こんにちは!
今回はギリシャ神話よりエジプトの王ブシリスを紹介するよ!
今回は人間族の紹介ね
彼はどんなキャラクターなの?
彼は海神ポセイドンと王女リュシアナッサの息子で、
エジプトの地を治めていたんだ!
ちょっとやり過ぎて半神の英雄ヘラクレスにぶっ飛ばされる、
神話のプチヴィラン的な存在じゃな
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、海神ポセイドンと王女リュシアナッサの息子として誕生したエジプトの王で、9年連続で飢饉に見舞われた祖国を救うために異邦人を生け贄に捧げるも、半神の英雄ヘラクレスに手を出したことでぶっ飛ばされた、選択肢のなかった男ブシリスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「エジプトの王ブシリス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


エジプトの王ブシリスってどんな人物?
エジプトの王ブシリスがどんな人物なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | ブシリス Βουσιρις |
|---|---|
| 名称の意味 | ブシリス(町)の |
| その他の呼称 | ブーシーリス |
| ラテン語名 (ローマ神話) | ブシリス(Busiris) |
| 英語名 | ブシリス(Bousiris) |
| 神格 | エジプトの王 |
| 性別 | 男性 |
| 勢力 | 人間族 |
| 主な拠点 | エジプトのブシリス |
| 親 | 父:海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ) 母:エジプトの王女リュシアナッサ(Λυσιάνασσα) または 母:ナイル川の精霊アニペ(Ανιππη) |
| 兄弟姉妹 | なし |
| 配偶者 | 不明 |
| 子孫 | エジプトの王子アムピダマス(Ἀμφιδάμας) エジプトの王女メリテ(Μελίτη) |
概要と出自
ブシリスはギリシャ神話に登場する人間族の王です。
彼は、海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)と王女リュシアナッサ(Λυσιάνασσα)の息子で、ギリシャから遠く離れたエジプトの地を治めました。
※母親をナイル川の精霊アニペ(Ανιππη)とする説も


Canvaで作成
ブシリスは、半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)の冒険におけるプチヴィランとして物語に登場し、神の血を引く男に息子ともども討たれる蛮族の王として描かれています。
神話としてはただそれだけのことですが、時代が下がってギリシャとエジプトの友好関係が確立されると、この逸話は一躍「センシティブな話題」に昇格。
当時の有名な著述家たちが、必死になってこのお話を覆そうと試みた記録が、数多く残されました。
割と珍しい、政治的にわちゃわちゃっとしたお話だね
旅行者を生け贄に捧げまくったブシリス、
英雄ヘラクレスに手を出してしまい余裕で滅ぼされる
ブシリスの活躍を見てみよう!
エジプトの王ブシリスは、海神ポセイドン(ΠΟΣΕΙΔΩΝ)と王女リュシアナッサ(Λυσιάνασσα)のあいだに生まれた息子です。
彼の時代、この砂漠の国では、なんと9年間も連続で厳しい飢饉が発生していました。


ぐぬぬ……
よりによってこのわしの政権時に~…
しかし、どうしたものか…
為政者として抜本的な解決策が求められたブシリス王は、苦肉の策として、キプロス出身の有名な占い師プラシウス(Φράσιος)を宮殿に召喚します。
彼は、エジプトの現状を聞いたうえで、この災厄を鎮める方法を問われると、
毎年、主神ゼウス(ΖΕΥΣ)に異邦人*を生け贄として
捧げれば、飢饉は終わるであろう~
※外国から来た人、見知らぬ人のこと
と予言しました。
※予言をしたのはピュグマリオンの息子トラシウス(Θράσιος)とも


ImageFXで作成
ほ~ん、なら、ひとまずその効果を確かめてみんとのぅ…
あ、そういえば、お前もその「異邦人」には該当するやんけ!
えっ!?いや、それは…
それはちょっと話が違うでしょうよ、我が君~…
こういうお話では、「占い師」とか
「予言者」は別枠扱いが定石じゃん?
………
……えっ!?
こうしてブシリスは、手始めに言い出しっぺの占い師プラシウスを犠牲に捧げ、そのお告げの真否を確認します。


そして、おそらくは、飢饉を鎮める確かな効果が実証されたのでしょう。
以降、このエジプト王は、毎年のように領地を訪れる旅行者をひっ捕らえ、彼らを大神ゼウスへの供物として捧げるようになりました。
当然と言えば当然ですが、いつしかブシリスは、極悪非道の蛮族王として周辺地域にその名を轟かせることになります。
まーねー、自国の統治が最優先課題だし?
多少の犠牲は仕方がないよね~ん
――それから、しばらくして。
旅行者が突然行方をくらますホラースポットとなったエジプトの地を、とある屈強な若者が通りかかります。
彼の名は半神の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)。
主神ゼウスの血を引く男で、これまでに幾多の冒険を潜り抜け、そのすべてで勝利をおさめてきたほぼ無敵の存在です。


『ヘラクレスとヒュドラ』 1475年 PD
有名な『12の功業』の一環として、「黄金の林檎」を手に入れるために「ヘスペリデスの園」を目指していたヘラクレスは、ここエジプトでブシリスの部下たちの手によって捕らえられました。
ヘラクレスの冒険の詳細はコチラ!


(このわしをどう扱おうっちゅうんか、
ぜひとも見せて頂こうやないのぅ…)
(しっかし暇やのぅ~)
余裕の態度で周囲の様子を探る半神の英雄は、やがて立派な祭壇の前へと引き出されます。
そこで彼は、ブシリスを筆頭としたエジプト勢力が何をしようとしているのか、概ねの当たりを付けることができました。
(なるほど、異邦人が姿を消すっちゅう噂は、
これが原因やったのね)
そうと分かれば、やることはシンプル――。
ヘラクレスは、おもちゃのような縛めをいとも簡単に破ると、即座に反撃を開始。
自慢の棍棒を振り回して、ブシリス王とその息子のアムピダマス(Ἀμφιδάμας)、そして使者カルベス(Χάλβες)を一瞬にして葬りました。


「祭壇上のヘラクレスとブシリス」 紀元前460年頃
出典:ArchaiOptix CC BY-SA 4.0
ウボァー
邪悪な因習を見事に断ち切った英雄は、特に何の思い入れもなくこの地を去り、目的地である「ヘスペリデスの園」を目指して颯爽と旅立ったと伝えられています。
ちなみに、残されたエジプトの民が、連続する飢饉から最終的に救われたのか――それを知る者はどこにもいません。
やりっ放しっかーーーーーーい!!!!
神話としては、「偶然通りかかった英雄が悪い王様を討伐する」という、きわめてシンプルで分かりやすい部類に入る今回の物語。
しかし、時代が下がってギリシャとエジプトの友好関係が確立されると、このエピソードは政治的な問題を孕みかねない、センシティブな話題として扱われるようになりました。
そりゃぁ、一方が旅人の命を奪う
蛮族扱いされているんだものね


「ヘラクレスとブシリス」
出典:Sailko CC BY 3.0
当時の著述家たちは、エジプト人が理不尽な生け贄の儀式を行ったという物語を否定し、その汚名を払拭するため、さまざまな視点からこの逸話の正当性を争ったとされています。
例えば、『歴史』を著したヘロドトスは、
ギリシャ人は結構ねぇ、軽率なことを言っちゃってるのよ
ほら、あのヘラクレスに関する馬鹿げた話
あれはね、ギリシャ人がエジプト人の性格や
慣習を全く知らないことの証だと思うね
特別な例外を除いては、「獣」さえも生け贄に捧げることが禁じられているエジプトで、どうやって「人間」なんてたいそうなもんを犠牲にできたのよ
人身御供なんて、どう考えてもあり得ないっつーの
と記しました。
この他にも、
- ブシリス王という存在自体が、実在したのか疑問視されるべきである
- ヘラクレスは、ブシリスよりもずっと後の時代に生きていた人間のはずである
- ブシリスの町の住人は確かに非友好的な性格をしていたが、この話はそれを誇張するために創作されたものである
など、両国間の関係に配慮がなされた、種々様々な考察が提唱されたと伝えられています。
隣国との関係に苦労するのは、時代や場所を問わず、
どこにでもある話なんじゃのぅ
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場するエジプトの王ブシリスについて解説しました。
①ゼウスに犠牲を捧げないと飢饉が続く
②ゼウスの血を引いた息子が悪王を倒して英雄扱いされる
あの最高神、どう考えてもマッチポンプでは?
子孫が多すぎて、
もはや収拾がつかなくなっているんだろうね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










