計画を実行!
ロキの機転による妨害が功を奏し、神々は頑丈な城壁を手に入れる!
ある日、アース神族の世界アースガルズにふらりと現れた鍛冶屋が、神々の国を取り囲む頑丈な城壁を造ることを提案。
鍛冶屋はその見返りに、「太陽」と「月」、そして愛と美の女神フレイヤ(Freyja)を要求した。
アース神たちは一旦その条件を飲むが、竣工間近になると鍛冶屋の仕事を妨害し、契約無効に持ち込んで城壁だけを奪い取るという詐欺計画を実行。
ロキは牝馬の姿に変身して、鍛冶屋の仕事の要である馬のスヴァジルファリ(Svaðilfari)を誘惑する。
この妨害が功を奏して、神々は成果物である城壁だけを手にすることが出来た。
この逸話でロキは、8本脚の駿馬スレイプニル(Sleipnir)を生んでいる。





あんたら本当に騙し取ってばっかりじゃない



北欧神話の世界は厳しいんだぜ☆
このエピソードの詳細はコチラ!


よりにもよってアース神族から盗みを働いた巨人の王!
ロキのフォローによって成敗&奪還が成功する!
莫大な財産を所有しながらも、妻がいないことに不満を覚えた霜の巨人の王スリュム(Þrymr)は、トールから大槌ミョルニルを盗み出し、返却するための交換条件としてこれまたフレイヤとの結婚を要求。
当然ながらぶちギレのフレイヤに嫁入りを断られた神々は対応策を協議、光の神ヘイムダル(Heimdall)の提案により、花嫁衣裳を着せたトールをフレイヤとして送り込むことが決定する。
いざ当日、テンションMAXになったスリュムはご機嫌ながらも、明らかに不審なトールの行動を訝しむ。
侍女に変装したロキは、適宜フォローを入れて見事にピンチを回避。
巨人の王が2人の結婚を祝福するためにミョルニルを持ち出すと、トールは正体を現して得物を奪還する。
彼は、スリュムを含めたすべての巨人たちの頭を粉々に打ち砕き、めでたくミョルニルを取り戻した。


-スリュムを攻撃するトール 1906年 PD



結構気を遣う仕事もやってるんだね!



あのおっさん、すぐに今置かれている状況を忘れんだよな~
このエピソードの詳細はコチラ!


幻術に優れた巨人の王を訪ねた旅の一行!
さまざまな「力比べ」を挑まれるも、見事なまでに敗走する!
巨人の国ヨトゥンヘイムを旅するトールとロキの一行は、霜の巨人の王ウートガルザ・ロキ(Utgarða Loki)が治める都市ウートガルズ(Útgarðar)に辿り着く。
神々を出迎えた巨人の王は、「この城には優れた力をもつ者しか入れない」として、ロキたちに様々な力比べを提案。
トールとロキ、従者シャールヴィ(Þjálfi)はさまざまなミッションに挑戦するも、幻術を得意とするウートガルザ・ロキに翻弄されて手痛い敗北を喫した。
勝負の内容はコチラ
種目 | 競技者 | 結果 | ネタバレ |
---|---|---|---|
早食い競争 | ロキ V.S. ロギ(Logi) | ロギの勝利 | ロギの正体は、実は「野火」。 いくら早食いに自信があっても、野火が燃え広がる速さに勝てる者はいない。 ロギが骨や桶まで食べつくしたのは、彼が「火」だったから。 |
徒競走 | シャールヴィ V.S. フギ(Hugi) | フギの勝利 | フギの正体は、実は「思考」。 どれだけの駿足を誇ろうとも、思考が飛ぶ速さに勝てる者はいない。 |
飲み比べ対決 | トール V.S. 魔法の角杯 | トールの敗北 | 角杯の中身は、実は「海の水」。 海と直接つながった杯の中身が、どれだけ飲もうとも減るはずもなかった。 |
力比べ対決 | トール V.S. 灰色の猫 | トールの敗北 | 灰色の猫の正体は、実は大蛇ヨルムンガンド(Jörmungandr)。 人間の世界ミズガルズをぐるりと取り囲むほどの大きさを誇る彼を、持ち上げられないのは当然のこと。 |
レスリング対決 | トール V.S. エリ(Elli) | トールの敗北 | エリの正体は、実は「老い」。 どんなに勇猛な戦士でも、寄る年波に勝つことは出来ない。 |
最後に種明かしをされて頭にきたトールは、ウートガルザ・ロキをぶっ飛ばすためにミョルニルを振り上げるも、振り返った先には野原が一面に広がっているだけだった。





な~んかよく分かんねぇ勝負だったよなぁ



ちなみに、ロキとウートガルザ・ロキはまったくの別人よ
このエピソードの詳細はコチラ!


永遠の命を求めた裕福な巨人に捕まったロキ!
脅された彼はイズンを差し出し、アース神族を大ピンチに陥れる
永遠の若さの女神イズン(Iðunn)と、彼女が保管する黄金の林檎を狙った霜の巨人スィアチ(Þjazi)は、神々を挑発してロキを拘束。
身の安全を保障する代わりに、お目当ての女神を外の世界へと連れ出すよう脅迫した。
保身のためにイズンを差し出したロキは、急激に醜く老いはじめたアースガルズの神々に問い詰められて真相を告白。
「鷹の羽衣」を使って巨人の国ヨトゥンヘイムへと飛び立った彼は、主人が留守の間にイズンと林檎を奪還し、神々と共に追跡してきたスィアチを討伐する。
無事にピンチを脱した神々だったが、ロキはこの事件で、元恋人でありスィアチの娘でもある狩猟の巨人スカジ(Skaði)の恨みを買った。


『NKS 1867 4to』より
-スィアチにひっぱりあげられるロキ PD



これはまぁ、なんというか気の毒ではあるのぅ



保身とか一方的に言われても困るっつーの
このエピソードの詳細はコチラ!




またまた巨人に捕縛されるロキ!
トールを丸腰でおびき出す作戦に加担するも、大したトラブルにはならずに済む!
霜の巨人ゲイルロズ(Geirröd)に取っ捕まり、トールを丸腰で呼び出すよう脅迫されたロキ。
またも保身に走った彼は、いつもの口車で雷神の巨人族に対する敵愾心を煽り、どうにかトールを巨人の国ヨトゥンヘイムへと連れ出す。
結局、ゲイルロズと2人の娘の策略はトールの返り討ちによって失敗に終わり、話が大ごとになることはなかった。


『トールのゲイロズガルドへの旅』1906年 PD



これもさ~、仕方ねぇじゃん
どうせあのおっさんがやっちまうし大丈夫だろ!



まぁ、実際に大丈夫だったのよね
このエピソードの詳細はコチラ!


ささいな悪戯心が「不幸をもたらす呪いの指輪」を生み出した!?
人間界にまでとんでもない余波を広げるロキ!
しょうもない悪戯心でフレイズマル(Hreiðmarr)の息子オッタル(Ótr)を死なせてしまったロキは、オーディン、謎のアース神ヘーニル(Hœnir)と共に拘束される。
息子を失った父は賠償の品として莫大な黄金を要求、資金調達のためにロキだけが解放された。
黄金好きの小人アンドヴァリ(Andvari)から力づくで財宝を奪い取ったロキは、意気揚々とそれを持ち帰り、無事に賠償を終えてフレイズマルの宿を後にする。
しかしその黄金には、理不尽に富を奪われたアンドヴァリの呪いがかかっており、フレイズマルを始めとした数多くの人間族が悲惨な末路を辿ることになった。





きっかけがしょうもない割に、
広がった影響が極悪過ぎるのじゃ…



だって後のことは知らねぇもん
このエピソードの詳細はコチラ!






以上、破天荒なトリックスター・ロキの活躍のご紹介でした。
いよいよ「悪神」としての性質が顕在化!?
光の神バルドルの死が神々の世界に翳りをもたらす!
これまでの活躍からも分かる通り、ロキは北欧神話のトリックスターとも呼ばれる、何ともつかみどころのない存在です。
彼の悪戯はアース神たちの手を焼かせ、時には大ピンチにも陥れましたが、その逆に「アースガルズの城壁」や「大槍グングニル(Gungnir)」、「大槌ミョルニル(Mjölnir)」などの、かけがえのない宝物を神々にもたらすこともありました。


しかし、その唯一の弱点が「ヤドリギの若木」であることを聞きだしたロキが、



ヘイヘイヘイ
せっかくなら坊ちゃんも遊びに入りなよ



これ貸したげるし、投げる方向も教えるからさっ
と、バルドルの弟である盲目の神ホズ(Hǫðr)をそそのかし、兄に向ってミステルティン(Mistilteinn)とも呼ばれる「ヤドリギの矢」を投げつけさせたのです。
かくしてその矢は兄の身体を貫通、すべての神々に愛された光の貴公子バルドルは、死者の世界ニブルヘルへと堕ちてゆきました。




あのバルドルをやってしまうとは、いくらなんでも相手が悪い。
すべてのアース神族を、それどころか霜の巨人までも敵に回しかねない愚行です。
世界に光をもたらす平和の神バルドルは、誇張抜きで、それほどまでに大勢から愛された存在でした。
それでもまだ、ロキには罪を償うチャンスがありました。
勇気の神ヘルモーズ(Hermóðr)が単身ニブルヘルへと赴き、冥界の女王ヘル(Hel)と直接交渉。



すべての者が彼のために涙を流すなら、
魂を現世に返しちゃるよ
という、めちゃくちゃ融通の利く約束を取り付けたからです。


『ヘルの前のヘルモーズ』1909年 PD



生き返りさえすれば、まだリカバリーは出来そうよね




母フリッグは早速、世界中を渡り歩いて「バルドルのために泣いてくれ」と頼んで周り、すべての者がそれを承諾しました。
しかし、唯一、セック(Þökk)という名の魔女だけはこの申し出を拒否してしまいます。
これによってヘルが出した条件は達成不可能となり、バルドルの身柄は、引き続き冥界に拘留されることになりました。
実は、このセックという魔女の正体は、魔法で姿を変えたロキでした。
彼は、自分も助かる可能性がある唯一の道を、自らの意志で閉ざしてしまったのです。



まじで取り返しのつかない状況だね
アース神族との敵対が完全に確定!
ロキは身を隠すも、無事に取っ捕まって地獄の苦しみに苛まれる!
完全に一線を越えてしまったロキと、彼に対する敵意・憎悪を剥き出しにするアースガルズの神々。
この頃のロキはすでに、「神々の敵対者」あるいは「悪魔」的なキャラクターに振り切っていたのでしょうか。
彼は、海神エーギル(Ægir)の館で開催された酒宴に乗り込むと、参加した神々を1人1人丁寧かつ辛辣に詰り倒し、散々場を引っ掻き回して立ち去って行きました。



『古エッダ』の「ロキの口論」にて描かれる場面じゃな



この件は、別の記事で詳しく紹介したいと思うよ!
紹介したよ!


その後、さすがに身の危険を感じたロキは神々の世界を飛び出し、山奥深くに四方を見渡せる家を建てて、そこに隠れ住むことにします。


-ロキのヨトゥンヘイムへの逃避 1908年 PD
しかしそれは、完全な悪手でした。
神々の国アースガルズには「神聖な領域で血を流してはならない」という鉄の掟が存在し、そこにいればロキもひとまずは安全だったのですが、聖域の外となれば話は別だからです。
神々は、もはや悪神と化した狡知の巨人に報復を果たすため、一堂に会してその方法を協議しました。



もう詰みの予感がむんむんじゃのぅ
時を待たずして、あらゆる世界を見渡す玉座フリズスキャールヴ(Hliðskjálf)に座ったオーディンがロキの潜伏先を発見。
北欧神話最強とも謳われた雷神トール(Þórr)を先頭に、神々は悪神の捕縛に乗り出します。
その時、ロキは鮭の姿に変身して川の中に潜んでいました。
建物の中は当然もぬけの殻ですが、炉の側には、焼けて灰になった網が放置されています。



あ、そういうことね
何かにピンときた神々は、ロキが水中に隠れているものと推測、麻をより合わせて網を作り、それを近くの川に投げ入れました。
ロキも必死に抵抗しますが、所詮は多勢に無勢。
追い詰められた狡知の巨人は、トールの手によってついに拘束されてしまいます。



トールがガッチリ握ったから、
鮭のしっぽは今でも細いんだそうだよ!


怒りに燃える神々はロキを山奥の洞窟へと連行し、彼を平たい岩の上に寝かせます。
さらに、その息子であるヴァーリ(Váli)を魔法で狼に変身させ、もう1人の息子のナリ(Nari)またはナルヴィ(Narvi)を八つ裂きにするよう仕向けました。
アース神たちがナリの遺体から腸を引きずり出し、それを使ってロキを岩に縛り付けると、かつて「腸」だった物は強固な「鉄の鎖」へとその姿を変えます。
2人の息子がとんでもない目に遭わされ、その臓器で拘束される。
ロキの犯した罪が非常に重いとはいえ、すでにオーバーキルな気がしないでもない状況ですが、ここにダメ押しでやって来るのが狩猟の巨人スカジ(Skaði)です。
彼女にとってロキは、元恋人であり父の仇でもありました。
スカジは、一匹の毒蛇をロキの頭上に括り付けると、その毒液が彼の額に滴り落ちるように仕向けます。




『ロキとシギュン』1863年 PD
こうして、一通りの復讐を果たしたアースガルズの神々は、ロキをその場に放置したまま現場を後にしました。
唯一、ロキを哀れに思って洞窟に残ったのが、狡知の巨人の妻シギュン(Sigyn)です。
彼女は拘束された夫の側に立ち、滴り落ちる蛇の毒液を鉢を持って受けました。
しかし、その鉢もいずれは毒でいっぱいになってしまうので、シギュンはその都度、器の中身を捨てに行かなくてはなりません。
そうしている間にも毒液はロキの額に落ちますが、彼はその度に、大地も震えるほどの恐ろしい叫び声をあげて身をよじったと伝えられています。
ロキが暴れ狂って生じた振動を、人間族は「地震」と呼んだのだそうな。
こうして、好き勝手に振舞っては北欧神話の世界を引っ掻き回したトリックスターにも、ついに年貢の納め時がやって来ました。
最終戦争ラグナロクが到来するその日まで、ロキは山奥の洞窟に拘束されたまま、蛇の毒に苦しみ続けることになったのです。




『ロキの縛り』1908年 PD
ついに訪れる最終戦争ラグナロク!
枷から解き放たれたロキは、アースガルズの神々に復讐を果たす!
かつてはアース神族の仲間に迎えられ、トラブルは多いながらも、相互に良好な関係を築いていたロキ。
しかし、彼はバルドルの事件をきっかけに神々と完全に敵対し、ついに洞窟の奥に拘束されてしまいました。
そんな彼にもついに、「世界最期の日」にして「絶好の復讐の機会」が訪れます。
ロキの暗躍とバルドルの死によってアースガルズから光が失われると、一気に雲行きが怪しくなり、世界は坂道を転がる石のように破滅へと向かって突き進むのです。
終わりの始まりはちょっとした天候不良からやってきます。
太陽の光が輝きをひそめ、日差しが弱くなってきたかと思うと、今度は夏が来ず3年ものあいだ極寒のフィンブルの冬が続きました。


身を切るような風と冷たい霜はすべての者を苛立たせ、オーディンが散々引っ掻き回した人間の世界はすっかり荒廃してしまい、各地で戦乱が起こります。
やがて、2匹の狼スコル(Sköll)とハティ(Hati)が、普段追いかけまわしていた太陽の女神ソール(Sól)と月の神マーニ(Máni)をついに飲み込み、世界はいよいよ本格的な天変地異に見舞われました。


空からは光が消え星々は天から落ち、大地が揺れてすべての枷がちぎれ飛んだことで、捕えられていたロキたちもその呪縛を解かれます。
この期に乗じた霜の巨人と炎の巨人ムスッペル、ニヴルヘルの死者たちが連合軍を結成して神々の世界に侵攻。
その気運を早々に察した光の神ヘイムダル(Heimdall)が角笛ギャラルホルン(Gjallarhorn)を高らかに吹き鳴らすと、ついに最終戦争ラグナロクが開始されました。


神々と巨人たちは、最終決戦の地・ヴィーグリーズ(Vígríðr)の野で激突します。



ロキの戦いを見てみよう!
霜の巨人の一団を率いるロキは、炎の巨人スルト(Surtr)を筆頭としたムスッペル(Múspell)*の軍団と共に戦場を突き進みます。
※「審判の日」「世界の終末」の意


『滅びし神々の戦い』1882年 PD
彼の娘である冥界の女王ヘル(Hel)が造った巨大な船ナグルファル(Naglfar)には、死後の世界で燻っていた凶暴な死霊の軍団が満載されており、彼らもまた連合軍の戦列に加わりました。



この時に船の舵を取ったのは、ロキであるとも
霜の巨人フリュム(Hrymr)であるとも言われるぞぃ
「反アース神族連合」あるいは「アース神族被害者の会」の面々は破竹の勢いで進撃し、ついにアースガルズにかかる虹の橋ビフレスト(Bifröst)*を叩き壊します。
※「きらめく道」、「揺れる道」などの意
勢いに乗るロキの前に立ちはだかったのが、先ほどギャラルホルンを高らかに吹き鳴らした、神々の番人ヘイムダル。
両者の関係はもともと険悪だったわけでもなく、利害が一致すれば行動を共にすることもありました。
雷神トール(Þórr)の大槌ミョルニル(Mjölnir)が霜の巨人の王スリュム(Þrymr)に盗まれた際、ヘイムダルはロキに、



トールに女装させて潜り込ませれば良いんじゃね?
と、非常に効果的な助言を与えたりもしています。


その一方、ロキが愛と美の女神フレイヤ(Freyja)の首飾りブリーシンガメン(Brísingamen)を盗んだ際、ヘイムダルがその後を追って互いにアザラシの姿に化けて戦ったという伝承も残っています。


また、『古エッダ』の「ロキの口論」では、



いっつも背中を濡らし、
寝ることもなく神々の見張り番なんぞしよって



そんな苦労してまで連中の肩を持つメリットあるんけ?
と、ヘイムダルを揶揄しているとも心配しているともとれるロキの姿が描かれました。
いずれにしても一筋縄ではいかない、好悪入り混じる複雑な感情を互いに抱えた両者は死闘を繰り広げ、激しいぶつかり合いの末に、ついに相討ちとなって倒れます。


-火でアース進を脅かすロキ 1985年 PD



友であり敵であった2人が相討ち…
なかなか熱い展開ね
その他の神々も奮戦しますが、ほとんどすべてが巨人族と相討ちになり倒れてしまいました。
アース神族も巨人族もほぼ完全に滅んでしまったところで、最後まで立っていたのがムスペルヘイムの王スルトです。
彼が巨大な炎の剣をヴィーグリーズの野に放つと、全世界は火の海となって燃え上がり、世界樹ユグドラシル(Yggdrasill)もついに炎に包まれ、大地は海の底へと沈んでいきました。


こうしてついに、『巫女の予言』に歌われた通り、神々の世界は完全に滅び去ってしまったのです。


-スルトの炎に包まれた世界 1905年 PD



ほんとに跡形もなく滅んじゃうのが北欧神話なんだね!
北欧神話の物語はここで終了ではありません。
オーディンの息子である森の神ヴィーダル(Víðarr)と復讐の神ヴァーリ(Váli)、雷神トール(Þórr)の息子であるモージとマグニはこの戦いを生き延びました。
冥界からはバルドルと盲目の神ホズ(Hǫðr)も戻って来たようです。
彼らはアースガルズの跡地を眺めながらかつての時代を懐かしんだ後、黄金に輝くギムレーの館に住んだと言われています。
一方、人間にも1組の男女の生き残りがいました。
彼らはリーヴ(Líf、「生命」の意)とレイヴスラシル(Lífþrasir、「生命を継承する者」の意)と呼ばれ、ラグナロク後の世界に繫栄する次なる人類の祖となったのです。


-ラグナロク後の世界 1905年 PD



北欧神話の物語は、ここで完結するのじゃ



ロキは復讐を果たしたけど、
自身もこの戦いで命を落としたんだね!
北欧神話をモチーフにした作品



参考までに、「北欧神話」と関連するエンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、北欧神話に登場する狡知の巨人ロキについて解説しました。



とんでもないボリュームになったわね…
神話のほとんどの場面に登場していたんじゃないかしら



人々から信仰されたわけでもない
キャラクターが重要な役割を果たす
これも北欧神話の面白いところだよね!
パパトトブログ-北欧神話篇-では、北の大地で生まれた魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「北欧神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 山室静 『北欧の神話』 ちくま学芸文庫 2017年
- 谷口幸男訳『エッダ-古代北欧歌謡集』新潮社 1973年
- P.コラム作 尾崎義訳 『北欧神話』 岩波少年文庫 1990年
- 杉原梨江子 『いちばんわかりやすい北欧神話』 じっぴコンパクト新書 2013年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかる北欧神話』 文庫ぎんが堂 2017年
- 松村一男他 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2012年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 中村圭志 『世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探求倶楽部編 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講』 新潮選書 2022年
- 池上良太 『図解 北欧神話』 新紀元社 2007年
- 日下晃編訳 『オーディンの箴言』 ヴァルハラ・パブリッシング 2023年
他…
気軽にコメントしてね!