
こんにちは!
今回はギリシャ神話より運命の女神モイライを紹介するよ!



今回は3柱1組の神々の紹介ね
彼女たちはどんなキャラクターなの?



彼女たちは神々と人間の運命を司る女神の3姉妹で、
最高神ゼウスでも干渉できない権能をもったんだ!



三位一体の設定は神話の神々あるあるなのじゃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、雷霆の神ゼウスと法の女神テミスのあいだに生まれた3姉妹で、あらゆる神々と人間たちの運命を定め、最高神ですらも干渉することができない独立した職権を司った女神モイライをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「運命の女神モイライ」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


運命の女神モイライってどんな神さま?
運命の女神モイライがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
総称 | モイライ Μοῖραι ※単数形でモイラ(Μοῖρα) | ||
---|---|---|---|
名称の意味 | 運命 くじ 分配者 割り当て 分け前など | ||
その他の呼称 | ファタエ(Fatae) | ||
ラテン語名 (ローマ神話) | パルカエ(Parcae) ※単数形でパルカ(Parca) | ||
英語名 | モイライ(Moirai) The Fatesとも ※「運命の女神たち」の意 | ||
神格 | 運命の女神 | ||
性別 | 女性 | ||
正式名称 | クロト Κλωθώ | ラケシス Λάχεσις | アトロポス Ἄτροπος |
名称の意味 | 紡ぐ者 | 割り当てる者 くじを引く者 配給者 | 容赦ない者 避けられない者 変わらない者 |
その他の呼称 | クロートー クロトー クローソー | 特になし | 特になし |
ラテン語名 (ローマ神話) | ノーナ(Nona) | デキマ(Decima) | モルタ(Morta) |
英語名 | クロト(Clotho) | ラケシス(Lachesis) | アトロポス(Atropos) |
役割 | 糸巻き棒から紡錘車に「運命の糸」を紡ぐ | 割り当てられた「運命の糸」を物差しで測る | 時が来ると、「運命の糸」を鋏で断ち切る |
対応する星 | 小惑星クロト(97 Klotho) :小惑星帯にある小惑星 | 小惑星ラケシス(120 Lachesis) :小惑星帯に位置する暗く大きい小惑星 | 小惑星アトロポス(273 Atropos) :小惑星帯にある小惑星 |
勢力 | オリュンポスの神々 | ||
アトリビュート (シンボル) | 糸 杖 紡錘 巻物 鋏 運命の書 鳩 | ||
主な拠点 | オリュンポス山 | ||
親 | 父:雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ) 母:法の女神テミス(Θέμις) 母:夜の女神ニュクス(Νύξ)とも 母:必然性の女神アナンケ(Ἀνάγκη)とも | ||
兄弟姉妹 | 季節の女神ホーライ(Ὧραι) 採用する説によっては他多数 | ||
配偶者 | なし | ||
子孫 | なし |
概要と出自
モイライは、ギリシャ神話に登場する運命を司る女神たちです。
※単数形でモイラ(Μοῖρα)
その名称は、食事や土地、戦利品などの何らかの「分け前」を「割り当てる」ことを意味します。
人間にとって最大の関心事は「寿命の分配」であったことから、彼女らもまた人々の誕生や死、運命や生命と関連付けられました。
古くは独立した1柱の神格であったモイラは、後に3柱1組の女神たち*からなると考えられるようになり、姉妹はそれぞれ、クロト(Κλωθώ)、ラケシス(Λάχεσις)、アトロポス(Ἄτροπος)という名称で呼ばれることになります。
※複数形がモイライ


『運命の三女神:クロートー、ラケシス、アトロポス』1885年 PD
生まれた人間に「寿命」が定められる様子は「糸を紡ぐ行為」に例えられ、3姉妹はそれぞれ、以下のような役割分担をしたうえでその職責を果たしました。
- 「紡ぎ手」であるクロトが、糸巻き棒から紡錘車に「運命の糸」を紡ぐ
※ある意味で「誕生」に関わる - 「割り当てる者」であるラケシスが、それぞれの人に割り当てられた「運命の糸」の長さを物差しで測る
※人の「寿命」や「運命」を定める - 「変えることのできぬ者」であるアトロポスが、忌まわしい鋏で「運命の糸」を断ち切る
※ある意味で「死」に関わる
このほか、3姉妹にはそれぞれ特定の時代区分が割り当てられることもあり、クロトが「現在」を、ラケシスが「過去」を、アトロポスが「未来」を司ったとされています。
※ラケシスが「未来」、アトロポスが「過去」を担当したとも
モイライの描写は時代と共に変化しましたが、彼女たちは美しい女性として描かれることや、年老いた老婆の姿で表現されることが多かったようです。


-3人のモイライ 1520年頃 PD
そんな3姉妹の出自と家族関係については、少なくとも3つの異なる説が唱えられました。
ヘシオドスが著した『神統記』によると、モイライは夜の女神ニュクス(Νύξ)の娘で、父親は存在せず、必然的に数多くの神々と兄弟姉妹の関係になります。
その後、彼女たちは雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ)と法の女神テミス(Θέμις)の娘とされるようになり、季節の女神ホーライ(Ὧραι)3神の姉妹にあたるとされました。


また、古代ギリシャにおける密儀宗教のひとつ、オルフェウス教の文脈において、モイライは必然性の女神アナンケ(Ἀνάγκη)の娘ともされています。
神々や人間たちの定めに絶対的な影響力をもった、運命を司る女神の3姉妹。
これとよく似たコンセプトの神さまが、北欧神話の世界にも存在します。
それが、運命の女神ノルン(Norn)。
※複数形でノルニル(Nornir)
こちらは必ずしも3柱1組の神格ではなく、良いノルンや悪いノルンなど数多くの神さまがいましたが、その中でも特に有名なのが
- ウルズ(Urðr)
- ヴェルザンディ(Verðandi)
- スクルド(Skuld)
の3姉妹です。
彼女たちもまた、ルーン文字が刻まれた木片を使って生命の糸を紡ぎ、人間の子らの運命を定めたと伝えられています。


-ユグドラシルの下にいるウルズ、ヴェルザンディ、スクルド 1882年 PD


モイライが関わった主なストーリー



モイライ3姉妹の活躍を見てみよう!
神々や人間の「運命の糸」を紡ぎ、長さを測って、断ち切ることで、その行く末を定めた運命の女神の3姉妹、クロト、ラケシス、アトロポス。
生命の「誕生」や「死」にも深く関わったモイライは、人々に定められた運命を厳密にコントロールするために、出産の女神エイレイテュイア(Εἰλείθυια)や復讐の女神エリニュス(Ἐρινύς)の3姉妹とも業務提携を結んだうえで職務にあたりました。





当然と言えば当然だけど、
わしらは予言者的な神格でもあったのよ


『運命の三女神』19世紀 PD
そんな3姉妹は、基本的には主神ゼウスが構築した世界秩序のもとに生きていましたが、その一方でモイライとしての職権には、最高神でさえも干渉できない絶対的な独立性が認められていたとされています。
そのため、彼女たちが定めた運命には、一般の人間たちはもちろん、オリュンポスの神々でさえも従わなければなりませんでした。
例えば、有名な『トロイア戦争』の場面においても、ゼウスは息子のサルペドン(Σαρπήδων)が敵将パトロクロス(Πάτροκλος)の手で命を落とすことを知りながら、その運命を覆すことができなかった様子が描写されています。
また、英雄アキレウス(Ἀχιλλεύς)とヘクトール(Ἕκτωρ)の決闘の際、全能の神は黄金の天秤を用いてその結果を知りましたが、戦いの勝敗そのものに干渉することはできませんでした。



ゼウスらオリュンポスの神々が「行政権」を行使するとすれば、悪を罰するエリニュス3姉妹が「司法権」、法と運命を定めるモイライ3姉妹が「立法権」として独立しとるイメージかのぅ
独立した権能をもつモイライは、神話のあらゆる場面で数多くの神々や人間たちの運命を定めましたが、その回数は無限に近いほど膨大なうえ、ひとつひとつの場面では直接的な動きを見せていません。
そこで今回は、運命の女神3姉妹が登場した代表的なシーンを、ダイジェストでざっくりとご紹介してみます。



おおまかに押さえてみよう!
ギリシャ神話史上最大の戦争にまさかの物理枠で参加!?
巨人族を棍棒でシバく!!
主神ゼウスが率いるオリュンポスの神々と、対立した大地の女神ガイア(Γαῖα)がけしかけてきた巨人族ギガンテス(Γίγαντες)のあいだで勃発した戦争「ギガントマキア(Γιγαντομαχία)」。
宇宙の支配権をめぐる世界最大のこの戦いには、意外にも、インテリ系であるはずのモイライ3姉妹が参加していました。
彼女たちは青銅の棍棒を手に戦場に乗り込み、巨人族のアグリオス(Ἄγριος)とトオーン(Θόων)をボコボコにしてシバきあげるという戦果をあげています。
その他、3姉妹は最大最強の怪物テュポン(Τυφών)を騙して、食べた者の望みが二度と叶うことがなくなるという「無常の果実」を食べさせ、ゼウスの勝利におおいに貢献しました。


-テュポン PD



意外と武闘派な側面もあったのよ



あの時は楽しかったわ




普段は仕事に厳しい3姉妹も、
たまには騙されて人間の運命を変えてしまう
光明の神アポロン(ΑΠΟΛΛΩΝ)が愛した人間の1人、テッサリアの王アドメトス(Ἄδμητος)が重い病に倒れたときのこと。
彼の延命を望んだアポロンは、モイライの3姉妹を酒か何かで酔わせて交渉を行い、



まぁ~、誰か身代わりを用意するなら助けたるょ
という言質を取りつけます。
結局、その役に立候補したのはアドメトスの妻であるアルケスティス(Ἄλκηστις)で、夫が元気に快復した代わりに、彼女が重病で死にかけることになりました。
そこにたまたま現れたのが、半神半人の英雄ヘラクレス(Ηρακλής)。
彼は、アルケスティスを迎えに来ていた死の神タナトス(Θάνατος)を締め上げて仕事を諦めさせ、結局は夫婦2人とも生存したと伝えられています。


-アルケスティスの遺体をめぐって死と格闘するヘラクレス 1869年-1871年 PD



結局、1件の「死」がキャンセルされたワケよ~



やり方が汚いわよね~
ワンパターンな仕事に飽きた女神、直接人間に運命を告げに行く
普段は表舞台に顔を出さないモイライの3姉妹ですが、そんな彼女たちが一度だけ、人間の前に姿を現したことがあります。
後に猪狩りで有名になる、英雄メレアグロス(Μελέαγρος)が誕生したときのこと。
3姉妹はその母であるアルタイア(Ἀλθαία)のもとを訪れ、



この子は高貴な男になるじゃろ



この子は武勇に優れた勇敢な男になるじゃろ



この薪が燃え続ける限り、彼もまた生き続けるじゃろ
と言いました。
母アルタイアはベッドから飛び起き、その薪を箱の中にしまって、燃え尽きることがないよう何年も大切に保管しました。
メレアグロスは、予言通り立派な青年に成長し、有名なカリュドーンの猪狩りの中心的な人物となります。


『カリュドンのイノシシ狩り』1650年 PD
しかし、彼は戦利品である猪の皮をめぐってメンバーたちと争い、口論の末、母の兄弟たちの命を奪うことになりました。
その事実を知った母アルタイアは息子の所業を呪い、予言を受けた「薪」を、燃え盛る炉の中に投げ入れます。
それが燃え尽きた時、戦場にあったメレアグロスもまた、敵の攻撃を受けて命を落としてしまいました。



意外とユニークな活躍をしとるんじゃのぅ



この他にも、ミュケナイの王女アルクメネ(Ἀλκμήνη)が
ヘラクレスを産むのを妨害したという逸話も残っているよ


ギリシャ神話をモチーフにした作品



参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する運命の女神モイライについて解説しました。



最高神ですら干渉できない存在って、
どこの神話でも重要なのかもしれないわね



何らかの縛りがないとすべてが都合良く進むし、
物語として面白くなくなるもんね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…
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