
こんにちは!
今回は北欧神話よりアース神族を紹介するよ!



今回は種族単位での紹介なのね
彼らはどんな神々なの?



アース神族はアースガルズに住んだ神々で、
祭祀から戦争まで、あらゆる事柄を司ったんだ!



要するに、北欧神話の主人公たちじゃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「北欧神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
厳しい自然環境が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、北欧神話における二大神族のひとつで、欲望のおもむくまま好き勝手に振舞い、しまいには最終戦争ラグナロクによる世界滅亡を招いてしまう破天荒な主人公グループ、「アース神族」をご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 北欧神話にちょっと興味がある人
- 北欧神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 北欧神話に登場する「アース神族」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「北欧神話」って何?
「北欧神話」とは、北ヨーロッパのスカンジナヴィア半島を中心とした地域に居住した、北方ゲルマン人の間で語り継がれた物語です。
1年の半分が雪と氷に覆われる厳しい自然環境の中で生きた古代の人々は、誇り高く冷徹で、勇猛で死もいとわない荒々しい神々を数多く生み出しました。
彼らの死生観が反映された「北欧神話」の物語は、最終戦争・ラグナロクによって、神も人間もあらゆるものが滅亡してしまうという悲劇的なラストを迎えます。
現代の私たちが知る神話の内容は、2種類の『エッダ(Edda)』と複数の『サガ(Saga)』という文献が元になっています。
バッドエンドが確定している世界でなおも運命に抗い、欲しいものは暴力や策略を用いてでも手に入れる、人間臭くて欲望に忠実な神々が引き起こす様々な大事件が、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。


「北欧神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


アース神族ってどんな神々?
アース神族がどんな神々なのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
正式名称 | アース Áss |
---|---|
名称の意味 | 不明 ※諸説あり |
複数形 | エーシル Æsir |
その他の日本語表記 | アサなど |
基本的な神格 | 主権の神 祭祀の神 魔術の神 法律の神 知識の神 暴力の神 戦闘の神 など、多岐にわたる |
主な拠点 | アース神族の世界アースガルズ(Ásgarðr) |
所属する神々 | 最高神オーディン(Óðinn) 愛と豊穣の女神フリッグ(Frigg) 光の神バルドル(Baldr) 調停の神フォルセティ(Forseti) 盲目の神ホズ(Hǫðr) 詩の神ブラギ(Bragi) 永遠の若さの女神イズン(Iðunn) 勇気の神ヘルモーズ(Hermóðr) 森の神ヴィーダル(Víðarr) 復讐の神ヴァーリ(Váli) 光の神ヘイムダル(Heimdall) 軍神テュール(Týr) 雷神トール(Þórr) 美しきアース女神シヴ(Sif) 雷神の息子モージ(Móði) 雷神の娘スルーズ(Þrúðr) 雷神の息子マグニ(Magni) 狩猟の神ウル(Ullr) デンマークの守護神ゲフィオン(Gefion) 謎のアース神ヘーニル(Hœnir) 運命の女神ノルン(Norn) |
概要
アース神族は北欧神話に登場する神々の一族で、ヴァン神族と並ぶ二大神族のひとつです。
「アース(Áss)」という名称の意味ははっきりしておらず、今日においても様々な議論がなされています。
※複数形では「エーシル(Æsir)」
アース神族は9つの世界の中心に位置する神々の国アースガルズ(Ásgarðr)に住み、主に
- 主権
- 祭祀
- 魔術
- 法律
- 知識
- 暴力
- 戦闘
といった要素を司りました。
「豊穣」や「富と通商」、「愛欲と美」を象徴したヴァン神族とは、かなり毛色の異なる一族であることが分かります。



個々のアース神たちは、さらに多岐にわたる事柄を司ったぞぃ




-バルドルの遺体の周りに集まったアース神族 1817年 PD
『スノリのエッダ』には、アース神として最高神オーディン(Óðinn)を始めとした男女それぞれ12~14柱の神々の名が挙げられていますが、その中にはヴァン神族の富と豊穣の神ニョルズ(Njǫrðr)や、巨人族の狡知の巨人ロキ(Loki)も含まれています。
そのため、「アース」の名称は特定の一種族を指すというよりも、大雑把に神々全般を指すものと認識した方が正確かもしれません。
また、主なアース神族の神々は、基本的には人間とそう変わらない姿かたちをしていました。
神といえど不滅の存在というわけでもなく、戦いで怪我をすることもあれば、命を落とすこともあったとされています。
しかし、彼らと他種族の違いは、永遠の若さの女神イズン(Iðunn)が保管する「黄金の林檎」にありました。
アース神たちは若さと活力をもたらすその果実を定期的に口にすることで、決して老いることも醜くなることもなかったのです。


悠久の時を生きた彼らは「ウルズの泉」のほとりにある集会所に集まって、日々、さまざまな事柄について裁きを下し、北欧の世界と人間たちを統べました。
そんなアース神族は神話の初期において、一時ヴァン神族と敵対関係にありました。
『ヘイムスクリングラ』の序章「ユングリング家のサガ」では、この対立の原因はオーディンの領土拡大の野望にあるとされていますが、その一方、ヴァン神族の1人である黄金の女神グルヴェイグ(Gullveig)の処遇をめぐって軋轢が生じたとも言われています。
いずれにせよ、両神族の関係はついに武力衝突へと発展し、世界で初めての戦争は後に「ヴァン戦争」と呼ばれるようになりました。


『アース神族とヴァン神族の戦い』1882年 PD
『古エッダ』の「巫女の予言」によると、この戦いはヴァン神族がやや優勢の状態で進み、アース神族の世界アースガルズの城壁は破壊され、その領土はたびたび蹂躙されたと伝えられています。



アース神族が最強ってわけでもなかったんだね!
しかし、戦いは長きに渡り一向に決着がつく様子もなかったことから、両陣営の神々はいつしか、この不毛な争いに嫌気が差してしまいました。
そこで、双方が互いに人質を出して交換することで、この件を手打ちにするという話が成立します。
アース神族からは知恵の巨人ミーミル(Mímir)と謎のアース神ヘーニル(Hœnir)が、ヴァン神族からは富と豊穣の神ニョルズ(Njǫrðr)とその息子の豊穣の神フレイ(Frey)、愛と美の女神フレイヤ(Freyja)が人質として送られました。
こうしてヴァン神族とアース神族の和解が成立し、人質として送り出されたヴァン神たちは以後、基本的にはアース神の一員として活躍することになります。


ここからの神々は、基本的にはやりたい放題。
勇敢な戦士の魂を手に入れるために、人間の世界に争いと不和の種を蒔き散らす神もいれば、宝飾品欲しさに他種族に身体を許す女神も現れます。
巨人族や小人族(ドヴェルグ)から力づくで財産を奪った神のせいで、数多くの人間を不幸に陥れる呪いのアイテムが生まれることもありました。
こうしたアース神族の破天荒かつ身勝手かつ理不尽な行動は、やがて積もり積もって強固な「世界滅亡フラグ」を立てることとなり、ついには最終戦争ラグナロクの到来へと繋がるのです。
巨人族と真正面から戦ったアース神たちは、そのほとんどが敵と相討ちになって命を落とすことになりました。


-ラグナロクの戦いの様子 PD



アース神族ほど、「自業自得」という
言葉が似合う連中はいないわよ
北欧神話のメインを張るアース神族ですが、一部の文献では神ではなく、魔術に優れた人間の一族として扱われています。
『ヘイムスクリングラ』におけるアース神族は、もともと小アジアのトロイアの王族です。
その長であるオーディンが「北欧にこそ自分たちの未来がある」と考えたことから、一族総出で現地に侵攻を開始したのだとか。
また、『デンマーク人の事績』におけるアース神族は、ビザンチウムに拠点を構える東方の部族として描かれました。
彼らは自らの意思でウプサラを訪れ、神として人々のあいだに君臨したとされています。



彼らの性格を考えると、古代北欧に
実在した侵略者という説は説得力を感じるのぅ
アース神族とヴァン神族の違い
北欧神話の物語で活躍する「アース神族」と「ヴァン神族」。
それぞれ異なる特色をもつ個性的なグループですが、より分かりやすくイメージしてもらうために、ここでは彼らを「学校のクラスにいるグループ」に例えてみたいと思います。



以下のようなイメージじゃの
※筆者の悪意に満ちています
アース神族
- 体育会系で武闘派、あるいはリア充かつヤンキー気質のグループ
- クラスの中心にいるのは自分たちだと、ナチュラルに思い込んでいる
- 自分たちのために周りが配慮してくれると、ナチュラルに思い込んでいる
- 目立つうえに騒がしく、本能で生きている奴が多いのでしょうもない喧嘩も多い
- 体育祭の時期だけ真面目ぶって、応援団長とかに立候補しがち
- 「友達がやられて黙ってられるか」理論で、個人間のトラブルでも数で囲みにいく
- 派手な振る舞いが一見魅力的だが、根本的に育ちが悪いので、関わると悲惨な末路を辿ることになる
- 要するに「輩」、筆者が一番嫌いな人種(愛を込めて)


-戦いの始まりに槍を投げるオーディン 1895年 PD
ヴァン神族
- リア充グループに属しない、どちらかといえばインテリかつ文化部系のグループ
- 「君子危うきに近寄らず」で、アース神族とは出来る限り関わらない
- 比較的裕福な家庭の子が多く、各種リテラシーも高め
- 基本的には穏やかで理知的な一方、とんでもなく尖った性癖を隠している奴もいる
- 普段抑圧されているのか世間知らずなのか、時折アース神族すらドン引きさせるぶっ飛んだ逸材を輩出
- 一見大人しそうに見えて、狭いサークル内でドロドロの恋愛模様を繰り広げがち
- たまーに公序良俗に反するいかがわしいバイトとかしがち
- ちなみに筆者は、ずっと机に突っ伏して寝たふりしているタイプ





【注】筆者の超個人的な感想です
怒らないでね☆
代表的なアース神族の面々
ここでは、神話の物語で活躍する代表的なアース神族の神々を、ざっくりダイジェストでご紹介しています。



それぞれの活躍の詳細は、個別記事でも解説しているわよ
最高神オーディン


『オーディン』PD
オーディン(Óðinn)は北欧神話における主神・最高神で、知識や詩、戦いや魔術のほか死をも司る神さまとして知られています。
彼は弟であるヴィリ(Vili)、ヴェー(Vé)と共に天地創造を行ったことから、「万物の父」とも呼ばれました。
オーディンは貪欲なまでに知識と知恵を追い求め、目的達成のためなら最高神自ら身体を張ることもいとわない、珍しいタイプのトップです。
彼の主なモチベーションは「最終戦争ラグナロクの到来を阻止すること」にありましたが、その行動がかえって混乱と不和を招き、結果として世界滅亡をより確実なものとしてしまいました。


愛と豊穣の女神フリッグ
フリッグ(Frigg)は北欧神話に登場する愛と豊穣の女神です。
その名前は「恋人」や「伴侶」、「愛される者」を意味し、「神々の母」とも呼ばれる彼女は主神オーディンの正妻として、アースガルズの女神のトップに君臨しました。
フリッグは「結婚」と「出産」の守護神であり、人々に対して親切な女神であるほか、予言の力をもち、すべての人間たちの運命を知る存在でもあります。
また、彼女は最高神の正妻ではありますが、必ずしも忠実で献身的な妻ではなかったようで、オーディンとの間にはたびたび対立が生じています。




-フェンサリルに集うフリッグと侍女たち 1882年 PD
光の神バルドル
バルドル(Baldr)は北欧神話に登場する光の神で、オーディンとフリッグの息子です。
『スノリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」によると、彼は「美しのバルドル」とも称されたほどの眉目秀麗な貴公子でした。
「神々の中で最も優れた者」とも呼ばれた、弱点らしい弱点が見当たらないバルドルは、アースガルズの神々のみならず敵対しているはずの巨人族からも愛されたと言われています。
しかし、その美しさと人気は、悪戯好きの巨人ロキ(Loki)の妬みを招き、バルドルは理不尽にもその命を奪われてしまいます。
この事件は、神々の世界の崩壊をもたらす最終戦争ラグナロク勃発の契機となりました。


-無敵になったバルドル 1902年 PD


調停の神フォルセティ
フォルセティ(Forseti)は北欧神話に登場する調停の神で、バルドルとアース女神ナンナ(Nanna)の息子です。
『古エッダ』の「グリームニルの言葉」によると、フォルセティは金銀に輝く館グリトニル(Glitnir)に住み、神々や人々の間に起こる争いの仲裁を行ったとされています。
彼が調停役に立てばあらゆる諍いは鎮まり、すべての者が満足して和解したのだそうな。
そんなフォルセティは、南ノルウェーでは民会*に関わる神としても信仰されました。
※民会:武装した自由民の男性で構成される集会で、北欧における重要な社会行政システム


『裁きの座に座るフォルセティ』1881年 PD
盲目の神ホズ
ホズ(Hǫðr)は北欧神話に登場する盲目の神で、オーディンとフリッグの息子です。


-ロキにそそのかされるホズ 1901年 PD
主神夫婦のあいだに誕生したホズは非常に高貴な身の上ではありますが、生まれつき目が見えなかった彼は神々の輪から外れていることが多く、その活躍が描かれたエピソードはほとんど残っていません。
しかし『スノリのエッダ』では、ホズはロキに騙されて兄バルドルを死なせてしまったうえ、『古エッダ』の「バルドルの夢」では異母兄弟である司法の神ヴァーリ(Váli)に討ち取られてしまうという、あまりにも散々な役回りをさせられました。
また、彼が人間の英雄として活躍する別バージョンの物語も存在します。


詩の神ブラギ
ブラギ(Bragi)は北欧神話に登場する詩の神で、オーディンの息子です。
長い髭を生やしているのが特徴の彼は、詩人の中で最も優れた存在とされ、非常に頭が良い神としても知られていました。
ブラギの舌にはルーン文字が刻まれており、その口から発せられる言葉は雄弁で流れるように紡がれ、聞く者の心をつかむ魔術的な力が込められていたと言われています。
基本的に戦争を好まない平和な性格をしていた彼は、オーディンの一側面が独立して神格化した存在であるとも考えられました。


ブラギ PD


永遠の若さの女神イズン
イズン(Iðunn)は北欧神話に登場するアース神族の女神で、その名前は「再生」や「若返り」を意味します。
彼女は、アースガルズの神々に永遠の若さをもたらす「黄金の林檎」を管理する役割をもっていました。
最高神オーディンをはじめとした強大な神々も決して不老不死などではなく、きちんと対策を打っておかなければ、いずれ人間たちと同じように老い衰えて死んでしまいます。
そこで神々は、イズンが管理するこの黄金の林檎をときどき食べることで不老の力を得て、安心して悠久の時を自由気ままに過ごしたのです。




-リンゴを持つイズンと夫ブラギ 1846年 PD
勇気の神ヘルモーズ


『ヘルの前のヘルモーズ』1909年 PD
ヘルモーズ(Hermóðr)は北欧神話に登場する勇気の神で、オーディンの息子です。
その名称は「勇気」や「戦い」を意味し、彼自身も、その名に違わぬ剛勇として知られました。
また、ヘルモーズは素早い身のこなしに定評のある神でもあり、「俊敏のヘルモーズ」という通り名で呼ばれることもあったようです。
神話の物語では、そんな彼の勇敢さとフットワークの軽さが窺える、伝令の神とも取れるような活躍が描かれています。


森の神ヴィーダル
ヴィーダル(Víðarr)は北欧神話に登場する森の神で、オーディンと霜の巨人グリーズ(Gríðr)の息子です。
ヴィーディという森に1人で住んだ彼は、極端に無口であったことから沈黙の神とも呼ばれています。
一見すると寡黙で大人しい、一風変わった性格をもつ青年に思えるヴィーダルですが、実は彼、あの雷神トール(Þórr)に次ぐ実力者とも目されました。
『古エッダ』の「ヴァフスルーズニルの言葉」では、最終戦争ラグナロクにおいて巨狼フェンリル(Fenrir)に飲み込まれる父オーディンの仇を討つのが、他でもないヴィーダルであると予言されています。




-ヴィーダルとフェンリル 1908年 PD
復讐の神ヴァーリ
ヴァーリ(Váli)は北欧神話に登場する復讐の神で、オーディンとアース女神リンド(Rindr)の息子です。
なんとも物騒な神格をもつ彼は、本当に「復讐」を果たすためだけに生まれました。
オーディンが最も愛した息子バルドルが、同じく息子の一人であるホズによって命を奪われるという予言を受けた最高神が、急遽リンドに目を付けて、その報復を実行する役としてヴァーリを生ませたのです。
※タイミング的には事件発生後に生ませたと思われる
彼は無事にその役目を果たし、異母兄弟を討ち取ることになりました。




-ヴァーリ 1882年 PD
光の神ヘイムダル
ヘイムダル(Heimdall)は北欧神話に登場する光の神で、オーディンと9人の波の乙女の息子です。
彼は、アース神族の世界アースガルズと人間の世界ミズガルズを結ぶ虹の橋ビフレスト(Bifröst)*1を守る神々の番人で、その袂にあるヒミンビョルグ(Himinbjörg)*2という館に住んでいました。
※1「きらめく道」、「揺れる道」などの意 ※2「天国の城」、「天国の山」などの意
昼夜を問わず100マイル(約161km)先まで見通す視力と、地面の草や羊の毛が伸びる音までも聞き分ける聴力をもつヘイムダルは、巨人族が神々の国に侵入しないようほぼ24時間体制でビフレストの向こうを見張り、その睡眠時間は鳥よりも短かったとされています。
また、神々の世界が滅亡する最終戦争ラグナロク到来の際には、ヘイムダルが角笛ギャラルホルン(Gjallarhorn)*を高らかに吹き鳴らすことで、アース神族と巨人族の最終決戦が始まると定められています。
※「鳴り響く」などの意


-角笛ギャラルホルンを吹くヘイムダル PD


軍神テュール
テュール(Týr)は北欧神話に登場する軍神、勝利の神で、一説にはオーディンの息子とも言われます。
彼は大胆不敵にして勇猛果敢な戦士で、戦いにおける勝敗を決する役割をもったことから、北方のヴァイキングたちに篤く崇拝されていました。


テュール PD
さらにテュールは冷静沈着で知的な一面をもち、民会や法廷を守護する神としても信仰されたと言われています。
古代北欧の人々は、何者も恐れずに戦う者を「テュールのように強い」と称え、聡明で優れた人間のことを「テュールのように賢い」と表現したそうです。
そんな彼は、太古のゲルマン民族にとっての天空神として、もともとは最高位に君臨したと考えられています。
時代の変遷によって、次第にオーディンにその地位を奪われてしまったのでしょう。


雷神トール
トール(Þórr)は北欧神話に登場する雷神で、オーディンと大地の女神ヨルズ(Jörð)の息子です。
山のように大きな体とずば抜けて強い力をもった彼はアース神族、ひいては北欧神話で最強の存在とも謳われました。
トールは神話の物語において、大槌ミョルニル(Mjölnir)を手にあまたの霜の巨人たちを葬ります。
その一方、天候を操る力をもった彼は農耕の神としても崇拝されたほか、「単純で怒りっぽいけど根は親切なおっちゃん」キャラで、人間族の守護神としても愛されました。




『トールと巨人の戦い』1872年 PD
美しきアース女神シヴ
シヴ(Sif)北欧神話に登場する美しいアース神族の女神で、トールの妻です。
実は、彼女に関する古い記録はあまり残っておらず、シヴが何を司る神さまだったのかは、はっきりと分かっていません。
そんな彼女の代名詞とも言えるのが、太陽の光を浴びると黄金のようにきらきら輝く、ふさふさとした長い金髪です。
シヴの美しい髪は豊かに実った小麦畑を連想させることから、彼女は「豊穣」や「家族」、「結婚」と関連のある神格ではないかとも考えられました。
ロキの悪戯によって彼女の頭が丸刈りにされた逸話では、結果的に数々の魔法の品物がアース神族にもたらされています。


『シヴ』1909年 PD


雷神の子、モージとマグニ、スルーズ
モージ(Móði)とマグニ(Magni)、スルーズ(Þrúðr)は北欧神話に登場する雷神トールの子どもたちです。
モージとスルーズはトールとシヴとのあいだに、マグニはトールと霜の巨人ヤールンサクサ(Járnsaxa)とのあいだに生まれました。
この3兄妹の名称にはそれぞれ意味があり、モージは「怒り」を、マグニは「力強い」を、スルーズは「強さ」を表すとされています。
これらの要素は、北欧神話における最強の存在とも謳われた、父トールの特徴を体現したものと考える学者もいるようです。


もちろん、子どもたちの名は父を称えるのみならず、彼ら自身のポテンシャルの高さをも示しました。
モージとマグニは最終戦争ラグナロクの戦いを生き延び、父の大槌ミョルニル(Mjölnir)を受け継いで、崩壊後の新世界を見守る神となっています。
父トールの豪胆さと母シヴの美貌を受け継いだスルーズも、戦死者の館ヴァルハラ(Walhalla)でオーディンに仕える、戦乙女ヴァルキュリア(valkyrja)の一柱にその名を連ねました。
※同一人物ではない可能性もある


『ワルキューレたち』1905年 PD


狩猟の神ウル
ウル(Ullr)は北欧神話に登場する狩猟の神で、シヴと名称不明の霜の巨人の息子です。
「イチイの谷」を意味するユーダリル(Ýdalir)と呼ばれる地域に住んだ彼は、弓術の神やスキーの神、楯の神としても知られ、また決闘の神として、一騎打ちの前に勝利を祈願されることもありました。
母親譲りの美しい容貌を誇り、勇敢な戦士としても優れ、得意のスキーでは誰よりも速く走り、弓矢を巧みに操って狩りを楽しんだ多芸多才なウル。


-ウル PD
そんな彼ですが、実は北欧神話におけるウルの扱いはそれほど大きいものではなく、その活躍が描かれた逸話も、特にこれといって残されていません。
とはいえ、ノルウェーやスウェーデンを中心とした地域には「ウルの神殿」や「ウルの林」など、彼の名に由来する地名が数多く残されており、ウルが非常に古く、かつては大きな力をもった神であったことも分かっています。


デンマークの守護神ゲフィオン
ゲフィオン(Gefion)は北欧神話に登場するアース女神の1人です。
『スノリのエッダ』の「ギュルヴィたぶらかし」によると、彼女は処女神であり、命を落とした生娘たちの魂は死後、ゲフィオンの元に導かれその側に仕えるとされました。
また、彼女は策略に優れた女神でもあったようで、神話の物語におけるゲフィオンは、スウェーデンのギュルヴィ王(Gylfi)からとんでもなく広大な土地を騙し取ったりもしています。
その功績もあってか、彼女はオーディンの息子の1人であるスキョルド(Skjöldr)と結婚してデンマークに移り住み、現地の王族であるスキョルディング家の祖となりました。




-牛と共に土を耕すゲフィオン 1882年 PD
謎のアース神ヘーニル
ヘーニル(Hœnir)は北欧神話に登場する謎多きアース神です。
彼の名は「番人」や「射手」を意味するとも言われますが、実際にヘーニルが何を司る神格なのかはよく分かっていません。
彼が目立った活躍を果たす物語も特に残されていませんが、その一方でヘーニルは、主に最高神オーディンの旅に同行する脇役として、神話のいくつかの場面にその姿を見せています。
このことから彼は「オーディンの道連れ」といったケニング*で呼ばれることもありますが、各地に出没する「ヘーニル」が本当に同一人物なのかは、はっきりとは分かっていないのだそうです。
※北欧のスカルド詩で用いられたおしゃれ言い換え表現
また、『古エッダ』の「巫女の予言」では、最終戦争ラグナロクを生き延びる数少ない神々の1人に、ヘーニルの名が挙げられています。


-ヘーニル PD


運命の女神ノルン
ノルン(Norn)は北欧神話に登場する運命を定める女神たちです。
複数形でノルニル(nornir)と呼ばれる彼女たちは、『古エッダ』の「ファブニールの言葉」によると、神々のみならず妖精族(アールヴ)や小人族(ドヴェルグ)など、さまざまな種族・社会階層の出身者から構成されていました。
そんなノルンたちのなかでも特に有名なのが、ウルズ(Urðr)、ヴェルザンディ(Verðandi)、スクルド(Skuld)の3姉妹で、彼女らはおそらくアース神族ではないかと考えられています。
ウルズの名称は「運命」を、ヴェルザンディの名称は「現在」や「存在」を、スクルドの名称は「未来」や「必然」をそれぞれ意味するとされました。




-ユグドラシルの下にいるウルズ、ヴェルザンディ、スクルド 1882年 PD
その他の女神
破天荒でやりたい放題な問題児ばかりが目立つ北欧神話の世界にあって、人々の生活に寄り添い堅実な役割を果たした、目立たないけど割とちゃんとしている女神たちも存在します。


北欧神話をモチーフにした作品



参考までに、「北欧神話」と関連するエンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、北欧神話に登場するアース神族について解説しました。



予想通り、胃もたれするほど濃い面々になったわね



良くも悪くも、彼らこそが北欧神話の主役だからね!
パパトトブログ-北欧神話篇-では、北の大地で生まれた魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「北欧神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 山室静 『北欧の神話』 ちくま学芸文庫 2017年
- 谷口幸男訳『エッダ-古代北欧歌謡集』新潮社 1973年
- P.コラム作 尾崎義訳 『北欧神話』 岩波少年文庫 1990年
- 杉原梨江子 『いちばんわかりやすい北欧神話』 じっぴコンパクト新書 2013年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかる北欧神話』 文庫ぎんが堂 2017年
- 松村一男他 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2012年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 中村圭志 『世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探求倶楽部編 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講』 新潮選書 2022年
- 池上良太 『図解 北欧神話』 新紀元社 2007年
- 日下晃編訳 『オーディンの箴言』 ヴァルハラ・パブリッシング 2023年
他…
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