
こんにちは!
今回はギリシャ神話より雨の精霊ヒュアデスを紹介するよ!



今回は自然界の要素を司る神格ね
彼女たちはどんなキャラクターなの?



ヒュアデスは巨人アトラスの娘とされた精霊たちで、
古代ギリシャにおける「雨季の到来」を象徴したんだ!



「ヒアデス星団(Mel25、Caldwell41 HYADES CLUSTER)」
として現在も冬の夜空に現れるぞぃ



ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、巨人アトラスの娘ともされた十数人の精霊たちで、兄弟ヒュアスの死をきっかけに、古代ギリシャにおける「雨季の到来」を象徴する星座「ヒアデス星団」となった季節雨の女神ヒュアデスをご紹介します!



忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「雨の精霊ヒュアデス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


雨の精霊ヒュアデスってどんな神さま?
雨の精霊ヒュアデスがどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。



いくぜっ!
簡易プロフィール
正式名称 | ヒュアデス Ὑαδες ※単数形でヒアス(Ὑας) | |
---|---|---|
名称の意味 | 雨を降らせる者 ※「豚」に由来するとも | |
その他の呼称 | ヒアデス アトランティデス(Ἀτλαντίδες) | |
ラテン語名 (ローマ神話) | サクラエ(Suculae) ※単数形でサクラ(Sucula) | |
英語名 | ヒュアデス(Hyades) ※単数形でヒアス(Hyas) | |
個別の名称 | パイシュレ(Φαισυλη) ※「輝き」の意、「アイシュレ(Aesyle)」とも コロニス(Κορωνις) ※「湾曲した」の意 パイオ(Φαιω) ※「輝き」の意 エウドラ(Ευδωρη) ※「才能のある」の意 クレエイア(Κλεεια) ※「有名な」「高名な」の意 アムブロシア(ἀμβροσία) ポリュクソ(Πολυξω) ペディレ(Πεδιλη) ピュト(Φυτω) テュオネ(Θυώνη) など諸説あり | |
神格 | 雨をもたらす精霊 季節雨の女神 | |
性別 | 女性 | |
勢力 | ギリシャの神々 | |
主な拠点 | 天空 | |
親 | 父:天を支える巨人アトラス(Ἄτλας) 母:河川の女神プレイオネ(Πληϊόνη) 母:アイトラ(Αιθρα)とも または 父:雨の神ヒュアス(Ὑας)とも 母:ボイオティア(Βοιωτία)とも ほか諸説あり | |
兄弟姉妹 | 女神マイア(Μαῖα) 女神エレクトラ(Ἠλέκτρα) 女神タイゲテ(Ταυγέτη) 女神アルキュオネー(Ἀλκυόνη) 女神ケライノー(Κελαινώ) 女神ステロペ(Στερόπη)またはアステロペ(Ἀστερόπη) 女神メロペ(Μερόπη) | 星の精霊たちプレイアデス(Πλειάδες) |
雨の神ヒュアス(Ὑας) 女神ディオネ(Διώνη) 異母姉妹として 黄昏の娘たちヘスペリデス(Ἑσπερίδες)とも 海の女神カリュプソ(Καλυψώ)とも など諸説あり | ||
配偶者 | 特になし | |
子孫 | 特になし | |
対応する星 | ヒアデス星団(Mel25、Caldwell41 HYADES CLUSTER) | |
同一視 | ラムス川の精霊ラミデス(Λαμιδες) など諸説あり |
概要と出自
ヒュアデスはギリシャ神話に登場する、雨をもたらすニンフ(Νύμφη)*1たちです。
※自然界の精霊みたいなもん
その名称は「雨を降らせる者」を意味し、彼女たちは、古代ギリシャにおける雨季の到来を象徴しました。


ImageFXで作成
ヒュアデスは一般に、天を支える巨人アトラス(Ἄτλας)と河川の女神プレイオネ(Πληϊόνη)またはアイトラ(Αιθρα)とのあいだに生まれた娘たちとされています。
その構成メンバーについては様々な説が唱えられていますが、代表的なものとしては、以下のような名称が挙げられました。
神名 | 名称の意味 |
---|---|
パイシュレ Φαισυλη | 「輝き」の意 「アイシュレ(Aesyle)」とも |
コロニス Κορωνις | 「湾曲した」の意 |
パイオ Φαιω | 「輝き」の意 |
エウドラ Ευδωρη | 「才能のある」の意 |
クレエイア Κλεεια | 「有名な」「高名な」の意 |
アムブロシア ἀμβροσία | – |
ポリュクソ Πολυξω | – |
ペディレ Πεδιλη | – |
ピュト Φυτω | – |
テュオネ Θυώνη | – |
ほか諸説あり
また、ヒュアデスの兄弟姉妹には星の精霊たちプレイアデス(Πλειάδες)や雨の神ヒュアス(Ὑας)、女神ディオネ(Διώνη)が誕生したほか、採用する説によっては、黄昏の娘たちヘスペリデス(Ἑσπερίδες)や海の女神カリュプソ(Καλυψώ)とも異母姉妹の関係となります。







他にも、ヒュアデスをヒュアスとボイオティア(Βοιωτία)
の娘たちとする説もあるそうだよ!



ヒュアスとボイオティアの娘たちを「ヒュアデス」、アトラスとプレイオネの娘たちを「プレイアデス」とする説もあるそうじゃ


Canvaで作成
ヒュアデスの姉妹たちは、兄弟であるヒュアスの死をきっかけに天に上げられ、夜空に輝くヒアデス星団(Mel25、Caldwell41 HYADES CLUSTER)となりました。
11月にこの星々が太陽の方向に沈む(あるいは天に昇る)と、古代ギリシャでは雨季が始まったと言われています。
このことから彼女たちには、「雨の女たち」を意味する「ヒュアデス」という名が付けられたのだそうです。



現在のギリシャでも、11月~3月頃に
かけて雨季が到来するわよ
ヒュアデスが関わった主なストーリー



ヒュアデスの活躍を見てみよう!
兄弟の死によって十数人の姉妹が絶望し昇天、夜空を飾る美しい星々となる
天を支える巨人アトラス(Ἄτλας)と河川の女神プレイオネ(Πληϊόνη)またはアイトラ(Αιθρα)とのあいだには、雨の神ヒュアス(Ὑας)という名の男の子と、12人または15人もの娘たちが生まれました。
“逆”紅一点ともいえる立場のヒュアスは、両親はもちろん数多くの姉妹たちからも大変に愛されて育ちますが、ある日、そんな彼を突然の悲劇が襲います。
優れた射手としても知られたヒュアスは、1人で狩猟に出た際、獲物とするはずだった蛇あるいは猪あるいはライオンの返り討ちに遭い、その命を落としてしまったのです。
一説によると、彼の死後、その亡骸は天に上げられて「みずがめ座(Aquarius)」となり、ヒュアスに引導を渡したライオンもまた「しし座(Leo)」に変わったとされています。


1825年頃 PD


1825年頃 PD



より有力な説として、「みずがめ座」のモデルにはトロイアの王子ガニュメデス(Γανυμήδης)、「しし座」のモデルにはネメアの獅子(Νεμέος λέων)が挙げられるぞぃ


ヒュアスを失った姉妹たちは、その死を大いに嘆き悲しみ、うち5人は絶望のあまりに自らも息を引き取ってしまいました。
オリュンポスの王・雷霆の神ゼウス(ΖΕΥΣ)はその姉妹愛に敬意を表し、亡くなった5名の魂を天に召し上げて星々に変え、ヒュアスの名にちなんで、それらに「ヒュアデス」の名を与えたとされています。



これが「ヒアデス星団(Mel25、Caldwell41 HYADES CLUSTER)」
になったってわけね
さらに酷いことに、5人の姉妹の死を知った残りの10名(または7名)もまた「生きる」ことを諦め、同じく天に昇って星々となった彼女たちは、「プレイアデス」と名付けられました。



こちらが「プレアデス星団(M45 Pleiades)」となったのね



なんだか、集団パニック状態のようにも見えてしまうね!


いずれにせよ、数多くの兄弟姉妹はほぼ全員が空に上がって「星」となり、特に今回の主人公ヒュアデスは、古代ギリシャにおける「雨季の到来」を象徴する存在となったのです。
オリュンポス12神の1柱でもある、「酒」の神を育てたことがある!?
ヒュアデスの姉妹は一説によると、酩酊の神ディオニュソス(ΔΙΟΝΥΣΟΣ)の乳母であるラムス川の精霊ラミデス(Λαμιδες)とも同一視されました。
トラキアの王リュクルゴス(Λυκοῦργος)が幼いディオニュソスとその仲間たちを迫害した際、アムブロシアを除くヒュアデスたちは、一行を連れて海の女神テティス(Θέτις)の住処あるいはテーバイへと逃れ、ボイオティアの王妃イノ(Ἰνώ)にその保護を託したとされています。
※姉妹は「ドドニダイ(Dodonidae)」とも呼ばれたそう


『バッカス』1598年 PD
主神ゼウスは息子(ディオニュソス)を救ってくれたことに感謝の意を表し、彼女たちを星々の間に置くこととしました。



要するに「星座になった」ってことよ
また当時、ヒュアデスの姉妹はすでに老齢となっていましたが、救助されたディオニュソスの要請を受け、コルキスの王女メディア(Μήδεια)の魔法によって美しく若返ったとも伝えられています。



いくつかの伝承によると、ヒュアデスは
幼いゼウスを育てたとも言われたそうよ
このほか、ヒュアデスは「幼い酒神ディオニュソスを守り育てた」という属性から、
- ニュサ山の精霊ニュシアデス(Νυσιαδες)
- ナクソス島の精霊ナクシアイ(Ναξιαι)
- ミュシアの精霊ミュシアイ(Μυσιαι)
といったニンフたちとも密接に関連付けられました。



地域ごとにいろいろなニンフがいるから、
若干ワケが分からなくなるのよね
上述した2つの物語から、「ヒュアデス」の名称には、以下のような複数の由来があると考えられています。
- 父親または兄弟とされた「ヒュアス(Ὑας)」の名称から
- 酩酊神ディオニュソスの敬称の一つ、「ヒアス(Hyes)」から
- 「ヒアデス星団」の星々が、ギリシャ文字の「ウプシロン(υ)」の形に並んでいるから
※英語で言うと「U(ユー)」 - 「ヒアデス星団」が昇ると雨が降るので、「雨」を意味するギリシャ語の「hyein」から


ImageFXで作成
ギリシャ神話をモチーフにした作品



参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場する雨の精霊ヒュアデスについて解説しました。



十数人の兄弟姉妹がいっぺんに命を落とすってのも、
なかなかぶっ飛んだ話よね



何も死ぬことはなかったんじゃない?とは思っちゃうよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!



また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…