【応神天皇として善政を敷いた八幡神】品陀和気命-ホンダワケノミコト-【日本神話】

このシリーズでは、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事をお送りしています。

超個性的な八百万の神々が織りなす、笑いあり、涙ありのトンデモぶっ飛びストーリーが、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。

人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。

今回は、第十五代応神おうじん天皇として日本の文化的基礎を築き上げ、八幡神はちまんしんと結びついて源氏げんじの守護神にもなった文武両道の神、品陀和気命ほんだわけのみことをご紹介します！

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

• 日本神話にちょっと興味がある人
• 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
• とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人

そもそも「日本神話」って何？

「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの？」を説明してくれる物語です。

原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。

現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記こじき』と『日本書紀にほんしょき』という2冊の歴史書が元になっています。

これらは第四十代天武てんむ天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。

国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。

強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。

さぁ、あなたも情緒あふれる八百万やおよろずの神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。

品陀和気命ほんだわけのみことってどんな神さま？

品陀和気命ほんだわけのみこと(以下、ホンダワケ)がどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。

簡易プロフィール

正式名称	品陀和気命ほんだわけのみこと Hondawakenomikoto
別称	誉田別命ほんだわけのみこと 大鞆和気命おおともわけのみこと 八幡神はちまんのかみ 八幡大菩薩はちまんだいぼさつ 第十五代応神おうじん天皇 胎中天皇はらのうちにましますすめらみこと ほか
神格	文武の神
性別	男性
勢力	天皇家
親	父：第十四代仲哀ちゅうあい天皇 母：神功皇后じんぐうこうごう(息長帯比売命おきながたらしひめのみこと)
兄弟姉妹	品夜和気命ほむやわけのみこと
配偶者	高木之入日売命たかきのいりひめのみこと 中日売命なかつひめのみこと 宮主矢河枝比売みやぬしやかわえひめ ほか多数
子	大山守命おおやまもりのみこと 大雀命おおさざきのみこと(後の第十六代仁徳にんとく天皇) 宇遅能和紀郎子うじのわきいらつこ ほか多数
神徳(ご利益)	・国家鎮護 ・殖産興業 ・家運隆昌 ・成功勝利 ・教育の守護 ・交通安全 ・悪病災難除け ・諸願成就 ・縁結び ・子授け、安産 ・子育ての守護など
神社	宇佐神宮 石清水八幡宮ほか ※別途詳述

誕生と家族

ホンダワケは日本神話に登場する文武の神さまです。

彼は第十四代仲哀ちゅうあい天皇と神功皇后じんぐうこうごう(息長帯比売命おきながたらしひめのみこと)の間に生まれた皇子で、兄弟には品夜和気命ほむやわけのみことがいます。

ホンダワケが生まれた際、腕に鞆とも(弓を射る時に左手首に着ける武具)のような形の肉があったことから、彼は大鞆和気命おおともわけのみことという別名も持っています。

また彼は、母・神功皇后じんぐうこうごうの呪まじないによって15ヶ月もかけて生まれてきたという一風変わった出生譚をもっています。

『三韓征伐さんかんせいばつ』として有名な場面で神功皇后じんぐうこうごうが新羅しらぎに遠征した際、彼女はすでにホンダワケを身ごもっていました。

後に国を治める御子みこを外国の地で産むわけにはいかない、そう考えた母は呪まじないの石を腰に結いつけ、出産を遅らせながら帰還を果たし、筑紫国つくしのくに(福岡県)で無事にホンダワケを出産したのです。

長じて後、ホンダワケは天皇に即位して国を治め、後世において第十五代応神おうじん天皇と呼ばれるようになりました。

彼はいかにも神話的な誕生秘話をもつ一方、歴史的に実在した最初の天皇ではないかとも考えられています。

ホンダワケは複数の妻との間に男子11名、女子15名と数多くの子をもうけており、このうち大雀命おおさざきのみこと(後の第十六代仁徳にんとく天皇)が次代の天皇に即位しています。

名前の由来

ホンダワケの正式名称である品陀和気命ほんだわけのみこと及びその他の名称には、どのような意味が込められているのでしょうか。

一般には、

• 上述の通り、生まれた時から腕に鞆とも(弓を射る時に左手首に着ける武具)のような形の肉があったことから、「大鞆和気命おおともわけのみこと」と呼ばれた
• 古代の人々は「鞆とも」を「ほむた」と読んだとも言われており、「品陀ほんだ」も概ね上記と同じニュアンスをもつ
• 母・神功皇后じんぐうこうごうが外国でブイブイ言わせていた時からお腹の中にいたので、胎中天皇はらのうちにましますすめらみこととも呼ばれた

といったことが言われているようです。

胎児のうちから海外遠征を経験し、さらに生まれながらにして武具を身に着けている―。

そんなイメージからホンダワケは、特に戦前までの時代において、勝利を導く武神として崇められたとされています。

品陀和気命ほんだわけのみことの活躍シーン

異母兄たちを欺くために穢けがれをまとい、「禊みそぎ」の旅を経て立派な青年となる

ホンダワケは、彼の母である神功皇后じんぐうこうごう(息長帯比売命おきながたらしひめのみこと)が新羅しらぎの地に遠征した、『三韓征伐さんかんせいばつ』のその後の物語に登場します。

彼が呪まじないの石によって誕生を遅らされ、15ヶ月もかけてこの世に生を受けたことは先述の通りです。

異常な生まれ方をした者は神の力や特別な定さだめをもつ、古来からの言い伝え通り、とんでもなく波乱万丈はらんばんじょうな運命が出生直後のホンダワケを待ち受けていました。

彼の父である第十四代仲哀ちゅうあい天皇はすでに崩御ほうぎょしていましたが、彼には別の妻との間に生まれた、香坂王かごさかのみこと忍熊王おしくまのみこの2人の皇子がいました。

生まれて間もないホンダワケには、異母兄たちとの皇位継承争いに巻き込まれる危険が迫っていたのです。

それを察した母・神功皇后じんぐうこうごうは一計を案じ、ホンダワケが生まれてすぐに亡くなってしまったという噂を流します。

この偽情報に釣られた2人の皇子は、彼女を討って皇位を確固たるものとするべく、すぐに兵を挙げて反乱を起こしました。

しかし一計を案じることに定評のある神功皇后じんぐうこうごうの軍勢、彼らは一枚上手の戦術で反乱軍を翻弄し、見事に忍熊王おしくまのみこを討伐します。
※香坂王かごさかのみこは接触前に事故で亡くなっている。

定評のある「一計」はコチラ

2人は近江国おうみのくに(滋賀県)や若狭国わかさのくに(福井県南部)を巡礼し、穢けがれを祓はらう旅を続けました。

その後、越前国えちぜんのくに(福井県北部)の角鹿つぬがを訪れた建内宿禰たけのうちのすくねは、そこに仮宮かりみやを建てて皇子を住まわせ、「禊みそぎ」の行事を行ったとされています。

そんな2人が現地に滞在していたころ、以下のような出来事がありました。

ある夜、建内宿禰たけのうちのすくねの夢に伊奢沙和気命いざさわけのみことという名の神さまが現れ、こんなことを提案してきたのです。

翌朝、建内宿禰たけのうちのすくねとホンダワケが連れ立って浜に出てみると、そこには鼻に傷のあるたくさんの入鹿魚いるかが寄り集まっていました。

ホンダワケは、多くの食べ物(御食みけ)を恵んでくれた神さまに感謝を表明し、その御名みなを称えて「御食津大神みけつおおかみ」と名付けたと伝えられています。

それ以来、この地方から朝廷に塩や魚介類が多く献上されるようになったそうです。

傷ついた入鹿魚いるかたちの血が臭かったことから、この地は「血浦ちぬら」と呼ばれ、後に「都奴賀つぬが(角鹿つぬが)」となり、現在では「敦賀つるが」という地名で知られています。

また、神さまと自身の名前をとり替えるというこのエピソードは、典型的な成人儀礼のひとつである、「名前替え」の神事を象徴するとも言われています。

こうして無事に成人の儀式を終えたホンダワケは、彼を立派に育て上げた建内宿禰たけのうちのすくねと共に大和国やまとのくに(奈良県)へと戻り、常世国とこよにくにの少名毘古那神すくなびこなのかみお手製という謎の酒を土産に祝宴に参加しました。

母・神功皇后じんぐうこうごうは息子の帰還を喜び、自身は摂政せっしょうの座に就いてホンダワケの統治を支えたとされています。

母が100歳でこの世を去った後、ホンダワケは正式に天皇に即位しました。

積極的に海外の文化を取り入れ、日本の文化的な基盤を底上げする

母・神功皇后じんぐうこうごうの死後、正式に天皇となったホンダワケは、その41年間の治世で非常に優れた政治を行いました。

特に海外の文化に目を向ける気質は母譲りだったようで、彼はさまざまな人材を日本に招き、その進んだ文化を積極的に取り入れたとされています。

対象	使者	概要と結果
百済くだら王の子・阿直岐あちき	–	文学に精通、経典を治めていたので息子の宇遅能和紀郎子うじのわきいらつこの家庭教師にする
百済くだらの王仁わに	荒田別あらたわけ 鹿我別かがわけ	阿直岐あちきの紹介
		百済くだら及び新羅しらぎから縫工ほうこう・織工おりこう・鍛工たんこう・船匠せんしょうなどの優れた技術者を伴って来日
		『論語ろんご』十巻と『千字文せんじもん』一巻を朝廷に献上
大陸の呉国ごのくに	阿知使主あじのきみ 都加使臣つかのおみ	呉王の承諾を得て養蚕・紡績・織物・裁縫などの優れた技術者を伴って帰還

以上のようにあらゆる文学・産業・文化を日本に取り込んだホンダワケは、我が国の文化的基礎を築いた天皇として評価されており、大和朝廷の勢力も彼の治世において飛躍的に発展したと伝えられています。

彼の意外な一面として、生まれた時から世話になっている建内宿禰たけのうちのすくねを讒言ざんげんひとつで疑い討伐軍を派遣したり、後継者候補の最年少を指名して次世代に爆弾を投下したりもしていますが、ホンダワケはトータルで有能な天皇として後世に名を残しました。

意外な一面はコチラ

『古事記』では130歳、『日本書紀』では110歳でこの世を去ったとされる彼には「応神おうじん」という諡号しごうが贈られ、現代の私たちが良く知る第十五代応神おうじん天皇の名で呼ばれるようになりました。

八幡信仰はちまんしんこうと結びつき、源氏げんじの守護神となってさらに人気拡大

「応神おうじん」の諡号しごうを贈られたホンダワケはその後、八幡信仰はちまんしんこうのご祭神とされ、八幡神はちまんのかみや八幡大菩薩はちまんだいぼさつの名で信仰を受けるようになりました。

詳しい経緯は明らかではありませんが、平安時代後期に成立した歴史書『扶桑略記ふそうりゃっき』の中に、その縁起をうかがわせる以下のような逸話が記されています。

このエピソードによりホンダワケ≒八幡神はちまんのかみと見なされるようになり、八幡信仰はちまんしんこうの発祥地である宇佐神宮うさじんぐうを拠点として、彼の霊威れいいは日本全国に広がっていきました。

特に武家の棟梁とうりょう・源氏げんじの守護神に採用されて以降は拡大の勢いを増し、各地の武家層から庶民へと、その信仰が浸透したと言われています。

もともと軍神や弓矢の神さまとして信仰されたホンダワケ(八幡神はちまんのかみ)は、その過程で教育や縁結び、交通安全などの日常生活に根差した神格をも帯びていき、今ではすっかり庶民的な文武両道の神さまとして親しまれています。

品陀和気命ほんだわけのみことを祀る神社ガイド

ホンダワケは、いくつかの神社で祀られています。

宇佐神宮

大分県宇佐市南宇佐

公式ページ

石清水八幡宮

  京都府八幡市八幡高坊

公式ページ

鶴岡八幡宮

  神奈川県鎌倉市雪ノ下

公式ページ

氣比神宮

  福井県敦賀市曙町

公式ページ

函館八幡宮

  北海道函館市谷地頭町

公式ページ

飯野八幡宮

 福島県いわき市平字八幡小路

公式ページ

忌宮神社

⼭⼝県下関市⻑府宮の内町

公式ページ

筥崎宮

  福岡県福岡市東区箱崎

公式ページ

柞原八幡宮

 大分県大分市上八幡

公式ページ

藤崎八旛宮

  熊本県熊本市中央区井川淵町

公式ページ

石狩八幡神社

 北海道石狩市弁天町

公式ページ

坪沼八幡神社

  宮城県仙台市太白区坪沼舘前東

公式ページ

香椎宮

   福岡県福岡市東区香椎

公式ページ

飯坂八幡神社

  福島県福島市飯坂町八幡

公式ページ

上野国一社八幡八幡宮

  群馬県高崎市八幡町

公式ページ

などです！

おわりに

今回は、日本神話に登場する品陀和気命ほんだわけのみことについて解説しました。

パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。

神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。

これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです！

しーゆーあげん！