こんにちは!今回はエジプト神話より
ナイル川の神ハピを紹介するよ!
ナイル川自体が神さまになっちゃったの?
そう、すべてを包み込む雄大なナイル
の神さまはスケールも段違いさ!
ハピには両性具有説もあるが、
便宜上「彼」で統一させてもらうぞい
ではさっそくいってみよう!
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- エジプト神話にちょっと興味がある人
- エジプト神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- エジプト神話に登場する「ナイル川の神ハピ」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「エジプト神話」って何?
「ナイル川の神ハピ」はエジプト神話に登場する神さまです。
エジプト神話とは、ナイル川流域で栄えた古代エジプト文明の人々に信仰された神さま達の物語。鳥やカエルなど、動物をモチーフにしたユニークな神さまも数多く登場する多神教の世界です。
大きく分けて4つの地域でそれぞれ異なるストーリー(創世神話)が語られており、そのすべてを「エジプト神話」として認めるおおらかさと寛容さを持っています。
そのぶん矛盾や混乱が見られますが、それもまたエジプト神話の魅力であり他の神話とは一線を画す持ち味にもなっています。
自然そのものまで神格化する、非常にフレキシブルな神話じゃ
主に以下のあたりの地域で信仰された神話です。
エジプト神話は起源の特定が難しいと言われます。
古代エジプト文明成立の時期から考えても、約5,000年前には神話に登場する神さま達への信仰があったようです。
とても長い歴史を持つ、ミステリアスな魅力あふれる物語です。
ナイル川の神ハピってどんな神さま?
ハピはエジプトの地に豊穣と文明をもたらした雄大なナイル川そのものを神格化した神さまです。
すべての生命を抱き、生み出し、そして奪いもするという器の大きさやスケール感を表しているのか、彼は両性具有ともとれる非常に独特なビジュアルを持っています。
またその姿は、時に肥沃な土という恵みをもたらし、時に激しい濁流ですべてを流しつくす、慈愛と荒々しさの両方を表現していると考えられています。
ハピへの信仰はエレファンティネと呼ばれる、ナイル川でも特に流れの激しい地域を中心に広がっていました。
彼に恵みを祈る儀式は、なんとナイル川のダムが完成する直前の1964年まで実際に行われていたそうです。
天空の神ホルスの息子の1柱に同名の「ハピ」がいますが、彼とはまったく別の神さまです。
エレファンティネは以下のあたりの地域だよ
こんなビジュアル
ハピはあごひげを生やした太鼓腹の男性の姿で表され、ナイル川の豊穣を象徴する垂れ下がった胸を持ち、水を表す青または緑色の肌をした姿で描かれます。
この姿から、彼または彼女は両性具有の神さまだったとも考えられていますが、単にふくよかなだけであるという見方もあります。
ちょっと待って、最初から情報が多すぎてついていけてないわ
すべての命を抱くナイル川はスケールが違うのじゃ
そういうもんだと思いましょう
彼は南北を貫く雄大なナイル川そのものを神格化した神さまなので、その描写には若干の地域差がありました。
ナイルの下流、北のデルタ地帯に広がる下エジプトでのハピは、パピルスの植物で飾られ、周辺地域のシンボルであるカエルが付き従っていました。
川の上流に沿って発展した上エジプトでの彼は、その流域のシンボルである睡蓮やワニと関連付けられて表されました。
ハピは供え物を運んだり、アンフォラから水を注いだりする姿で表現されることが多かったようですが、ごくまれにカバの姿で描かれることもありました。
基本的には上記のような姿で登場したハピですが、第19王朝では2人1組の神さまとして描かれることが多くなり、それぞれがナイル川の北と南を表したとされています。
2人のハピはそれぞれ上エジプトと下エジプトを表す2本の植物の長い茎を持ち、象徴的な結び方をすることで、上下エジプト統一のシンボルとして描かれました。
ハピを表現したこのシーンは、ファラオの座像の土台に頻繁に彫刻されていたようです。
簡易プロフィール
名前 | ハピ(Hapi) |
---|---|
その他の呼び名 | ハアーピ 水の主人 全ての魚と鳥の長 沼地の魚と鳥の王 植物をもたらす川の王 神々の父 |
象徴 | ナイル川 睡蓮 |
役割 | 上下エジプト統一のシンボル 以下のものを司る ・増水 ・氾濫 ・洪水 ・豊穣 |
主な業績 | ・ナイル川を氾濫させ肥沃な土をもたらす ・他界したオシリスに乳を与え復活させた(という物語もある) |
家族 | 妻:女神メレトの場合も 妻:禿鷲の女神ネクベトの場合も |
ハピの主要な業務
ここでは、ハピが担当する主な業務を紹介します
ナイル川を氾濫させ肥沃な土壌をもたらす
かつてのナイル川では毎年氾濫が発生したとされ、それは時折「ハピの到来」と呼ばれたそうです。
この氾濫は、本来はあたり一面砂漠だらけのエジプトの地に肥沃な土壌をもたらしたため、ハピは豊穣を司っていると認識されました。
エジプトでは太古の昔から農業が基幹産業だったので、この増水は必要不可欠な自然現象であり、神聖視されて然るべきものでした。
彼のはたらきが巡り巡って豊かで栄養のある収穫をもたらすので、ハピは「神々の父」とも呼ばれます。
こういった性格から、ハピは世界や宇宙の秩序・調和の維持を助ける思いやりのある父親キャラであると考えられていました。
ハピへの信仰
ナイル川そのものを神格化したハピらしく、彼はナイル川の源流とされる洞窟に住んでいると信じられていました。
この洞窟は現在のアスワンという都市の近くにあったとされています。
また彼への信仰の中心地はエレファンティネと呼ばれる川の第一急流近くの島でした。
アスワンとエレファンティネはすぐ隣だよ
やっぱりナイル川の力を一番感じる
ポイントで信仰されたのかな
ハピの司祭たちは毎年発生する洪水から、農作物の成長と収穫に必要な水位を確保するための儀式を執り行っていたと言われています。
古代エジプトにはナイル川の様子を観察するための「ナイロメーター」という構造物が存在し、毎年の氾濫時に水の透明度と水位を測定するために用いられ、この運用にもハピの司祭たちが関与していたと考えられています。
めっちゃ科学的!
ナイル川の水位が足りなかったり、逆に氾濫が激しすぎた場合には、人々は「ナイルの許嫁(いいなずけ)」と呼ばれる麦編みの人形を供物として川に投げ込み、ちょうど良い水位で安定してくれるよう祈りました。
一部では、ナイルの氾濫が起こらないといった極端な年には、生贄として生きた娘(またはファラオの娘とも)を川に投げ込んでいたという可能性が指摘されています。
この風習は、以下でご紹介するダム建設が完了する直前の1964年まで続いたそうです。
本編で軽く触れている「ナイロメーター」ですが、これは毎年のナイルの洪水期に、その透明度と水位を測定するために作られた構造物です。
このナイロメーターには、主に
- シンプルな垂直の柱
- ナイル川に下りる階段の廊下
- 暗渠(あんきょ)のある深い井戸
※あんきょ=地下に埋設した水路のこと
の3つのタイプがあったとされています。
ナイル川の氾濫時に水位が足りなければ土の肥沃度が失われ、高すぎれば畑どころかエジプトのインフラ全般が押し流されてしまいます。
そのためバランスよく良い土壌がもたらされるには、洪水がどのくらいの高さであるべきかを示す特定のマーク(目盛り?)があったとされています。
このナイロメーターはファラオの時代に起源を持ち、ローマ時代以降にも建設され、後述する1970年のアスワン・ハイ・ダムの完成によってその役目を終えました。
ナイルの洪水の適正水位がエジプト中で
共有されていたんだね!
ファラオの時代に生まれたものが
20世紀後半まで現役だったってやばすぎない?
ざっくり5,000年間は活躍した計算じゃからのう
ナイルの神ハピの現在の姿
古代エジプトに豊穣をもたらしたナイルの神ハピは、現地の人々にとってなくてはならない存在でしたが、やはり神さまらしく必ずしもその挙動は安定していませんでした。
水量が足りずに農作物が十分に収穫できない年もあれば、逆に派手に暴れすぎてすべてを破壊してしまう年もありました。
大きく時代が下って19世紀になると、灌漑用水路の整備や人口流入といった要因でエジプトの農業生産高は激増し、ナイル川の水が農業生産に必ずしも必要なものではないと認識されるようになりました。
むしろ気まぐれに暴れられては困るので、出来れば大人しい状態でコントロールしたい対象となっていったのです。
エジプトの人々は1902年に「アスワン・ダム」を、1970年に「アスワン・ハイ・ダム」を竣工し、ナイル川の治水に成功。
その影響で漁業が活発化したり、耕作地域が広がったりといった影響もあったとされています。
人の手によって丸くなった神さまってことだね
メカキ〇グギドラみたいなもんね
世界の神話との関係
ナイル川の神格化という独特すぎる生い立ちのハピには、さすがに他の神話の神々と同一視された形跡はないようです。
しかし同じエジプト神話のなかでは、いくつかの神さまと関連付けられました。
一説には、このナイル川の増水は他界した冥界の王オシリスの体液とも、その妻である豊穣の女神イシスの涙であるとも言われます。
そのためハピは「オシリスの化身」と呼ばれることもあったようです。
またハピは他界したオシリスに乳を与えて復活させたという神話もあり、場合によっては太陽神ラーよりも上位に置かれることもありました。
このほか、あらゆる生命を生み出す水という共通点から原初の水ヌンとも同一視されたほか、創造神クヌムや豊穣の神ソベクとも関連付けられました。
おわりに
今回は、エジプト神話のナイル川の神ハピを紹介してきました。
エジプト神話に登場する神さまは途方もないほどに数が多く、一説には名前が分かっているだけでも約1,500の神さまがいるとも言われています。
他にも見た目が可愛かったり言動がぶっ飛んでいたり、魅力的な神さまがたくさん存在します。
その他の記事でもどんどんご紹介していきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
紙幣にもなるくらい現地で馴染みのある神さまなのね
治水工事で穏やかな神さまになる
っていう現実味も面白かったね
しーゆーあげん!
参考文献
- ヴェロニカ・イオンズ 『エジプト神話』 青土社 1997年
- 大林太良 伊藤清司 吉田敦彦 松村一男 『世界神話事典 世界の神々の誕生』 角川ソフィア文庫 2023年
- 沢辺有司 『図解 いちばんやさしい世界神話の本』 彩図社 2021年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 沖田瑞穂 『すごい神話 現代人のための神話学53講 』 新潮社 2022年
- かみゆ歴史編集部 『ゼロからわかるエジプト神話』 文庫ぎんが堂 2019年
他…
気軽にコメントしてね!