【現役224年、享年360歳の宰相の神】建内宿禰-タケノウチノスクネ-【日本神話】

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建内宿禰
とと(父)

こんにちは!
今回は日本神話より建内宿禰たけのうちのすくねを紹介するよ!

ことと

建内宿禰たけのうちのすくね
どんな役割をもつ神さまなの?

とと(父)

彼は宰相の神さまで、五代もの天皇に仕えたとされているよ!

ヒヒ

360歳まで生きたとされ、長寿の神さまとしても有名じゃ

とと(父)

ではさっそくいってみよう!

このシリーズでは、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたんわかりやすい」がテーマの神々の解説記事をお送りしています。

超個性的な八百万の神々が織りなす、笑いあり、涙ありのトンデモぶっ飛びストーリーが、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。

人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。

今回は、五代もの天皇に仕えた日本初の大臣おおおみで、360歳まで生きたとも言われる超長寿の政治の神、建内宿禰たけのうちのすくねをご紹介します!

ヒヒ

忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

  • 日本神話にちょっと興味がある人
  • 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
  • とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
この記事を読むあなたのメリット
  • 日本神話に登場する「建内宿禰たけのうちのすくね」について少し詳しくなります。
  • あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
目次

そもそも「日本神話」って何?

日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。

原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。

現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記こじき』と『日本書紀にほんしょき』という2冊の歴史書が元になっています。

これらは第四十代天武てんむ天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。

国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い

強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。

とと(父)

日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!

枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年
枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年 PD

さぁ、あなたも情緒あふれる八百万やおよろずの神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。

建内宿禰たけのうちのすくねってどんな神さま?

建内宿禰たけのうちのすくね(以下、タケノウチ)がどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。

ことと

いくぜっ!!

簡易プロフィール

正式名称建内宿禰たけのうちのすくね
Takenouchinosukune
別称武内宿禰たけしうちのすくね
建内足尼たけしうちのすくね
高良玉垂神こうらたまたれのかみ とする説も
神格長寿の神
宰相の神
性別男性
勢力国津神くにつかみ
父:比古布都押之信命ひこふつおしのまことのみこと ※『古事記』
父:屋主忍男武雄心命やぬしおしおたけおごころのみこと ※『日本書紀』
母:山下影日売やましたかげのひめ
兄弟姉妹味師内宿禰うましうちのすくね
配偶者不明
波多八代宿禰はたのやしろのすくね
許勢小柄宿禰こせのおがらのすくね
蘇賀石河宿禰そがのいしかわのすくね
平群都久宿禰へぐりのつくのすくね
木角宿禰きのつぬのすくね
久米能摩伊刀比売くめのまいとひめ
怒能伊呂比売ぬのいろひめ
葛城長江曾都毘古かつらきのながえのそつびこ
若子宿禰わくこのすくね
神徳(ご利益)・延命長寿
・武運長久
・厄除け
・立身出世
・商売繁盛
・子育て
・試験合格
・勝負必勝
・開運招福
・武運長久など
神社高麗神社
鵜甘神社ほか
※別途詳述

誕生と家族

菊池容斎『前賢故実』より武内宿禰
菊池容斎『前賢故実』
より武内宿禰 PD

タケノウチは日本神話に登場する政治の神さまです。

彼の父は第八代孝元こうげん天皇の息子である比古布都押之信命ひこふつおしのまことのみこと、母は山下影日売やましたかげのひめとされており、弟には味師内宿禰うましうちのすくねがいます。
※『日本書紀』では屋主忍男武雄心命やぬしおしおたけおごころのみことの息子

タケノウチの配偶者に関する記録は残っていないようですが、彼には以下の七男二女の子どもがおり、うち7名が大和朝廷を支える有力な氏族の祖となりました。

スクロールできます
名称概要
波多八代宿禰はたのやしろのすくね波多はた氏の祖
許勢小柄宿禰こせのおがらのすくね巨勢こせ氏の祖
蘇賀石河宿禰そがのいしかわのすくね蘇我そが氏の祖
平群都久宿禰へぐりのつくのすくね平群へぐり氏の祖
木角宿禰きのつぬのすくね氏の祖
久米能摩伊刀比売くめのまいとひめ
怒能伊呂比売ぬのいろひめ
葛城長江曾都毘古かつらきのながえのそつびこ葛城かつらぎ氏の祖
若子宿禰わくこのすくね江野間えのま氏の祖

また、タケノウチは以下の五代の天皇に、トータルで224年もの間仕えたとされています。

  • 第十二代景行けいこう天皇
  • 第十三代成務せいむ天皇
  • 第十四代仲哀ちゅうあい天皇
  • 第十五代応神おうじん天皇
  • 第十六代仁徳にんとく天皇
タケノウチ

当時は定年制度なんてなかったからのう

彼は歴代の天皇たちの元で八面六臂はちめんろっぴの活躍を果たし、さらには360歳というとんでもない長寿を誇ったことから、延命長寿や武運長久の神さまとしても信仰を受けています。

とと(父)

戦前の紙幣にもよく登場していたんだよ!

旧一円札
旧一円札 PD
ことと

224年も多方面に活躍して、
子どもたちは天皇家に近い氏族の祖先…

ことと

いつもながら、多少意図的なものを感じるわね

長きに渡って天皇を補佐した有能な人材というキャラクターから、タケノウチの人物像のモデルになったのは、蘇我馬子そがのうまこの一族ではないかとも言われています。

また、蘇我そが氏をはじめとした彼の子孫たちが、いずれも律令時代に入ってから大臣おおおみとなっていることから、こうした有力氏族の数々の功績がひとつに集約された結果、タケノウチという人格が誕生したとも考えられています。

とと(父)

中心的な氏族の権威付けであると同時に、
理想的大臣像が表現されているんだね!

360歳という異常なまでの長寿については、「建内宿禰たけのうちのすくね」という名前が世襲せしゅうされ、代々受け継がれたことから生じた設定ではないかと推測されています。

タケノウチ

本当に生きてたら、どうする~?

名前の由来

タケノウチの正式名称である建内宿禰たけのうちのすくねには、どのような意味が込められているのでしょうか。

一般には、

  • たけ」および「たけ」は「勇猛な」の意、「うち」は「内廷ないてい」や天皇の身近に仕えることを表す
  • 宿禰すくね」は古代日本における称号のひとつで、有力な豪族個人の尊称としてしばしば用いられた(後にかばねの一種となる)

といったことが言われているようです。

皇居のイメージ

つまり「天皇の側に仕える勇猛で有能なすごい人」、まさに「名は体を表す」という言葉通りの、タケノウチにぴったりのネーミングと言えるでしょう。

ヒヒ

特定の個人を指しておらんという説もしっくりくる名称じゃな

建内宿禰たけのうちのすくねの活躍シーン

とと(父)

タケノウチの活躍を見てみよう!

五代の天皇に仕え、超絶大ベテランとしてありとあらゆる功績を残す

タケノウチが、224年もの長きにわたり天皇家に仕えたことは先述しました。

ここでは、彼が長い現役生活において残したさまざまな功績を、ダイジェストでご紹介します。

タケノウチ

ざっくり確認じゃ!

第十二代景行けいこう天皇御代みよ

  • 北陸及び東方の視察に派遣され現地の地形や民情を報告、天皇に蝦夷えぞ討伐を進言する。
  • 天皇が開いた宴において、タケノウチ若帯日子命わかたらしひこのみこと(後の第十三代成務せいむ天皇)だけは非常事態に備えて参加しなかった。
    これを賞賛した天皇は若帯日子わかたらしひこを皇太子に、タケノウチ棟梁臣むねとるまちきみに任命した。
ことと

時系列で言えば、倭建命やまとたけるのみことが各地を旅している頃かしらね

第十三代成務せいむ天皇御代みよ

  • 天皇の政治を良く補佐したことから、日本初となる大臣おおおみ(最高執政官)に任命される。
  • 天皇と協力して各国の「国造くにのみやつこ(朝廷から任命されて各地方を統治した地方官)を定める。

第十四代仲哀ちゅうあい天皇御代みよ

  • 熊曾くまそ討伐の遠征に参加し、天皇が崩御ほうぎょした後はその死を秘匿して、混乱を避ける。
  • 審神者さにわとして住吉三神すみよしさんしんの神託を受け取り、神功皇后じんぐうこうごう新羅しらぎ遠征を実現させる。
    ※『三韓征伐さんかんせいばつ
  • 品陀和気命ほんだわけのみこと(後の第十五代応神おうじん天皇)の命を狙った香坂王かごさかのみこ忍熊王おしくまのみこの反乱で戦い、智謀を駆使して勝利に導く。
    難波根子建振熊命なにわねこたけふるくまのみことの事績である場合もある
  • 品陀和気ほんだわけけがれをはらうための「みそぎ」の旅に同行し、彼を立派な青年に育てる。
 月岡芳年『大日本史略図会 第十五代神功皇后』
月岡芳年『大日本史略図会 第十五代神功皇后』 PD
とと(父)

特に神功皇后じんぐうこうごうとの関わりが深いみたいだね!

ヒヒ

彼女が神田かんだの溝を掘る時に邪魔になった大岩を、タケノウチが召喚した落雷でぶち壊したという逸話も残っておるぞい

第十五代応神おうじん天皇御代みよ

  • 天皇の命を受け、高麗人こうらいびと百済人くだらびと任那人みまなびと新羅人しらぎひとらを率いて「韓人池からひとのいけ」を造らせる。

第十六代仁徳にんとく天皇御代みよ

  • タケノウチの子である平群都久宿禰へぐりのつくのすくねと天皇が同じ日に生まれたなどのエピソードはあるが、特に活躍といえる描写は無し。

これ以降タケノウチが活躍する場面はなく、『日本書紀』の第十九代允恭いんぎょう天皇の条に、彼のお墓に関する伝承が残されています。

因幡国風土記いなばのくにふどき逸文いつぶんには、タケノウチ因幡国いなばのくに(鳥取県)亀金かめかねを訪れ、宇倍山うべやまの中腹にある亀金岡かめかねおか双履そうり(一足の靴)を残してこの世を去ったと記されています。

ことと

まとめちゃうとあっという間だけど、
こんな仕事を200年以上もバリバリにやってたのね~

タケノウチ

退職金はずんでもらわなやっとられませんわ!

陰謀にも決してひるまぬ大忠臣ぶりを見せつけ、天皇にちょっと罪悪感を感じさせたかもしれない

五代の天皇に誠実に仕えたタケノウチですが、そんな彼の忠臣っぷりが良く分かる以下のエピソードをご紹介します。

タケノウチには味師内宿禰うましうちのすくねという弟がいましたが、彼は常々、兄を排除してその地位を奪ってしまおうと企んでいました。

そんな折、第十五代応神おうじん天皇タケノウチに、筑紫つくし(九州)の視察を命じます。

これは味師内うましうちにとってまたとないチャンス、彼は兄が不在の隙にひそかに天皇に近づき、こんな讒言ざんげんを吹き込みました。

ウマシウチ

陛下!うちの兄はヤバいですぜ!
九州を拠点にして都に攻め上ろうと企んどるんですわ!!

応神天皇

え~っ!あのタケノウチが!?
超怖いじゃ~ん!

話を聞いた応神おうじん天皇は非常に驚き、ただちにタケノウチ討伐軍を九州に派遣します。

矢が命中するイメージ

タケノウチは、部下の真根子命まねこのみことが身代わりになってくれたことで辛くも難を逃れますが、このままじっとしていても事態が好転することはありません。

意を決した彼は自ら大和国やまとのくに(奈良県)に乗り込み、天皇に面と向かって身の潔白を訴えました。

応神天皇

う~ん、なら「盟神探湯くがたち」する?

盟神探湯くがたち」とは古代の裁判における真偽判定法のひとつで、それぞれ相反する主張をする者同士が、煮えたぎる熱湯の中に手を突っ込みます。

正しい者の手は傷ひとつ負いませんが、邪なる者の手は大火傷でただれてしまうので、どちらが嘘をついているか一目瞭然という寸法なのです。

ウマシウチ

アッツゥウゥゥゥウゥ!!!!

もちろん結果は分かり切っていて、タケノウチがまったくの無傷なのに対し、味師内うましうちは火傷の痛みで悶絶する羽目になりました。

陰謀によって危うく命を失うところだったタケノウチ、しかし彼は正々堂々と冤罪えんざいを主張し、見事に身の潔白を証明したのです。

【以下余談】

しかし、ここで若干の疑問が残るのが天皇の対応です。

応神おうじん天皇は生まれたその日からタケノウチの世話になっており、彼が香坂王かごさかのみこ忍熊王おしくまのみこの反乱を鎮めたからこそ、今日まで生きてこられているのです。

その後も幼い天皇はタケノウチと「みそぎ」の旅を共にし、彼からはさまざまな事を教わって強い絆を育んだ…はずなのです。

しかし現実には、真正面から無実を訴えたタケノウチに対して、そんなに絡みのない味師内うましうちの嘘を一発で真に受け、実際に討伐軍まで出してしまった応神おうじん天皇

もちろん『記紀』の本文にそんな描写はありませんが、現場では死ぬほど気まずい空気が流れたのかもしれないと、ついつい妄想してしまいます。

歌川国芳『武内宿禰と応神天皇』
歌川国芳『武内宿禰と応神天皇』 PD

ちゃんと有能だよ!

とと(父)

あくまで個人の感想です

タケノウチ

それでも仕えるのが忠臣ってやつなのじゃ!!

建内宿禰たけのうちのすくねを祀る神社ガイド

タケノウチは、いくつかの神社で祀られています。

ことと

代表的な場所をご紹介するわね!

高麗神社

埼玉県日高市新堀

鵜甘神社

  福井県今立郡池田町水海

石清水八幡宮

  京都府八幡市八幡高坊

氣比神宮

  福井県敦賀市曙町

宇倍神社

  鳥取県鳥取市国府町宮下

住吉神社

 山口県下関市一の宮住吉一丁目

徳威神社

愛媛県西条市吉田

高良大社

  福岡県久留米市御井町一番地

武雄神社

  佐賀県武雄市武雄町大字武雄

新田神社

  鹿児島県薩摩川内市宮内町

平濱八幡宮 武内神社

 島根県松江市八幡町

坪沼八幡神社

  宮城県仙台市太白区坪沼舘前東

香椎宮

   福岡県福岡市東区香椎

八幡神社

  和歌山県和歌山市相坂

御霊神社

  東京都新宿区西落合

などです!

おわりに

今回は、日本神話に登場する建内宿禰たけのうちのすくねについて解説しました。

ことと

ご先祖さまの時代から生きている謎の超大ベテラン…
創作が捗るキャラクターよね

とと(父)

有力氏族の権威を高めるという役割も
しっかり果たしているよね!

パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。

神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。

これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!

とと(父)

また来てね!

しーゆーあげん!

参考文献

  • 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
  • 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
  • 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
  • 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
  • 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
  • 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
  • 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
  • かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
  • 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
  • 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
  • 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
  • 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
  • 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
  • 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年

他…

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