こんにちは!
忙しい人のための神話解説だよ!
この記事では、忙しいけどエジプト神話についてサクっと理解したいという方向けに、有名どころの主要なストーリーをざっくりと紹介していきます。
とりあえず主だった神さまの名前とストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
第1回はこちら
前回はこちら
可能な限り細かい解説はすっ飛ばすわよ
すでに忙しいあなたはコチラから
さっそく本題に飛べるぞい
詳細については、神さま個々人(?)の紹介記事があります
興味がわいたら見てみてね!
第3回である今回は、前回の『ヘリオポリス神話』の続編にあたる『オシリス神話』のストーリーをご紹介します。
ゆっくりしていってね!!!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- エジプト神話にちょっと興味がある人
- エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- エジプト神話のひとつ『オシリス神話』についてざっくり把握できます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、この記事の概要を時系列でざっくりまとめておきます。
ぱっと見で把握してね
何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
『オシリス神話』のストーリー
- オシリスが王に即位し荒廃したエジプト再建に着手、善政により平和に栄える。
- 嫉妬したセトによりオシリスが倒されるが、イシスによって一旦は復活する。
- セトは満身創痍のオシリスをバラバラにしてエジプト中にばらまいてしまう。
- イシスは再びオシリスの遺体を回収し、ネフティスとアヌビスの協力で彼を復活させる。
- オシリスは冥界に残ることになったので、イシスは息子ホルスを王位につけてセトに復讐する事を誓う。
- ホルスとセトの権力闘争が勃発、80年にわたる戦いを繰り広げる。
- 最終的にはオシリスの調停が入りホルス勝利で終結、セトは不毛の砂漠に追放刑になる。
- ホルスが王に即位し、エジプトを統治していくことになる。
です!!
お疲れさまでした!!
これでもちょっと端折っとるからのう
とはいえメインストーリーはこれでOKさ!
『オシリス神話』の立ち位置
本編に入る前に、今回のテーマの
だいたいの立ち位置を把握しておこう
さまざまな物語が残るエジプト神話ですが、その世界の始まりを描く「創世神話」にはなんと大きく分けて4つの物語が存在します。
『ヘリオポリス神話』
最も古い物語のひとつで特にメジャーな創世神話。
都市ヘリオポリスを中心に発展。
統一王朝成立以前から存在しており、続編に★『オシリス神話』がある。
『メンフィス神話』
最初の統一王朝の首都メンフィスで伝えられた創世神話。
基本的には『ヘリオポリス神話』のストーリーを引き継ぐが最高神が変更されている。
『ヘルモポリス神話』
上記2つとは別に、都市ヘルモポリスを拠点に伝わる創世神話。
世界の成立過程も主要な神々のメンツもガラッと変わったオリジナルストーリーが展開。
『テーベ神話』
新王国時代の首都テーベに伝わる創世神話。
基本的なストーリーラインは『ヘルモポリス神話』を引き継ぐが、最高神に変更が加えられている。
今回ご紹介する『オシリス神話』は前回ご紹介した『ヘリオポリス神話』の後日譚にあたる物語です。
この物語の内容は「ピラミッド・テキスト」などの遺物にもその痕跡を残してはいますが、それ以上にギリシャの哲学者プルタルコスによって記された『イシスとオシリス』による影響が大きく、エジプト神話としては珍しい物語文学として語り継がれています。
またこの『オシリス神話』は古代エジプトでの実際の出来事をベースに考案され、ファラオの王位の正当性を強調することを目的として創作されたものであるという点が大きな特徴です。
なお今回の物語は、最高神のポジションに創造神アトゥムではなく太陽神ラーがいるという前提で読んでもらえると分かりやすくなっております。
この辺のややこしさの説明はコチラを参照じゃ
主な登場人物
この物語の登場人物をざざ~っと掲載しておくぞい
相関図でもざっくり把握しておこう
イカしたメンバーを紹介するぜ!
本編のストーリー
前回までの内容はコチラを確認じゃ
オシリス大地に立つ!!
前作『ヘリオポリス神話』は偉大なる原初の神々が次々に誕生し、この物語の主人公である冥界の王オシリス、豊穣の女神イシス、砂漠の神セト、葬祭の女神ネフティスの4兄妹が誕生したところで幕を閉じました。
その後地上の統治は彼らの父にあたる大地の神ゲブが引継ぎましたが、最高位にある太陽神ラーが高齢となりその権威が失墜、国内の荒廃が進行してきたタイミングで世代交代が行われます。
次代の王国を担う統治者に選出されたのは、4兄妹の長男である冥界の王オシリスでした。
『オシリス神話』の物語は、民の期待を一身に背負ったこの若き王が即位して、エジプトの大地に降り立つシーンでその幕を上げることになるのです。
えぇ~このタイミングで?
めんどくさ…
ここで、以下のような疑問をお持ちになる読者の方もおられるかと思います。
冥界の王なのに地上の王なの?
実は、オシリスはもともとは植物や穀物を神格化した豊穣を司る神であり、地上を統べる王だったのです。
彼は妹でもある豊穣の女神イシスを妃に迎え、荒廃したエジプト王国の再建に着手します。
オシリスは妻イシスや知恵の神トトの助力を得ながら、人民に小麦の栽培方法やパン・ビールの製造方法を教えたほか、食人を禁じるなどの法整備を行い人々に文化的な生活をもたらしました。
もともと温厚な性格で人(神?)徳のあるオシリスは、権力の座についたからといって腐敗することなく善政を敷き、エジプトの民に大変尊敬されました。
彼の治世は平和で、善王として全エジプトからリスペクトされるに至りました。
多くの民が平和を享受している一方、それを苦々しい顔で見つめる存在がありました。
オシリスの弟の砂漠の神セトです。
ぐぬぬ、兄者め…
この弟セトの登場によって、物語はとんでもない急展開を迎えることになります。
この章で登場した神さま
【番外編】自由奔放な末娘の暗中飛躍ものがたり
オシリスが地上の王として真面目に善政を敷いている一方で、4兄妹の末っ子である葬祭の女神ネフティスは悶々とした日々を送っていました。
兄オシリスと姉イシスが夫婦となっているように、彼女もまた兄であるセトと結婚していました。
しかしネフティスは荒々しくて嫉妬深く気難しいセトよりも、優しくて徳も高く、それでいて有能なオシリスの方が好みでした。
あぁ~なんで私の旦那があんなボンクラなのよ…
あっちでも役立たずだし…
やっぱりオシリス兄ぃが素敵だわ~♥
よし、良いこと思いついたわ★
欲しいものは絶対に手に入れたいもの★
ネフティスはどうにかして兄オシリスをどうにかしてやろうと、彼の妻であり自身の姉でもあるイシスに魔法で変身。
オシリスに酒を飲ませて酔わせたところをイシスの姿のまま襲って致してしまいました。
この時にネフティスは身ごもっており、後に冥界の神アヌビスを生みました。
やっべぇな…
全方位にやべぇよ、どないしよ…
もぅマヂ無理。。
トンズラしょ。。
発覚を恐れたネフティスはこの時に生まれたアヌビスを捨ててしまいますが、彼はまさかの姉イシスに拾われて養育されることになります。
ママん…
かなり気の毒な境遇のアヌビスですが、彼もまた『オシリス神話』の物語で重要な役割を担っていくのです。
この章で登場した神さま
謀略のセト、青天霹靂のクーデター
シーンを戻し、兄王オシリスに並々ならぬ視線を送る砂漠の神セトの様子を見てみましょう。
オシリスはその善政により多くの尊敬を集めていましたが、母である天空の女神ヌトのお腹にいるころから彼にライバル心を燃やしていたセトからすると、この状況が面白いわけがありません。
なんせ兄よりも先に生まれてやろうと、母ヌトの脇腹を食い破って生まれてきた経緯があるくらいなのです。
そんなセトはある日、とんでもない決意をします。
下剋上じゃい!
敵はヘリオポリスにあり!!
彼は一計を案じ、兄オシリスの身長にピッタリサイズの立派な棺を誂えます。
そしてセトはオシリスの遠征成功を祝う宴会のさなかにこの棺を携えて登場し、こう言いました。
この棺にピッタリ収まる人にこれをプレゼントしま~す
実はこの祝宴自体セトがセッティングしたドッキリ会場。
オシリス以外は全員仕掛け人なので、我も我もと挑戦しますが誰も棺ピッタリにはなりません。
そしてオシリスも場の空気に押されて棺に入ってみる事にしました。
う~ん、シンデレラフィット
当然ですがオシリスは棺にピッタリ収まり、その瞬間に仕掛け人たちはふたを閉めてくぎを打ち、流れるような手際で雄大なナイル川に放流。
そのままオシリスを溺れしなせてしまいます。
兄であり夫であるオシリスの訃報を聞いた豊穣の女神イシスは深く嘆き悲しみましたが、腐ってもこの4兄妹の一員、泣き寝入りするようなタマじゃありません。
彼女は夫の遺体をどうにかして見つけようとを各地を旅します。
何とか無事に夫オシリスの棺を発見するのですが、そこはビブロス王の宮殿だったので入城の許可を得る必要がありました。
イシスはビブロス王の信頼を得るためにしばらくそこで乳母として働き、事情を話してやっと棺を返してもらいました。
彼女は強力な魔術師でもあったので、その力を使いどうにかオシリスを蘇生させることに成功するのでした。
はっ!
っぶね~、やられるとこだったゎ~!
やっとこさ目的を果たしたイシスでしたが、運悪く夫攻撃実行犯のセトがそれを見ていました。
セトは一瞬のスキをついてまだ満身創痍のオシリスが寝ている棺を奪い、今度は彼の身体を14ものパーツにバラバラにして、エジプト全土にばらまいてしまいました。
わしゃ〇魂の玉か!!!
すでに散々な目に遭っている夫婦ですが、そこでめげないのが執念の女イシス。
健気にも彼女は夫のパーツを探し求めて遠くはギリシャまで旅し、ついにはほとんどの部品を回収してしまいます。
改めて復活の儀式に取り掛かるために、イシスは養子として育てていた冥界の神アヌビスの協力を得ます。
一方葬祭の女神ネフティスも、自分のイカレっぷりは棚に上げて夫セトのとんでもない所業にドン引きしていました。
また憔悴しきっている姉イシスに対しては、今回の被害者オシリスを寝取ったことがあるという負い目があります。
彼女なりに罪滅ぼしをしようと思ったのでしょう、ネフティスもイシスの復活の儀式を手伝う事にしました。
さらにこの出来事は、あまりにも意外で異様な局面での親子の再会ともなりました。
…
ふたりの気まずさ マックス〇ート★
アヌビスとネフティスの助力もあり、ついにイシスはオシリスを復活させることに成功しました。
こうしてセトの野望は見事打ち砕かれたかと思われました。
しかし、オシリスの大切な部分が魚に食べられて回収できなかったので完全な復活とはならず、彼は冥界に残ってここを統治することになりました。
セトはオシリスを地上の統治者の地位から引きずりおろす事に成功し王座を簒奪、クーデターは成功のうちに終了しました。
ぐははははは!
一方その頃…
既にお分かりかと存じますがここで引き下がるイシスではなく、彼女は既に次の一手を打っていました。
夫オシリスが不完全な状態で復活した折、大事な部分がなかったことは先述しましたが、彼女は魔法の力でその部分を作り出して彼と交わり息子の天空の神ホルスを得たのです。
イシスは息子ホルスと共に、仇敵セトに復讐する決意を固めていたのでした。
この章で登場した神さま
♪ 甥なんて言わば母と叔父のパワーゲーム
父オシリスが復活したことで無事この世に生を受けることが出来たホルスでしたが、その後の人生が順調なわけがありませんでした。
復活が不完全だったことなどから父は冥界の王となり、地上の王座は叔父のセトに簒奪されてしまいました。
それだけでなくホルスとイシス親子は、セトの執拗な攻撃を受けながらの逃亡生活を余儀なくされます。
ホルスは母と共にセトを打ち倒し、正当な王位継承者として王座を取り戻す決意をします。
あなたは王さまになるの、ママに任せなさい!
あなたのためを思って言ってるのよ!!
毒親じゃねぇか
彼は時々冥界から戻る父オシリスから訓練を受けつつ立派な成人に成長、ついに戦いを挑む時がやってきます。
この戦いは一説には80年に及ぶ法廷闘争にも発展する、超泥沼の長期戦だったと言われています。
法廷で争ったり実際に戦ったり、それはもう終わりの見えない戦いだったようです。
イシスさんご懐妊の時点でオシリス氏
は既にお亡くなりになってますよね?
ホルスさんは本当にオシリス氏の実子なんですかね~?
センシティブ!!
あまりにも長引いたため、みんなだんだん飽きて来たのか明らかに真剣味を欠く局面もありました。
カバに変身してナイル川で素潜り対決をしたり、石の船でナイル川横断レースをしたり運動会のようなふざけた対決もあったようです。
本人たちすらやる気あったのかしら…
グダグダで割と無駄の多いこの戦いですが、それなりに名場面と言えるシーンもありました。
怪我の功名でホルスが不思議パワーの目を手に入れる
ホルスとセトの2人が物理的に戦った際には、ホルスはセトの睾丸を切り落としますが、自身は両目を奪われてしまいます。
目が、目がぁぁぁ!?
この時に知恵の神トトのヘルプが入りどうにかホルスは視力を取り戻しますが、この時に彼の左目は失ったものを回復させる象徴である「ウアジェトの目」になったと言われています。
古代エジプトのシンボルと言っても良いウアジェトの目は、上記の通り知恵の神トトの治療によってもたらされたと言われています。
「ウアジェト」は「完全なるもの」といった意味の言葉で、ホルスの目と同様に失ったものを回復する修復や再生の象徴となりました。
そのほか魔除けや守護の護符などにも用いられ、墓の入り口や扉、棺にあしらわれることもありました。
このシンボルは有名なツタンカーメンの胸飾りにも使われています。
ぶちギレホルス、まさかの母の首をはね飛ばす
ある局面でセトを追い詰めたホルスは暴走気味に彼を倒そうとします。
その時涙ながらに命乞いをするセトはイシスにとっては弟でもあり、つい情が入ってしまいその縄を解いて彼を逃がしてしまいました。
これを母の裏切りと取ったホルスは大激怒。
ぶちギレた彼は怒りに任せて母イシスの首を斬り飛ばしてしまいました。
ここでは、イシスの頭を牝牛の頭に挿げ替えて復活させるというトトの謎のフォローが入り、どうにか事なきを得たようです。
こまけぇ理屈は気にすんな!
そのほか骨肉の権力闘争の一部始終を、ダイジェストでお送りします。
- セトが周りの神々を脅迫して不公正な裁判に持って行く。
- イシスにはめられたセトが自身に不利な証言をして失笑を買う。
- セトは何を思ったかホルスを愛人として抱き込もうとして失敗し、「不潔!」とディスられる。
それでも戦いは終わりません。
この章で登場した神さま
【番外編】母の執念!勝利のために最高神すらいわす!
ホルスとセトが気の遠くなるような戦いを続けている間、ホルスの母である豊穣の女神イシスも独自の動きを見せていました。
最高神である太陽神ラーはこの時代、既に老いさらばえておりよぼよぼのおじいちゃんになっていましたが、イシスは彼に目を付けました。
イシスはラーのもとを訪れ、彼の垂らしたよだれを使って毒蛇を生み出し、これをラーにけしかけました。
サーペン〇ーティア!!!
痛った!!
毒蛇に咬まれたラーは当然苦しみ悶えますが、そんな彼にイシスは平然とこう言います。
おじいちゃんお昼ご飯は一昨日食べたでしょ?
それよりその虫刺され治したげるから、
あなたの真の名前を教えてちょうだい
背に腹は代えられないラーは彼女に真の名を明かし、これによってイシスは強大な魔力と支配権を手に入れました。
この力を息子のホルスに継承することで、その勝利を一気に引き寄せることに貢献したのです。
この章で登場した神さま
ホルス大勝利!希望の未来へレディ・ゴーッ!!
母イシスから力を継承したホルスは善戦しますが、優勢を維持するもいまひとつ決め手に欠けるのか、なかなか決着がつきません。
あまりにも長く、いい加減うんざりした神々は最高神であるラーに調停を求めます。
しかしラーは仕事で砂漠の神セトに世話になっている部分がある上、先述の通りすでにかなり老いているので、なかなかはっきりとした答えを出しません。
セトちゃんの気持ちも分かるし~?
ホルスちゃんもまだ若くて未熟なとこあるし~?
っていうかお前の母親のせいで散々な目に遭ってんだけど?
にっちもさっちもいかなくなった頃、この騒動の最大の被害者である冥界の王オシリスがその重い腰を上げました。
ひどい目に遭いながらも、彼なりにスイッチを切り替えて真面目に冥界業務に励んでいたオシリスでしたが、さすがに埒が明かないと踏んだのでしょう。
ここは一発バシッと言ってやろうと思い立ったのです。
冥界の裁判長らしく、威厳をもっていかないとな
私はあらゆるものを裁く権限を持つ神
私の話を聞きなさい(威厳)
マイプリティーソン、ホルスたその勝ち~!!
実際に戦いにおいてもホルス勢が優勢だったことや、そもそもセトに味方するものがいなかったこともあり、ここに長きにわたる権力闘争は終結。
ホルスを勝者とし、彼がエジプトを治めることになりました。
最終的にセトは敗北した形になり、彼は不毛の砂漠に追放の刑になったそうです。
こうしてホルスは母イシスと共に父オシリスの仇を討ち無事に王座を奪還、めでたく全エジプトの王になったとされています。
砂漠で俺にわび続けろセトーーーーッ!!!!
ウボァー
最後は意外とあっけないわね…
『オシリス神話』と歴史
とても長い物語
ここまで読んで頂いてありがとうございます
まじでお疲れさまでした
ここで最後に補足情報じゃ
時間に余裕のある方向けじゃぞい
今回ご紹介した『オシリス神話』ですが、冒頭で実際の歴史上の出来事をベースにしていると解説しました。
その具体的な点について軽く触れておきたいと思います。
まずオシリスが地上の王として活動し人々に農作物の栽培方法を教えた件は、狩猟民族が定住して農耕を開始した時期を示すと考えられています。
考古学的には新石器時代の初期にあたると見なされているそうです。
またその後ホルスとセトが権力争いをしますが、この戦いはそのまま現実の歴史における上エジプトと下エジプトの争いと統一の過程を表していると言われています。
ホルスは南の上エジプトを、セトは北の下エジプトをそれぞれ象徴しており、上エジプトが下エジプトを下して平定した実際の流れを表現していることになります。
全エジプトが統一される以前は
2つの国家にまとまっていたんだ
大まかに以下の図のような感じだよ
なんとなく北が上だと思ってたわ
ナイル川基準で上流側を上エジプト、
下流側を下エジプトと呼ぶのじゃ
つまり『オシリス神話』は上エジプトの神であるホルスが全エジプトの神になる事、ひいては上エジプトの王が全エジプトを支配する事の正当性をアピールするための物語であるともいえます。
またホルスの父である冥界の王オシリスは、元来は地上の王であり豊穣の神さまで、上下エジプトで広く親しまれてきました。
敗北した下エジプトの人々からしても、単なる征服者としての国家神ホルスより、「あのオシリスさんとこの息子のホルスくん」の方があたりが良く、折衝面でも都合がよかったものと考えられています。
カオスなストーリーと思いきや、
いきなり政治的な様相を呈してきたわね
「神話」というのはあくまでも人間にとって
必要とされた物語じゃからのう
第一王朝のファラオとなった上エジプトのナルメルが自身を「ホルスの化身」として以降、エジプトを治める代々の王はホルスの子孫でありホルスの化身であるともされ、現人神(あらひとがみ)として認識されるようになりました。
逆に言うとホルス自身も1柱の神さまから「王そのもの」として認識されるようになり、代々のファラオによる支配の正当性を説明する役割を果たすようになっていきました。
『オシリス神話』は単純に面白い物語であると同時に
王権の正当性を主張し、さらに上下エジプト統一の
苦難の歴史を表現したたとえ話でもあるわけだね
またこの物語で描かれている内容は、「死と復活」という古代エジプト人の独特の死生観を作り上げるのに大きく影響したと考えられています。
先述の通りエジプトの王は神と同一視されましたが、彼らとていつかは亡くなり、次のファラオが即位します。
『オシリス神話』はこういった事実に対しても、人々の疑問を解決するのに大きな役割を果たしました。
神さまだって亡くなって復活するなら、
そりゃ王さまもそうなるわね
おわりに
今回はエジプト神話の主要な物語の一つ、『オシリス神話』を紹介してきました。
このシリーズではエジプト神話を構成する主だったストーリーを、できるだけ分かりやすく、さくっと把握できるように解説していきます。
その他の物語もどんどんご紹介していきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヴェロニカ・イオンズ 『エジプト神話』 青土社 1997年
- 大林太良 伊藤清司 吉田敦彦 松村一男 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2023年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講 』 新潮社 2022年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかるエジプト神話』 文庫ぎんが堂 2019年
他…
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