こんにちは!
今回はギリシャ神話より半神の英雄ペルセウスを紹介するよ!
神話でもトップクラスの有名人ね
彼はどんなキャラクターなの?
彼は主神ゼウスと王女ダナエの息子で、
怪物メドゥーサ退治などの数々の活躍を果たしたんだ!
同じく有名な半神の英雄ヘラクレスの祖先にあたる人物じゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、最高神ゼウスとアルゴスの王女ダナエの間に誕生した半神半人の青年で、怪物メドゥーサやケトスの討伐、美しき王女アンドロメダの救出と結婚など、物語の王道中の王道を押さえまくったギリシャ神話でも随一の有名人ペルセウスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「半神の英雄ペルセウス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


半神の英雄ペルセウスってどんな人物?
半神の英雄ペルセウスがどんな人物なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | ペルセウス Περσευς |
|---|---|
| 名称の意味 | 諸説あり |
| その他の呼称 | 特になし |
| ラテン語名 (ローマ神話) | ペルセウス(Perseus) |
| 英語名 | ペルセウス(Perseus) |
| 神格 | 半神の英雄 |
| 性別 | 男性 |
| 勢力 | 人間族(半神) |
| 主な拠点 | アルゴス セリフォス島 |
| 関連する星座 | ペルセウス座(Perseus) |
| 親 | 父:雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ) 母:アルゴスの王女ダナエ(Δανάη) |
| 兄弟姉妹 | 異母兄弟姉妹が無数 |
| 配偶者 | エチオピアの王女アンドロメダ(Ἀνδρομέδα) |
| 子孫 | ペルシャ人の祖ペルセス(Πέρσης) ミュケナイの王子アルカイオス(Ἀλκαῖος) ミュケナイの王子ステネロス(Σθένελος) ミュケナイの王子ヘレイオス(Ἕλειος) ミュケナイの王子メストル(Μήστωρ) ミュケナイの王子エレクトリュオン(Ἠλεκτρύων) ミュケナイの王子キュンロス(Κιούνρους)とも ミュケナイの王女ゴルゴポネ(Γοργοφόνη) ミュケナイの王女アウトクテ(Αὐτόχθη)とも |
英雄の出自
ペルセウスはギリシャ神話に登場する半神半人の青年で、最も有名な英雄の一人です。


『メドゥーサの頭を持つペルセウス』 1800年頃
出典:Christopher Michel CC BY 2.0
彼の母親となる王女ダナエ(Δανάη)は、アルゴスの王アクリシオス(Ἀκρίσιος)と王妃エウリュディケ(Εὐρυδίκη)の間に生まれた、非常に美しい一人娘でした。
何不自由ない暮らしを送った彼女でしたが、ある時、父王が「娘の子に命を奪われる」という予言を受けたことで、その人生は一変してしまいます。
失脚と死を恐れたアクリシオスが、ダナエを青銅の地下室(または塔)に幽閉し、今後一切、いかなる人間とも関わりをもってはならないと命じたのです。
私が子をなさない限り、
父の立場は安泰というわけですねん
そんな美しき悲劇の王女に目を付けたのが、可愛い女の子には目と節操がないオリュンポスの王・雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ)。
うわ、あんな美人なのにもったいねぇ…
じゃない!
あんな人権侵害は、神々の父として許せまへんなぁ!
神々の父とやらは「黄金の雨」に変身して地下の牢獄へと潜り込み、誰に悟られることもないまま、ダナエと交わってその思いを遂げました。
※水の状態のままダナエの体内を巡ったという


『ダナエ』 1527年 PD


それから、しばらくして――。
囚われの王女はある日、自分のお腹に子が宿ったことに気が付きます。
相手には身に覚えがありませんでしたが、いずれにせよ懐妊してからの経過は順調で、ダナエはやがて1人の元気な男の子を出産しました。
その赤ん坊こそが、今回の主人公ペルセウス。
最高神ゼウスの血を引く半神で、後に恐ろしい怪物を討伐したことで名を上げる、神話の英雄の1人です。
母子ともに健康で何よりですが、事実を知った父王アクリシオスの心中が穏やかであるはずもありません。
(どういう事や…
普通の人間には無理じゃ…
ということは神の子…?)
(始末したいが神々の怒りを買うのは恐ろしい…
しかし王位を奪われるのも恐ろしい…)
自ら手を下すことを恐れた王は、娘のダナエと孫のペルセウスを箱に閉じ込め、そのまま彼らを海に流してしまいました。
しかし、箱の中に入っているのは、他でもない全ギリシャの王の血を受け継いだ息子です。
神々の導きによって、親子は無事にセリフォス島(Σέριφος)へと漂着し、そこでディクテュス(Δίκτυς)という名の漁師に救助されました。


『ダナエ』 1892年 PD
ダナエとペルセウスは彼の縁者ということにして匿われ、この島での新たな生活を送ることになります。
別伝では箱がイタリアに漂着し、ダナエがピルムヌス王と
結婚して都市アルデアを建設したとも言われたそうだよ!
ペルセウスの誕生の詳細はコチラ!


ペルセウスが関わった主なストーリー
ペルセウスの活躍を見てみよう!
凛々しい青年に成長したペルセウス、
キモイおっさんから母を救うべく怪物退治に旅立つ!!
あれから、しばらく経って――。
ディクテュスとダナエに養育されてすくすくと成長したペルセウスは、何やら神々しい雰囲気すらも放つ立派な青年となりました。
基本的には平和な生活を送ってきた親子ですが、この時期になると、新たな悩みの種が生じます。
というのも、セリフォスの王でディクテュスの兄弟でもあるポリュデクテス(Πολυδέκτης)が、年を経てもなお美しいダナエを狙って、しつこく結婚を迫ってくるようになったのです。
あんな爺ィ、普通に御免ですわ…


しかし、王にとってペルセウスは「目の上のたんこぶ」以外の何ものでもない上、なにかと口を挟んでは、ダナエを口説く機会を妨害してきます。
次第に連れ子(予定)の存在を疎ましく感じるようになったポリュデクテスは、
怪物メドゥーサを倒したら手を引くよ
と言って、ペルセウスを物理的に遠ざける作戦に出ました。
※ヒッポダメイア(Ἱπποδάμεια)との結婚と称して、祝いの品に「メドゥーサの首」を要求したとも
できらぁっ!
えっ、たった一人であの怪物メドゥーサを!?
メドゥーサ(Μεδουσα)といえば恐ろしいゴルゴン(Γοργών)3姉妹の1人で、頭には髪の毛の代わりに生きた蛇が生えており、その顔を見たものは石化してしまうというとんでもないクリーチャーです。


『メデューサの頭部』 1680年 PD
ポリュデクテス的には、明らかな無茶振りをして厄介な連れ子を遠ざけ、あわよくば彼がその辺で野垂れ死にしてくれればラッキー、といった思惑でした。
しかし、彼は重要な事実を知らぬまま、ペルセウスを怪物退治の旅へと送り出してしまいます。
そう、その青年は神の子なのです。
よし、これで事実上あやつを片付けたに等しいじゃろ
ポリュデクテスの早合点は、後に、彼自身に大いなる破滅をもたらすこととなりました。
導かれし英雄ペルセウス、
チートアイテムを駆使してメドゥーサを討伐する!!
さて、超高難易度のミッションを受注して意気揚々と出発したペルセウスですが、その旅路は思ったほど大変なものではありませんでした。
なんといっても彼は、最高神ゼウスの血を引く息子――。
その冒険では、戦いの女神アテナ(Αθηνη)と伝令の神ヘルメス(Ἑρμης)から助言を得られるという、まさに至れり尽くせりのサポート体制が整えられていたのです。


『パラス・アテナ』 1657年 PD
とりあえず、あの婆さんたちのところで情報収集やな
あーはいはい、グライアイの3姉妹ね、
次の目的地はそこだよー
2神に導かれたペルセウスは、特に寄り道をすることもなく、老婆の怪物グライアイ(Γραῖαι)の住処とされる場所へと向かいます。
その3人娘、ペムプレド(Πεμφρηδώ)、エニュオ(Ἐνυώ)、そしてデイノ(Δεινω)は、本ミッションの討伐対象であるゴルゴンの姉妹で、生まれた時から老婆の姿をしていました。
彼女たちは、1つの「眼」と1つの「歯」を3人で共有し、それらを順番に使うことで生活を送ったと伝えられています。
あーもしもし、お婆ちゃん?
なんか、怪物退治に役立つアイテムを持っとるっちゅう人たちが、この辺に住んどると聞いたんやけどもね
皆さんは、何かご存じないですかねぇ?
……………


『ペルセウスとグライアイ』 1892年 PD
無視されて苛立ったペルセウスは、グライアイが所有するなけなしの「眼」と「歯」を奪い取り、
返してほしければ、わしの問いに答えんかぃ!!
と言って、3姉妹を脅迫しました。
とてもじゃないけど、”英雄”とは思えないムーブね…
こうして有益な情報を手にした半神の英雄は―老婆たちに奪ったものを返し―、黄昏の娘たちヘスペリデス(Ἑσπερίδες)が住むという西の果ての楽園、その名も「ヘスペリデスの園」を訪れます。
※ここで登場する女性たちは、単に「ニンフ(Νύμφη)」ともされる(自然界の精霊みたいなもん)
ようこそ、いらっしゃいまし~


『ヘスペリデスの園』 1894年 PD
ペルセウスはそこで、厳しい戦いに備えて装備一式を新調することとし、
- アテナから、「鏡のように磨かれた盾」
- ヘルメスから、「翼のついたサンダル」
- 同じくヘルメスから、「アダマス製の鎌」
※神話によく登場する、死ぬほど硬い金属でできた鎌。「ハルパー(ἅρπη)」とも。 - ヘスペリデスから、目的の首を安全に収納するための「キビシス*」
※背嚢(背負うタイプのカバンみたいなもん)のこととされる - 同じくヘスペリデスから、冥王ハデス(ΑΙΔΗΣ)が使ったとされる「姿を隠せる兜」
を授かりました。
※誰が何を授けたかについては諸説ある。武器を「剣」とする場合も。


すでにオーバーキルが確定した完全武装に身を包んだペルセウスは、一路、ゴルゴンが棲むというこの世界の西の果て、大洋の神オケアノス(Ωκεανός)*の向こうへと進みます。
※全世界を取り囲む大河や外洋の海流のイメージで存在した


『レ オセアニド』 1860 年 PD
怪物たちの住処とされた場所では、ステンノ(Σθεννώ)とエウリュアレ(Εὐρυάλη)、そしてメドゥーサの3姉妹がひっそりと暮らしていました。
彼女たちはいずれも恐ろしい姿をしており、その顔はあまりにも醜悪だったため、姉妹の鋭い視線は、ただ見るだけで相手を「石」に変えてしまうと恐れられていたそうです。
※怖すぎて麻痺して命を落とす、とした説も
しかし、ゴルゴン3人娘のうち、上の姉2人は「不死」の属性をもっていましたが、今回の討伐目標であるメドゥーサだけは「定命」の宿命を負っていました。
導かれし英雄ペルセウスは、そんな姉妹たちが眠っている時間帯を狙って、そのねぐらへと侵入します。
彼は「ハデスの兜」で姿を消し、「アテナの盾」を鏡のように使うことで、目標を直接目視することなくメドゥーサの背後へと近づきました。
※顔を背けて、アテナに手を引かれながら進んだとも
「石化」だけは、避けねばならんからねっ!
ペルセウスは周囲の安全を確認すると、一思いに鎌を振り下ろし、ターゲットであるメドゥーサの首を刎ね飛ばします。
うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!


『メドゥーサの首を斬り取ったペルセウス』 1867年 PD
実はこの時、彼女は海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)との子を身に宿していたので、その傷口からは息子となる有翼の天馬ペガサス(Πγασος)と巨人クリュサオール(Χρυσαωρ)が誕生しました。


半神の英雄は、慣れた手つきで成果物を「キビシス」に収めると、ステルス状態を維持したまま屋外へと逃走します。
目を覚ました2人の姉、ステンノとエウリュアレは、悲しみと怒りで半狂乱になりながらも下手人の姿を探しますが、時すでに遅し――。
「翼のついたサンダル」を履いていたペルセウスは、とうに空高くへと飛び上がり、ゴルゴンの住処を後にしてその姿をくらましてしまいました。
(わ、わしが一体、何をしたっちゅうねん……)
メドゥーサの気の毒過ぎる人生はコチラ!!


【別伝】英雄ペルセウス、天を支える巨人アトラスを”楽”にしてあげる
今回の主人公ペルセウスの冒険物語には、ちょっとした別バージョンも存在します。
それは、メドゥーサの討伐を終えた彼が、天を支える巨人アトラス(Ἄτλας)に遭遇したというもの。


『天球を支えるアトラス』 1646年 PD
リビアの砂漠を通過して帰路を急ぐ英雄は、真っ暗な夜の闇を恐れ、巨人が立つ西の果ての大地で一休みさせてもらおうと考えます。
しかしアトラスは、法の女神テミス(Θέμις)から、
そのうちゼウスの息子が、
お前から「黄金の林檎」を奪いに来るでな~
という予言を授かっていたため、ペルセウスを警戒して、その滞在を決して受け入れようとはしませんでした。
※この予言が指しているのは、ペルセウスの子孫にあたる半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)
何度頼み込んでも答えは「No.」――。
まったくもって埒が明かないのですが、かといってさすがのペルセウスも、天空を支えるほどの巨人に戦いを挑む勇気はありません。
そこで彼は、つい先ほど手に入れた魔法アイテム「メドゥーサの首」をアトラスに向けて掲げました。
すると、なんということでしょう――。
彼女の眼光は死してなお健在で、巨大なアトラスの身体は徐々に石と化し、後に「アトラス山脈(Atlas Mountains)」と呼ばれる、北アフリカに連なる山々へとその姿を変えたのです。


『ペルセウス シリーズ:石に変わるアトラス』 1878年 PD
これは結果論に過ぎませんが、ペルセウスは永遠の刑罰に苦しむ1人の巨人を、その呪縛から解放したとも解釈できるでしょう。


選ばれし英雄ペルセウス、
帰り道のついでに怪物を退治して美しい妻を得る!!
首尾よくメドゥーサの首を獲得したペルセウスは、「翼のついたサンダル」を履いて空を駆け、一路、セリフォス島への帰還を急ぎます。
するとその道中、彼の目に、海に浮かぶ岩に鎖で縛り付けられた一人の女性の姿が飛び込んできました。
ムムムッ!
海のど真ん中で縛られとるあの娘は何ね?
新手のプレイか…?
邪魔したら悪いかのぅ…?
ムムムッ!
しかし彼女、とんでもなく美しいではないかね!?


『アンドロメダ』 1869年 PD
その乙女に目を奪われたペルセウスは、颯爽と地上に降り立ち、周囲の人々から事の次第を聞き出します。
話によると、件の美しい女性はエチオピアの王女で、名をアンドロメダ(Ἀνδρομέδα)というのだそうな。
なんでも、彼女の母親である王妃カシオペイア(Κασσιόπεια)が娘の美貌を誇って神々を侮辱したため、激怒した海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)がこの地に海の怪物ケトス(Κητος)を送り込み、国家は今まさに存亡の危機に瀕しているのだとか。
は~ん、なるほどね
それで、「王女を生け贄に捧げよ」的な神託が下ったわけね
おたくのお嬢さん、私との結婚を認めるなら、
助けるのもやぶさかではないけどもん?
何卒よろしくお願い申し上げる!
エチオピアの王ケフェウス(Κηφεύς)の言質を取った半神の英雄は、神々より授かったチート装備で身を固めたまま、この地を脅かす怪物のもとへと出陣しました。


『アンドロメダーの救出』 1750年頃 PD
わっはっは、私に出くわした不運を呪うが良い
ウボァー!
(えっ、もう出番終わり…!?)
ケトスはペルセウスの剣に敗れたとも、「メドゥーサの首」から放たれる光線を受けて、「石」に変わってしまったとも伝えられています。




『アンドロメダを解放するペルセウス』 1510年頃 PD
さて、「英雄が怪物を討伐して美しき乙女を救出する」という、洋の東西を問わぬお約束が回収されたところで、お話はここでハッピーエンドを迎えても良さそうなもの。
しかし、これはあくまでもギリシャ神話の物語、そう簡単に事が済むはずもありません。
ペルセウスとアンドロメダの結婚を承諾したケフェウス王ですが、実はこの男、そのはるか以前に、自分の兄弟であるピネウス(Фινεύς)と娘の婚約にも合意していたのです。
私はそんな話、聞いてないけどね
約束通り英雄と王女の婚礼が執り行われ、盛大な宴が催されると、誰もが予想した通りの分かりやすい「修羅場」が始まりました。
その結婚、ちょっと待ったぁ!!!
当たり前といえば当たり前ですが、元々の婚約者であるピネウスがアンドロメダとの結婚の権利を主張し、武装した一味を引き連れて披露宴の場に乱入してきたのです。
彼らは、憎きペルセウスを亡き者にせんと大暴れ。
祝宴の場はほとんど戦争のような混乱に包まれますが、
ペトリフィカス・ト〇ルス!!!!
半身の英雄が、伝家の宝刀の如く怪物メドゥーサの首を掲げると、その眼光を受けたピネウスと彼の一味は、瞬く間に「石」に変化してしまいました。


『ピーネウスとその一味を打ち倒すペルセウス』 1670年頃 PD
これ、戦わなくていいから楽だなー!
こうして、無事に(力ずくで)難局を乗り切ったペルセウスとアンドロメダは晴れて夫婦となり、2人は共にギリシャ各地を旅することとなります。
(う~ん、この結婚、本当に正解だったのかしら…?)
今回の物語で共演した人物たちは、そのほとんどが後に天へと上げられ、
- ペルセウスは「ペルセウス座(Perseus)」
- アンドロメダは「アンドロメダ座(Andromeda)」
- ケフェウス王は「ケフェウス座(Cepheus)」
- 王妃カシオペイアは「カシオペヤ座(Cassiopeia)」
- 怪物ケトスは「くじら座(Cetus)」
として、共にギリシャの地の夜空を今もなお彩っています。


「ウラニアの鏡」に描かれたペルセウス座
1825年頃 PD


「ウラニアの鏡」に描かれたアンドロメダ座
1825年頃 PD


「ウラニアの鏡」に描かれたカシオペヤ座
1825年頃 PD


「ウラニアの鏡」に描かれたケフェウス座
1825年頃 PD


「ウラニアの鏡」に描かれたくじら座
1825年頃 PD
アンドロメダとペルセウスの話って、
やたら設定も豪華だよね!
インド映画のエンディングみたいなものよ
ちなみに、「英雄が強力な怪物を討伐して女性を救出する」という神話のあるあるパターン(定型)は、『ペルセウス型神話』あるいは『ペルセウス・アンドロメダ型神話』とも呼ばれています。
この類型には、『日本神話』で描かれる建速須佐之男命による八俣遠呂智退治の物語も含まれているので、興味がある方はぜひこちらも読んでみてください。




凱旋する英雄ペルセウス、キモイおっさんから母を救い、
後の世に残る『伝説』となる!!
さて、美しきアンドロメダを妻に迎えたペルセウスは、長い時を経てようやく故郷セリフォス島へと戻ります。


現場ではまさにその時、次なる修羅場が展開されようとしていました。
邪魔な連れ子の始末に成功したと早合点したポリュデクテス王が、ペルセウスとの約束を反故にして、強引にダナエに結婚を迫ろうとしていたのです。
彼女はディクテュスと共に神殿の中に隠れますが、セリフォスの王は軍勢を伴ってこれを包囲し、要求を断れない状況を作り出しました。
そんな折に、ふらりと現れたのが、たくましい戦士のような出で立ちをした1人の青年。
それが、メドゥーサとケトス退治の偉業を見事に成し遂げ、道中でアンドロメダという美しい伴侶までゲットした、ダナエの愛息子ペルセウスでした。


『ペルセウスとアンドロメダ』 1639年-1640年 PD
これはこれは、話が違いますねぇ…
私のほうはきちんと約束を果たしたというに…
嘘じゃっ!
メドゥーサを退治したなど、わしゃ信じんぞぃ!
条件を満たしたことを信じようとしないポリュデクテス一派に対し、ペルセウスは、旅の成果物たる「メドゥーサの首」を高々と掲げて見せつけます。
ペトリフィカス・ト○ルス!!
その眼光の直撃を受けたセリフォスの王と仲間たちは、例によって一瞬のうちに石化し、ダナエはすんでのところで危機を脱しました。


-ペルセウスにメデューサーの首を見せつけられるポリュデクテース
1921年 PD
見事な凱旋を果たした半神の英雄は、セリフォス島の統治を、育ての親であるディクテュスに依頼―。
次いで「サンダル」と「キビシス」そして「隠密兜」をヘルメスに返却し、「メドゥーサの首」を女神アテナに捧げました。
※ヘルメスは品々をヘスペリデスにちゃんと返した
この首をはめ込んだ私の盾は「アイギス(Αιγίς)*」
と呼ばれるようになったわよ
※山羊皮製で中央にメドゥーサの首が括り付けられた「盾」。「イージス」とも。


こうして、一通りの身辺整理を終えたペルセウス、ダナエそしてアンドロメダの3人は、親子の本来の故郷であるアルゴスの地へと向かいます。
ところで、皆さんは覚えておいででしょうか―。
ペルセウスの祖父、そしてダナエの父であるアクリシオス王がかつて授かった、「娘の子に命を奪われる」という神託を――。
我が子と孫の生存を知り、彼らが戻って来るという噂を聞きつけた老王は、予言の成就を恐れてアルゴスを去り、ペラスギオーティスの地を目指しました。


一方、その頃――。
英雄とその母、妻の3人パーティは、テッサリア地方のラリッサを通りかかります。
現地では、テウタミデス王(Τευταμίδης)が最近亡くなった父を偲んで、追悼競技祭を開催していました。
ペルセウスが何の気なしに「円盤投げ」に出場し、満身の力を込めて鉄の塊を投げ飛ばすと……
アダーーーーーッ!!!
それは、とある老人の頭に直撃。
即死したその人物の正体はなんと、ダナエ親子から逃れようと旅路を急ぐ、アルゴスの王アクリシオスその人であることが判明したのです。
うーん、悪気はなかったけど、
予言を現実のものとしてしまったよ


『ペルセウスとアンドロメダ』 1622年頃 PD
初めて会った祖父を市街に葬ったペルセウスは、自らが手に掛けた人物の財産を相続することを恥じ、ティリンスの王メガペンテス(Μεγαπένθης)*のもとを訪ねます。
※祖父アクリシオスの双子の兄弟であるプロイトス王(Προῖτος)の息子
いや~実は、かくかくしかじかでのぅ…
っちゅうわけで、よければ互いに統治する国を交換せんかね?
突拍子もない提案ではありますが、どうにかこうにか両者の話し合いは合意に達し、今後はペルセウスがティリンスの地を、メガペンテスがアルゴスの地を治めることとなりました。
半神の英雄は、さらに広範な地域を城壁で囲み、後に「ミュケナイ(Μυκήνες)」や「ミデア(Μιδέα)」と呼ばれる古代都市の創設者になったと伝えられています。
また、ペルセウスとアンドロメダの間には、後にペルシャ人の祖となるペルセス(Πέρσης)をはじめ、
- アルカイオス(Ἀλκαῖος)
- ステネロス(Σθένελος)
- ヘレイオス(Ἕλειος)
- メストル(Μήστωρ)
- エレクトリュオン(Ἠλεκτρύων)
- キュンロス(Κιούνρους)とも
- ゴルゴポネ(Γοργοφόνη)
- アウトクテ(Αὐτόχθη)とも
といった子どもたちが誕生。
この夫婦は、ギリシャ神話のなかでも指折りの伝説的な人物として、後世にも語り継がれる存在となりました。




「アンドロメダを解放するペルセウス」 1世紀頃 PD
ペルセウスは英雄神として、アルゴスとミュケナイの間、
セリフォスやアテナイなどで祀られたそうじゃ
さらには、エジプトにも彼の神殿と像があったそうよ
ペルセウスが現れると国は豊かになると信じられたみたいね
一説によると、ペルセウスはアルゴスに残って、酩酊の神ディオニュソス(Διονυσος)と戦ったこともあると言われているよ!


ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する半神の英雄ペルセウスについて解説しました。
さすがはギリシャ神話でも一、二を争う有名な英雄、
起伏に富んだ波乱万丈な物語だったわね
王道をバッチリ抑えた、
お手本のようなストーリーだったよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










