こんにちは!
忙しい人のための神話解説コーナーだよ!
この記事では、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、『古事記』をベースにした神話のメインストーリーをざっくりとご紹介していきます。
とりあえず主だった神さまの名前と、ストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
『日本書紀』にのみ見られる独自の展開や、各地に伝わる『風土記』に記されたエピソードなどは、神さま個人(神)を紹介した個別記事をご覧ください。
とりあえず大まかな流れをつかむというコンセプトじゃ
補足情報は【Tips】として解説しとるが、読み飛ばしても全然OKじゃぞ
関連記事のリンクを貼っているから、
気になった方はそちらもチェックしてね
ではさっそくいってみよう!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 日本神話にちょっと興味がある人
- 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 日本神話のメインストーリーをざっくりと把握出来ます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、今回ご紹介する物語のストーリーラインを、箇条書きでざっくりまとめておきます。
ぱっと見で把握してね
何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
今回ご紹介する『天孫降臨神話』のストーリー
- 葦原中国を手中に収めた高天原の神々、天照大御神は地上統治の担当者に天之忍穂耳命を指名する
- 天之忍穂耳はこれを辞退し、自身の息子である邇邇芸命を推薦する
- 旅立ちの準備のさなか、突如現れた猿田毘古神が天津神の先導役を申し出る
- 天宇受売命をはじめとした有力な神々の護衛のもと、邇邇芸は筑紫(九州)の日向(宮崎県)にある高千穂の嶺に天降る
- 地上の統治を軌道に乗せた邇邇芸は、木花之佐久夜毘売命に結婚を申し込む
- 女神の父・大山津見神は姉の石長比売命も一緒に嫁がせるが、邇邇芸はこれを拒否、歴代の天皇に寿命の概念が生まれる
- 邇邇芸と佐久夜毘売の間に、火照命、火須勢理命、火遠理命の3兄弟が誕生する
そもそも「日本神話」って何?
「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。
原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。
現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記』と『日本書紀』という2冊の歴史書が元になっています。
これらは第四十代天武天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。
国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。
強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。
「日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!
さぁ、あなたも情緒あふれる八百万の神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。
主な登場人物
この物語の登場人物(神)をざざ~っと挙げておくぞい
エピソード5/太陽の御子と約束の地
―前回までのあらすじ
根之堅洲國の統治者である建速須佐之男命の数々の試練を乗り越えた大国主神は、彼の娘である須勢理毘売命を正妻に迎え、地上の王に即位するべく再び葦原中国へと戻りました。
かつて自身を陥れた八十神を残らず粛清した大国主は、八千矛神と名乗って各地を巡り、子種をばら撒いては数多くの子孫を残します。
その後、須勢理毘売との関係も改善し、家庭内の問題も片付いた大国主は、いよいよ真面目に国作りに取り組む決意をしました。
そんな折に彼が偶然出会ったのが、海の彼方の常世国からやって来た少名毘古那神です。
神産巣日神の命によりタッグを組むことになった2神は、力を合わせて国土開発事業に激しい情熱を燃やしました。
加えて大物主神の助力も得た大国主は、無事に国作りを完了し、地上を治める善王として大地を大いに栄えさせます。
しかし、平和に暮らしていた国津神のもとに、青天霹靂の侵略者が現れました。
天の世界・高天原を治める天照大御神が、地上の支配権譲渡と天津神への服属を要求してきたのです。
老獪な政治家のような手腕を身につけた大国主は、天之菩卑能命や天若日子といった天からの使者を次々と懐柔し、ゆうに10年を超える時を稼ぎます。
しかし高天原の神々は、最終兵器とも呼べる刀剣の神・建御雷之男神を地上に派遣。
大国主の2人の息子である事代主神と建御名方神も彼に敗れ、進退窮まった地上の王は、ついに天津神への降伏を宣言します。
こうして「国譲り」は成され、地上の世界・葦原中国の統治権は高天原の神々に移譲されることになりました。
前回のストーリーはコチラ!
今回は、地上の世界を手中に収めた天津神たちの物語だよ!
果たした役割は重要なのに、
肝心なところで残念なアイツが主人公ね
有名な『天孫降臨神話』の場面じゃな
【名誉?】生まれたばかりの日の御子、地上赴任を任される【しわ寄せ?】
天の世界・高天原に住まう天津神は、老獪な手練手管を駆使する大国主に大いに手を焼きながらも、十数年の時を経てようやく地上の世界・葦原中国をその手中に収めました。
こうなると必要になってくるのが、実際に地上世界に赴任して、現地を円滑に統治する担当者です。
その第一候補に挙がったのが、天照の長男坊である天之忍穂耳命でした。
皆さんは覚えておいででしょうか。
この天之忍穂耳はそもそも「国譲り」の前、地上平定の使者第一号に選ばれながら、荒ぶる国津神に恐れをなして職務を放棄した、生粋のボンボンです。
母である天照も、形だけでも花をもたせておかないと長男のメンツに関わると考えたのでしょうか。
彼女は葦原中国の地方官に、改めて天之忍穂耳を指名したのです。
下の連中はもう逆らわんから、あんたもう1回行ってきなさい
その話なんじゃがのう…
ここで手のかかる長男坊から返ってきた答えは、実に意外なものでした。
この大変に栄光ある大役ですが…
その名誉は我が息子に譲りたいとです…(キリッ
先述の通り、天之忍穂耳が地上平定の使者に指名されてから実際に「国譲り」が成されるまでの間には、ゆうに10年を超える歳月が経っています。
何と彼はその間に、高御産巣日神の娘である万幡豊秋津師比売命と結婚し、邇邇芸命と天火明命という2人の息子が生まれていたのです。
へー、みんなが必死に頑張ってる間に
子どもつくってたんだー(棒
天之忍穂耳は自身の息子の1人、邇邇芸に地上統治の役割を任せたいと推しているようです。
いつまでも年寄りが出しゃばっちゃいかん…
若者を信頼して、栄誉ある仕事を任せんといかん(キリッ
ほ~ん、まぁええやろ
邇邇芸が天之忍穂耳の息子であるならば、彼は天照にとって目に入れても痛くない程に可愛い孫。
彼女もその人(神)選にケチをつける理由はありませんでした。
こうしてついに、生まれたばかりの若き日の御子・邇邇芸による天降りが決定したのです。
うんうん、頑張るのじゃぞ我が子孫よ…
若手に譲って身を引いた美談みたくしてるけど、
要は転勤が嫌でごねてただけじゃ…
パパは内勤にこだわっとるのぢゃ
ちがうもん!!
太陽神の御子は、そうそうたるメンバーを引き連れて地上に天降る【天孫降臨】
さて、なんやかんやで地上の世界・葦原中国へと降ることになった若き邇邇芸ですが、一行が旅立ちの準備をしていると、遥か前方に異様な光景が広がっているのに気が付きます。
彼らが通るであろう道の辻に、何やら見知らぬ神さまが仁王立ちで立ちはだかっているのです。
…
それだけなら特に気にもしませんが、その神さまは非常に高い身長に天狗を思わせる長い鼻、真っ赤な酸漿のように爛爛と輝く目をもち、彼の口と尻は明るく光っていて、その輝きは上は高天原、下は葦原中国までをあまねく照らしていました。
要するに周囲にとんでもない圧を放っていたその神さまは、高天原の神々を大いに警戒させます。
大事な孫の出立にケチを付けたくない天照は、お気に入りの部下である天宇受売命にこう言いました。
あんたは敵と真正面から向かい合っても勝つ逸材よ
あそこに行って、奴が何者か聞いてきんさい
ぎょぎょいの御意!
天宇受売は謎の神さまのところへズカズカと進んでいくと、自分の服をまくり上げて胸を露にし、裳(ボトムスのこと)を際どいところまで押し下げてこう言います。
おぅおぅ何もんじゃワレェ!
ダンスバトルでいわしたろか~!
(えっ、こっわ…!)
(天津神ってこんなんばっかなのか…?)
原因は別のところにありますが、その神さまは天宇受売の目論見通りに気圧されている様子。
彼は半裸の女神を下手に刺激しないように、なるべく穏やかな言葉を選んで答えます。
いや、そうじゃなくて…
わし、道案内に来たんですが…
彼の名は猿田毘古神、独特のビジュアルをもち天狗とも関連付けられる導きの神さまで、地上に降る邇邇芸の一行を先導するために、こうして道の途中で待っていたのだそうな。
おぢゃ、そういうことなら問題なし!
採用、採用、即採用じゃ~!
こうして土地勘のある国津神の助力をも得た天孫(=邇邇芸)の一行は、ついに地上の世界・葦原中国へと降る準備を完了しました。
一口に準備と言っても、この一大事業の中核を成すのはあの邇邇芸。
彼は、太陽神にして日本の最高神である天照の孫であるのはもちろん、母方の祖父には、高天原の最高司令官との呼び声も高い高御産巣日がいます。
要するに、とんでもなく高貴な血筋に生まれたロイヤルプリンスボーイである邇邇芸の旅の準備は、当然ながら痒い所に完璧に手が届く、至れり尽くせりの規格外の万全さを誇ったのです。
準備の内容をざっくりとまとめてみるのぢゃ
五伴緒神
まず、天照は愛する孫・邇邇芸のお伴に、「五伴緒神」と呼ばれる有力な5柱の神々を付けました。
彼らは皆、かつて天照が洞窟の奥に引きこもった『天岩戸事件』で、事態の解決に大いに貢献した立役者たちです。
『天岩戸神話』はコチラ
また「伴緒」は職業集団の長を意味するとされており、この5神はそれぞれ、独自の専門技術で朝廷の祭祀に奉仕する有力な氏族の祖神にもなりました。
「五伴緒神」のメンバーを紹介するぜ!
- 天児屋命
-
祝詞や言霊を司る神さまで、朝廷の祭祀をとりまとめる中臣氏の祖となる。
【天岩戸神話で活躍する祝詞と言霊の神】天児屋命-アメノコヤネノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきト… 今回は日本神話より天児屋命(アメノコヤネノミコト)をご紹介!祝詞と言霊の神さまとして人間と神々のコミュニケーションの橋渡しをする彼は、天照大御神が引きこもる天岩戸… - 布刀玉命
-
玉串や注連縄などの祭具を司る神さまで、上に同じく朝廷の祭祀を統括した忌部氏の祖となる。
【天岩戸で祭祀を仕切る玉串と注連縄の神】布刀玉命-フトダマノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より布刀玉命(フトダマノミコト)をご紹介!神社でよく見る玉串や注連縄などの祭具を司る神さまは、天照大御神が引きこもった天岩戸事件で祭儀を取り仕切る! - 伊斯許理度売命
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鏡や金属加工を司る女神さまで、重要な祭具である鏡造りを担当した作鏡連の祖となる。
また三種の神器のひとつ、「八咫鏡」を造った。【三種の神器・八咫鏡を作った】伊斯許理度売命-イシコリドメノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より伊斯許理度売命(イシコリドメノミコト)をご紹介!天照大御神が引きこもった天岩戸事件でも大活躍した鏡作りの女神さまは、三種の神器の一つ八咫鏡も作っ… - 玉祖命
-
玉造りを司る神さまで、重要な祭具である勾玉造りを統括した玉祖連の祖となる。
また三種の神器のひとつ、「八尺瓊勾玉」を造った。【三種の神器・八尺瓊勾玉を作った玉造りの神】玉祖命-タマノオヤノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどき… 今回は日本神話より玉祖命(タマノオヤノミコト)をご紹介!天照大御神が引きこもった天岩戸事件でも大活躍した玉造りの神さまは、三種の神器の一つ八尺瓊勾玉も作ったよ! - 天宇受売命
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芸能を司る女神さまで、祭祀において神楽を舞うことを務めとする猿女君の祖となる。
【天岩戸神話で活躍する芸能の女神】天宇受売命-アメノウズメノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より天宇受売命(アメノウズメノミコト)をご紹介!神楽など芸能の祖となった踊りの女神さまは、天照大御神が引きこもった天岩戸事件の解決に大活躍し、猿田毘…
大和朝廷の中枢を構成するメンバーは、
神さまの代から一緒だったという設定じゃな
あらゆる属性攻撃に対する厳重な護衛
また「五伴緒神」の他にも、邇邇芸には以下のような優秀なメンバーが護衛に付けられます。
- 天手力男神
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『天岩戸神話』で天照を洞窟から引きずり出した筋力の神さまで、物理特化のタンク職として邇邇芸を守る。
【天岩戸で活躍!筋力とスポーツの神】天手力男神-アメノタヂカラヲノカミ-【日本神話】 | パパ、ときどき… 今回は日本神話より天手力男神(アメノタヂカラヲノカミ)をご紹介!天岩戸神話で天照大御神を引っ張り出す神さまは、なんと人間の筋力が神格化された存在!?スポーツ全般守… - 思金神
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『天岩戸神話』で天照奪還作戦を立案・主導した知恵の神さまで、その類まれなる優れた頭脳で邇邇芸を助ける。
【超賢い知恵の神さまは天照大御神の相談役】思金神-オモイカネノカミ-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より思金神(オモイカネノカミ)をご紹介!あらゆる思慮分別、叡智を一身に結集した知恵の神さまは、天照大御神の相談役として数々の神話の名場面で大活躍! - 天石門別神
-
『天岩戸神話』で天照が引きこもった石屋戸を神格化した神さまで、悪霊の侵入を防ぐ門の神のパワーで邇邇芸を守る。
【天孫降臨に随伴する門の守護神】天石門別神-アメノイワトワケノカミ-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より天石門別神(アメノイワトワケノカミ)をご紹介!天孫降臨神話にて突如現れる門の神!悪鬼悪霊の侵入を防ぎ人々の安全を守る守護神は出自が不明な謎多き存…
逆に高天原の戦力が弱体化せんか…?
と、思わなくもないほどにぶ厚い人(神)員配置ですが、話はこれだけでは終わりません。
後の「三種の神器」をも授ける
もはや孫を溺愛していた天照は、非常に貴重な「三種の神器」までも邇邇芸に授けてしまうのです。
これをわしやと思うて大事にするんやでぇ~
後に天皇家の宝物となり、王権のシンボルともなる「三種の神器」は以下のアイテムで構成され、それぞれに重要な意味を持っています。
- 八咫鏡
-
- 天照の神霊が宿る依り代
- 古代の農耕祭祀において、太陽神を祀るのに最も重要とされた祭具で、太陽と稲作農耕の関係を反映している
- 伊勢国の五十鈴宮に祀られ、伊勢神宮の起源となる
【伊勢神宮の起源で日本武尊を助けた叔母】倭比売命-ヤマトヒメノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきト… 今回は日本神話より倭比売命(ヤマトヒメノミコト)をご紹介!40年かけて天照大御神の鎮座地を探し求めた伊勢神宮の起源となる巫女は、的確過ぎるお助けアイテムで甥の倭建命… - 草薙剣
-
【八俣遠呂智退治の大英雄】建速須佐之男命-タケハヤスサノヲノミコト-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より建速須佐之男命(タケハヤスサノヲノミコト)をご紹介!日本の神々の中でも特に人気の高いスサノヲは、嫌われ者の乱暴者でもあり竜退治をする英雄でもあっ…【霊剣・草薙剣を御神体とする太陽神】熱田大神-アツタノオオカミ-【日本神話】 | パパ、ときどきトト 今回は日本神話より「熱田大神(アツタノオオカミ)」をご紹介!三種の神器のひとつに数えられる霊剣・草薙剣を御神体とする神さまは、天照大御神や邇邇芸命、倭建命といった…
- 八尺瓊勾玉
-
- 玉祖が作ったという設定のほかに、御倉板挙之神と関連するという説がある
- 上記設定から、稲の種もみを守り、翌年の豊穣をもたらす機能をもつとも考えられている
こうしてガチガチに準備を固めた邇邇芸の一行は、幾重にも重なる雲を押し分けて力強く進み、筑紫(九州)の日向(宮崎県)にある高千穂の嶺に天降りました。
この時、天忍日命と天津久米命の2神が、武装して彼らを先導したと言われています。
無事に地上に降り立った邇邇芸は、
もろもろの条件ヨシ!
良き土地ぢゃ!(要約)
と言い、そこに立派な宮殿を建てて定住し、いよいよ葦原中国の統治に着手したのです。
これにて『天孫降臨』の完了ぢゃ
邇邇芸たちが降り立った地についての伝承は複数存在し、各地方に伝わる『風土記』の中にもいくつかの場所が登場しています。
今日有力とされているのは、
- 宮崎県北西部に位置する西臼杵群高千穂町
- 宮崎県と鹿児島県の境にある霧島連山の第二峰、高千穂峰
の2ヶ所となっています。
だいたい200kmくらい離れてるのね
【番外編】猿田毘古と天宇受売命のその後…
『天孫降臨』の序盤にて、極めてエキセントリックな邂逅を果たした猿田毘古と天宇受売ですが、この2神には実はその後のエピソードが存在します。
飛ばしてもOKだよ!
先導役の務めをしっかりと果たした猿田毘古が、そろそろお暇しようと出立の準備をはじめた時のこと。
彼を見送ろうとした邇邇芸が、珍しく気を利かせてこんなことを言い出しました。
おぢゃ、これ、宇受売、
彼を地元まで送りしばらくお仕えするのじゃ
えっ!
えっ!
多少思うところがあったとしても天孫は天孫、彼らも命令には従う他ありません。
猿田毘古は、初対面でいきなり半裸で威嚇してきた天宇受売と共に、地元である伊勢の地(三重県)に向かうことになったのです。
さぞや気まずい旅路になるだろうと思っていた両者ですが、これが意外や意外、話しているうちに2人はすっかり意気投合してしまいます。
こうして伊勢国(三重県)にある狭長田の五十鈴川のほとりにたどり着いた猿田毘古は、天宇受売と結婚して、その地に定住することにしました。
第一印象最悪のやつが運命の相手、恋愛モノあるあるよね~
そういう次元だったか…?
天宇受売と彼女の子孫は、夫である猿田毘古の名をとって、「猿女君」を名乗ったと伝えられています。
この「猿女君」は、後に宮廷祭祀の鎮魂祭や大嘗祭において、「神楽」を舞うことを務めとする主要な氏族となります。
その名称に使われている「猿」は「戯る」に通じ、「猿女」という呼び名は、宮廷祭祀の際に滑稽な役割を演じる集団に付けられたものだと考えられました。
その一方でこの「猿女君」という一族は、シャーマニスティックな女性を中心に構成された特殊な霊能力者集団でもあったようで、その魅惑的かつ熱狂的な踊りで神々の託宣(≒お告げみたいなもの)を引き出すという、呪力のようなパワーも行使したとされています。
天宇受売は、笑いも取れるけどガチで魅入らせることもできる、まさに「俳優」の名にふさわしい一族の祖神として信奉されることになったのです。
やっぱり役者ってのは振り幅が大事なの…
何の役やっても天宇受売ぢゃダメなのよ…
猿田毘古と天宇受売命には、他にもいくつかの後日談があるので、良ければそちらもご覧ください。
海で溺れかけちゃうお茶目エピソードはコチラ
物理で忠誠を誓わせる猟奇的なエピソードはコチラ
立派に成長した邇邇芸、地上のお姫さまと結婚して天皇家に連なる子孫を残す
邇邇芸はその後立派に成人し、地上統治の仕事もそれなりに軌道に乗せました。
そんな彼はある日、笠沙の岬(九州南部)を散歩中に運命的な出会いを果たします。
うわバチクソ可愛い!
朕、惚れたなり…
邇邇芸は、偶然見かけたとある美しい娘に一目惚れしてしまい、たまらず声をかけました。
彼女の名は木花之佐久夜毘売命(別名:神阿多都比売)、栄華を司る火と酒造の女神さまです。
筋金入りの温室育ちで高貴な血を引く邇邇芸は、恋愛の駆け引きなどという概念は持ち合わせていませんでした。
朕はそなたに惚れたのじゃ
そなたとのまぐわいを所望するぞよ~
こっわ!
あまりにもド直球な申し出に佐久夜毘売もたじろぎますが、彼の身なりを見る限りは、それなりに良いところの出ではあるようです。
場合によっては玉の輿のチャンスかもしれない、ぶっきらぼうに拒否するのも悪手かもしれない、そう考えた彼女は積極的な邇邇芸にこう答えました。
パパンに聞いてみらんとねぇ…
善は急げ、邇邇芸は早速彼女に頼み込んで、佐久夜毘売の父親である山の神・大山津見神の元を訪れます。
ほほぉ~、あの天照さんのお孫さんで、
今はこの葦原中国を治めておられると!
おぢゃ、邇邇芸と申す
よしなに~
(わしの勘当たっとるやんけぇ~!!)
天孫からの結婚の申し出ということで、露骨に目の色を変える地上の親子。
この縁談を大変喜んだ大山津見は、ノリノリでこんなことを言い出しました。
大変ありがたいお話です!
そして今ならなんと!
姉の石長比売も付いてきま~す!
お、おぢゃ…?
邇邇芸が惚れたのはあくまでも佐久夜毘売だったのですが、彼女の父はなんと、その姉である延命長寿の女神・石長比売命まで一緒に嫁がせてきたのです。
よ、よろしゅぅ~
古代においては、姉妹が同一人物に嫁ぐのは珍しい事でもありませんでしたが、邇邇芸は正直困ってしまいました。
というのも、この石長比売が当時の価値観でいう醜女というタイプで、要するに邇邇芸の好みのビジュアルではなかったからです。
おぢゃ…
大変言いにくいんぢゃがの…
筋金入りのボンボンである邇邇芸もさすがに言いにくかったようですが、どうにか上手いこと意向を伝えて石長比売には実家に帰ってもらい、彼は佐久夜毘売と契りを交わしました。
抱き合わせ販売は独占禁止法により禁止されております
(ね、姉さん、すまんのう…)
たとえ本人たちが納得していても、この状況を黙って受け入れられるはずもないのが姉妹の父親である大山津見です。
なんせ、娘たちが無事に巣立っていった喜びと共に、急に広く感じるようになった我が家に少しの寂しさを感じ始めていた矢先に、
ガラツ) お前だけ帰れ言われたわ…
と、愛する娘の1人がノータッチで送り返されてきたのですから。
あんのク〇ボンボンめぇ~!!
我が子を侮辱された大山津見は、想像以上にこの事実を恥じ入ったようです。
彼は怒りを込めて、邇邇芸に詛いの言葉を送りました。
あ~ぁ、やってくれましたのう…
2人一緒なのにはちゃんと意味があったのに…
石長比売がおれば、天津神の御子の命は、
岩のように永遠となりました
佐久夜毘売がおれば、天津神の御子の治世は、
花が咲き誇るかのように栄えるのです
でも石長比売を送り返してきたってことは~…
おたくの子孫の命は、木の葉が散るように
儚いということですわ…
あ~あ、残念だなぁもう知らんけど…
この出来事によって、邇邇芸の子孫である歴代の天皇たちの命は永遠ではなくなり、その他の人間たちと同じように寿命があることになってしまったのです。
天津神の子孫であるはずの天皇が、
不死ではない理由を説明するための物語じゃな
「咲き誇るような繁栄」と「散る花のように儚い命」、
わたしには2つの意味があったってことね
後出しじゃんけんにも程があるのぢゃ~…
そういうのは先に言っとかんと…
わしも無駄に傷つかずに済んだわなぁ…
えっ、そんな言う?
とはいえ落ち込んでいても仕方なし、邇邇芸は気を取り直して佐久夜毘売との生活を楽しむことにしたようです。
ところがある日、そんな天孫の妻に異変が起こります。
ボォエェッ…!
…もしかしてこれって…!
どうやら彼女は邇邇芸との子を妊娠したようです。
高貴な血統を継ぐ天津神の御子を宿した佐久夜毘売は、誇らしげに夫の元に報告に向かいます。
しかしそこで返ってきたリアクションは、彼女の予想を大きく裏切るものでした。
えっ、あのたった1回で!?
そこら辺の国津神との子ぢゃねぇの~?
カッチーーーーン!!!
あろうことか邇邇芸は、たった1回でそんなにうまく妊娠するはずがない、その辺の行きずりの男との間に出来た子ではないかと疑いをかけてきたのです。
あまりにもデリカシーに欠けた空気の読めない夫の発言に、さすがの佐久夜毘売も静かにぶちギレます。
スイッチが入った彼女は、身重の体でありながら戸のない大きな産屋を建てるとその中に入り、さらに周囲の隙間を粘土で塗り固めて塞いで、自ら内側に閉じこもってしまいました。
そして佐久夜毘売はなんと、自分が入っている産屋に自ら火を放ったのです。
国津神の子ならタダじゃ済まんけど、
天津神の子なら余裕なはずですわねぇ…
えっ、あっ、ちょっ、ちょっと待って…えっ!?
邇邇芸がテンパり倒している間にお産の準備に入った佐久夜毘売は、燃え盛る火炎の中で無事に子どもを産みました。
それが火照命、火須勢理命、火遠理命(別名:天津日高日子穂々手見命)の3兄弟です。
おほ~でかしたぞ、わが御子たちぢゃ~
あんたは外で稼いできてくれれば良いわ
その後、邇邇芸の家庭と夫婦関係が冷え切ってしまったことは言うまでもありません。
『日本書紀』によると、3兄弟の誕生を喜んだ祖父の大山津見は、厳選された神聖な狭奈田の茂穂(よく実った米)から「天甜酒」と呼ばれるお酒を醸造し、お祝いとして天地の神々に気前よく振舞ったとされています。
あれ、そのパーティ…
朕、呼ばれてない…
熱っつい火の中で生まれたと思ったら、
家庭の方はキンキンに冷え切ってましたー
なんつって☆
天照の命により、地上の世界・葦原中国へと天降った邇邇芸の、『天孫降臨神話』はこれにて完結です。
次回は、彼の息子である火照が「海幸彦」として、火遠理が「山幸彦」として登場し、なおも続く日本神話のメインストーリーを紡いでいくことになります。
先に伝えとくと、マジで無茶苦茶な話だからね!
…to be continued!!!
おわりに
今回は、日本神話の名場面のひとつ、『天孫降臨神話』について解説しました。
う~ん、何回この件を読んでも
邇邇芸の何とも言えない残念さが心に残るわ~
中枢に近い神さまほど妙な性格をしているのが、
日本神話の面白いところでもあるよね!
パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。
これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
- 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
- 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
- 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
- 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
- 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
- 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
- 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
- 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
- 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
- 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年
他…
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