【5番目に現れた別天津神の1柱】天之常立神-アメノトコタチノカミ-【日本神話】

このシリーズでは、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事をお送りしています。

超個性的な八百万の神々が織りなす、笑いあり、涙ありのトンデモぶっ飛びストーリーが、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。

人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。

今回は、世界の始まりに5番目に現れた原初の神で、特別に尊い別天津神ことあまつがみの1柱に数えられる高天原たかまがはらの守護神、天之常立神あめのとこたちのかみをご紹介します！

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

• 日本神話にちょっと興味がある人
• 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
• とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人

そもそも「日本神話」って何？

「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの？」を説明してくれる物語です。

原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。

現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記こじき』と『日本書紀にほんしょき』という2冊の歴史書が元になっています。

これらは第四十代天武てんむ天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。

国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。

強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。

さぁ、あなたも情緒あふれる八百万やおよろずの神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。

天之常立神あめのとこたちのかみってどんな神さま？

天之常立神あめのとこたちのかみ(以下、アメノトコタチ)がどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。

簡易プロフィール

正式名称	天之常立神あめのとこたちのかみ Amenotokotachinokami
別称	天常立尊あめのとこたちのみこと 天之常立尊あめのとこたちのみこと 天底立命あめのそこたちのみこと
神格	天の世界・高天原たかまがはらの守護神
性別	なし(独神ひとりがみ)
勢力	天津神あまつかみ
グループ1	別天津神ことあまつがみ
親	なし
兄弟姉妹	なし
配偶者	なし
子	なし
神徳(ご利益)	・五穀豊穣 ・産業開発の守護 ・交通安全 ・航海安全 ・縁結び ・子授け、安産 ・諸願成就など
神社	出雲大社 駒形神社ほか ※別途詳述

誕生と家族

アメノトコタチは日本神話に登場する原初の神々の1柱です。

彼はこの世界の始まり、天地開闢てんちかいびゃくの折に

• 天之御中主神あめのみなかぬしのかみ
• 高御産巣日神たかみむすびのかみ
• 神産巣日神かみむすびのかみ
• 宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみ

に続いて、5番目にこの世界に現れました。

この「現れた」というのが意外と重要で、彼は誰かによって「生み出された」のでも「創り出された」のでもありません。

彼は自然の生成力によって「成った」存在なので、アメノトコタチに両親はおらず、また彼自身も特定の性別を持たない「独神ひとりがみ」とされます。

最初の神さまである天之御中主あめのみなかぬしからアメノトコタチまでの5柱は「別天津神ことあまつがみ」と呼ばれ、日本の八百万やおよろずの神々の中でも特に尊い存在として位置付けられています。

「天地開闢てんちかいびゃく」という言葉は、天地の始まりや世界の初めを意味します。

それ以前の世界はまだしっかりとした形をもっておらず、陰陽の区別も天地の区別もなく、ただ混沌だけが広がっていました。

あるとき原初の混沌にほの暗い何かが芽生え、それが澄んで明らかになると、澄んで軽いものと重く濁ったものがそれぞれに分裂します。

澄んで軽いものは高く昇って「天」となり、重く濁ったものはとどまって「地」となりました。

日本神話においては、この「天」と「地」が大まかに分かれたタイミングのことを「天地開闢てんちかいびゃく」と呼んでいます。

このときに天となった世界は「高天原たかまがはら」と呼ばれ、地となった世界は後に「葦原中国あしはらのなかつくに」と呼ばれるようになりました。

アメノトコタチはこの天地開闢てんちかいびゃくの際に天の世界・高天原たかまがはらに姿を現しましたが、特に物語性のある活躍をするわけでもなく、この世界がおおむね形作られるとその姿を隠してしまったと言われています。

名前の由来

アメノトコタチの正式名称である天之常立神あめのとこたちのかみには、どのような意味が込められているのでしょうか。

一般には、

• 「常立とこたち」は「恒久に確立している」の意で、天の世界・高天原たかまがはらが永遠に確固として続くことを象徴する
• 「常とこ」を「床とこ」と取って「土台」の意、「立たち」を「現れる」の意と捉え、神々や大地・国土が生成されるための土台となる根源的空間の出現を象徴する
• 「常とこ」は寝たり座ったりする場所のことで、後に登場する男女の性をもった存在が生殖し、命を誕生させる場、つまり「神々の生成の場」を意味する

といったことが言われているようです。

アメノトコタチは世界のはじまりに姿を現し、後に登場する神々や彼らが暮らす大地が生成されるための、観念的な「場」を成立させた神さまであると考えられているのです。

天之常立神あめのとこたちのかみの活躍シーン

国之常立神くにのとこたちのかみと対を成し、「天」から「地」の成立の流れを象徴する

アメノトコタチの神名は、彼に続いて6番目に登場する国之常立神くにのとこたちのかみと対応関係にあるとされています。

しかし、アメノトコタチまでの5柱の神々が「別天津神ことあまつがみ」と呼ばれるのに対し、国之常立くにのとこたちは後に登場する伊邪那岐命いざなぎのみこと・伊邪那美命いざなみのみことを含む「神世七代かみよななよ」と呼ばれるグループに属しています。

彼らがどのような役割を果たしたのかについては諸説あり、

• アメノトコタチまでの「別天津神ことあまつがみ」が天上世界の成立に関与し、国之常立くにのとこたち以降の神々が地上世界の成立の段取りを行って、最終的に「国生み」と「神生み」を行う伊邪那岐いざなぎ・伊邪那美いざなみ夫婦の誕生に着地する
• 「造化三神ぞうかのさんしん」と呼ばれる原初の3神が「天」に関与し、国之常立くにのとこたち以降の「神世七代かみよななよ」が「地」に関与するが、その間に立つ宇摩志阿斯訶備比古遅神うましあしかびひこぢのかみとアメノトコタチが「天」と「地」の両方に関わる

といったことが考えられているようです。

いずれの説をとるにしても、アメノトコタチは「天上世界の成立」と「地上世界の成立」の切り替わりのタイミングに登場し、その対応関係や正当な引継ぎといった要素を象徴していると言えるでしょう。

国之常立くにのとこたちが複数の文献に登場し、古くから信仰されてきた神さまであると認められるのに対して、アメノトコタチに関する記述は少なく、その事跡もほとんど残されていません。

こういった点からアメノトコタチは、国之常立くにのとこたちとの対応関係を成立させるために、後世に創作された神さまではないかとも考えられています。

そんなアメノトコタチを含む原初の神々は、自分たちの仕事を終えると「独神ひとりがみとなって身を隠した」とされています。

彼らのこの行動には、後に登場して日本の最高神に君臨する、天照大御神あまてらすおおみかみの権威の絶対性を確保する意図があるとも言われています。

天之常立神あめのとこたちのかみを祀る神社ガイド

アメノトコタチは、いくつかの神社で祀られています。

出雲大社

島根県出雲市大社町杵築東

公式ページ

駒形神社

岩手県奥州市水沢中上野町

公式ページ

金持神社

鳥取県日野郡江府町江尾

公式ページ

籠神社 奥宮 眞名井神社

京都府宮津市字大垣

公式ページ

常陸国出雲大社

茨城県笠間市福原

公式ページ

駒形根神社

宮城県栗原市栗駒沼倉一ノ宮

公式ページ

高見神社

福岡県北九州市八幡東区高見

公式ページ

総社大神宮

福井県越前市京町

公式ページ

物部神社

島根県大田市川合町川合

公式ページ

十五社神社

 岐阜県山県市大桑

公式ページ

などです！

おわりに

今回は、日本神話に登場する天之常立神あめのとこたちのかみについて解説しました。

パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。

神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。

これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです！

しーゆーあげん！