【古代エジプト人は猫愛MAX】猫の女神バステト-Bastet-【エジプト神話】

2024年6月2日2024年12月18日

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古代エジプトで愛された優しき慈母神、ネコの神バステト — 一部素材出典 CC BY-SA 3.0

とと(父)

こんにちわ！今回はエジプト神話より
猫の女神バステトを紹介するよ！

ことと

猫の女神さまなんて可愛い雰囲気すごいわね

とと(父)

古代エジプト人からもとても愛された女神さまで、
あらゆる物事を司っているよ

とと(父)

ではさっそくいってみよう！

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

エジプト神話にちょっと興味がある人
エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人

この記事を読むあなたのメリット

エジプト神話に登場する「猫の女神バステト」について少し詳しくなります。
あなたのエセ教養人レベルが1アップします。

そもそも「エジプト神話」って何？

「猫の女神バステト」はエジプト神話に登場する神さまです。

エジプト神話とは、ナイル川流域で栄えた古代エジプト文明の人々に信仰された神さま達の物語。鳥やカエルなど、動物をモチーフにしたユニークな神さまも数多く登場する多神教の世界です。

大きく分けて4つの地域でそれぞれ異なるストーリー(創世神話)が語られており、そのすべてを「エジプト神話」として認めるおおらかさと寛容さを持っています。

そのぶん矛盾や混乱が見られますが、それもまたエジプト神話の魅力であり他の神話とは一線を画す持ち味にもなっています。

ヒヒ

キュートなアニマル系女神さまも多数登場するぞい

主に以下のあたりの地域で信仰された神話です。

エジプト神話は起源の特定が難しいと言われます。
古代エジプト文明成立の時期から考えても、約5,000年前には神話に登場する神さま達への信仰があったようです。

とても長い歴史を持つ、ミステリアスな魅力あふれる物語です。

猫の女神バステトってどんな女神さま？

猫の女神バステトはネコの頭を持つ女神さまです。

古代エジプト人に神聖視された上、ペットとしても非常に愛されたネコを神格化していることから、お察しの通りとても人気のある女神さまです。

彼女の人気を裏付けるものとしてその役割の多さがあり、出産や豊穣、音楽や快楽を司るほか、疫病や悪霊から人間を守ってくれる存在でもありました。

穏やかで慈愛に満ちた優しい女神さまのバステトですが、過去には雌ライオンの頭を持って戦いを司り、暴れまわっていた元ヤンな一面もあります。

独自の物語は持たないものの、多くの女神さまと同一視されてきたことから登場の場面は多く、また自身の名を冠したブバスティスという信仰の拠点都市もありました。

現地では毎年彼女を讃える祭りが行われ、多くの古代エジプト人が集まるとても楽しい祭儀だったと記録されています。

エジプト神話の猫の女神バステト — 出典：Gunawan Kartapranata CC BY-SA 3.0

とと(父)

ブバスティスは以下のあたりの地域だよ

こんなビジュアル

バステトは猫の顔を持つ人間の女性の姿で表され、両手にはアンクとシストラムを持っています。

エジプト神話においてアニマル系女神さまは珍しくありませんが、彼女はスマートな小顔にすらっとしたボディライン、そして首飾りなどの装飾品を身につけ特に美しく描かれているのが印象的です。

ネコが古代エジプト人から特別に愛されていたのが良く分かります。

しかしこの美しい猫の姿は後期のもので、もともとは雌ライオンの頭部を持つ女神さまとして表されていました。

戦の女神セクメトなどとも役割を共有しており、戦闘的な側面を彼女が、穏やかな側面をバステトが表すようになったと言われています。

また同じくセクメトがとある騒動で残虐性を取り除かれた結果、優しい女神バステトになったというストーリーも残っています。

時代によって役割を変えてきた彼女の詳しいストーリーは、次項にて解説したいと思います。

どうして猫の女神が特に崇拝されたの？

【結論】：古代エジプト人がネコ大好きだったから

ことと

答えになってないわよ

ヒヒ

焦るでない、きちんと解説するぞよ

今でこそペットにするなら犬派？猫派？という話題で盛り上がるほど、人間にとっては身近な存在であるネコちゃんですが、そんな彼・彼女らを世界で最初に飼い慣らしたのは古代エジプト人だと言われています。

アフリカ・中近東に生息するリビアヤマネコ(Felis lybica)がイエネコの起源であると考えられているようです。

ネコはネズミなどの害獣を排除するほか、人間にとって脅威となるコブラなどの毒ヘビとも戦う能力があったことから、古代エジプトでは大変重宝されました。

王族に飼われているネコは宝石を身につけていたり、飼い主の皿からエサを食べることを許されている例もあるほどでした。

当初はその戦闘能力を買われて採用された合理的判断だったのかもしれませんが、そのうちネコちゃんたちは古代エジプト人たちの生活に溶け込んでいき、シンプルにペットとしても愛されるようになったのだと考えられています。

古代エジプトと言えば動物のミイラも有名ですが、なかでもネコのミイラはとても多く、1ヶ所に数十万体収められていた例もあるといいます。

それだけ古代エジプト人たちにとってネコは大切な存在であり、亡くなってしまうことはとても悲しいもので復活を願わずにはいられなかったのでしょう。

動物に神秘性を見出して神格化するのがお得意の古代エジプト人ですが、ネコがその範囲外となるはずもなく、しっかりと崇拝の対象として扱われていきます。

ネコのイメージは壁画や像にも登場し、結果として今回ご紹介しているバステトの誕生にも繋がっていったのです。

Tips：古代エジプト人のネコ愛

ことと

余談だけど、ネコにまつわるちょっとした
エピソードをご紹介するわよ

ヒヒ

割と有名な逸話じゃ

紀元前525年に起きた「ペルシウムの戦い」では、ペルシャの軍勢がエジプトに攻め込んできました。

この時ペルシャ軍は、エジプトで神聖視されているネコを盾にくくりつけて侵攻してきたのです。

エジプト人にとってネコは愛すべき存在であり聖なる存在、傷つけることなど出来るはずもなく、ほとんど抵抗も出来ずにあっという間に制圧されてしまったという話が残っています。

とと(父)

効果的ではあるけどまじでえげつない…

エジプト人

おのれ卑怯なり……!!

簡易プロフィール

名前	バステト(Bastet)
その他の呼び名	ハステトバストブバスティスの女主人ラーの目軟膏壺の女性
象徴	猫雌ライオンシストラム軟膏瓶太陽円盤
役割	伝染病からの守護悪霊からの守護家庭の守護以下のものを司る・妊娠・多産・豊穣・性愛・音楽・天空・母性愛
主な業績	単独での登場シーンは特になし
家族	親：太陽神ラー親：豊穣の女神イシスの場合も夫：鍛冶の神プタハの場合も ※セクメトの転生後という文脈で子：戦争の神マーヘスの場合も

バステト自身に固定化された家族関係はありませんが、多くの女神さまと同一視された経緯から「家族の場合もある」という設定が複数見られます。

また本文では登場しませんが、愛と美の女神ハトホルとも同一視されました。

時代によってさまざまな役割を持つ

とと(父)

バステトの活躍はおおまかに前後編に分けられるよ

地元で恐れられたぶちギレのヤンキー時代

優し気なネコの女神の姿で現在に残っているバステトですが、彼女はもともと獰猛な雌ライオンの顔を持った戦いの女神として信仰されていました。

一説によるとバステトは太陽神ラーの娘であるとされ、「ラーの目」と呼ばれる彼の守護者の役割を持っており、ラーに敵対するものを暴力で排除していたようです。

そして古代エジプトのファラオは「ラーの息子」を自称していたことから、「王の敵を倒すもの」という使命も持っていたとされています。

とと(父)

「ラーの目」については以下でもやや詳しめに解説しています

パパ、ときどきトト

【大人しいが実はお転婆家出娘】湿気の女神テフヌト-Tefnut-【エジプト神話】 | パパ、ときどきトト今回はエジプト神話より湿気の女神「テフヌト」をご紹介！もっぱら夫のサポートにまわる控えめなイメージだけど、実は手が付けられないお転婆家出娘の一面があった！？

またラーの太陽運航の物語にはいくつかのパターンが存在しますが、その１つでバステトは太陽の船の上に立ち、ラーの最大のライバルである悪蛇アポピスをナイフのようなものでぶった切るという役割を果たします。

インヘル・カーの墓に描かれる太陽神ラーによるアポピス討伐のシーン — インヘル・カーの墓
出典：Wikipedia PD

フネフェルのパピルスに描かれる太陽神ラーによるアポピス討伐のシーン — フネフェルのパピルス
出典：Hunefer PD

ヒヒ

この大猫はラー自身の場合もあるぞい

とと(父)

ラーの太陽運航については以下で詳しく解説しているよ

パパ、ときどきトト

【THE・エジプトの最高神、実はM＆Aの名手】太陽神ラー-Ra-【エジプト神話】 | パパ、ときどきトト今回はエジプト神話の太陽神「ラー」をご紹介！古くから長きにわたり信仰されてきた最高神である彼は、優秀な神とM&Aを繰り返して生き残ってきた敏腕ビジネスマンだった！…

バステトは「ラーの目」繋がりで、同じアニマル系女神さまの湿気の女神テフヌトや、人類を滅ぼしかけた最恐のヤンキー・戦の女神セクメトとも同一視されました。

こういった要素も相まって、古い時代においては「戦う雌獅子」として認識されていたか、あるいはもともとは漠然としたひとつの存在であったのかもしれません。

凶暴家出娘の解説はこちら

パパ、ときどきトト

エジプト最強最恐の元ヤンママの解説はこちら

パパ、ときどきトト

【怒らせたらまずいラーの娘】戦の女神セクメト-Sekhmet-【エジプト神話】 | パパ、ときどきトト今回はエジプト神話より戦の女神「セクメト」をご紹介！エジプト最強の破壊の女神はめちゃ強！だけど大切なものを守る優しい母としての側面も持っていた！？

暴力から足を洗って人が変わった聖人時代

時代が下ると、バステトは雌ライオンの姿から徐々に独立してネコの姿で描かれることが増えていきました。

先にご紹介したように、古代エジプト人とネコの関係性が変わっていったことも原因したのかもしれません。

資料によれば、バステトが雌ライオンの姿で登場し始めた約2000年後のエジプト第三中間期(紀元前 1070年頃-712年)と呼ばれる時代には、彼女はネコかネコの頭を持つ女神さまとして描かれるようになっていたとされています。

これ以降バステトは、戦闘的な側面の露出は控えめになり、穏やかな慈母神として登場することが多くなっていきました。

一説には、先に紹介した戦の女神セクメトが落ち着いて丸くなった神格が彼女であるとも言われています。

セクメト

……おや！？
セクメトの　ようすが……！

バステト

おめでとう！　セクメトは
バステトに　しんかした！

現在に残る彼女のビジュアルでは、片方の手にシストラムという楽器を持っており、これは俗にいうガラガラのようなもので、子どもをあやしたり祭儀の場で用いられました。

こういった点からも、バステトが穏やかで文化的な性格にシフトしたことが見てとれます。

またネコの繁殖力に由来しているのか、彼女は妊娠や出産、子どもを守る女神さまとしても認識され、足元にたくさんの子ネコを連れた姿でも描かれるようになりました。

さらには人間を疫病や悪霊から守ったり、豊穣や性愛を司ったり、音楽や踊りを好んだりと多くの役割をもったほか、「ヘビの首を刎ねるもの」として家庭を守る女神さまとしても信仰されるようになりました。

ことと

どんどん愛されていってるわね

ヒヒ

人気になると忙しくなる、エジプト神あるあるじゃな

大人気だからさまざまな祭儀で崇められる

バステトの信仰の中心地、いわば彼女の地元は下エジプトのデルタ地帯にあるブバスティスという都市でした。

この地域では特にネコは神聖な生き物とされ、バステトを祀る神殿からは30万匹を超えるネコのミイラが発掘されています。

古代ギリシャの歴史家ヘロドトスによれば、エジプトで行われた多くの厳粛な祭儀のうち最も重要で人気のあるものは、この女神バステトを讃えてブバスティスで行われた祭りだったとされています。

毎年行われるバステトの祭りの際には、最大70万人がナイル川を下ってこのブバスティスに集まったと言われています。

女性たちはこの祭りで音楽、歌、踊りを披露し、犠牲をささげることでバステトを讃えました。

彼女の祭儀で特徴的なのが大量の酒を消費する事で、この1回の祭りで年間の消費量を超える大量のワインが飲まれたそうです。

ことと

ふつうに楽しそうね

特に女性たちが、一時的に社会的制約から解き放たれて盛大に盛り上がったとされています。

またバステトと同一視された戦の女神セクメトは、人類を滅ぼすために大暴れした際に酒を飲んで酩酊したことで鎮められました。

こういったストーリーとも、「酒を飲んで平和を願う」的なニュアンスはうまくリンクしています。

世界の神話との関係

元は人間を罰することもある厳しい女神さま、でも出産や子どもを守護する優しい女神さまでもあるバステトは、その性格の共通点からギリシャ神話の狩猟の女神アルテミスと同一視されました。

アルテミスは時代が下って月の女神さまともされましたが、バステトもまた月と関連すると見なされていたので、より強く繋がったもののようです。

またネコらしい気まぐれさや、割と羽目を外すお祭りがあるといった要素から、愛と美と性の女神アフロディテとも同一視されることがあったようです。

シャルル・メニエ『野原にある女狩人アルテミス像』 — シャルル・メニエ
『野原にある女狩人アルテミス像』 PD

ジャン＝レオン・ジェローム『ヴィーナスの誕生』 — ジャン＝レオン・ジェローム
『ヴィーナスの誕生』
※ヴィーナス＝アフロディテの英語名 PD

とと(父)

個人的にはアルテミスが一番しっくりくる

ことと

バステトに性的に奔放なイメージはないもんね

バステトが登場するエンタメ作品

とと(父)

バステトは個性的な女神さまゆえか、いくつかのゲームやアニメなどのエンタメ作品に登場していたぞ

ことと

バステトが登場する作品を簡単に紹介するわね

真・女神転生シリーズ: 『真・女神転生』は、西谷史先生による小説『デジタル・デビル・ストーリー』から派生したコンピュータRPGのシリーズ作品。
様々な悪魔や神さまなどを仲魔にして戦うゲームです。
バステトはこの作品で「聖獣」もしくは「神獣」という括りで登場し、設定どおりネコの頭の女神さまの姿で登場するか、ネコをそのまま擬人化したようなビジュアルで描かれています。
ジョジョの奇妙な冒険スターダストクルセイダース: 『ジョジョの奇妙な冒険』は、荒木飛呂彦先生による日本の漫画作品。
この作品ではマライアという女性のスタンドとしてバステト女神が登場していました。
普通のコンセントの見た目をした設置型のスタンドで、触れた相手を磁石に変える能力を持っていました。
個人的にバステトとの共通点は見つけきれませんでしたが、強いて言えば本人が敵を攻撃しない点はらしいっちゃらしいかなと思いました。
とーとつにエジプト神シリーズ: 『とーとつにエジプト神』は、yuka先生による、エジプト神話の神を題材としたキャラクターおよびアニメ作品。かわいらしい姿にデフォルメされたエジプト神話の神さまたちが登場します。
この作品でのバステトは自由気ままな性格で踊りや音楽が好きという設定で描かれています。
よりネコっぽさが強調されたキャラクターなのかなと思いました。