こんにちは!
今回はギリシャ神話より蓮食いの民ロトパゴイを紹介するよ!
これまた一風変わった肩書ね
彼らはどんなキャラクターなの?
彼らはリビア西部に住んだとされる不思議な部族で、
「蓮」と呼ばれる珍しい植物を常食とした人々なんだ!
オデュッセウスの帰還物語『オデュッセイア』に登場する、
友好的ながらもなかなかの脅威となる存在なのじゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、北アフリカのリビア西部に住んだとも言われる一風変わった部族で、「蓮」と呼ばれる幻覚作用のある植物を常食とし、悪意はまったくなかったものの、イタキ島の王オデュッセウスとその仲間たちを詰み状態に追いやりかけたLove & Peaceな人たち、ロトパゴイをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「蓮食いの民ロトパゴイ」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


蓮食いの民ロトパゴイってどんな人々?
蓮食いの民ロトパゴイがどんな人々なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | ロトパゴイ Λωτοφάγοι ※単数形でロトパゴス(Λωτοφάγος) |
|---|---|
| 名称の意味 | 蓮を食べる者たち |
| その他の呼称 | ロートパゴイ ロートパゴス ロータスイーター 蓮食人(Lotus-eaters) 食蓮人など |
| ラテン語名 (ローマ神話) | ロトパゴイ(Lotophagoi) ロトパゴス(Lotophagos) |
| 英語名 | ロトパゴイ(Lotophagoi) ロトパゴス(Lotophagos) |
| 神格 | 特になし 蓮食いの民 |
| 性別 | 男女さまざま |
| 勢力 | 人間族 |
| アトリビュート (シンボル) | 蓮(lotus) ※睡蓮の一種の蓮(ロータス)とは別種とも |
| 主な拠点 | リビア西部 ほか諸説あり |
| 親 | 種族の紹介のため割愛 |
| 兄弟姉妹 | 種族の紹介のため割愛 |
| 配偶者 | 種族の紹介のため割愛 |
| 子孫 | 種族の紹介のため割愛 |
概要と出自
ロトパゴイはギリシャ神話に登場する伝説上の部族です。
※単数形でロトパゴス(Λωτοφάγος)
彼らはこの世界のどこかに住む、「蓮の実」*を常食とする民で、あらゆる悩みが消え、時が止まったかのような「忘却」と「至福」の領域に生きていると考えられていました。
※「ロートス」とも


ImageFXで作成
『オデュッセイア』を著したホメロスによると、この「蓮」なる植物が、私たちの良く知る水生植物の「蓮」を指しているのかは、厳密には判然としないのだそうです。
ロトパゴイが食したロータスは「ナツメ」に近い味の木の実であったらしく、エジプトをはじめとした地域の沼沢地に生じる「百合」に似た植物の「蓮」とは、まったくの別種ではないかとも推察されました。
また、『歴史』を著したヘロドトスは、ロトパゴイを北アフリカのリビア西部に住む部族と同一視したようですが、その一方で彼らを、あくまでも神話上の非現実世界の住人と見なす説も根強く残っています。


いずれにせよこの不思議な一族は、イタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)の10年にも及ぶ故郷への旅を描いた物語『オデュッセイア(Ὀδύσσεια)』に登場。
船の乗組員を甘美な「蓮の実」で誘惑する、搦め手系のキャラクターとして描かれました。
オデュッセウスの仲間たち、”気持ちが良くなる植物”
で完全に仕事を忘れる!!
ロトパゴイの活躍を見てみよう!
10年にも及ぶ長期戦となった「トロイア戦争」にどうにか勝利し、故郷に残してきた美しい妻と幼い息子に1日でも早く再会するため、12隻の船団を率いて敵地を後にしたイタキ島の王オデュッセウス(Ὀδυσσεύς)――。
しかし、彼らの船旅は「順風満帆」とは真逆そのもので、神々の思惑と怒りに好き放題に振り回される、気の毒なレベルの苦難の連続となりました。


『トロイアの木馬の行進』 1760年 PD
出航早々に進路を大きく逸れたオデュッセウスたちは、トラキアの都市イスマロスを発ち、今度こそはと故郷イタキ島を目指して船を進めます。
あ~あ、そもそも死人が出るような
旅じゃなかったはずなんだがのぅ
とにもかくにも、失った時間を取り戻さねば…
前回までのお話はコチラ!!


ところが、先を急ぎたい船長の心中をよそに、外部環境はこの一団にさらなる試練をもたらしました。
全ギリシャを支配する雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ)が凄まじい嵐を起こし、12隻の船を容赦なく打ちのめしたのです。


暴風雨は2日2晩続き、3日目の朝にようやく晴れ間が見える頃、オデュッセウスの船団はマレア岬の南にあるキティラ島の近くに差しかかっていました。
(おっ、なんやかんやあったけど…)
(このままペロポネソス半島をぐるっと迂回すれば、
我が故郷はすぐそこやんけ…!)
彼がそう思ったのも束の間、今度は波と潮流、それに北風までもが加わって船をあらぬ方向へと導き、旅の一行を9日間にも及ぶ漂流生活へと招待します。
(わ、わしが一体…何をしたというんじゃ……)
10日目、ほぼほぼ満身創痍となったオデュッセウスと愉快な仲間たちは、遥かなる地中海を南下した先、北アフリカのリビアの海岸に辿り着きました。


『オデュッセイア』の航路図
ようやく上陸することができた彼らは、水を汲んで食事をとり、疲れた身体を少しでも癒すべく、しばしの休息に入ります。
それから少し経つと、オデュッセウスは、この島の住民たちの様子を探るために3名の偵察を放ちました。
数刻の後、この斥候部隊が出会ったのが、今回の主人公である蓮食いの民ロトパゴイです。


Canvaで作成
よく来たな貴様らー
ゆっくりしていきやがりくださいよー
ぎょっ、何者じゃ、おどれら!!
なんともほんわかとした不思議な空気を放つこの民は、船乗りたちに対して少しの敵意も見せず、むしろ旅人を歓迎する穏やかな人々のように思えました。
ロトパゴイと呼ばれた民族は、突如現れた偵察兵たちを温かくもてなし、彼らに「蓮」という珍しい植物の種を振る舞います。
※食べるのは「花」の部分とも


ふぁぁ~、なんてピースフルでラブに満ちた高揚感だろう…
すべての悩みがこの世界から消し飛んでしまったようだ~…
Love & Peace(愛と平和)!!
仕事も戦いも忘れて、この親切な人々と
永遠に共に暮らしていたいものだねぇ~
促されるままにその果実を口にした船員たちは、瞬く間に謎の多幸感と全能感に支配され、「蓮」なる摩訶不思議な木の実の虜となってしまいました。
実は、蜜のように甘いこの植物の種子には、食べた者に「眠り」と「甘美な夢」をもたらす、一種の幻覚作用があったのです。
ほぼ「麻薬」といって差し支えないこの木の実を摂取すると、人々は
- 故郷のことを忘れる
- 帰還への意志を失う
- 任務への関心を完全に失う
といった強い忘却効果に襲われ、寝ても覚めてもこの地に住んで「蓮」を食べ続けていたいという、絵に描いたような依存状態に陥るとされました。
この木の実、良い木の実
ちゃんと合法よ
これらを常食とするロトパゴイは一定の冷静さを保つことができましたが、身体が慣れていない外国の船乗りたちは、あっという間にガンギマリ状態となってすべてのやる気を失ってしまいます。


『意識不明のオデュッセウスの部下たち』 年代不明 PD
一方、その頃――。
…?
偵察にやったあいつら、帰り遅くない…?
仲間の戻りが遅いことを不審に思ったオデュッセウスは、自ら森の奥へと足を踏み入れ、彼らの無事を確かめるために先を急ぎました。
すると、そんな船長の目の前に、「忘却と至福の領域」あるいは「あらゆる悩みが消え時間が止まった場所」とも表現できるような、この世のものとは思えない奇妙奇天烈な光景が広がります。
い、一体なんじゃこれは…!
あっ、お前ら…!
そして、その異常な空間の片隅には、オデュッセウスが偵察を命じた3名の乗組員の姿が――。
あはっ、船長…
わしらはこのまま、この素敵な人たちと暮らしますけぇ…
ボスたちはどうぞ、自由気ままに旅を続けておくんなせぇ…
これまでどうも、くそお世話になりましたぁ~…
な、なんじゃお前ら、ラ〇っとんのけ…!?


Canvaで作成
続いて、当惑するオデュッセウスの視界に、これまでに見たことのない、不思議な「木の実」が映りました。
ペロッ
こ、これは…
青酸カリ!!
即座に状況を察した船長は、泣き叫んで嫌がる部下たちを力づくで引き戻し、彼らを縄で縛ったうえで船のベンチの下に押し込むと、大急ぎで他のメンバーに即時退却を命じます。


「蓮食人の島にいるオデュッセウス」 PD
こうして、オデュッセウスと不運な仲間たちは、薬物による事実上の全滅をギリギリのところで免れ、ギリシャ方面へと向けて再び船を発進させました。
ある意味で気の毒なこの集団は、その後も神々の思惑や怒りに振り回されて、とんでもなく長い旅路を歩んでいますが、それはまた別のお話――。
……もう嫌、この旅…
この木の実、良い木の実
ちゃんと合法よ
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する蓮食いの民ロトパゴイについて解説しました。
単なる敵対ではない、こういう形での
試練や妨害も存在するのね
ロトパゴイの人たちも、あくまで平和的
でフレンドリーだったもんね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










