こんにちは!
今回はギリシャ神話より
魔女の息子テレゴノスを紹介するよ!
今回は人間族の紹介ね
彼はどんなキャラクターなの?
彼は英雄オデュッセウスとアイアイエ島の魔女キルケー
の息子で、父を探して旅をするんだ!
オデュッセウスの物語の
「別エンディング」に登場する人物じゃな
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、イタキ島の王オデュッセウスとアイアイエ島の魔女キルケーの息子で、まだ会ったことのない父親を捜して遥かな旅を続けるも、ちょっとした勘違いからその「父」の命を奪ってしまった悲劇の青年テレゴノスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「魔女の息子テレゴノス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


魔女の息子テレゴノスってどんな人物?
魔女の息子テレゴノスがどんな人物なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | テレゴノス Τηλέγονος |
|---|---|
| 名称の意味 | 諸説あり |
| その他の呼称 | テーレゴノス |
| ラテン語名 (ローマ神話) | テレゴノス(Telegonus) |
| 英語名 | テレゴノス(Telegonus) |
| 神格 | 特になし 魔女の息子 |
| 性別 | 男性 |
| 勢力 | 人間族 または半神 |
| 主な拠点 | アイアイエ島 |
| 親 | 父:イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς) 母:アイアイエ島の魔女キルケー(Κιρκη) または 母:海の女神カリュプソ(Καλυψω) |
| 兄弟姉妹 | 魔女の息子アグリオス(Ἄγριος) ラテン人の王ラティヌス(Λατῖνος) 英雄の息子ナウシトオス(Ναυσίθοος)とも ほか、異母兄弟姉妹も存在 |
| 配偶者 | イタキ島の女王ペネロペ(Πηνελόπη)とも |
| 子孫 | 諸説あり |
概要と出自
テレゴノスはギリシャ神話に登場する人間族、または半神の青年です。
彼は、イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)とアイアイエ島の魔女キルケー(Κιρκη)の息子で、
- 魔女の息子アグリオス(Ἄγριος)
- ラテン人の王ラティヌス(Λατῖνος)
- 英雄の息子ナウシトオス(Ναυσίθοος)とも
といった兄弟と共に育ちました。


Canvaで作成
愛と美と性の女神アフロディーテ(ΑΦΡΟΔΙΤΗ)の意思によって生まれたとされるテレゴノスは、彼らと共に、「聖なる島々の奥地」にあるというティレニア人(Tyrrhenians)*の地を支配したと伝えられています。
※概ね、古代ギリシャ人から見たイタリア方面の諸民族のこと。特に海賊を指す。


そんな彼は、父オデュッセウスの10年にも及ぶ故郷への旅を描いた物語『オデュッセイア(Ὀδύσσεια)』の”後日談”に登場。
あまりメジャーではない別エンディング、あるいはifストーリーの主要キャラクターとして活躍し、父親に引導を渡すという、非常に印象的な役割を果たしています。
偉大な魔女の息子、旅立った父を探して各地を
放浪し本人に引導を渡す!!
テレゴノスの活躍を見てみよう!
テレゴノスは、アイアイエ島の魔女キルケー(Κιρκη)の息子の一人です。
アグリオス(Ἄγριος)やラティヌス(Λατῖνος)、ナウシトオス(Ναυσίθοος)といった兄弟と共に島ですくすくと育った彼は、ギリシャ世界でも有数の魔術師から様々な指導を受け、やがて立派な青年となりました。


ImageFXで作成
そんなテレゴノスはある日、母キルケーから、
あ、お前の父親はなぁ、オデュッセウスいうんょ
戦からの帰りの道中、この島に漂着して、
1年ほどのんびりして旅立っていったわ
言ってなかったっけ?
と、衝撃の事実を告白されます。
イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)といえば、かの有名な「トロイア戦争」でギリシャ側を勝利に導いた賢き将軍、そして10年にも及ぶ苦難の旅の末に、ようやく故郷に帰還としたとされる、生きた伝説にも等しい存在です。


『トロイアの木馬の行進』 1760年 PD
…ほーん、そうなんやぁ………
(酒飲みたいなぁ……)
ギリシャ全土に名を轟かせたあの英雄が、自分の父親だった――。
胸にこみ上げる熱き思いに突き動かされた若き青年テレゴノスは、居ても立っても居られず、すぐに荷物をまとめてオデュッセウスが住むイタキ島へと向かいました。
※実際には、何らかの理由で母キルケーから捜索を命じられた


――それから、しばらくして。
特に大した描写もなくイタキ島に到着したテレゴノスは、自分がいる場所を敵地、あるいは目的と関係のない別の島であると誤認し、その場で略奪行為に及びます。
多少の役得がないと、
こんな仕事やってられませんてねぇ~
当然、オデュッセウスの家臣たちはその侵入を拒むべく応戦しますが、小競り合いが激化した結果、テレゴノスは多数の守備兵の命を奪うことになりました。
すると、騒ぎを聞きつけたイタキ島の主オデュッセウス本人が、自ら武器を取って戦場に赴き、悪しき侵略者を葬らんと立ちはだかります。
おぅおぅおぅおぅ、
ここが誰の島やと思っとんのかコラぁ~
相対している男が実の父親であることに気が付かないテレゴノスは、アイアイエ島の象徴とされる武器―穂先にアカエイの毒の棘を付けた槍*―を振り回し、家畜を守ろうと現れた老人に向けて容赦のない攻撃を仕掛けました。
※穂先に付けているのは「海鳥の骨」とも


あばぁぁああぁぁぁ…
かつての英雄も寄る年波には勝てず、オデュッセウスは実の息子の一撃をその身に受けて、取り返しのつかない致命傷を負ってしまいます。
ゼェゼェ…
ま、息子のテレマコスに父を討たせるよりは、
マシな結末じゃろう…
これも運命として受け入れるほかあるまいよ…
ゴホッ…
して、若者よ、君はいったいどこの誰なのかね…?
………我が名はテレゴノス
アイアイエ島の魔女キルケーの一子なり…
キルケーとな、あの日々が懐かしいのぅ…
つい昨日のことのように思い出せるわぃ…
このオデュッセウス…
一度は愛した女の息子に討たれるならば…
死に様としてはむしろ、贅沢すぎて文句も言えぬのぅ……


『オデュッセウスとキルケ』 17世紀前半 PD
ファファファファファファファファイ‼?‼?‼?‼?
満足気な表情で目を閉じた英雄オデュッセウスは、負傷から3日後、高齢ながらも気力衰えぬままにこの世を去りました。
アバババババババババババ
これまで探し求めてきた実の父親を、知らぬうちに自らの手に掛けてしまった――。
真実を知ったテレゴノスは、自らの髪を引きむしって慟哭し、取り戻しようのない過ちを深く深く後悔します。
彼は、亡きオデュッセウスの遺体とその妻ペネロペ(Πηνελόπη)、さらに異母兄弟となるテレマコス(Τηλέμαχος)を連れて母が待つアイアイエ島へと戻り、キルケーに事の顛末を報告しました。
う~ん、どうやったらそんなに
ややこしい事態になるのかしら?


『キルケー宮殿のユリシーズ』 1667年 PD
偉大なる魔女はこの3名に「不死性」を授け、テレゴノスはペネロペと、キルケー自身はテレマコスと結婚し、4人そろって祝福された島々エリュシオン(Ἠλύσιον)に送られたと伝えられています。
めでたし、めでたし――。
どどどどどゆことー!?!?
どどどどどゆことー!?!?
本編では、父オデュッセウスを探し求めて旅に出たテレゴノスでしたが、彼が
農民たちが花冠をつけ、
踊っている場所に都市を建設せよ
という神託を授かったため、故郷を出発したとする別伝も存在します。
それによると、テレゴノスはイタリア半島のとある地域で予言された光景を目撃し、そこに「プリニストゥム(Prinistum)」という都市を建設したのだそうな。
その町は、ローマ人からは「プラエネステ(Praeneste)」、現代の人々からは「パレストリーナ(Palestrina)」という名前で呼ばれたと言われています。
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する魔女の息子テレゴノスについて解説しました。
ifストーリーとはいえ、
正直言ってワケの分からない結末だったわね
古代の人々には刺さる、
何かしらのカタルシスがあったのかもしれないね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










