こんにちは!今回はエジプト神話より
家庭の守護女神タウェレトを紹介するよ!
またぶっ飛んだビジュアルの女神さまね
彼女は一見恐ろしいけど、
多くの人々に愛された女神さまだよ!
ではさっそくいってみよう!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- エジプト神話にちょっと興味がある人
- エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- エジプト神話に登場する「家庭の守護女神タウェレト」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「エジプト神話」って何?
「家庭の守護女神タウェレト」はエジプト神話に登場する女神さまです。
エジプト神話とは、ナイル川流域で栄えた古代エジプト文明の人々に信仰された神さま達の物語。鳥やカエルなど、動物をモチーフにしたユニークな神さまも数多く登場する多神教の世界です。
大きく分けて4つの地域でそれぞれ異なるストーリー(創世神話)が語られており、そのすべてを「エジプト神話」として認めるおおらかさと寛容さを持っています。
そのぶん矛盾や混乱が見られますが、それもまたエジプト神話の魅力であり他の神話とは一線を画す持ち味にもなっています。
単に神格化するのみならず、キメラ的神さま
まで生み出すのがエジプシャンなのじゃ
主に以下のあたりの地域で信仰された神話です。
エジプト神話は起源の特定が難しいと言われます。
古代エジプト文明成立の時期から考えても、約5,000年前には神話に登場する神さま達への信仰があったようです。
とても長い歴史を持つ、ミステリアスな魅力あふれる物語です。
家庭の守護女神タウェレトってどんな女神さま?
タウェレトは雌ライオンの足にナイルワニの尻尾を持つ、2足歩行する雌のカバの姿で描かれる女神さまです。
彼女は家庭を守り母子を保護する豊穣の女神としての側面と、外敵を討ち滅ぼす攻撃的な守護神としての側面を持っていました。
極端な二面性は彼女に、一見すると恐ろしい異様なビジュアルを持たせましたが、タウェレトは古代エジプトの一般民衆から大変篤く信仰されました。
彼女は王権とはあまり関わらず、民草の日常生活を見守る事に徹した割と珍しい女神さまでもあります。
タウェレトはテーベのデイル・エル・バハリに神殿を持ちましたが、その性質上、エジプト全域で広く信仰されました。
テーベは以下のあたりの地域だよ!
こんなビジュアル
タウェレトは非常に情報量の多いビジュアルを持っています。
彼女は危険な生物として知られた雌のカバの姿をしており、二足歩行で直立した姿で描かれます。
また彼女はナイルワニの尻尾と雌ライオンの足を持っており、これまたエジプトで恐れられた捕食動物たちの特徴を反映しています。
タウェレトの手は「サア」と呼ばれる象形文字の形に束ねたパピルスの上に置かれており、これは「保護」や「命の恩人」という意味を持っていました。
さらに彼女のお腹は妊娠して膨らんでおり、大きく垂れ下がった人間の胸も持っているのです。
まだ頭の中が整理されないわ
高熱でうなされている時に見る夢みたいだね
タウェレトのモチーフには、
- ライオン
-
ご存じ百獣の王で陸上で最も恐ろしい存在。
また太陽や王権を象徴する古代エジプトの神聖動物。 - カバ
-
古代エジプトの神聖動物にして水辺で最も恐ろしい存在。
水辺どころか地上最強の動物説すらある。
雄のカバは混沌の化身としてファラオに狩られまくったが、子どもを熱心に守る雌のカバは厄除けの神さまとして神聖視された。 - ワニ
-
これまた古代エジプトの神聖動物にして水中で最も恐ろしい存在。
実際古代エジプト人のワニ被害は多かったと言われている。
と、ナイル川周辺の生態系で特に恐れられると同時に、宗教上神性とされた動物たちが採用されています。
情報満載のダイナマイトボディね
これらの獰猛な生物は人間に害をなす一方で、その力で罪なき人々から悪を追い払うとも信じられていました。
またタウェレトは豊穣や出産を司るなど、養育的な側面も持った女神さまでした。
そのような性格をビジュアルに反映させた結果が膨らんだお腹と胸であり、この要素はエジプトに豊穣をもたらしたナイル川の神ハピの特徴と類似しています。
実際にタウェレトはハピとも関連が強い存在とされ、両者の共通点は「再生の力」を表しています。
タウェレトの姿は、性質的には両極端な要素をごちゃ混ぜにして描かれています。
これは彼女が豊穣や再生の女神であると同時に、恐ろしい守護神としての側面を持っていたことを表しているのです。
三獣合身のキメラ的な女神さま…
なんかどっかで見たような…?
幻獣アメミトのことじゃろう
タウェレトと同様に、カバ、ワニ、雌ライオンの身体的特徴を持った女神さまに幻獣アメミトがいます。
彼女たちはとんでもない部分で共通点を持っていますが、直接的には特に関連のない別個の存在です。
タウェレトが養育や援助などの保護的役割を持っていたのに対し、アメミトは罪深い不浄な魂を食らうという破壊的な役割を担っていました。
ちょっとあんた!!!
なに真似してんのよ!!!
全身ユニ〇ロ被りみたいじゃない!!!
あんたこそやめなさいよ!!!
まぁまぁ、使ってるパーツは絶妙に違うし
簡易プロフィール
名前 | タウェレト(Taweret) |
---|---|
その他の呼び名 | タウルト(Taurt) トエリス(Toeris) トゥエリス(Thoeris) アペット(Apet) イプス(Ipy) イペット(Ipet) オペット(Opet) レレト(Reret) 偉大なるもの 天国の女主人 地平線の女主人 水を取り除く女 清らかな水の女主人 誕生の家の女主人 |
象徴 | カバ サア(保護の象徴) |
役割 | ラーの目 女性の守護神 以下のものを司る ・家庭 ・妊娠 ・出産 ・育児 ・豊穣 ・若返り ・葬祭 ・再生 |
主な業績 | ラーの目としてナイル川の氾濫を起こした 幼いホルスを育てて反乱軍に参加した |
家族 | 夫:家庭の守り神ベスの場合も 夫:砂漠の神セトの場合も 子:冥界の王オシリスの場合も 子:豊穣の女神イシスの場合も |
誕生と家族、経歴
タウェレトの誕生や彼女の両親について説明する神話は、メジャーな文献には特に残っていないようです。
ただしカバという生物に対する神聖視は、初期王朝時代(紀元前3100年~紀元前2686年頃)以前からすでにあったとされ、少なくとも彼女の原形となる存在は古くから崇拝されていたことが分かります。
タウェレトが信仰の対象として目立つようになったのは、中王国時代(紀元前2055年~紀元前1795年頃)に入ってからだとされています。
彼女はさまざまな日用品や儀式用のアイテムに描かれるようになり、特に哺乳瓶に姿が描かれるなど、タウェレトが子育ての守護女神としての役割を果たしていたことがうかがえます。
タウェレトが描かれたアイテムは後ほど紹介するわよ
新王国時代(紀元前1550年~紀元前1069年頃)に入ると彼女はさらに民衆人気を高め、タウェレトは生命を育むだけでなく再生をも司ると信じられました。
さらに時代が下ってプトレマイオス朝~ローマ支配下の時代(紀元前332年~紀元後390年頃)には、カルナックにタウェレトを祀る神殿が建てられていました。
また彼女は太陽神アメンの神聖なる母の1柱として数えられ(複数いる設定だった)、他の神々を祀る神殿にもその姿が描かれたといいます。
表舞台への登場は比較的遅めだったタウェレトですが、その信仰はかなり後の時代まで続いたことが分かります。
大器晩成型だったのかな
タウェレトへの崇拝はエジプトのみならず国外にも見られ、ヌビアやフェニキア、後にミノア文明が栄えるクレタ島にまで及んだとされています。
彼女に対する信仰がここまで広く長く続けられた要因のひとつには、タウェレトが王権とはそれほど深く関わらず、「庶民の守護女神」に徹したことが挙げられるでしょう。
王権と結びつくと出世はするけど共倒れするもんね
素晴らしき処世術じゃの
またタウェレトは長きに渡って人々から崇拝されたため、その家族についてはさまざまな設定が付加されています。
彼女の夫には砂漠の神セトがいたとされたほか、冥界の王オシリスと豊穣の女神イシスの母であると言われたこともあったようです。
タウェレトの主要な業務
タウェレトの主な仕事を見てみよう!
複数の神さまとチームを組んで出産と育児をサポート
タウェレトはイペットやレレトなど、他にもさまざまな呼び名で呼ばれます。
これらはタウェレトを性質ごとに分類した姿であり、彼女を構成する要素であり、一部はもともと独立した女神さまで、みんなカバの姿をしているとされます。
う~ん、ワケがわからないわ
タウェレトはキン〇スライムみたいな
状態だと思えばよいじゃろ
いずれにせよ彼女は、さまざまな性質を持つ神格の集合体として「家庭の守護女神」の役割を果たしたと考えられています。
タウェレトは家庭の守り神ベスとも協力して悪霊を追い払い、出産中の女性を助けたほか、生まれた子どもやその後の育児の守護女神としても重要な役割を果たしました。
まさにチーム戦だったんだね
さまざまな日用品に描かれて人々の日常を見守る
タウェレトは一般の民衆から篤く信仰され、彼女の姿は人々の日用品や儀式用の道具、お守りなど、あらゆる場面で描かれました。
最も有名なのはカバの牙で彫られた杖やナイフで、これらは出産や子どもの保護を祈る儀式で用いられたと考えられています。
また育児を司る彼女の姿は、子どもの哺乳瓶などにも描かれました。
タウェレトは生命の誕生に深くかかわる一方で、それとは真逆の葬祭の女神としての役割も果たしていました。
沼地の植物で飾ったカバの像を墓や寺院に置く習慣があり、これには死後の再生を促進したり、亡者が冥界に旅立つのを助ける効果があると信じられたようです。
そのほか彼女は黄道十二宮の北の星座と結びつけられたことから、ファラオのセティ1世やセネンムトの墓の天井画にも天の女神として登場しています。
タウェレトが王室と関わった珍しい例だね
少し話は変わりますが、第18王朝(紀元前1570年~紀元前1293年頃)の時代に、太陽神アテン以外の神々の崇拝が禁止された時代がありました。
これはかなり極端な改革でしたが、その情勢下のアテン信仰の拠点であったアマルナの遺跡からも、タウェレトを象ったアイテムが発見されています。
このことからも、古代エジプト人の日常生活において、彼女がどれほど重要な存在であったかが良く分かります。
政治がどうなっていようと、
民衆を守る女神さまは必要とされたのね
タウェレトが関わった主なストーリー
タウェレトが活躍するシーンを見てみよう!
ぶちギレて家出するも戻ったら洪水を起こし豊穣をもたらす
タウェレトは「ラーの目」と呼ばれる、太陽神ラーのボディガード的な役割を担っており、彼の敵を武力で打ち払う攻撃的な側面も持っていました。
ある日タウェレトはラーの政治の欺瞞に不満を感じて反逆、彼の力の一部を奪って南のヌビアに逃亡して太陽の力を弱め、雌ライオンの姿で暴れまわります。
うぉぉぉぉぉぉ!!!
これは世界の均衡と安全を脅かす非常事態だったので、知恵の神トトが説得に乗り出し無事に事をおさめます。
エジプトに戻ったタウェレトはなぜかその流れでナイル川の氾濫を引き起こし、彼女は豊穣と若返りの女神としての重要な役割を果たしたと語られています。
実はこの「ラーの元から逃げる→結局戻る」というストーリーは、エジプト神話によく登場する物語で、ほかにもさまざまなバージョンが存在します。
家出をかますヒロイン枠には、愛と美の女神ハトホル、戦の女神セクメト、湿気の女神テフヌトがキャスティングされるパターンもあり、彼女たちの共通点は全員が「ラーの目」の役割を持っていることです。
このほか上記の女神さまたちが家に戻るタイミングで、タウェレトの姿をとったと説明される場合もあります。
題名的には『ラーの目物語~雌獅子怒りの家出篇~』じゃな
舞台のダブルキャストみたいなもんね
ベスと協力して未来の統一王を育てる
タウェレトは、有名な「メッテルニヒの石碑」に刻まれている、これまた有名な『オシリス神話』の物語の一幕にも登場しています。
砂漠の神セトは野心を起こし、兄であり地上の統治者であった冥界の王オシリスを討ち倒します。
オシリスは妻である豊穣の女神イシスらの助けによりどうにか復活しますが、彼は冥界に残って死後の世界を統治することになり、地上の王座はセトに簒奪されてしまいました。
イシスは夫との子である天空の神ホルスを育て上げ、玉座を取り戻す決意をしますが、まずはセトの執拗な攻撃から逃れて生き延びる必要がありました。
親子は多くの神々の協力を得て日々を生き延びますが、ある日イシスはホルスにこう語りました。
おまえは雌豚と小人に育てられたのよ
ほ~ん
これはほぼ間違いなく、タウェレトと家庭の守り神ベスを指していると考えられています。
また古代ギリシャの哲学者プルタルコスの著述によれば、タウェレトはイシスらの秩序の軍に参加し、ホルスがセトを倒すのをサポートしたとされています。
恩人に対してその呼び方よ
雌豚て…
『オシリス神話』については以下で解説しているよ!
世界の神話との関係
タウェレトが他の神話の神々と同一視された形跡は特にないようですが、エジプト神話の中のいくつかの女神さまとは関連付けられました。
彼女は同じ「ラーの目」の役割を持つ愛と美の女神ハトホルや戦の女神セクメトと同一視されたほか、天空の神ホルスを育てたという共通点からか、豊穣の女神イシスとも紐づけられています。
タウェレトが登場するエンタメ作品
タウェレトはいくつかのエンタメ作品に登場していたよ!
タウェレトが登場する作品を簡単に紹介するわよ~
- 真・女神転生シリーズ
-
『真・女神転生』は、西谷史先生による小説『デジタル・デビル・ストーリー』から派生したコンピュータRPGのシリーズ作品です。
タウェレトはこのシリーズのひとつ『真・女神転生2』に登場しているようです。
ビジュアルはピンク色の肌を持つでっぷりと太ったカバの姿をしており、ファラオがかぶるネメスと呼ばれる頭巾のようなものを身に着けています。 - MCUドラマ『ムーンナイト』
-
『ムーンナイト』は、マーベル・スタジオが製作するアメリカ合衆国のインターネットテレビドラマシリーズです。
神話をモチーフにしたキャラクターが登場する本作には、2足歩行するカバそのものの姿でタウエレトが登場しています。
彼女は王族が身に着けるような豪華な装束を身に着けていました。
この作品でのタウエレトは主人公サイドで立ち回るおとぼけキャラといった立ち位置で描かれているようです。
おわりに
今回は、エジプト神話の家庭の守護女神タウェレトを紹介してきました。
エジプト神話に登場する神さまは途方もないほどに数が多く、一説には名前が分かっているだけでも約1,500の神さまがいるとも言われています。
他にも見た目が可愛かったり言動がぶっ飛んでいたり、魅力的な神さまがたくさん存在します。
その他の記事でもどんどんご紹介していきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
すごい見た目の神さまほど
純粋に正義サイドだったりするわよね
ギリシャ世界にも影響を及ぼした存在感の強い女神さまだね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヴェロニカ・イオンズ 『エジプト神話』 青土社 1997年
- 大林太良 伊藤清司 吉田敦彦 松村一男 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2023年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講 』 新潮社 2022年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかるエジプト神話』 文庫ぎんが堂 2019年
他…
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