こんにちは!
忙しい人のための神話解説だよ!
この記事では、忙しいけどエジプト神話についてサクっと理解したいという方向けに、有名どころの主要なストーリーをざっくりと紹介していきます。
とりあえず主だった神さまの名前とストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
第1回はこちら
可能な限り細かい解説はすっ飛ばすわよ
すでに忙しいあなたはコチラから
さっそく本題に飛べるぞい
詳細については、神さま個々人(?)の紹介記事があります
興味がわいたら見てみてね!
第2回である今回は、エジプト神話の中でも最も古いとされる『ヘリオポリス神話』について解説していきます。
ゆっくりしていってね!!!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- エジプト神話にちょっと興味がある人
- エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- エジプト神話のひとつ『ヘリオポリス神話』についてざっくり把握できます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、この記事の概要を時系列でざっくりまとめておきます。
もはや元も子もないような…
何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
『ヘリオポリス神話』のストーリー
- 創造神が自らの意志で無の世界から誕生する。
- 創造神は1人で大気と湿気の兄妹を生むが、片方が家出娘で一悶着ある。
- 子どもたちは結婚して孫が2人(大地と天空)生まれるが、この孫たちも結婚する。
- 孫夫婦がいちゃつきすぎて父親がブチ切れ、むりやり2人を引き離す。
- 天と地が分かれて空間ができ、太陽と大気が通り人間が住む領域が出来上がる。
- 天空は妊娠していたが、創造神を怒らせて出産を禁じられる。
- 知恵の神に相談してどうにか無事出産、1年も365日になってだいたいのことが整う。
です!!
お疲れさまでした!!
ちなみに兄弟姉妹婚は古代エジプト
でも実際にみられたのじゃ
そこはもうツッコまないのがお約束だね!
『ヘリオポリス神話』の立ち位置
本編に入る前に、今回のテーマの
だいたいの立ち位置を把握しておこう
さまざまな物語が残るエジプト神話ですが、その世界の始まりを描く「創世神話」にはなんと大きく分けて4つの物語が存在します。
★『ヘリオポリス神話』
最も古い物語のひとつで特にメジャーな創世神話。
都市ヘリオポリスを中心に発展。
統一王朝成立以前から存在しており、続編に『オシリス神話』がある。
『メンフィス神話』
最初の統一王朝の首都メンフィスで伝えられた創世神話。
基本的には『ヘリオポリス神話』のストーリーを引き継ぐが最高神が変更されている。
『ヘルモポリス神話』
上記2つとは別に、都市ヘルモポリスを拠点に伝わる創世神話。
世界の成立過程も主要な神々のメンツもガラッと変わったオリジナルストーリーが展開。
『テーベ神話』
新王国時代の首都テーベに伝わる創世神話。
基本的なストーリーラインは『ヘルモポリス神話』を引き継ぐが、最高神に変更が加えられている。
今回はこの中から最も古くかつメジャーな、①『ヘリオポリス神話』について解説していきます。
ヘリオポリスはだいたい以下のあたりだよ
主な登場人物
この物語の登場人物をざざ~っと掲載しておくぞい
相関図でもざっくり把握しておこう
イカしたメンバーを紹介するぜ!
本編のストーリー
いよいよ本編行ってみよう!
創造神アトゥムが自らの意志で誕生してくる
『ヘリオポリス創世神話』においてもっとも古い時代、この世界にはただ暗闇が広がるばかりで何もありませんでした。
唯一、原初の水ヌンという存在だけがただそこに在りました。
冒頭から良く分からないわ
とりあえず何もない暗闇に、大きな池か
湖だけがあったとイメージすればよいじゃろう
創造神アトゥムもまた姿かたちを持たない存在で、存在しているともいえない状態でしたが、ある時彼はこう考えました。
生まれよっ!!
アトゥムには両親もなく誰かの力を借りるでもなく、ただ自分の意志の力だけで自分自身をかたち作り、ヌンの水面から出現しました。
記念すべき最初の神さまの誕生の瞬間です。
アトゥムの誕生シーンは、ナイル川の洪水の後に
水が引いて、大地が姿を現す様子を描いているとされているよ
彼は無事に形をもって生まれ出てくることが出来ましたが、周りにはヌンの水しかないので、自分自身が立つ場所すらありません。
そこでアトゥムは「原初の丘」と呼ばれる場所を作り出し、とりあえずそこに立ってこれからについて考える事にしました。
この「原初の丘」は、すべての世界のはじまりの場所となりました。
思い付きで生まれてきたは良いものの、この世界には自分一人しかいないしやる事がありません。
暇だな~Nintendo Switchもないしなぁ~
よし、仲間を増やすか
こうしてアトゥムは子孫となる神さまを生み出す決意をし、これをきっかけに世界の創造に着手する形になりました。
この章で登場した神さま
アトゥム1人で2人の子を成すが、ワンオペなので育児に悩む
アトゥムは子孫を作り出してこの世界をにぎやかにしようと考えましたが、ここでちょっとした問題に直面します。
あれ?でもこの世界おれ1人しかいないじゃん
子どもつくれないじゃん
しかしそこは自らの意志で誕生してくるレベルで強大な力を持つアトゥム神。
世界の理を超越した存在である彼は両性具有の神さまでもあり、彼一人で存在として完結していました。
なんとアトゥムは自らの手の上下運動によって最初の2柱の神さまを生み出したのです。
また一説には唾を吐いたりくしゃみをすることで子を成したとも言われていますし、自らの影と交わったとする説もあります。
ぺっ、ぺっ!!
私だ (汚ったねえな…)
私だ (汚ったねえな…)
お前たちか (えっ、これで?)
アトゥムは最初の子である大気の神シューと湿気の女神テフヌトを生み出しました。
彼らは性別を持った最初の神さまで、2人は後に結婚して夫婦となり、さらに子孫となる神々を生み出します。
しかし2人が立派な大人になる前には、子どもらしく父親を悩ませることもありました。
シューとテフヌトが結婚する前に付き合っていた時代の事です。
ささいなきっかけから2人は口論を始めてしまい、怒ったテフヌトは父アトゥムにも告げず、エジプトを離れて温暖な南のヌビアに家出をしてしまいます。
シューはすぐに寂しくなって彼女を連れ戻そうとしますが、テフヌトは近づく人間や神を破壊する獰猛な雌ライオンに変身して暴れまわっており、もはや誰も彼女を止める事ができなくなっていました。
当然ながらアトゥムも心配で居ても立っても居られません。
がお~
あんな子に育てた覚えはないわよ!!
あんたたちなんとかしなさい!!
へい
ぎょぎょいの御意
ここでシューは友人(?)であり古代エジプトの最多アシスト王である知恵の神トトを頼り、間を取り持ってもらいます。
トトの説得もあってテフヌトは冷静さを取り戻し、父と兄のもとに帰ってきたと言われています。
シューとテフヌトはその後結婚し、さらに子孫を増やしていきます。
この章で登場した神さま
孫の世代が生まれるが、倒錯しすぎて家庭内がギスギスする
シューとテフヌトの間には、大地の神ゲブという息子と天空の女神ヌトという娘が生まれました。
この子どもたちもまた結婚して夫婦となっており、仲が良いことに安心していましたが、そのうち様子がおかしいことに気が付きます。
あの子たちも家庭円満みたいでよかったわね~
う~ん、でも最近ちょっと度が過ぎない?
実際にゲブとヌトの円満ぶりは常軌をはるかに逸しており、傍から見ても明らかに異様なレベルになっていました。
なんとこの夫婦、愛し合っている状態のまま互いに離れようとせず、仕事もろくにしなくなってしまったのです。
他人の最中の姿を四六時中見せられて気まずい上に不愉快なのはもちろんですが、大地と天空がくっついていると太陽や大気が通るスペースがなくなってしまいます。
この惨状を見た父親シューは当然ながら恥ずかしいやら腹立たしいやらで冷静ではいられません。
彼は強制的に二人を引き離ました。
おどりゃクソ餓鬼!!!!
ぴえん
WTF
こうして無事に世界の天と地の間に空間が出来ました。
これ以降シューは天空である娘ヌトを支え続け、太陽と大気の通り道であり、人間が誕生し住まうこの空間を維持するという余計な仕事を負わされるハメになりました。
え~この度の事件につきましては、
親としても大変遺憾の極みであり…
古代エジプトの壁画では、横たわった息子ゲブの上に娘ヌトが覆いかぶさり、シューがその間に立って必死にヌトを支えている様子が描かれます。
夫婦も意地なのか、ヌトは手足を地面に向けて限界まで伸ばしているため身体が思いっきり弓なりに曲がっており、2人の手足が絡まっている場合もあるようです。
一連の様子を見ていたアトゥムも、子孫たちの体たらくにご立腹でした。
何やってんのあいつら…
この章で登場した神さま
ひ孫の世代が生まれそうになるが、激おこだったアトゥムは出産を禁じる
父シューの介入でどうにか本来業務に戻ったヌトでしたが、実は彼女はこの時夫ゲブとの子を宿していました。
しかし先の狼藉を知っている創造神アトゥムは、彼女に1年のすべての月で出産してはいけないという罰を課します。
ひ孫が生まれるのを禁じるってだいぶROCKね
他の罰は考えなかったのかしら
そろそろ産気づきそうで焦ったヌトは、親の代から世話になっているサポートの鬼、知恵の神トトに相談します。
トトは月の神コンスと賭け勝負を行い、これに勝利したことで1年のどこにも属さないうるう日を5日間作ることに成功。
この間にヌトは後の冥界の王オシリス、豊穣の女神イシス、砂漠の神セト、葬祭の女神ネフティスの4兄妹を出産することが出来ました。
この出産も難儀なもので、兄オシリスにライバル心むき出しのセトが母ヌトの脇腹を食い破って出てきたりと、まさに鳴り物入り兄妹の誕生でした。
がぶ~
あばばばばばばb
またこれをきっかけにもともと360日しかなかった「1年」が365日になり、人間たちの文明が発展していくだいたいの下地が整ったのでした。
これが太陽暦と太陰暦の差だそうだよ
1年の日数を増やすなんてスケールが違うね
この物語で登場したヌンとトトを除く9柱の神さまはヘリオポリス九柱神(エンニアド)と呼ばれ、偉大な神々として人間たちから崇拝されるようになりました。
ここで誕生した4兄妹もそれぞれ強烈すぎる個性の持ち主で、成長して後は祖先たちも顔負けのカオスな大騒動を引き起こしていきます。
彼らの物語は、この『ヘリオポリス神話』の続編に位置づけられる、『オシリス神話』にて語られることになるのです。
続きが気になるね
この章で登場した神さま
補足:太陽神ラーも絡んでくる
今回ご紹介したこの物語は、同じくエジプト神話の太陽神ラーを創造神として描かれることがあります。
その混乱を避けるために簡単に事情を解説しておきます。
ここはあくまで補足なので、時間に余裕のある方向けじゃ
『ヘリオポリス神話』における創造神アトゥムは、太陽神としての性質も持っていました。
その共通点からアトゥムとラーは同一視されることが多くなり、最終的には習合してアトゥム=ラーと呼ばれるようになります。
当たり前のように出てくる「習合」ってどういう意味?
「習合(しゅうごう)」とは、さまざまな宗教の神さまや教義が合体したり融合したりする事をさす言葉で、神話界隈では頻出用語です。
単純にキャラ被りや人気のパワーバランスで一つにまとまることもありますが、時には政治的な目的で人為的に習合した神さまも存在します。
こういった事情から、創造神のポジションがアトゥムだったりラーだったり、アトゥム=ラーだったりするわけです。
エジプト神話あるあるじゃ
こまかいことは気にしてもしゃあない
ラーを主軸に説明されるときは、
- 湿気の女神テフヌトは家出の際にラーの太陽の力を盗んでいた。
- 2人が家出から戻った時にラーは感激し、その時に流した涙から人間が生まれた。
- ヌトの出産を禁じた理由が、「子が災いを招く」という予言があったから。
といったオリジナル要素の追加・変更がなされています。
おわりに
今回はエジプト神話の主要な物語の一つ、『ヘリオポリス神話』を紹介してきました。
このシリーズではエジプト神話を構成する主だったストーリーを、できるだけ分かりやすく、さくっと把握できるように解説していきます。
その他の物語もどんどんご紹介していきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヴェロニカ・イオンズ 『エジプト神話』 青土社 1997年
- 大林太良 伊藤清司 吉田敦彦 松村一男 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2023年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講 』 新潮社 2022年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかるエジプト神話』 文庫ぎんが堂 2019年
他…
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