こんにちは!
忙しい人のための神話解説コーナーだよ!
この記事では、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、『古事記』をベースにした神話のメインストーリーをざっくりとご紹介していきます。
とりあえず主だった神さまの名前と、ストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
『日本書紀』にのみ見られる独自の展開や、各地に伝わる『風土記』に記されたエピソードなどは、神さま個人(神)を紹介した個別記事をご覧ください。
とりあえず大まかな流れをつかむというコンセプトじゃ
補足情報は【Tips】として解説しとるが、読み飛ばしても全然OKじゃぞ
関連記事のリンクを貼っているから、
気になった方はそちらもチェックしてね
ではさっそくいってみよう!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 日本神話にちょっと興味がある人
- 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 日本神話のメインストーリーをざっくりと把握出来ます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、今回ご紹介する物語のストーリーラインを、箇条書きでざっくりまとめておきます。
ぱっと見で把握してね
何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
今回ご紹介する『神武東征神話』のストーリー
- 鵜葺草葺不合命と玉依毘売命の間に生まれた長男・五瀬命と末っ子の神倭伊波礼毘古命は父から地上の統治を引き継ぎ、より良い地を求めて東への旅立ちを決意する
- 豊国の宇沙(大分県宇佐市)や吉備国の高島の宮(岡山県岡山市)などを経て青雲の白肩の津(東大阪市日下町)に至った一行は那賀須泥毘古の待ち伏せ攻撃を受け、兄・五瀬が命を落としてしまう
- 熊野の山にたどりついた伊波礼毘古たちは、熊野山之荒神の精神攻撃を受け全員気絶するも、天の神々により遣わされた高倉下命と霊剣・布都御魂の力によって九死に一生を得る
- 道案内として八咫烏を仲間に入れた一行は、さまざまな神さまと遭遇しながらも宇陀(奈良県宇陀郡)の地に到達する
- 兄宇迦斯が罠を用意して伊波礼毘古を待ち受けるも、弟宇迦斯の密告によって事前に発覚、旅の一行は無事に宇陀を突破する
- 伊波礼毘古は策を弄し、忍坂(奈良県桜井市)の大室(大きい岩穴のこと)に棲む八十建(多数の勇猛な土着民)を一網打尽にして征伐する
- 兄の仇である那賀須泥毘古を討ち取り、邇芸速日命を臣下に加えた伊波礼毘古は、畝傍の白橿原(奈良盆地南部)に宮殿を建てて即位する
- 伊波礼毘古は137歳で崩御、後に「神武」という漢風諡号が贈られる
そもそも「日本神話」って何?
「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。
原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。
現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記』と『日本書紀』という2冊の歴史書が元になっています。
これらは第四十代天武天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。
国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。
強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。
「日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!
さぁ、あなたも情緒あふれる八百万の神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。
主な登場人物
この物語の登場人物(神)をざざ~っと挙げておくぞい
エピソード7/大和へ…
―前回までのあらすじ
『天孫降臨』にて地上の世界・葦原中国に降り立った邇邇芸命は、笠沙の岬(九州南部)で出会った木花之佐久夜毘売命と結婚し、夫婦の間には3柱の兄弟が生まれました。
このうち火照命(海幸彦)は海での漁りを、火遠理命(山幸彦)は野山での狩猟を得意とする立派な若者に成長します。
ある日、弟・火遠理の提案でそれぞれが所持する弓矢と釣り具を交換した兄弟。
しかし火遠理は、釣りの最中に不注意で、兄・火照が大切にしている釣り針を魚に取られて失くしてしまいます。
再三の謝罪に加えて代わりの釣り針を大量に贈っても許してもらえない火遠理は、塩椎神の助言に従い、海の底にあるという海神の宮へと向かいました。
彼が海底の宮殿で出会ったのは豊玉毘売命、2神は一目見て互いを気に入り、女神の父・大綿津見神の許しを得て結婚します。
3年後、すべての海を支配する大綿津見の力を借りて兄の釣り針を取り戻した火遠理は、地上に戻り義父から教わった呪いを添えて火照の大切な道具を返却しました。
しかし、海神の呪力によって海の幸からも稲の実りからも見放されてしまった火照は、日に日に困窮して余裕を失い、ついに火遠理に対して襲撃を仕掛けます。
火遠理は、大綿津見から授かった「塩盈珠」と「塩乾珠」を駆使して火照を打ち倒し、子々孫々の代まで自らに仕えることを誓わせました。
その後、火遠理との子を宿した豊玉毘売は、無事に鵜葺草葺不合命を生みますが、彼女は約束を破って出産の現場を目撃した夫の元を去ってしまいます。
鵜葺草葺不合は母の妹、つまり叔母にあたる玉依毘売命に養育されますが、この2神も結婚し、夫婦の間には後に初代神武天皇と称される神倭伊波礼毘古命が誕生しました。
前回のストーリーはコチラ!
今回は、伊波礼毘古が初代神武天皇と呼ばれるようになるまでの物語だね!
いよいよ「天皇」という存在が神話に登場するのね
非常に有名な『神武東征神話』の場面じゃな
よりよい統治の場所を求めて兄・五瀬命と共に旅立つ【神武東征のはじまり】
鵜葺草葺不合命と玉依毘売命の間に生まれた4兄弟は、成長するとそれぞれの道を歩みました。
次男の稲氷命は母の故郷である海神の宮へと旅立ち、三男の御毛沼命は海の遥か彼方にある常世国へ渡ります。
そこで、長男の五瀬命と末っ子の伊波礼毘古(若御毛沼命)が日向国(宮崎県)の高千穂の宮に残り、地上の統治を父親から引き継ぐことになったのです。
今回の主人公である伊波礼毘古は、神話上の最初の天皇となる非常に特別な存在です。
その特別さの根拠は、実は彼が生まれてくるまでの血筋にも隠されています。
先述の通り、伊波礼毘古の父親は鵜葺草葺不合、天の世界・高天原を統べる天照大御神の血を引く直系の子孫です。
そして彼の母親である玉依毘売は、日本の海のすべてを支配する大物の海神・大綿津見神の娘でした。
また伊波礼毘古の曾祖母で邇邇芸の妻である木花之佐久夜毘売命は、日本の山の神々を束ねる総元締・大山津見神の娘です。
つまり伊波礼毘古は、日本の頂点に君臨する太陽神の血を直系で引きながら、母方の系譜からは山と海を支配する偉大な神々のDNAを受け継いでいるのです。
太陽の力と、自然界を構成する二大領域(つまり山と海)を掌握する霊力を受け継いだ文字通りの「選ばれし者」、それが後に初代天皇となる伊波礼毘古というわけです。
とんでもないサラブレッドって感じだね!
そうなのです。
伊波礼毘古までの系譜をよく見てみると、実は海の支配者・大綿津見の血を受け継ぐ件が重複しています。
この設定の由来は諸説ありますが、初代天皇を天照の五世孫に位置付けるために、鵜葺草葺不合という神格が創作されたとも考えられているようです。
ちーん
まぁ息子が偉大ならそれでええやろ
兄弟は仲良く協力して仕事を行い、地上の世界・葦原中国の統治も概ね軌道に乗せることに成功します。
伊波礼毘古は阿比良比売と結婚して、多芸志美美命と岐須美美命の父親にもなっていました。
そんなある日のこと、兄弟がいつも通り仕事の打ち合わせをしていると、こんな話題で話が盛り上がります。
地上を統治するって言ってもさ、
ここ(=日向国)って場所が端っこすぎんか?
どこか効率良く仕事が出来る良い感じの場所はないんやろうか?
う~む、そやなぁ…
ああでもないこうでもないと話す2人のもとに、突然見知らぬおじいちゃんが現れました。
そういうことなら、東の方い良い感じの国があるぞよ~
彼は塩椎神という潮の流れを司る神さまで、突然現れては困っている者に的確すぎる助言をするという、神出鬼没のアドバイザーとしての定評がありました。
前回も登場したよ!
こうなったら行くしかないぜ!
塩椎の話に触発された伊波礼毘古は、その場で東方への旅立ちを決意します。
彼はこの時45歳、ここに有名な『神武東征神話』の物語が始まりを告げるのです。
伊波礼毘古はさっそく兄・五瀬をはじめとした旅の仲間を組織し、高千穂の宮を発って美々津の港から出航します。
主要な場面までのルートをダイジェストで紹介するぞい
訪問先 | 出来事や概要 |
---|---|
豊国の宇沙 (大分県宇佐市) | 宇沙都比古と宇沙都比売の兄妹が宮殿まで造って歓待してくれる |
筑紫国の岡田の宮 (福岡県遠賀郡) | 1年ほど滞在 |
安芸国の多祁理の宮 (広島県安芸郡) | 7年ほど滞在 |
吉備国の高島の宮 (岡山県岡山市) | 8年ほど滞在 |
速吸門 (兵庫県の明石海峡) | 釣りをしていた宇豆毘古という国津神が案内役になってくれたので、槁根津日子という名を授ける ※彼は倭国造の先祖となる |
だいぶゆったりした旅だわね
少なくとも16年は経って伊波礼毘古も61歳よ…
普通の人間の基準で考えちゃだめよ~
神の子よ?わし!
まぁ軍備を整えるのに時間がかかったんだろうね!
一行はなおも東に向けて旅を続けますが、次に訪れる地域で物語は急展開を迎えます。
仇敵との出会い、そして兄の死【白肩の津:VS.那賀須泥毘古】
地元の事情に詳しい水先案内人を得た伊波礼毘古の一行は順調に旅を続け、浪速渡(大阪湾沿岸)を過ぎて青雲の白肩の津(東大阪市日下町)に停泊します。
この地で旅の一行を待ち受けていたのは、これまでのような友好的な歓待とは真逆のものでした。
港の周辺は登美(奈良県西部)の生駒山周辺を支配した豪族・那賀須泥毘古(またの名を登美毘古)の勢力によって取り囲まれており、伊波礼毘古たちは彼らの待ち伏せ攻撃を受けてしまったのです。
旅の仲間たちはそれぞれに武器を手に取り応戦、激しい攻防戦が繰り広げられます。
伊波礼毘古たちが船に積んでいた楯を取り出し浜に突き立てて身を守ったことから、この地は「楯津」と名付けられ、その後に「日下の蓼津」と呼ばれるようになりました。
今マジで忙しいから!
地名の由来は後にして!!
この戦いのさなか、兄・五瀬が敵の矢を手に受けて重傷を負ってしまいます。
あ~そっか~わしら日の神(=天照)の御子やしなぁ~
きっと太陽に向かって戦ったら悪かったのよ~
場所変えよか
(逆光で見えにくかっただけなんちゃうかな…)
そんなこんなで一行は南に迂回し、そこで五瀬は血にまみれた自身の手を洗い清めました。
彼の傷は深かったのであたり一面は真っ赤な血に染まり、その周辺は血沼海(大阪府南部)と呼ばれるようになったと伝わっています。
負傷兵を抱えた伊波礼毘古の一行は紀伊国(和歌山県)の男乃水門にたどり着きました。
そこで五瀬は突然、
わしゃぁあんなボ〇クラにやられて終わるんかい!!!
ウボァー!!
彼は激しい雄たけびをあげた後、そのまま息を引き取ってしまいます。
五瀬の墓は紀伊国の竈山(和歌山市周辺)に築かれたとされています。
ここまで順調に歩を進めてきた天照の直系の子孫・伊波礼毘古は、ここに来て手痛い敗北を喫した上に、血のつながった兄である五瀬までも失ってしまいます。
彼はこれまでに経験したことのない挫折に打ちのめされながらも、仇討ちの決意を胸に、歩みを止めることなく東に向けて旅を続けました。
わぉ、結構がっつりやられてるのね…
正直、一番きつい時期やったね~
ピンチとは何か?天の神々による手厚い保護【熊野の村:VS.熊野山之荒神】
伊波礼毘古は兄を失った悲しみを抱えながらも、各地を巡ってその土地の神々を平定、帰順させていきました。
久米部と呼ばれる傭兵集団も加えて戦力を増強した一行はある日、熊野の村にたどり着きます。
すると伊波礼毘古たちの目の前に、突然とんでもなく大きな熊が現われて立ちはだかりますが、それはたちまち霧のようにどこかに消えてしまいました。
お、おぅ、わしらの威光にビビッて逃げよったわぃ!
(正直ちょっとちびったわ…)
…って、あれ?
次の瞬間、伊波礼毘古は、すーっと引き込まれるように意識が遠のいていく感覚を覚えます。
彼だけでなく、彼が率いる屈強な軍勢もみな気を失って、バタバタと倒れていったのです。
実は、先ほど現れた大熊はこの熊野の山中に棲む神の化身で、その名もズバリ熊野山之荒神といいました。
伊波礼毘古たちは、この地主神の荒々しくも妖しい霊力に、まんまとしてやられたのです。
それからどれほどの時間が経ったのでしょうか、伊波礼毘古はうっすらと意識が戻るのを感じます。
身体の回復具合で寝坊を確信するあの感覚からして、かなりの時間眠ってしまっていたようですが、彼は強がってこう言いました。
っぶね~、寝るとこだったわ~!!
いやガッツリ寝とったがな
伊波礼毘古がふと目線を動かすと、目の前に何やら霊妙な剣を携えた見知らぬ神さまが立っており、彼を心配そうに見つめています。
ほれ、天の御子殿
これを使うのじゃ
伊波礼毘古が言われるがままに剣を握り鞘から抜くと、次第に周囲から妖しげな邪気が祓われていくのが分かりました。
彼が率いていた兵士たちも次々に目を覚ましましたが、剣の効果はそれだけではなく、なんと熊野山之荒神たちがみな自動で斬り倒されてしまったのです。
えっ、なにこれ~
『ド〇えもん』で見た名刀・電光〇じゃ~ん!!
あれ…?
でもどうしてここが…?
実はかくかくしかじかでしてのう…
伊波礼毘古が詳しく事情を聴いてみると、概ね以下のような経緯があったことが分かりました。
彼の名は高倉下命、倉庫や農業を司る神さまで、彼はここ熊野の山中に住んでいるのだそうです。
そんな彼はある日、何ともおかしな夢を見ます。
その夢の中では、天照と高御産巣日神が建御雷之男神を呼び出して、何やら深刻そうに話し込んでいました。
よくよく話を聞いてみると、どうやら天照と高御産巣日の直系の子孫にあたる伊波礼毘古なる人物が、より良い統治の場所を求めて旅をしている途中、ちょうどこの熊野の山で何かしらのピンチに陥っているらしいことが分かったのです。
(あ~あの人(神)、割と荒いからなぁ…)
山の神の化身である熊野山之荒神の性格を多少なりとも知っていた高倉下には、その場の状況を何となく察することが出来たようです。
要するに天の神々は、自分たちの子孫を助けるために、どんな手を打つべきかを話し合っていたということになります。
高倉下が話に耳を傾けていると、議論は思わぬ方向に進みます。
わしらの直系の子孫がのぅ、割と大ピンチなんじゃ
建御雷之男よ、お前が地上平定したんやから
ちょいと様子を見てこいや
(どんな理屈やねん…)
当の建御雷之男も同じことを考えたのか、彼は命令をそのまま受けるのではなく、別の提案を返しました。
私がわざわざ行かずとも、
この霊剣を授ければ十分でしょう
ちょうど良い場所にちょうど良い奴が住んどりますゆえ、彼に任せましょう
(ちょうど良い場所?ちょうど良い奴?誰やろ…)
ってことで高倉下、頼んだぞ!
はっ…!!
高倉下が目を覚まして何か変わったことはないか確認すると、確かに自分の倉の中に、何やら霊妙な力を放つ見覚えのない剣が置いてあります。
さらに倉の屋根には、ちょうど同じくらいのサイズ感の穴がぶち開いており、それが天の世界・高天原からもたらされたことも分かりました。
あいつ!
物理的に投げ込みやがったな!!
夢で命令するくらいなら、
そこも不思議パワーで良い感じにやれよ…
とはいえここまで来ると、件の天津神の御子とやらが窮地に陥っているというのも本当の話のようです。
人の良い高倉下は不思議な剣を携えて、心当たりのある場所までひとっ走りすることにしました。
ほぇぇ、それでここに…
なんにせよ助かったよ、ありがとう
天津神の御子すらも感服させたその剣の名前は布都御魂といい、この霊剣は奈良県にある石上神宮に祀られています。
他にも「佐士布都神」や「甕布都神」とも呼ばれるぞい
こうして伊波礼毘古たちは態勢を立て直して再び進み始め、高倉下は一行の出発を静かに見送りました。
彼はその後、無事に大和(奈良県)を平定して天皇に即位した伊波礼毘古に仕え、越後国(新潟県)など、各地にその足跡を残しています。
どうにか行軍を再開した伊波礼毘古の一行ですが、彼らはこのあたりでさすがに、序盤の旅とはまるで状況が違うことに気が付きはじめます。
さすがにヤバくない?
橋を渡ったら急に敵のレベルが上がったんですけど!?
天の世界・高天原から見守っていた神々もこの状況を懸念し、急遽、お助けキャラの派遣が決定しました。
ここで登場するのが、サッカー日本代表のシンボルとしても有名な、三本足をもつ八咫烏です。
高御産巣日の命を受けた彼は、地上の世界・葦原中国にひとっ飛びで駆けつけました。
ガァガァ、俺の名は八咫烏!!
高御産巣日様の命により、お前らの道案内をするぜ!!
ガァガァ、ちなみにその方向に進むのはまじでヤヴァイぜ!!
え~なんか『鬼〇の刃』みたいで良い感じだね~
ここで登場した八咫烏には、烏ではなく金鵄の姿で登場するなどの、いくつかのバリエーションが存在します。
良かったら見てみてね!
こうして伊波礼毘古たちは優秀な道案内も仲間に引き入れ、エンカウントを回避しながら快適な旅を続けるさなか、以下のような神々との出会いも果たします。
神名 | 概要 |
---|---|
贄持之子 | 吉野川の川尻で魚を捕っていた国津神 阿陀(奈良県五条市付近)の鵜飼の先祖 |
井氷鹿 | ぴかぴか光る井戸の中から現れた尾のある国津神 吉野の首(族長)たちの先祖 |
石押分之子 | 力を誇示するように岩を押し分けて出てきた尾のある国津神 でも本当は伊波礼毘古たちを出迎えに来ていた 吉野の国巣(土着民)たちの先祖 |
天津神の御子ともなると、
追加オプションもとんでもなく強力ね~
ほぼチートアイテムなんですがね
こんなんあるなら最初っから出してよね~
人望がないのにイキった兄と、冷静だけどドライすぎる弟【宇陀の穿:VS.兄宇迦斯】
そんなこんなで伊波礼毘古と愉快な仲間たちは旅を続け、山を越えたところで宇陀(奈良県宇陀郡)の地に到達します。
このあたりの地域は兄宇迦斯と弟宇迦斯の兄弟が仕切っているという情報を得ていた一行は、あらかじめ八咫烏を遣いにやって、彼らに従属の意思があるか確認することにしました。
先行した八咫烏が人々の集まる場所を見つけると、彼は目線を集めるためにカァと一声鳴き、文字通りの上から目線で高らかに布告します。
ガァガァ、天津神の御子のお出ましじゃい
おどれら仕える用意は出来とるカァ~
おととい来やがれ!
いきなり現れて自分たちに従えとは何事かと、兄宇迦斯は鏑矢を放って八咫烏を追い返し、その矢が落ちた場所は訶夫羅前と呼ばれるようになりました。
さらに兄宇迦斯は、伊波礼毘古たちを迎え撃つための軍勢を集め始めますが、これがなかなか思う通りに進みません。
(兄者、あんたにそこまでの求心力はないやろう…)
そこで兄宇迦斯は作戦を変更し、致命的なトラップを仕掛けた大きな御殿を建設します。
そこに伊波礼毘古たちを誘い込み、歓待するふりをして罠に嵌め、そのまま亡き者にしてやろうという魂胆でした。
いや~先日はすみませんでした!
まさかあの天照様のご子孫とは!
喜んでお仕えいたしますが、先日のお詫びも兼ねて、
ぜひ歓迎の宴を開かせてくだせぇ!
敵を油断させる見事な演技力で伊波礼毘古たちを招待した兄宇迦斯、陰謀の準備は完全に整いました。
その様子をこっそりと見ていたのが、弟の弟宇迦斯です。
(いや~、よしんばその1回が上手くいったとして…)
(長期的に見て無理があるやろ…こうなったらしゃあないわ…)
弟宇迦斯は先回りして伊波礼毘古たちの元に現れ、兄の企みのすべてを打ち明けました。
そして迎えた宴の当日、兄宇迦斯は貼り付けたような笑顔で伊波礼毘古を出迎え、彼を例のデスパレスに誘い込もうと画策します。
しかしその作戦は弟宇迦斯の密告によって既に明るみに出ているので、伊波礼毘古側もきっちりと準備をしてきました。
彼の重臣である道臣命(大伴連らの祖)と大久米命(久米直らの祖)が兄宇迦斯を呼び出すと、彼に向ってこう言います。
お前が先に入って、どう仕えるのかやってみぃ
何も問題ないなら、出来るよなぁ?
ぐぬぬ…
2人の重臣はそれぞれ剣の柄を握りしめ、矛を背中に突き付けて兄宇迦斯を御殿の中に追い入れます。
結局彼は、自分自身が作った罠にはまって命を落としてしまいました。
兄宇迦斯の亡骸は引きずり出されて八つ裂きにされてしまったので、その地は宇陀の血原と呼ばれるようになりました。
一方生き残った弟宇迦斯は正式に伊波礼毘古に仕えることになり、彼はノートラップで兵士たちに御馳走を振舞いました。
それを嬉しく思った伊波礼毘古は、宴の席で喜びの歌を歌ったと伝えられています。
(要約)
Chu!強すぎてごめん ♪
死にきれないよね?ざまあw ♪
ちゃんとした歌に興味がある人は
「久米歌」で検索してみてね!
今回もどうにか難を逃れて宇陀を突破した一行は、その後も休むことなく長い旅を続けます。
実の兄まで切り捨てた弟宇迦斯を採用するのも、
なかなか強靭なメンタルよね~
ヤバい奴ほど近くに置いて親しくする!
『孫子の兵法』で言ってたでしょ?
最後の方の敵の扱い、雑になっちゃう説【忍坂の大室:VS.八十建】
宇陀の地を出発した伊波礼毘古と旅の仲間は、忍坂(奈良県桜井市)の大室(大きい岩穴のこと)に至ります。
…ん?
なんか変な声聞こえない?
一行が大室の中を覗いてみると、その中には土雲・八十建と呼ばれる多数の勇猛な土着民がひしめいており、唸り声をあげて伊波礼毘古たちを待ち構えていたのです。
うわぁ、もう面倒くさいなぁ…
せや、一網打尽に片付けたろ!!
一計を案じた伊波礼毘古は、八十建と戦うのではなく、彼らを御馳走でもてなすことにしました。
相手方の人数に合わせて多数の給仕人を雇った彼は、一人一人に太刀を隠し持たせるとこう言い含めます。
わしが歌いだしたらそれが合図や
みな一斉に、やれや…!
自分が罠に嵌められかけたことを根に持っていた伊波礼毘古は、今度は自らが狡猾な策で敵を陥れることにしたのです。
そんな悪意には気付かない八十建は豪勢なもてなしを喜び、宴は大いに盛り上がりました。
そして宴もたけなわとなった頃、ついに伊波礼毘古が動きます。
(要約)
穴倉になんかたくさんいるけど~ ♪
武勇に秀でた我らが久米部がいてもうたる~ ♪
それ今じゃ~ ♪
※ちゃんとしたのは「久米歌」で検索のこと
伊波礼毘古が作戦通りに合図となる歌を歌うと、80人の給仕人たちは一斉に太刀を抜き、八十建をいっぺんに斬り伏せてしまいました。
こうして数多くの敵を効率的に排除した一行は、引き続き東に向けて軍を進めていきます。
だんだん描写があっさりしてきてるね!
まぁどうしても尺の都合がねぇ~…
兄の仇討ちを果たした弟は初代天皇に即位する【そして伝説へ…】
その後の伊波礼毘古たちはまさに向かうところ敵なしといった状態で、一行は破竹の快進撃を続けます。
かつて五瀬命を死に追いやった仇敵である那賀須泥毘古(またの名を登美毘古)ですら、たいした描写もなく伊波礼毘古に屠られてしまいました。
兄の仇を討ち積年の恨みを晴らした伊波礼毘古は、またもその昂る気持ちを歌で表現します。
(要約)
なんか色んなもので例えとりますけども~ ♪
我らが勇ましき久米部は敵を討たずにはおかんぞよ~ ♪
※ちゃんとしたのは「久米歌」で検索のこと
また兄師木と弟師木の兄弟を討ち取った戦いにおいては、長期戦で疲れ果ててしまった軍勢を見た伊波礼毘古が、以下のような歌を歌っています。
(要約)
戦いがえらく長引いたのでわしら腹ペコ~ ♪
仲間たちよ、助けてくんろ~ ♪
晩年の伊波礼毘古はハイになってしまっていたのか、至るところで歌を歌っていますが、決してその能力が衰えたわけではありません。
彼の軍勢はその後も各地を転戦し、逆らう賊を平定・帰順させ、服従しない勢力を追い払いました。
伊波礼毘古がこうした戦いに明け暮れているさなか、彼のもとに邇芸速日命という神さまが現れます。
なんでも彼は、地上に降りた伊波礼毘古たちを後から追いかけてやって来たそうな。
邇芸速日は、伊波礼毘古が天津神の御子であることを証明する宝物(天津瑞)を献上すると、そのまま彼に仕えることになりました。
『日本書紀』では一番はじめに地上に降りていた!?
こうして地上の荒ぶる神々を平定した伊波礼毘古は大和国(奈良県)にたどり着き、畝傍の白橿原(奈良盆地南部)に宮殿を建てて、ついに天下を治めることになったのです。
彼は大和の地で大物主神の娘である比売多多良伊須気余理比売を后に迎え、彼女との間には日子八井命、神八井耳命、神沼河耳命の3神が誕生しました。
その後伊波礼毘古は137歳まで生き、この世を去ったと言われています。
生前に偉業を成し遂げた彼には、その功績を称えていくつかの諡号(おくり名、死後の称号)が贈られました。
そのうち和風諡号が「神日本磐余彦天皇」で、8世紀後半になって贈られた漢風諡号が「神武」といいます。
ここでついに彼は、現代の私たちも良く知る「初代・神武天皇」の名で称されることになったのです。
ついに伊波礼毘古の長い旅も終わったのね
くぅ~疲れましたw これにて完結です!
読んでくれて感謝だZE☆
次回以降、しばらく端折って時代が飛ぶよ
壮大な冒険を経て初代天皇に即位した伊波礼毘古、彼の系譜はその後も連綿と続き、『記紀』においても代々の天皇たちによるエピソードが語られています。
しかし、いわゆる「欠史八代」と呼ばれる第二代綏靖天皇から第九代開化天皇までは、その生没年や系譜くらいしか記されていないほか、そもそもこれ以降の『記紀』の物語は、神さまではなく人間を中心にしたものが多くなってきます。
当ブログのテーマは、
『神話の神さまとその物語を紹介する』なのです!
というわけで、次回以降の記事では、誰もが知る神話の名場面や有名な神さまが生き生きと活躍するシーンに絞ってご紹介していく形をとりたいと思います。
「あらすじ解説」で割愛した時代の出来事については、神さまたちの個別記事で紹介している場合がありますので、良ければそちらもご覧ください。
天皇家の物語にも興味がある人は、
ぜひ書籍なども手に取ってみてね!
次回は、時代が大きく下がって第十二代景行天皇の御代、あの日本神話随一のヒーロー・倭建命の冒険をご紹介します。
お楽しみに!
次回までの間に活躍する神々
○第十代崇神天皇の御代
伊波礼毘古の妻・伊須気余理比売のとんでもない誕生秘話
大物主に惚れられたり、哀しい末路をたどったり
桃太郎のモデルも活躍しているよ!
祟りを起こした風神が後に祀られる
○第十一代垂仁天皇の御代
新羅からやって来たモラハラ夫
不老不死を求める旅と哀しい別れ
「相撲」の起源となったパワー系神さま
突き抜けた個性を持つ神々がこんなに活躍しているのね
特に第十代崇神天皇の時代は祟りだらけでほんと気の毒だよ!
…to be continued!!!
次回はコチラ!
おわりに
今回は、神々から人間の時代へと移り変わる転換点、『神武東征神話』について解説しました。
高千穂から大和国(奈良県)までの壮大な冒険だったわね
神さまでもあるようで伝説上の人物でもある、
伊波礼毘古の立ち位置も不思議な魅力をもっているよね!
パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。
これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
- 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
- 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
- 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
- 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
- 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
- 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
- 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
- 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
- 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
- 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年
他…
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