こんにちは!
今回はギリシャ神話より
半神の英雄アキレウスを紹介するよ!
ギリシャ神話でも特に有名な人物よね
彼はどんなキャラクターなの?
彼は人間の英雄ぺレウスと女神テティスの息子で、
「父を凌ぐ栄光を得る」という予言を受けて生まれたんだ!
伝説に名高い「トロイア戦争」で活躍し、
劇的な最期を迎えた英雄なのじゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、「父を凌駕する」という予言を受けて誕生した英雄ぺレウスと女神テティスの息子で、自らを待ち受ける「死」の運命を知りながら「トロイア戦争」に従軍し、華々しい功績を挙げるも、神託通り遠く離れた戦地で壮絶に散った最強の英雄アキレウスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「半神の英雄アキレウス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


半神の英雄アキレウスってどんな人物?
半神の英雄アキレウスがどんな人物なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | アキレウス Ἀχιλλεύς |
|---|---|
| 名称の意味 | 諸説あり ※口唇の一部を火傷したことに由来するとする説も |
| その他の呼称 | アキレース アキレス リギュローン(Λύγυρον) ※本名 ピュロス(Πύρρος) ※「火から救われた者」の意 ポダルケス(Ποντάρκες) ※「俊足の者」の意 ほか多数… |
| ラテン語名 (ローマ神話) | アキレウス(Achilles) |
| 英語名 | アキレウス(Achilles) |
| 神格 | 半神の英雄 トロイア戦争の英雄 |
| 性別 | 男性 |
| 勢力 | 人間族(半神) |
| 主な拠点 | プティア |
| 親 | 父:プティアの王ぺレウス(Πηλεύς) 母:海の女神テティス(Θετις) |
| 兄弟姉妹 | なし ※6人または7人の兄たちがいたとも |
| 配偶者 | スキュロス島の王女デイダメイア(Δηϊδάμεια) リュルネッソスの王妃ブリセイス(Βρισηΐς) |
| 子孫 | デイダメイアとの間に、 スキュロス島の王子ネオプトレモス(Νεοπτόλεμος) |
| 由来する言葉 | 「アキレス腱(Achilles’ tendon)」 :足にある脹脛の腓腹筋・ヒラメ筋を踵の骨にある踵骨隆起に付着させる腱。「致命的な弱点」の意。アキレウスの名称とその逸話から。 |
英雄の出自
アキレウスは、ギリシャ神話に登場する半神半人の青年で、最も有名な英雄の一人です。


『アキレスの怒り』
1847年 PD
彼の母となる海の女神テティス(Θετις)は、主神ゼウス(ΖΕΥΣ)や海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)からも求愛されるほどの美貌を誇る、非常に魅力的な女性でした。
しかし、
テティスが産む息子は、父を凌ぐ栄光を得るんやで
という神託が下されたことから、権力に固執する不死の神々は、美しいテティスとの結婚を断念。
彼女は、最高神の一方的な意向により、テッサリア地方のプティアを治める人間族の王ぺレウス(Πηλεύς)のもとに嫁がされることとなりました。
“予言の子”が不死の神だとあとあと都合が悪くなるから、生まれるにしても半神くらいにしとこう、っていう作戦だね!
ほんまに、自分勝手なおっさんどもやで


『ペレウスとテティスの結婚式 』
1636年 PD
その後、様々な紆余曲折を経て結婚したぺレウスとテティスのあいだには、一人の珠のような男の子が誕生します。
後にアキレウスの名で知られることになる彼は、当初、リギュローン(Λύγυρον)と名付けられました。
曾祖父に主神ゼウス、祖父に冥府の審判アイアコス(Αἰακός)をもつ彼は、「海」「天界」「冥界」の三界に血縁をもつ存在とされたそうじゃ
誕生祝いに伝令の女神アルケー(ἀρχή)の「翼」が贈られたことから、彼はポダルケス(Ποντάρκες)*の名でも呼ばれたわよ
※「俊足の者」の意
両親の“紆余曲折”の代表例がコチラ!




生まれる前から厄介な託宣を受けていたこの男児は、生後、さらに面倒な運命を背負わされることになります。
それが、
あーこの子の人生はね、「短命だけど不滅の栄光」
もしくは「長命だけど無名」のどっちかやね
ワークライフバランスとか、
そういうのとは無縁の童じゃ
というもの。




『運命の三女神』
19世紀 PD
ただでさえ、息子は定命の半神なのに、奮闘すればするほど短命に終わる可能性が高まる――。
それに、男として生まれた以上、きっとこの子は栄光を求めるに違いない――。
そう考えた母テティスは、意を決して、「息子・不死身化計画」を実行することにしました。
ちょっとしたことで死ぬような息子、
不安過ぎてやってられませんですわ
具体的な方法を、以下に紹介するよ!
| 不死化の方法 | 実施の結果 |
|---|---|
| 赤ん坊を冥界へと連れて行き、その身体をステュクス川(Στυξ)の水に浸す。 ※ステュクス川の水に触れると、不死性が得られるという前提があった。 | 概ね成功したが、テティスが掴んでいた足首から踵にかけての部分だけは水に触れなかったため、そこが唯一、「不死」の力が及ばない弱点となった。 ※後に「アキレス腱(Achilles’ tendon)」の語源となる |
| 夜になると赤ん坊の身体を「火」で焼き、昼にはその跡に神食アムブロシア(ἀμβροσία)を塗りたくる。 ※父より受け継いだ「死すべき要素」を完全に排除する効果が期待されたらしい。 | その様子を偶然目撃した夫ぺレウスが絶叫、これを侮辱と受け取ったテティスが機嫌を損ねてしまい、儀式は中途半端に終わる。 ※この逸話が由来となって、彼は「火から救われた者」を意味するピュロス(Πύρρος)の名でも呼ばれた。 |


『テティスがアキレスをステュクス川に浸す』
1630年-1635年 PD
我が子が炎のなかで苦しんでたら、
そら発狂しますわね普通
一説によると、リギュローン(アキレウス)の前にも6~7人の子どもが生まれていたんだけど、その子たちは全員、火の試練で死亡したともいわれているよ!
息子を不死化する方法には「スパルタ水責め方式」と「スパルタ火責め方式」の2つがあったが、実際には、これらは連続的に行われたのではなく、文献によってどちらかの方法が採用されたのじゃ
いずれにしても、半端に終わっているところが
ミソなんだぜ、誇れる話じゃないけどな




「テティスはアキレスの死すべき性質を焼き払おうとする」
17-18世紀 PD
こうした出来事の後、テティスとぺレウスは教育方針の違いや価値観のズレから別居生活を送るようになり、宙ぶらりんにされた息子は、ケンタウロス(Κένταυρος)*の賢者ケイロン(Χείρων)のもとで養育されることになります。
※ギリシャ神話に登場する半人半馬の種族で、複数形はケンタウロイ(Κενταυροι)
彼は、この時に初めて、ケイロンより「アキレウス(Ἀχιλλεύς)」という名を授けられました。
その命名の理由については、彼の口唇に火傷の痕があったためとも、母親の乳房に唇をつけたことが一度もなかったためとも伝えられています。
また、アキレウスは火から救出された際に足を負傷しており、養父ケイロンによって、巨人ダミュソス(Δάμυσος)の距骨を移植されました。
この骨は“俊足”の象徴ではありましたが、後にアキレウス自身を大ピンチへと追いやる、決定的かつ致命的な要素にもなっています。
設定に諸説ありすぎて、我ながら大変なんだぜ


『アキレスの教育』
1862年頃 PD
さて、賢者ケイロンの弟子として新生活を始めたアキレウスは、ぺリオン山(Πήλιον)のニンフ(Νύμφη)*たちの助けを得て、獅子や猪、熊などの内臓を食べてすくすくと成長しました。
※自然界の精霊みたいなもん
彼は師から「武芸」や「狩猟」、「音楽(竪琴の演奏)」、そして「正義」と「英雄の倫理」を学び、幼くして獣を打ち倒すほどの並外れた力を示したと伝えられています。
あの子は数々の弟子のなかでも特別な存在じゃった…
我らケンタウロス族を恐れさせる
ほどの力をもっておったのじゃ…
また、アキレウスはこの頃から、生涯の親友となるオプスの戦士パトロクロス(Πάτροκλος)と行動を共にするようになります。
二人は互いに切磋琢磨しながら、やがて訪れる「運命の時」に向けて、戦士としての腕を鍛え続ける日々を送りました。


『ケンタウロス・カイロンによるアキレウスの教育』
1782年 PD
アキレウスが関わった主なストーリー
アキレウスの活躍を見てみよう!
弱冠9歳のアキレウス少年、
さっそくドラフト候補に1位指名される!
アキレウスが9歳になった頃、ギリシャでは、遠く離れた城塞都市トロイアとの戦争の気運が高まりつつありました。
というのも、「世界一の美女」と称されたスパルタの王妃ヘレネ(Ἑλένη)が、かの国の王子パリス(Πάρις)と駆け落ちをかまし、メネラオス王(Μενέλαος)を捨てて国外へと逃亡――。
妻に逃げられた夫の兄・ミュケナイの王アガメムノン(Ἀγαμέμνων)が、ギリシャ全土に向けて戦力の招集を呼びかけ、大規模な遠征軍を編成しているという噂が、まことしやかに囁かれていたからです。


『ヘレネとパリスの恋』
1788年 PD
そんな折、賢者ケイロンのもとで修業を続けていたアキレウスに、またしても厄介な神託が下りました。
アガメムノンに従う予言者カルカス(Κάλχας)が、
アキレウスなくして
トロイアの陥落は成し得ないでしょう
と言い出したのです。
それだけならまだしも、カルカスは続けて
アキレウスがトロイア遠征に参加すれば、
彼は間違いなくそこで死ぬでしょう
という神意を告げたのだから、さぁ大変――。
一度は育児放棄をしたとはいえ、息子を溺愛してやまない過保護系ママの女神テティスは、ケイロンのもとからアキレウスを強引に連れ去り、女装させたうえで、スキュロス島の王リュコメデス(Λυκομήδης)にその身柄を預けました。
彼の数多くの娘たちのなかに、乙女に扮した息子を紛れ込ませ、うまいこと兵役逃れをかましてやろうという作戦です。


『リュコメーデスの宮廷のアキレス』
1745年 PD
死ぬと分かっている戦争に、
息子を送り出す母がおるかいな!
しかし、そんな巧妙な計略は、智将として名高いイタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)によって、いとも簡単に見抜かれてしまいました。
どこから噂を聞きつけたのか、商人に変装してスキュロス島に潜入したオデュッセウスが、数々の煌びやかな衣装・宝飾品を大々的に販売――。
王女たちが目をキラキラさせてはしゃぐなか、思わず見事な意匠の刀剣類に興味を示したアキレウス(女装)に、狡猾なる軍師が
お嬢さんだけは、目の付け所が違いますねぇ…?
さすがは、戦士アキレウス君、といったところかな…?
と、声をかけたのです。
※偽の襲撃を報せるラッパの音で見破ったとも




「女性に変装したアキレスとオデュッセウス」
出典:Dosseman CC BY-SA 4.0
ぐぬぬ…
バレちまったんならしょうがねぇ…
こうして居所を突き止められたアキレウスは、運命を受け入れてトロイア遠征への参加を決意し、母テティスに別れを告げました。
彼は出征に際し、海神ポセイドンと母テティス、そして祖父にあたる海の老人ネレウス(Νηρευς)に犠牲を捧げたといわれています。
母よ、あなたの命に従ってきた
だが今、私はトロイアへ行く(キリッ
ちなみに、アキレウスはこの時期、リュコメデス王の娘の一人であるデイダメイア(Δηϊδάμεια)と関係をもち、彼女とのあいだには、ネオプトレモス(Νεοπτόλεμος)という名の息子も誕生しています。
※本名はピュロス(Πύρρος)
母親が必死な時に、
本人はやることやってるのね
だって、暇だとやることが限られてくるんだもん


「オデュッセウスが女装して王女たちの間に隠れているアキレスを発見する」
西暦4-5世紀 PD
ついに「トロイア戦争」勃発!
英雄アキレウスの武功の数々をご紹介!
トロイアの王子パリス(Πάρις)による、スパルタの王妃ヘレネ(Ἑλένη)の誘拐事件――。
※あるいは駆け落ち


『ヘレネの略奪』
1578年-1579年 PD
この事実を知り、怒髪天を衝く勢いで激怒したスパルタ王メネラオス(Μενέλαος)は、かつて結ばれた「テュンダレオスの誓約*」を発動し、ギリシャ各地から屈強な戦士たちを招集しました。
※イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)の発案で、ヘレネが誰を夫に選ぼうとも、選ばれなかった者たちは必ずその夫婦を助けると誓っていた
かくして、ギリシャ諸国の強大な連合軍が結成され、彼らによるトロイア遠征が決定します。
大軍勢を率いる総大将は、メネラオスの兄でもあるミュケナイの王アガメムノン(Ἀγαμέμνων)。
その指揮下には、
- 英雄アキレウス(Ἀχιλλεύς)
- イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)
- サラミス島の王子大アイアス(Αἴας)
- ティリンスの領主ディオメデス(Διομήδης)
- クレタ島の王イドメネウス(Ἰδομενεύς)
といった、そうそうたる顔ぶれが揃いました。


出典:ニューヨーク公共図書館 PD
こうして、王子パリスの軽挙妄動に端を発した軋轢は、取り返しのつかない事態を招き、ついに伝説に語られる「トロイア戦争」の火蓋が切られたのです。
この戦いは人間のみならず、オリュンポスの神々をも二分する神話上最大クラスの大騒動となりました。




ちなみに、神々は以下のような感じで各陣営についたよ!
この戦争は、ゼウスの人口抑制政策の一環として
“意図的に”引き起こされたともいわれるぞぃ
| ギリシャ陣営側 | トロイア陣営側 |
|---|---|
| 雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ) 両軍に加担。中立といえば中立。 | |
| 戦いの女神アテナ(Ἀθηνᾶ) | 狩猟の女神アルテミス(ΑΡΤΕΜΙΣ) |
| 結婚の女神ヘラ(Ἥρα) | 光明の神アポロン(ΑΠΟΛΛΩΝ) |
| 海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ) | 戦いの神アレス(ΑΡΗΣ) |
| 鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος) | 愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ) |
| 伝令の神ヘルメス(Ἑρμης) | 母性の女神レト(Λητώ) |
| 海の女神テティス(Θετις) | – |


出典:Livius.org CC0 1.0
軍師オデュッセウスの策略にはめられ、故郷から遠く離れたトロイアへの出征が決まった、今回の主人公アキレウス。
彼のもとには、別ルートで従軍が決定していた親友のパトロクロスと、ドロプス人の王ポイニクス(Φοῖνιξ)*が参じました。
※アキレウスの父ぺレウスに助けられた恩がある、英雄の教育者的な人物
アキレウスは、両親が結婚する際に神々から贈られた、
| 品物 | 概要 |
|---|---|
| トネリコの槍 | 養父ケイロンと戦いの女神アテナ(Αθηνη)、鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος)の合作で鍛造された逸品 |
| 不死の名馬クサントス(Ξανθος)とバリオス(Βαλιος) | 海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)からの贈り物 |
| 翼 | 主神ゼウス(ΖΕΥΣ)からの贈り物で、足首に装着するタイプ |
を母テティスより授かり、万全の準備を整えて出撃の日を待ちます。
この時点で弱冠15歳の少年であったアキレウスは、各船に50名の兵を満載した、ミュルミドン人の軍艦50隻を率いることになりました。
中学生くらいの男の子が、
2,500人もの戦士たちを従えたのじゃ
神の血を引く英雄ってのは、スケールが違うんだねぇ~


出典:Максим Улитин CC BY 3.0
この項では、「トロイア戦争」の初期における若きアキレウスの活躍を、ざっくりダイジェストにてご紹介します。
- 連合艦隊が無風状態で立往生した際、総大将アガメムノンが、実の娘イピゲネイア(Ἰφιγένεια)を人身御供にして神の怒りを鎮めようとする。
アキレウスは彼女を助けようと試みたが、失敗に終わった。 - テネドス島に寄港した際、母テティスが制止したにも関わらず現地の王テネス(Τέννης)の命を奪う。
この行為が光明の神アポロンの怒りを買い、彼の死の遠因となった。
※テネスをやればアポロンにやられる、という神託があった - トロイア到着時、母テティスが「最初に上陸する者が最初に死ぬで」と警告。
アキレウスの代わりにプロテシラオス(Πρωτεσίλαος)という兵士が犠牲となった。 - ミュルミドン人を率いてトロイアに上陸。
コロナイの王キュクノス(Κύκνος)の討伐にビビった敵が城壁内に逃げ込んだので、以後10年続く「包囲戦」の形ができあがる。 - トロイロス(Τρωΐλος)や王子リュカオン(Λυκάων)、王子メストル(Μήστωρ)といった人物たちを討伐または捕縛し、トロイア王プリアモス(Πρίαμος)とアイネイアス(Αἰνείας)が所有する牛の群れを略奪する。
- レスボス・フォカイア・コロポン・スミュルナ・キュメ・アイギアロス・テノス・アドラミュティオン・シデ・エンディオン・リナイオン・コロネ・テーバイ・ヒュポプラキアイ・リュルネッソス・アンタンドロスなど、100を超える町を攻略し、その途中でリュルネッソスの王妃ブリセイス(Βρισηΐς)を自身の捕虜とする(現地妻的なニュアンス)。


『アキレスとアガメムノン』
1801年 PD
アキレウスが出征した「トロイア戦争」について、ここでひとつ、意外と知られていない“とあるエピソード”を補足しておきます。
本格的な戦いが始まるより以前のお話よ
以下に時系列でまとめるよ!
- ギリシャ軍総大将アガメムノン、トロイアへの航路を知らないまま大艦隊を出撃させてミュシアの地*へと到着。
ここをトロイアと勘違いして、一方的に略奪を働きまくる。
※現在のトルコ、アナトリア半島の北西部 - 半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)の息子であるミュシアの王テレポス(Τήλεφος)が応戦するも、アキレウスの槍により腿を負傷。
略奪を終えたギリシャ軍が海に出ると大嵐が発生し、互いにちりぢりとなって自国に帰還する。 - それから8年後、ギリシャ連合軍はようやく再集結を果たすも、肝心のトロイアへの航路が分からない。
- 神託を受けたミュシア王テレポスが現れ、「アキレウスが、かつて自分に負わせた傷を治すならば、トロイアへの道を教える。」と交渉した。
※「この傷は、それを与えた本人にしか癒せない」という神託だった - 取引成立。
アキレウスは槍の錆を拭い取ることでテレポスを癒し、ギリシャ連合軍は正確な航行ルートを知ることができた。 - 本編のトロイア上陸に続く――。


実は、パリスとヘレネの駆け落ちから遠征軍の編成に至るまでにも、実に2年の歳月を要しておるのじゃ
つまり、一般に知られる本格的な開戦の前に、
約10年もの期間があったことになるのよ
目的地を知らんまま全軍出撃なんて、
あのおっさんバッカじゃねぇの?
税金の無駄遣いにも程があるだろ
まったく進展がなかった「トロイア戦争」、
10年目でいきなり派手に動き出す!
ミュケナイ王アガメムノン率いるギリシャ連合軍がトロイアに上陸して、9年もの月日が経った頃――。
両軍は一進一退の攻防を続けていましたが、双方とも決め手を欠いたため、戦況は膠着状態のまま、どちらにも傾かない小競り合いの日々が繰り返されました。


そんなある日、総大将アガメムノンが、アキレウスの捕虜であるリュルネッソスの王妃ブリセイスを、権力にものを言わせて奪い取るというハラスメント案件が発生します。
なんでも、これまで自身が囲っていたクリュセイス(Χρυσηΐς)という女性がアポロン神官の娘であったため、神の怒りを回避するために、やむなくその身柄を解放――。
すっかり手持ち無沙汰になった迷惑系絶倫爺ぃが、よりにもよって、主力級の部下から女性を強奪してしまったようです。




『アキレスの怒り』
1819年 PD
一軍のトップによる、パワハラというレベルを超えた超絶理不尽な要求――。
英雄アキレウスは、
あんなゴミカス上司の下で戦うなんてやってられるか!
ストライキじゃ、ストライキ!
と言って、トロイア軍との戦いを一切放棄し、一人陣所の奥に引きこもってしまいました。
当然ながら、主力を欠いたギリシャ軍は次第に劣勢となり、王子ヘクトール(Ἕκτωρ)率いるトロイア軍が日に日にその勢いを増していきます。


『アキレスの怒り』
1757年 PD
この時期、オデュッセウスやディオメデスといった数多くの英雄たち、さらには総大将アガメムノンまでもが負傷する事態となりました。
実は、アキレウスは母テティスを通じて、主神ゼウスに「一時的にトロイア側を優勢にする」よう泣いて頼んでいたんだよ!
味方が散々苦戦すれば、アキレウスの存在の“ありがたみ”
をより強く分からせることができる、というわけじゃな
意外と、寂しがり屋の構ってちゃんボーイだったのね…
やかましい!
裏腹な“戦士心”を侮るでないわっ!


『神々の父ゼウスとテティス』
1811年 PD
敗戦の色を濃くする同盟軍の状況に、密かに心を痛めていたのが、アキレウスの無二の親友でもある戦士パトロクロス(Πάτροκλος)です。
彼は、軍師オデュッセウスの依頼により、アキレウスの鎧一式を身につけてアキレウスとして戦場を駆け抜け、ギリシャ軍の士気を高揚させるという作戦を実行することにしました。
一連の話を承諾したアキレウスは、
えぇかぁ、兄弟
敵が退いたら見逃せ、殲滅が目的やない
間違っても、深追いだけはするんやないでぇ
と厳しく忠告したうえで、成果を挙げんと息巻く親友の背中を見送ります。
しかし、その数日後、アキレウスは自らの分身にも等しいパトロクロスの訃報を聞かされることになりました。


「アキレスがパトロクロスの腕に包帯を巻いている様子」
紀元前500年頃 PD
当初は首尾よく敵将を討ち取った彼でしたが、戦線深くに食い込み過ぎた際に、運悪くトロイアの総司令官ヘクトールと遭遇――。
一騎打ちを要求されて断るわけにもいかず、勇敢に戦ってその命を落としたのです。


報せを聞いたアキレウスは慟哭し、アガメムノンとの軋轢も忘れて戦線復帰を決意。
パトロクロスの仇を討たんと、仁王のごとき修羅と化し、再び槍をその手に取りました。
一方、その様子を見ていた母テティスは、焦った様子で息子を諫めにかかります。
なぜなら、アキレウスの死は、ヘクトール討伐の直後に訪れるという強い予感が働いていたからです。


『テティスとゼウス』
1750年 PD
彼女は、
ちょ、ちょい待っとれ
ちょっくら上(オリュンポス)に行って、
新しい武具をもらってくるけぇのぅ
と言うと、鍛冶の神ヘパイストス(Ἥφαιστος)が鍛えた最新の「盾」・「兜」・「脛当て」・「胸当て」を持ち帰り、これらを半ば強引にアキレウスに装備させました。
※ヘパイストスは赤ん坊の頃に母ヘラに棄てられ、テティスら海の女神に養育されたという恩があった。


『アキレウスに武具を与えるテティス』
1804年 PD
特に、この時もたらされた盾は、表面に海や陸、星辰や星の精霊プレイアデス(Πλειάδες)、雨の精霊ヒュアデス(Ὑαδες)や巨人の狩人オリオン(Ὠρῑ́ων)などの姿が刻まれた、見事な意匠の逸品であったようです。




-アキレスの盾のデザインの解釈
1820年頃 PD
こうして、母テティスの影響力でもって手に入れた、神造の武具一式に身を包んだ“重課金戦士”アキレウスは、燃え盛る怒りの炎とともに、再び戦場へと復帰します。
簡単に言うと、お母さんが
買ってきてくれた勝負服ってことよね
おい!やめとけぇ!
今日の俺は怒らせない方がいい……
最愛の親友を失った彼が狙うのは、その下手人であるトロイアの王子ヘクトールの“首”のみ――。
バーサーカーと化したアキレウスは、不死の名馬バリオスとクサントスを駆って戦場を走り抜け、スカマンドロス川で多数のトロイア兵を葬りつつ、敵陣の中枢へと突っ込んでいきました。
この時、河神スカマンドロス(Σκάμανδρος)の加護を得た戦士アステロパイオス(Ἀστεροπαῖος)がアキレウスの前に立ちはだかりましたが、彼の方には鍛冶神ヘパイストスが味方に付き、大いなる炎で河を干上がらせることで見事に勝利を掴んでいます。


『水、あるいはアキレスとスカマンドロスおよびシモエイスの戦い』
1819年 PD
その後、どうにか目的地へと辿り着いたアキレウスは、トロイアの城門前でヘクトールの名を叫び、正々堂々、一対一の決闘を要求しました。
…………
…………
彼らの戦いは無言のうちに始まり、ただひたすらに、槍と盾とがぶつかり合う激しい金属音が、砂煙のなかに響き渡ります。
多くの兵たちが固唾を呑んで状況を見守るなか、両雄の一進一退の攻防は果てしなく続き、やがて、アキレウスの槍がヘクトールの首を貫きました。
勝敗は決しましたが、パトロクロスを失ったアキレウスの怒りは収まらず、彼はヘクトールの亡骸を戦車に括り付け、12日間にもわたってトロイアの城門の外を走り回り、見せしめとして市中引き回しを敢行します。


「勝利したアキレウスがヘクトールの遺体をトロイの周りで引きずっている様子」
1892年 PD
いささかやり過ぎな感は否めませんが、アキレウスの悲嘆は、それほどまでに想像を絶するものだったのでしょう。
ところが、パトロクロスを追悼する葬送競技会が開催された直後、トロイア王子の父親である老王プリアモスが単身でギリシャ軍の陣所を訪れ、愛する息子ヘクトールの遺体を返還するようアキレウスに懇願――。
王自ら敵陣のど真ん中へ……
グスッ…あんたぁ、男やでぇ……
その覚悟に感銘を受けた英雄は、老いた父に、亡き息子を返すことに同意しました。
※主神ゼウス→虹の女神イーリス(Ἶρις)→母テティス経由で、身代金を受け取るよう命じられたとも




『アキレスにヘクトールの遺体を求めるプリアモス』
1876年 PD
ついに訪れる“予言の時”!
英雄アキレウス、トロイアの地に散る!
有能な将軍ヘクトールを失ったトロイアの勢いは次第に衰えを見せ、徐々にギリシャ連合軍が優勢となっていきます。
プリアモス王のもとには、アマゾンの女王ペンテシレイア(Πενθεσιλεια)や、エチオピアの王メムノン(Μέμνων)が援軍として駆けつけましたが、いずれも最強の戦士アキレウスによって早期の段階で滅ぼされました。
ペンテシレイアたそ…
めっちゃ可愛かったのにもったいない……
アキレウスは、彼女の亡骸を侮辱した下士官テルシテス(Θερσίτης)を、容赦なく処刑したりもしたんだよ!




紀元前520年頃 PD
その後も、多数のトロイア側同盟軍と交戦したアキレウス率いるミュルミドン人部隊は、敗走する敵兵を追跡してスカイアイ門の付近へと到達します。
そこには、すでに10年目を迎えた「トロイア戦争」勃発の元凶である、王子パリス(Πάρις)が潜んでいました。
ぐぬぬ…大事な兄であるヘクトールを
あんな風に扱いやがってぇ~…
ヘイ、君ならやれるよ☆
YOU、やっちゃいなよ☆
光明神アポロンの助力を得たパリスは、唯一まともに扱うことができた弓を力いっぱいに引き絞り、敵将アキレウスに向けて渾身の一矢を放ちます。


出典:Dr.K. CC BY-SA 3.0
それは、不死化の儀式を受けた半神の英雄に残された、唯一“定命の人間”のままであった「踵」の部分へと、吸い込まれるように突き刺さりました。
※ケイロンに移植された距骨が外れて大きな隙を晒したとも
アバーーーーーーーーーーーッ‼‼
こうして、数々の敵を当然のごとく屠ってきた神に選ばれし英雄も、来るべき時が来れば、薄情なまでにあっけなくその命を落とします。
ここで、致命的な弱点を指す
「アキレス腱(Achilles’ tendon)」という言葉ができたのじゃな
アキレウスの母テティスは、名指しで光明神アポロンを非難し、海の精霊ネレイデス(Νηρειδες)や芸術の女神ムーサイ(Μοῦσαι)といった神々が、彼の死を17日17夜にわたり哀悼しました。


『アポロンとテティス』
1701年 PD


その亡骸をめぐって激しい戦闘が行われた後、アキレウスはギリシャの英雄たちによって荼毘に付され、遺灰はヘパイストス製の黄金の壺に納められたといわれています。
また、彼の骨は親友パトロクロスのそれと混ぜ合わされ、「白い島(White Isle)」と呼ばれる地に埋葬されました。
一説によるとアキレウスは、死後の楽園エリュシオン(Ἠλύσιον)に住み、―なぜか―コルキスの王女メディア(Μήδεια)と同棲したとも伝えられています。
さて、偉大なる英雄を失った現世では、引き続きトロイアとギリシャ連合軍の戦争が行われ、女神テティスは息子を追悼する葬礼競技祭を催しました。
その後も、アキレウスの遺品をめぐってオデュッセウスと大アイアスが大喧嘩をしたり、伝説に名高い「トロイの木馬」作戦が、笑えるくらい見事に上手くいったりなど、様々な紆余曲折を経て事態は変遷――。


『トロイアの木馬の行進』
1760年 PD
数々の英雄たちの運命を翻弄した「トロイア戦争」は、10年にも及ぶ長期の包囲戦の末に、トロイアの滅亡とギリシャ側の勝利をもって終結しました。
さらに10年後、冥界でオデュッセウスと
再会したりもしてるんだけどね!
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する半神の英雄アキレウスについて解説しました。
めちゃくちゃ強い奴があっけなく死ぬのって、
運命の残酷さを感じて怖くもあり好きでもあるわ
最強の英雄なのに、戦局に決定的な影響を与えた
わけでもないっていうのが、またなんとも渋いよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










