こんにちは!
今回はギリシャ神話より
テーバイの王オイディプスを紹介するよ!
ギリシャ悲劇の主人公として有名な人物よね
彼はどんなキャラクターなの?
彼は、神々の呪いによって数奇な運命を辿った
テーバイ王で、とんでもなく悲惨な結末を迎えたんだ!
ソポクレスの『オイディプス王』をはじめ、
様々な作品の題材とされた超絶悲劇的人物なのじゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど「ギリシャ神話」についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事を掲載していきます。
雄大なエーゲ海と石灰岩の大地が生み出した、欲望に忠実な神々による暴力的でありながらもどこかユーモラスな物語群が、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、テーバイの王子として生を受けるも、「父の命を奪い、母を妻とする」という予言のために山中に棄てられ、神託の成就を防ぐためにあらゆる手を尽くした結果、ものの見事にフラグを回収してしまったギリシャ神話を代表する悲劇の主人公・オイディプスをご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- ギリシャ神話にちょっと興味がある人
- ギリシャ神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- ギリシャ神話に登場する「テーバイの王オイディプス」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「ギリシャ神話」って何?
「ギリシャ神話」とは、エーゲ海を中心とした古代ギリシャ世界で語り継がれてきた、神々と人間の壮大な物語群です。
夏には乾いた陽光が降り注ぎ、岩と海とオリーブの木が広がる土地に暮らした人々は、気まぐれで情熱的、そして人間以上に人間らしい神々を生み出しました。
神々は不死である一方、人間と同じように嫉妬し、愛し、怒り、そしてときに残酷な運命に翻弄されます。
現代に伝わる物語の多くは、ホメロスの『イーリアス』『オデュッセイア』、ヘシオドスの『神統記』などの古代叙事詩を原典としています。
王族の愛憎劇に始まり、神々の争いや英雄たちの冒険、時に神と人間の禁断の関係まで——
あらゆる欲望と感情が渦巻くギリシャ神話の世界は、きっとあなたの心を掴んで離さないでしょう。


14世紀ギリシャの写本 PD
「ギリシャ神話」の全体像は、以下で解説しているよ!


テーバイの王オイディプスってどんな人物?
テーバイの王オイディプスがどんな人物なのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!
簡易プロフィール
| 正式名称 | オイディプス Οἰδίπους |
|---|---|
| 名称の意味 | 腫れた足 |
| その他の呼称 | オイディプース エディプス |
| ラテン語名 (ローマ神話) | オイディプス(Oedipus) |
| 英語名 | オイディプス(Oedipus) |
| 神格 | テーバイの王 |
| 性別 | 男性 |
| 勢力 | 人間族 |
| 主な拠点 | コリントス テーバイ |
| 親 | 父:テーバイの王ライオス(Λάϊος) 母:テーバイの王妃イオカステ(Ἰοκάστη)またはエピカステ(Ἐπικάστη) |
| 兄弟姉妹 | なし |
| 配偶者 | テーバイの王妃イオカステ(Ἰοκάστη) 後妻として、 テーバイの王妃エウリュガネイア(Εὐρυγάνεια)とも |
| 子孫 | イオカステまたはエウリュガネイアとの間に、 テーバイの王子エテオクレス(Ἐτεοκλῆς) テーバイの王子ポリュネイケス(Πολυνείκης) テーバイの王女アンティゴネ(Ἀντιγόνη) テーバイの王女イスメネ(Ἰσμήνη) |
| 由来する言葉 | エディプス・コンプレックス(Oedipus complex) :心理学者ジークムント・フロイトが提唱した概念で、男子が異性の親である母親に強い好意感情を抱き、母親を自分のものにしたいという感情から、同性の親である父親に敵意や対抗心を抱くという子どもの時に見られる無意識の心理状態。オイディプス王の名称から。 |
英雄の出自と旅立ち
オイディプスはギリシャ神話に登場する人間族の“悲劇の”英雄です。


1896年
出典:ニューヨーク公共図書館 PD
彼の父親となるテーバイの王ライオス(Λάϊος)には、イオカステ(Ἰοκάστη)またはエピカステ(Ἐπικάστη)という名の妻がいましたが、夫婦のあいだに世継ぎとなる子どもが生まれることはありませんでした。
現実的な後継者問題に強い不安を抱いた王は、ある時、神託の聖地であるデルフォイ(Δελφοί)にて、神々の託宣を受けようと思い立ちます。
※男の子を授かる方法を神さまに聞こうとした、ということ
しかし、お告げの巫女ピュティア(Πυθία)の口から語られたのは、
生まれる息子は父の命を奪い、母と結婚するであろう
という、極めてエキセントリックな内容の言葉だけでした。


-古代デルフィの想像図
1894年 PD
後継ぎ云々の課題は残るものの、自分自身が死んでしまっては元も子もない――。
そう考えたライオスは子作りを諦め、王家を存続させるための別の手段を模索することにします。
ライオス王は若い頃、エリス地方の少年クリュシッポス(Χρύσιππος)に恋をして彼を誘拐し、最後には死に追いやってしまったんだ!
その罰として、彼とその子孫に恐ろしい呪いが
かけられ、今回の予言へと繋がったわけじゃな
子どもさえ生まれなければ何の問題も生じないはずでしたが、ある時、酒に酔ったライオス王は何も考えずに妻と交わり、数ヶ月後、イオカステは無事に元気な男の子を出産しました。


予言の成就を恐れた無責任な王は、自身に仕える牧人に対して、
その赤ん坊を、そこらへんの森かなんかに棄ててこいや!
あっ、万が一生き延びてもまともに歩けんように、
踵をブローチかなんかで貫いとくんやで!
と命じます。
クソみたいな仕事を仰せつかった召使いは、強い罪悪感に苛まれながらも、名前すら与えられなかった赤ん坊の足に生涯残る傷をつけ、その身をキタイロン山に置き去りにしました。
※本当はトドメを刺すよう言われていたが、それができずに放置したとも
しかし、神々によって呪われた人間というものは、少なくともその「呪い」が成就するまでのあいだ、逆説的にも、件の神々の加護を受けているに等しい存在なのかもしれません。


何も知らぬ幼子は、まもなく、とある牛飼いの男によって発見され、めぐり巡って、コリントスの王ポリュボス(Πόλυβος)と王妃ペリボイア(Περίβοια)*のもとへと辿り着きます。
※王妃の名は「メロペ(Μερόπη)」とも
子に恵まれなかった夫妻は、この不遇の赤ん坊を養子に迎え、その足の怪我を癒したのち、発見時に両足が腫れていたことに由来して、「オイディプス*」という名を与えました。
※「腫れた足」の意
やってること自体は善人なんだけど、
名前のつけ方に若干のサイコパス味を感じるのよね


1885年
出典:ニューヨーク公共図書館 PD
それから、十数年後――。
コリントス王夫妻のもとで十分な愛情を受け、やがて立派な青年へと成長したオイディプスは、あらゆる分野で競争者を寄せ付けない、才気あふれる傑物として知られるようになります。
彼の活躍ぶりには目を見張るものがありましたが、それゆえに、要らぬ嫉妬や“やっかみ”を受けることも、しばしばあったようです。
ある日、大差をつけて破った相手から、
けっ、ポリュボス王の実の子でもないくせにっ!
という罵りを受けたオイディプスは、どうにもその捨て台詞の真偽が気になってしまい、母ペリボイアに事の真相を問いただしました。
しかし、彼女は何事も語ろうとはせず、釈然としない思いを抱えた若者は、自らの足でデルフォイの神託所へと赴くことになります。


『デルフィの犠牲行列の風景』
17世紀後半 PD
かくして、オイディプス青年が神々より授かった予言は、
あ、お前、故郷には戻らんほうがええょ
父の命を奪い、母と結婚することになるやろうから
という、いつかどこかで聞いたものと、まったく同じような内容でした。
なっ、なんだって――‼
あんなに愛情深く育ててくださった
父上と母上を、このわしが裏切る…!?
ありえん……
しかし、神々の託宣は絶対のもの……
愛する父母を守るためには、やむを得ん…
わし自らが、物語の舞台から降りるしかなかろうて…
オイディプスは、断腸の思いで故郷コリントスへの帰還を諦め、遠く離れたどこかの地へと向かうため、あてのない旅に出る覚悟を固めます。
偶然にも、その足が向いた先には、彼の“本当の”故郷であるテーバイの街がありました。


『テーベの眺望』
1819年 PD
この行動によって、むしろ「呪われた悲劇」の舞台へと上がってしまったオイディプスは、その事実を露とも知らぬまま、失意のなかで懸命に歩を進めていきます。
あらすじで楽しむ、『オイディプス王』の物語
オイディプスの活躍を見てみよう!
善意から故郷を捨てた青年、
ちょっとしたいざこざで人を死なせてしまう
デルフォイの聖地を後にしたオイディプスは、予定通りコリントスへは戻らず、フォキスの山道をテーバイ方面に向かって進みました。
彼はこの時、馬が牽く戦車に乗っていたのですが、とある三叉に分かれた隘路にて、同じように戦車に駕する、偉そうな初老の男性と遭遇します。
その人物は召使いと思しき男性を使って、若いオイディプスに道を譲るよう命じました。


神託の件でちょっとイライラしていた青年が、
はぁ~?
てめぇが譲ればいいだろぉ~?
年がいってるってだけで自分が偉いと
勘違いすんじゃねぇよ、この老〇野郎~!
と相手を煽ると、例の召使いらしき男が激昂し、事もあろうに、オイディプスが所有していた馬の一頭を容赦なく屠るという暴挙に出ます。
さすがに怒髪天を衝く勢いでブチぎれた青年は、
やりやがったな‼‼
てめぇどこ中だコラァ‼‼
と言って、偉そうなおっさんと手下のおっさんの二人を、あっという間に地獄の底へと葬り去ってしまいました。


『オイディプス王によるライオスの殺害』
1867年 PD
このとき、相手方にはもう一人従者がおり、生き延びた彼はそそくさと逃走しましたが、オイディプスは、戦意を失った者を手に掛けるような真似まではしなかったようです。
あーもう、イライラするなぁ
相手を見てからイキがれってんだよ、まったく!
ぷんすかしながらも地道に歩を進めたオイディプスは、まもなく、彼の“本当の”故郷であるテーバイの街へと辿り着きました。
とりあえず怪物退治を引き受けた青年、
あっという間にテーバイ王となる
テーバイの地に到着したオイディプスは、ひとまず、周辺をぶらりと散策してみますが、何だかどんよりとした空気が町全体を覆っていることに気が付きます。


『テーベ』
1842年 PD
彼が周辺の住民に事情を尋ねると、
実はのぅ、最近、偉大なるテーバイ王が
賊に襲われて急逝されてのぅ…
そのうえ、フィキオン山にはワケの分からん怪物が現れ、
通りかかる若者たちを片っ端から餌食にしとるんじゃ…
ということが分かりました。
えー!
それは大変ですねー!
こうも立て続けに不幸が起こるとゎ、
わしらはもうお終いじゃぁ~


『愛撫』
1896年 PD
特に正体不明の怪物による被害は甚大だったらしく、テーバイの現統治者であるクレオン(Κρέων)も息子ハイモン(Αἵμων)を失った結果、“事件を解決した者に王国と王妃を与える”という勅令を出すに至ったのだそうな。
むむっ、では、この案件を片付ければ、
この地をわしの拠点とすることもできるのぅ!
そう考えたオイディプスは、善は急げと、特に戦いの準備をするでもなく、一路フィキオン山へと向かいました。
それから、しばらくして――。
青年が山道を進んでいると、やや前方に、犬とも猪ともとれぬ、奇怪ななりをした生き物の姿が見えてきます。
その存在はオイディプスの姿を認めると、人間の言葉でこう声をかけてきました。


『オイディプスとスフィンクス』
1864年 PD
やぁやぁ、そこの道行く旅人よ
この山道は、わてくし、スフィンクスが
いろいろと統括しておる
ここを通りたくば、わてくしが出題する
“謎かけ”に答えてもらわねばならぬ
正解すれば通ってよし、答えられなければ「死」じゃ
この怪物の正体は、人面の獅子スフィンクス(Σφινξ)――。
人間の女性の頭部と胸部、獅子の身体と爪、鷲の翼、そして蛇の尾を併せもつキメラ的なクリーチャーで、通りかかる人々に“謎かけ”を出題しては、答えられなかった者を捕食することでテーバイ周辺を荒廃させた存在です。


『Ziergefäss』1883年
出典:ニューヨーク公共図書館 PD
(物理的な戦いとか、そーゆーんじゃないんだ…)
よかろう、さっさと出せや
オイディプスがやや拍子抜けしながらもこう答えると、その怪物は得意満面といった面持ちで、伝家の宝刀である“なぞなぞ”を出題しました。
一つの声をもち、朝は四本足、昼は二本足、
夜は三本足の生き物
これな~んだ?
お題を聞いた青年は、数秒の沈黙の後、落ち着いた態度で口を開きます。
「人間」じゃぁ…
ファイッ‼‼??
アイベッギュアパードゥンミー‼‼??
だから、「人間」じゃぁ
幼児期には四つん這いで進み、成人したら二足歩行、
年老いたら杖をつくから実質的に三本足じゃろぅ
だから、「人間」じゃぁ


アバババババババババババババババババババ
結論から言うと、オイディプスが出した答えは「正解」でした。
スフィンクスは、死ぬ気で考え出した“渾身の一問”をいとも容易くクリアされた事実に絶望し、岩山から身を投げて自らの命を絶ってしまったと伝えられています。
※自らの身体を食らって死んだとする異説も
“謎かけ”はもう引退じゃぁ~
スフィンクスたん、メンタル豆腐スギィーッ!




『スフィンクスの謎を解くオイディプス』
1808年 PD
あまりのあっけなさに肩透かしを食らうオイディプスでしたが、それでも恐ろしい怪物の討伐を成し遂げたことは事実。
彼は、テーバイを救った英雄として街に凱旋し、摂政クレオンは当初の約束通り、オイディプスにこの地の統治権と先王の未亡人を与えました。
こうして、神託のせいで故郷を失ってしまった青年は、トントン拍子で“救国の英雄にして王”という立場にまでのし上がり、前代未聞のごぼう抜き大出世を果たしたのです。
何か知らんけど、わしの人生
イージーモードかもしれんのぅ
わっはっはっは
この世の春を謳歌した若き王、
すべての伏線を回収して無事に破滅する
めでたくテーバイ王となったオイディプスは、妻に迎えた先王の妃とのあいだに、
- エテオクレス(Ἐτεοκλῆς)
- ポリュネイケス(Πολυνείκης)
- アンティゴネ(Ἀντιγόνη)
- イスメネ(Ἰσμήνη)
という4人の子どもたちをもうけました。
※彼らの母は、後妻であるエウリュガネイア(Εὐρυγάνεια)とも


1895年-1906年頃
出典:ニューヨーク公共図書館 PD
王家と臣民たちはそこそこの繁栄を謳歌しましたが、ある時から、テーバイの地を「不妊」と恐ろしい「疫病」が襲います。
デルフォイの神託を持ち帰ったクレオンによれば、この災厄の原因は、「先王の命を奪った賊が、いまだ裁かれていないこと」にあると判明しました。
そんな簡単なことやったんか!
咎人がのうのうと生きとるとあっては、
神々でなくとも怒るのが当然というもの!
必ずや、現王であるこのわしが
真犯人を突き止めてみせようぞ!
じっちゃんの名にかけて!


「オイディプスがスフィンクスの謎を解く」
2世紀 PD
義憤に駆られたオイディプスは、
犯人には、いかなる保護も情けも与えてならない!
という通達を出し、
下手人の身に、大いなる災いがもたらされますよーに!
という呪いをかけたうえで、真犯人の捜索を進展させるべく、高名な予言者であるテイレシアス(Τειρεσίας)を召喚します。
しかし、この老人の口から語られた言葉は、その場にいた誰もが、まったく予想だにしていないものでした。
犯人は、この中にいる!
先王ライオス殿の命を奪い、今もなお
善人面をして真人間のように振る舞っている人物…
それは、あんただ…!!
現テーバイ王、オイディプスさんよ!
なっ、なんだって――‼
(ふっ、決まった……)


『死の国のオデュッセウスと予言者テイレシアース』
1780年-1785年 PD


突然名指しされて狼狽するオイディプスですが、当然ながら自分には身に覚えがない話なので、彼は、クレオンとテイレシアスが結託して陰謀を企てているのではないかと疑います。
話を聞いていた王妃も、
主人は、フォキスの山道にある狭い三叉路で死んだのよ?
犯人がテーバイの者とは断言できないでしょうに
と、率直な疑問を呈しました。
(フォキスの山道…三叉路…隘路…刃傷沙汰…)
(なーんか聞き覚えがあるような……?)


ライオス殺害現場とされる場所
1889年頃 PD
議論が袋小路に突入すると、ちょうどそのタイミングでオイディプスの故郷コリントスから使者が来訪し、彼の父であるポリュボス王が逝去したという報せをもたらします。
なっ、なんだって――‼
その使者は、愛する父を失ってショックを受けるオイディプスに向かって、続けざまにこう言いました。
あれまっ、これはオイディプスの坊ちゃんじゃないですか
何してんすか、こんなところで!
いくら“養子”とはいえ、あなたはポリュボス王の息子、
ちゃんと葬儀には来てくださいよ~?
えぇっ、えっ…わしが…“養子”……??
いやー思い出されますなぁ、赤ん坊であるあなたをキタイロン山で発見した時はぁ、そりゃぁ腰を抜かすほどたまげましたよ~!
かわいそうに、両足の踵を金属かなにかで
貫かれとってのぅ、大怪我しとったんじゃぁ
そんな坊ちゃんを、ポリュボス王とペリボイア様のところ
にお連れしたのが、若き日のわしだったんですじゃぁ~
!!??!!???!!??
(キタイロン山……!!?踵の怪我……!!?)


出典:C messier CC BY-SA 4.0
さらに、当時の状況を知っていると主張するテーバイの牧人が折よく現れ、以下のような証言を行います。
わしはあの日、ライオス王に従者
として同行しとったんじゃぁ
すると、例の狭い分かれ道で、我が王と伝令のポリュポンテス(Πολυφόντης)が、どこぞの若造と道を譲る譲らんでモメ始めましてのぅ…
短気なポリュポンテスめが、相手の馬の一頭を死なせよったもんで、向こうさんもブチギレですわぁ…
その若い者、偉い強ぉて、王とポリュポンテス
を一瞬にして葬りよったんじゃぁ…
わ、わしは死ぬほど恐ろしくて、
戦いもできずに逃げ出したっちゅうわけですわ…
一人で逃げたとなると何を言われるかと思い、
今日まで黙っとりやした
(道を譲る譲らないでトラブル…
馬をやられてブチギレ…?)
(あれれれれれれれれ……?)


さらにその牧人は、思い出したかのようにこう言いました。
そういえば、その男、両の踵に
不思議な傷跡がありましたのぅ~
あっれれ――?
おっかしいぞ――⁉
その時に見た傷跡、オイディプス王の足にあるその痣と、
すごくそっくりなんだも~ん!
その瞬間、現場に居合わせた二人の人物の頭の中で、すべてのパズルのピースがカチッとはまり、ある意味での達成感は一瞬にして、深い絶望へとその姿を変貌させます。
その人物の一人は、当然ながら話の中心にいるオイディプス自身――。
そして、もう一人は、彼の妻である王妃“イオカステ”でした。
そう、かつてオイディプスがフォキスの三叉路にて遭遇し、トラブルの末に命を奪った相手こそが、彼の実の父親であるテーバイの王ライオスその人だったのです。
その後、何も知らぬオイディプスは、依頼されるがままに怪物スフィンクスを討伐し、実の母親であるイオカステを娶って、彼女に4人もの子を産ませたのでした。
オイディプスは、あまりにも過酷な現実の前に頭が真っ白になりながらも、かつてデルフォイの聖地で聞いた神の託宣を思い出します。
あ、お前、故郷には戻らんほうがええょ
父の命を奪い、母と結婚することになるやろうから


『デルポイの女神官』
1891年 PD
彼は、この予言の成就を阻むべく、泣く泣く故郷と両親を捨てたにも関わらず、その行動によって、ものの見事に神託の内容を実現させてしまったというわけです。
アババババババババ
アバババババババ
とんでもない事実を恥じた母兼妻のイオカステは、首を吊って自死。
オイディプス自身も、自らの両の目を潰したのちに王権を放棄し、テーバイを去って放浪の旅へと出立しました。
イオカステもさ、夫の踵の傷跡に気付かなかったのかな
ベッドとかで
大事なシーンで要らんツッコミをするもんじゃない!
相手の素性を知らなくてもさ、血縁関係者には
そういう気持ちになれない、とかないのかしら
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のロレインみたいに
大事なシーンで要らんツッコミをするもんじゃない!
摂政クレオンも、あまりにも残酷な運命のいたずらを前にしては、もはや誰かを罰する気にはなれなかったらしく、オイディプスの行動を黙認したうえで、彼らの子どもたちを保護したともいわれています。
オイディプス自身は、娘の一人であるアンティゴネに付き添われてアッティカ郊外にあるコロノスの地へと辿り着き、当時アテナイの王となっていた英雄テセウス(Θησεύς)に迎え入れられて、晩年の時を過ごしました。


『オイディプスとアンティゴン』 PD
息子2人は父親を助けようともしなかったから、オイディプスは彼らに呪いをかけたともいわれているよ!


どうにか身の置き所を見つけたオイディプスでしたが、彼はまもなく、慈悲深き女神たちエウメニデス(Εὐμενίδες)に捧げられた神殿にて息を引き取り、姿を消して神霊のような存在へと変じます。
彼の魂は、テーバイの攻撃からアテナイの街を守る神聖な存在として、現地の人々から崇められるようになりましたとさ。
エウメニデスは元々、怖い女神さまだよ!




『コロノスのオイディプス』
1788年 PD
テーバイに残った2人の息子は交代で王位に就くことに合意するも、案の定、後にトラブルに発展。
テーバイ攻めの七将らが活躍する大規模な戦争も勃発していますが、それはまた別のお話――。
なんて人生だ!
自らの呪われた運命を一切知らぬまま、鬼の“フラグ回収人”として見事に伏線を拾ってまわり、ある意味で完璧ともいえる悲惨な末路を辿った悲劇の男・オイディプス――。
彼の物語の悲しいところは、残酷な結末に向けて何らかの役割を果たした人物たちが、基本的には全員、「善意」に基づいて行動していた点にもあります。
ざっくりまとめると、以下のような感じじゃの
- 幼い赤ん坊を保護した牛飼いの男→善意
- 彼を養子として引き取ったコリントス王夫妻→善意
- 父母を守るため、自ら故郷を去って身を引いた若きオイディプス→善意
- スフィンクス退治と王妃イオカステとの結婚→半分くらいは善意
- 先王の命を奪った犯人を捜すため、真剣に手を打ったオイディプス→善意
人々の「善意」によって紡がれた「悲劇」ともいえる、『オイディプス王』の物語。
あまりにも後味が悪すぎて、本当に悪い奴はいなかったのか、ついつい探したくなっちゃいますよね。
筆者は個人的に、この悲劇の元凶はテーバイの先王ライオスだと思っています。
理由は以下の通り――。
- そもそも、こいつが若き日に少年を誘拐して死なせてしまったから、この一族に神々の呪いがかけられた。
- 世継ぎを残さなければ呪いは一代で終わっていたはずなのに、酒に酔って一発かまし、無責任にも妻イオカステに男児を産ませた。
- さらに、生まれた子どもを棄てて自己保身に走った。
- 交通トラブルは仕方がないにしても、終始偉そうな態度をとったことで無意味な反感を買った(王様だから偉いんだけど)。
- 相手の馬をすぐに手に掛けるようなチンピラを雇用する、人を見る目があるとはあまり思えない君主だった。
もちろんオイディプスに非がある部分もあるけど、
全体的にはライオスが戦犯だよね!
彼の物語には様々な展開や説があり、
例示したのはその一部に過ぎんぞぃ
あくまでも筆者個人の感想だから、
あんまり真面目には考えないでね☆
ギリシャ神話をモチーフにした作品
参考までに、「ギリシャ神話」と関連する
エンタメ作品をいくつかご紹介するよ!
おわりに
今回は、ギリシャ神話に登場するテーバイの王オイディプスについて解説しました。
まさに「キング・オブ・悲劇」と呼べる物語だったわね
時代を超えて、さまざまなメディア媒体
でモチーフにされるだけのことはあるよね!
パパトトブログ-ギリシャ神話篇-では、雄大なエーゲ海が生み出した魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉はできるだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるように持って行こうと考えています。
これからも「ギリシャ神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- ヘシオドス(著), 廣川 洋一(翻訳)『神統記』岩波書店 1984年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 上』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『イリアス 下』岩波書店 1992年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 上』岩波書店 1994年
- ホメロス(著), 松平 千秋(翻訳)『オデュッセイア 下』岩波書店 1994年
- アポロドーロス(著), 高津 春繁(翻訳)『ギリシア神話』岩波書店 1978年
- T. ブルフィンチ(著), 野上 彌生子(翻訳)『ギリシア・ローマ神話』岩波書店 1978年
- 吉田 敦彦『一冊でまるごとわかるギリシア神話』大和書房 2013年
- 阿刀田高『ギリシア神話を知っていますか』新潮社 1984年
- 大林 太良ほか『世界神話事典 世界の神々の誕生』角川ソフィア文庫 2012年
- 中村圭志『図解 世界5大神話入門』ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- 歴史雑学探究倶楽部『世界の神話がわかる本』学研プラス 2010年
- 沢辺 有司『図解 いちばんやさしい世界神話の本』彩図社 2021年
- かみゆ歴史編集部『マンガ 面白いほどよくわかる! ギリシャ神話』西東社 2019年
- 鈴木悠介『眠れなくなるほど面白い 図解 世界の神々』日本文芸社 2021年
- 松村 一男監修『もう一度学びたいギリシア神話』西東社 2007年
- 沖田瑞穂『すごい神話―現代人のための神話学53講―』新潮社 2022年
- 杉全美帆子『イラストで読む ギリシア神話の神々』河出書房新社 2017年
- 中野京子『名画の謎 ギリシャ神話篇』文藝春秋 2015年
- 千足 伸行監修『すぐわかるギリシア・ローマ神話の絵画』東京美術 2006年
- 井出 洋一郎『ギリシア神話の名画はなぜこんなに面白いのか』中経出版 2010年
- 藤村 シシン『古代ギリシャのリアル』実業之日本社 2022年
- 中村圭志『教養として学んでおきたいギリシャ神話』マイナビ出版 2021年
- かみゆ歴史編集部『ゼロからわかるギリシャ神話』イースト・プレス 2017年
- THEOI GREEK MYTHOLOGY:https://www.theoi.com/
他…










