へい ぶろ~!今回はエジプト神話より
ホルスの4人の息子たちを紹介するよ!
4人いっぺんは初めてのパターンね、何か理由があるのかしら
彼らは4人1組で故人を守る役割を果たしているんだ
目立たないけど大事な仕事をしているよ
ではさっそくいってみよう!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- エジプト神話にちょっと興味がある人
- エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- エジプト神話に登場する「ホルスの4人の息子」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「エジプト神話」って何?
「ホルスの4人の息子」はエジプト神話に登場する神さまです。
エジプト神話とは、ナイル川流域で栄えた古代エジプト文明の人々に信仰された神さま達の物語。鳥やカエルなど、動物をモチーフにしたユニークな神さまも数多く登場する多神教の世界です。
大きく分けて4つの地域でそれぞれ異なるストーリー(創世神話)が語られており、そのすべてを「エジプト神話」として認めるおおらかさと寛容さを持っています。
そのぶん矛盾や混乱が見られますが、それもまたエジプト神話の魅力であり他の神話とは一線を画す持ち味にもなっています。
キャラの濃い無数の神さまが登場するぞい
主に以下のあたりの地域で信仰された神話です。
エジプト神話は起源の特定が難しいと言われます。
古代エジプト文明成立の時期から考えても、約5,000年前には神話に登場する神さま達への信仰があったようです。
とても長い歴史を持つ、ミステリアスな魅力あふれる物語です。
ホルスの4人の息子ってどんな神さま?
ホルスの4人の息子たちとは、その名前の通り天空の神ホルスを父に持つ4柱の神々です。
この兄弟は4人1組で重要な役目を担っており、主に「カノプスの壺」の守護神を務めていました。
「カノプスの壺」とは、古代エジプトにおいてミイラをつくる際に、心臓以外の重要な臓器を取り出して保存するために用いられたと考えられている壺で、故人を埋葬する際にはその遺体の傍に置かれました。
外装に冥界の王オシリスが彫られているものも有名ですが、特に今回ご紹介するホルスの息子たちが彫刻されたものが主要とされ、それぞれが重要な臓器の守護を司っていました。
「カノプスの壺」の名前の由来は、
古代エジプトの貿易都市カノプスだそうだよ
ホルスの息子たちはそれぞれ1つの臓器に専門特化して守護を担当していましたが、それをさらに4人の女神さまが守護していました。
結果として、故人の臓器はホルスの息子たち4兄弟と女神さまによって二重に守られていたことになります。
パ〇ディ島の壁ばりに守備は万全ね!
それじゃ突破されんのよ
それだけ古代エジプト人にとって
「死と復活」は重要な概念なんじゃのう
また彼らは故人の臓器の守護と並行して、それぞれ東西南北のいずれかの方角も司っています。
これは大気の神シューとともに天を支えるため四方に配置された支柱のこととされ、同時に霊魂が昇天する際の梯子の役割も果たしているとされています。
天を支えるシューについては、以下でも解説しておるぞ
個別のデータを見る前に、相関図でぱっと見把握しよう!
4人の簡易プロフィール
各個人(神)のデータを見てくわよ
ケベフセヌエフ – Qebehsenuef –
その他の呼び名 |
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ケベンセヌフ |
守護する方角 |
西 |
役割 |
腸の守護 |
提携 |
サソリの女神セルケト |
ビジュアル |
ハヤブサの頭部を持つミイラの姿 |
概要 |
その名前の意味は「その兄弟たちを蘇らせるもの」であるとされています。 由来通り彼の役目は故人に元気を与えることであると考えられています。 ほかにも「同胞に献酒する者」という意味もあるようで、献酒は古代エジプトの伝統的な礼拝形式でした。 |
イムセティ – Imsety –
その他の呼び名 |
---|
アムセト |
守護する方角 |
南 |
役割 |
肝臓の守護 |
提携 |
豊穣の女神イシス |
ビジュアル |
人間の頭部を持つミイラの姿 |
概要 |
その名前は薬用植物のアニスなどに由来すると言われています。 そのほか「二者間の争い」を意味するともされ、もとは「かかあ天下」の夫婦の事を指していたとも言われています。 ホルスからは「持ち上げろ」という命令を受けており、霊魂の復活を助ける(≒起き上がらせる)役割があったようです。 |
ハピ – Hapy –
その他の呼び名 |
---|
ハーピ |
守護する方角 |
北 |
役割 |
肺(または脾臓)の守護 |
提携 |
葬祭の女神ネフティス |
ビジュアル |
ヒヒの頭部を持つミイラの姿 |
概要 |
その名前の由来はイムセティ同様、「二者間の争い」が元になっていると言われています。 それ以前は「2羽のアヒル」「2羽のガチョウ」を意味していた時代もあったそうです。 ほかにも、彼の名前をヒエログリフで表すと船の舵と関係が深いと思われる部分がありますが、詳細は不明です。 初期の記述ではハピの事を「偉大な走者」と呼んでいるものもあります。 |
誕生と家族
ホルスの息子たちの父親は当然ながら天空の神ホルスです。
実はこの設定が出来たのはある程度時代が下ってからのようで、初期は単にホルスの魂と認識されていたようです。
では母親は誰なのかというと、なんと豊穣の女神イシスであると言われています。
えっ、つまりホルスは母親と結婚してこの息子たちを生んだの?
という疑問が出てくるのですが、ここがホルスらしくややこしいところです。
このホルスは冥界の王オシリスとイシスの息子としての「小ホルス」ではなく、別形態の「大ホルス」のうち「長老ホルス」であると考えられています。
この場合彼の母親は愛と美の女神ハトホルか、もしくは天空の女神ヌトになるのでそのへんの問題はナッシングという計算になるようです。
ワケわかんないわね
ホルスのそのへんのややこしさは以下で解説しておるぞい
とはいえこんな細かいことは気にしなくてOKだ!
そもそもなんでミイラづくりをするの?
ミイラづくりの意味が分からないと、
4兄弟の重要性がピンと来ないわね
古代エジプト人たちの重要な世界観として、「霊魂は復活して楽園にいく」という考え方がありました。
人間の「死」とは肉体と霊体が切り離されることだと考えられていて、この霊体には2つの種類がありました。
肉体に付属する「カー(精霊)」と肉体から離れる「バー(魂)」の2種類です。
人間が亡くなった時、バー(魂)は冥界に旅立ちますが、カー(精霊)は肉体に残り続けます。
冥界に行ったバー(魂)は冥界の王オシリスの元を訪れ「死者の審判」を受けます。
この審判を無事にクリアすると故人は「アアルの野」や「葦の原野」と呼ばれる楽園に入る事を許されます。
そこは地上そっくりではあっても病気や川の氾濫は起こらず、労働の必要もなく、過酷な現世とは違って何不自由ない穏やかな暮らしができると信じられていました。
しかしこの楽園で生きていくために霊魂は復活する必要があり、復活するためにはきちんと保存された肉体を器としてバー(魂)とカー(精霊)が再び揃う必要があったのです。
以上の理由により、古代エジプトでは死後も遺体を大切に保存する必要が生じ、ミイラづくりが行われるようになりました。
「死者の審判」については以下で詳しく解説しておるぞい
神さまが2重バリアで臓器を守っていた理由が分かるね
1つでも欠けたら楽園行きはなしなら、そりゃ厳重になるわ
補足ですが、人間の死後に肉体から切り離される魂は、以下の5つで構成されるとする場合もあります。
バー | 個性や意識を司り、鳥の身体と人間の頭を持っている。 このバーだけが冥界に行く。 |
---|---|
カー | 人間の精神的なエネルギーが独立したもの。 |
レン | その人間の名前を意味する。 |
イブ | 感情や思考を生み出す心臓。 |
シュト | 不可分な存在であり影。 |
正直大枠に影響はない上分かりにくくなるので、当ブログでは基本的にはバー(魂)とカー(精霊)の2種類で解説しております。
シンプルにいくのじゃ、シンプルに
4兄弟の主な登場シーン
ホルスの息子たちについての初期の記述は、エジプト神話の原典史料の一つ「ピラミッド・テキスト」に見られます。
ここでは「ホルスの四人の息子」という記載のほか、「王の棺の守護者たち」や「王の友人たち」とも呼ばれていたようで、王が昇天するのを助ける役目も担っていたようです。
ただこの「ピラミッド・テキスト」には彼らについての物語はおろか姿かたちについても具体的な説明はされておらず、「カノプスの壺」自体も初期は亡くなった王の頭部が外装に彫られていました。
意外と謎に包まれていたのね
この4兄弟の頭部が「カノプスの壺」に彫刻されるようになったのは、第18王朝以降の時代であるとされています。
またこの4兄弟の母は豊穣の女神イシスではありますが、睡蓮(ロータス)の花から生まれてきたとされています。
「死者の審判」の間には開花した睡蓮の花があり、その上にこの4兄弟が立っている姿が描かれています。
古代エジプトにおいて、朝になると花開き夕方になると閉じるサイクルを繰り返す睡蓮の花は再生の象徴とされました。
ホルスの息子たちの役目も、最終的には復活をサポートする事だと言えるので、この睡蓮の花と関連付けられたものと考えられます。
また彼らの役割からもわかるように、ほかの神々のように特定の地域で定期的な宗教的崇拝を受けたのではなく、もっぱら葬儀の場に登場する形で活躍していたとされています。
ホルスの4人の息子が登場するエンタメ作品
4兄弟は単独での露出は少ないものの、
父ホルスとの共演でエンタメ作品に出ているよ!
彼らが登場する作品を簡単に紹介するわよ~
- 遊☆戯☆王シリーズ
-
1996年から2004年まで週刊少年ジャンプにて連載された、高橋和希先生による漫画作品、およびその派生作品です。
漫画ももちろんですがやはりカードゲームが有名ですよね。
ホルスの4人の息子たちは、父ホルスと共演する形で数種類のカードに採用されています。
「ホルスの加護-ケベンセヌフ」、「ホルスの祝福-ドゥアムテフ」、「ホルスの先導-ハーピ」、「ホルスの栄光−イムセティ」と、ちゃんと1人1回は出番をもらっていて結構恵まれていますね。
おわりに
今回は、エジプト神話のホルスの4人の息子を紹介してきました。
エジプト神話に登場する神さまは途方もないほどに数が多く、一説には名前が分かっているだけでも約1,500の神さまがいるとも言われています。
他にも見た目が可愛かったり言動がぶっ飛んでいたり、魅力的な神さまがたくさん存在します。
その他の記事でもどんどんご紹介していきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
エピソード自体はないけど、役割はめちゃくちゃ重要だったわね
古代エジプト人に「死と復活」という
世界観がいかに浸透していたか分かる神さまだったね
しーゆーあげん!
参考文献
- ヴェロニカ・イオンズ 『エジプト神話』 青土社 1997年
- 大林太良 伊藤清司 吉田敦彦 松村一男 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2023年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講 』 新潮社 2022年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかるエジプト神話』 文庫ぎんが堂 2019年
他…
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