こんにちは!
今回はギリシャ神話よりシュムプレガデスの岩を紹介するよ!
あら、今回は珍しくロケーションの解説ね
そこはどんな場所なの?
(このサイトも、もうネタが尽きたのかしら…)
シュムプレガデスはボスポラス海峡にある切り立った岩壁で、
通過しようとする船を挟んで叩き潰していたんだ!
英雄イアソンとアルゴナウタイの面々が遭遇した難所なのじゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、現在のトルコをヨーロッパとアジアに隔てる「ボスポラス海峡」に存在した断崖絶壁で、通過しようとする船を動く岩で圧し潰して人々に恐れられるも、英雄イアソン率いるアルゴナウタイに敗北してただの「岩」となったロケーション・シュムプレガデスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「シュムプレガデスの岩」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


シュムプレガデスの岩ってどんな存在?
シュムプレガデスの岩がどんな存在なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | シュムプレガデス Συμπληγάδες |
|---|---|
| 名称の意味 | 打ち合わさる |
| その他の呼称 | シュムプレーガデス クラッシング・ロックス(Clashing Rocks) ※「衝突岩」の意 シアネアン・ロックス(Κυανέαι) ※「青い岩」の意 プランクタエ・ロックス(Planctae Rocks) ※「さまよう岩」の意 |
| ラテン語名 (ローマ神話) | シュムプレガデス(Symplegades) |
| 英語名 | シュムプレガデス(Symplegades) |
| 神格 | 特になし 衝突する岩 |
| 性別 | なし |
| 勢力 | 自然物 |
| 主な拠点 | ボスポラス海峡 |
| 親 | なし 強いて言うなら、 大地の女神ガイア(Γαῖα) |
| 兄弟姉妹 | なし |
| 配偶者 | なし |
| 子孫 | なし |
概要と出自
シュムプレガデスは、ギリシャ神話に登場する巨大な「岩の崖」です。
神さまでもなければ精霊の類でもなく、それどころか人間ですらない今回の主人公は、ボスポラス海峡のとある一角に位置していました。
この巨大な岩は風の力によって自由自在に動き、崖の間を通過しようとするものを、互いにぶつかり合うことで圧し潰したと伝えられています。
さらに、このロケーションには常に濃霧が広がっており、人間たちが乗る船はもちろん、鳥の一羽すらも安全に通ることができないとされました。


FFに登場するデモン〇ウォールの、
両ばさみver.みたいなもんやね
来るものすべてを拒むシュムプレガデスは、周辺に住む人々から大変に恐れられていましたが、英雄イアソン(Ἰάσων)率いる戦士団「アルゴナウタイ(Ἀργοναῦται)」には敵わず、その機転と周到な備えによって、見事にその海域を突破されています。
古代ギリシャ版ホットサンドメーカー、
英雄の一行に普通に突破される
シュムプレガデスの岩の活躍(?)を見てみよう!
遠い昔、はるか彼方の神々の時代に――。
現在のトルコのアジア部分とヨーロッパ部分を隔てるボスポラス海峡には、「シュムプレガデスの岩」と呼ばれる摩訶不思議なロケーションがありました。
その場所には、狭い海路を挟み込むようにして巨大な岩の崖が切り立っているのですが、この「岩の崖」というのが風の力を得て自由自在に動き、間を通過しようとする船舶などを、互いにぶつかり合うことで圧し潰してしまうというのです。
その特性から、「クラッシング・ロックス」や「衝突岩」などのシンプルな名称でも呼ばれたこのポイントには、常に轟音と濃霧が立ちこめ、船の一隻はおろか鳥の一羽すらも安全に通過することはできないと恐れられていました。


ちなみに、「ボスポラス海峡」の由来になったのもギリシャ神話の登場人物だよ!


ゴゴゴゴゴゴ……
愚かなる人間どもよ……
煎餅にされるタコや海老たちの気持ちを、
貴様らにもとくと味わわせてくれる……
そう息巻くシュムプレガデスの前に、今日もまた、若く屈強な男たちを満載した一隻の船が現れます。
その一団の名は「アルゴナウタイ(Ἀργοναῦται)」――。
彼らは、英雄イアソン(Ἰάσων)が率いるギリシャ神話版アベンジャーズのような人々で、伝説にある「金羊毛」を手に入れるため、遠く離れたコルキスの地を目指して旅を続けていました。


『アルゴー船』 19世紀後半 PD
アルゴー船の乗組員たちは、シュムプレガデスの岩を目前にすると船を止め、何やらこそこそと相談めいた会話を始めます。
実は彼ら、人面の鳥ハルピュイア(Ἁρπθαι)の襲撃から盲目の予言者ピネウス(Фινεύς)を救った際、彼から
シュムプレガデスの岩を通るときは気を付けなされや
船を動かす前に、まずは岩間に向かって鳩を放つのじゃ
※文献によっては「鷺」とも
鳥が無事に通過すれば、船も通ってOK
鳥が潰されたら、船も諦めて引き返す方がよかろうですたい
という助言を受けていたのです。
戦士団のリーダーであるイアソンは、盲目の老人の指示に従い、船首から一羽の鳩を飛ばしました。


ムムムッ、何が来るかと思えばカトンボひとつ…
しかし、獅子は兎を狩るにも全力を尽くすというもの!
くらえぃっ!!
砂瀑送葬!!
シュムプレガデスは爆音を響かせて岩壁どうしをぶつけ合い、ターゲットを圧し潰してしまおうと動きましたが、件の鳩は数枚の尾羽を失ったのみで無事にポイントを通過します。
よっしゃ来た!!
総員、全速前進じゃ!!
この結果を吉兆と受け取ったイアソンは、乗組員全員に命じて、アルゴー船を最大戦速で前へと進めました。
(お告げ云々というより…)
(再び壁が開ききるまでのクールタイム
を利用しとるだけじゃが…)
(まぁ、この際、細かいことはええじゃろ…)
ぐぬぬ、なんと小賢しいまねを!
待たんか、卑怯者ども!
シュムプレガデスは次の一撃をお見舞いするべくリチャージを待ちますが、結婚の女神ヘラ(Ἥρα)の加護を得たアルゴナウタイの船は、追い風を受けてスムーズに岩間を通過していきます。


『アルゴー船』 1490年 PD
結局、アルゴー号は船尾装飾の端を切り落とされる程度の軽微な損傷を受けはしますが、イアソンとその戦士団は、一人の犠牲者も出すことなく難所の突破に成功しました。
実は、「何者かの通過を一度でも許したら、永遠に自由に動けなくなる」という予言を受けていたシュムプレガデス――。
そのお告げ通り、以降この岩は完全に静止して、二度と往来の人々を困らせることはなかったと伝えられています。
ちーん
そして、今回も無事に航海を終え、マリアンデュノイ人の国に寄港したアルゴナウタイの一行。
リュコス王(Λύκος)の歓待を受けた彼らは、
- 予言者イドモン(Ἴδμων)が猪にぶっ飛ばされて死亡。
- 舵取りのティピュス(Τῖφυς)も同地で死去したので、後任にアンカイオス(Ἀγκαῖος)を指名。
といった紆余曲折を経ながらも、ついに目的の場所であるコルキスの地へと到達しました。
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場するシュムプレガデスの岩について解説しました。
無機物の解説を始めた時はどうなるかと思ったけど、
ストーリー上必要な件だったのね
ギリシャの英雄たちを待ち受けるのは、
神々や生き物だけではなかったんだね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










