【忙しい人のための日本神話】エピソード6/山海の兄弟と運命の釣り針【あらすじ紹介】

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忙しい人のための日本神話エピソード6
とと(父)

こんにちは!
忙しい人のための神話解説コーナーだよ!

この記事では、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、『古事記』をベースにした神話のメインストーリーをざっくりとご紹介していきます。

とりあえず主だった神さまの名前と、ストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。

日本書紀』にのみ見られる独自の展開や、各地に伝わる『風土記ふどき』に記されたエピソードなどは、神さま個人(神)を紹介した個別記事をご覧ください。

ヒヒ

とりあえず大まかな流れをつかむというコンセプトじゃ
補足情報は【Tips】として解説しとるが、読み飛ばしても全然OKじゃぞ

ことと

関連記事のリンクを貼っているから、
気になった方はそちらもチェックしてね

とと(父)

ではさっそくいってみよう!

ヒヒ

忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

  • 日本神話にちょっと興味がある人
  • 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
  • とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
この記事を読むあなたのメリット
  • 日本神話のメインストーリーをざっくりと把握出来ます。
  • あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
目次

まじで忙しい人のための結論

本気で忙しいあなたのために、今回ご紹介する物語のストーリーラインを、箇条書きでざっくりまとめておきます。

ことと

ぱっと見で把握してね

ヒヒ

何ならここを読むだけでもOKじゃぞ

今回ご紹介する『海幸山幸うみさちやまさち神話』のストーリー

  • 邇邇芸命ににぎのみこと木花之佐久夜毘売命このはなのさくやびめのみことの間に生まれた火照命ほでりのみこと(海幸彦うみさちひこ)と火遠理命ほおりのみこと(山幸彦やまさちひこ)は、立派な青年へと成長する
  • 火遠理ほおりは兄・火照ほでりに、自身の弓矢と釣り具を交換することを提案、しつこく交渉して兄の大事な道具を借り受ける
  • 火遠理ほおりは不注意で兄の大切な釣り針を失くしてしまい、激怒した彼の許しが得られず途方に暮れる
  • 塩椎神しおつちのかみの助言を受けた火遠理ほおりは海底の海神わたつみの宮殿へと向かい、そこで豊玉毘売命とよたまびめのみことと出会う
  • 女神の父・大綿津見神おおわたつみのかみの許しを得た火遠理ほおり豊玉毘売とよたまびめと結婚、3年ものあいだ海底に暮らすが、義父の力を借りて釣り針を取り戻した彼は地上へと戻る
  • 海神のまじないがかかった釣り針を受け取った火照ほでり、あらゆることが上手くいかなくなって日に日に困窮し、ついに弟の火遠理ほおりに襲撃を仕掛ける
  • 火遠理ほおり大綿津見おおわたつみから授かった「塩盈珠しおみつたま」と「塩乾珠しおふるたま」を駆使して兄を苦しめ、子々孫々の代まで服従することを彼に誓わせる
  • 火遠理ほおり豊玉毘売とよたまびめの間には鵜葺草葺不合命うかやふきあえずのみことが生まれ、彼と玉依毘売命たまよりびめのみことの間には後に初代神武じんむ天皇と称される神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことが誕生する

そもそも「日本神話」って何?

日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。

原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。

現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記こじき』と『日本書紀にほんしょき』という2冊の歴史書が元になっています。

これらは第四十代天武てんむ天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。

国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い

強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。

とと(父)

日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!

枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年
枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年 PD

さぁ、あなたも情緒あふれる八百万やおよろずの神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。

主な登場人物

ヒヒ

この物語の登場人物(神)をざざ~っと挙げておくぞい

エピソード6/山海の兄弟と運命の釣り針

前回までのあらすじ

国譲くにゆずり」によって地上の世界・葦原中国あしはらのなかつくにをその手に収めた高天原たかまがはらの神々は、国土統治の一大プロジェクトを次のステップへと進めます。

最高神である天照大御神あまてらすおおみかみは、その御子みこ天之忍穂耳命あめのおしほみみのみことを下界に遣わそうとしますが、彼は地上平定の命に続いてこれを辞退。

代わりに生まれたばかりの彼の息子・邇邇芸命ににぎのみことを地上統治の担当者に推薦しました。

旅立ちの準備のさなか、先導役を買って出た猿田毘古神さるたびこのかみという国津神くにつかみの助力も得た一行は、万全の体制を整えて高天原たかまがはらを出立します。

天宇受売命あめのうずめのみこと思金神おもいかねのかみといった有力な神々のサポートを受けた邇邇芸ににぎは、幾重にも重なる雲を押し分けて力強く進み、ついに筑紫つくし(九州)日向ひむか(宮崎県)にある高千穂たかちほの嶺に天降あまくだりました。

その後、地上の統治も軌道に乗せて立派な青年に成長した彼は、笠沙かささの岬(九州南部)で出会った木花之佐久夜毘売命このはなのさくやびめのみことに結婚を申し込みます。

女神の父・大山津見神おおやまつみのかみ天孫てんそんからの申し出を大変喜びますが、舞い上がり過ぎた彼は、佐久夜毘売さくやびめの姉である石長比売命いわながひめのみことまでもセットで嫁がせようとしてきました。

対応に困った邇邇芸ににぎ石長比売いわながひめを実家に送り返しますが、この行動は大山津見おおやまつみを大いに恥じ入らせてしまいます。

彼が怒りと共に邇邇芸ににぎに送ったのろいの言葉は、延命長寿を司る石長比売いわながひめを拒絶したとして、歴代の天皇たちに「寿命」の概念を生じさせました。

その後、佐久夜毘売さくやびめ邇邇芸ににぎとの子を宿しますが、夫の空気の読めない発言によって家庭内には決定的な亀裂が入り、彼女は燃え盛る火炎の中で3柱の神々を出産します。

それが火照命ほでりのみこと火須勢理命ほすせりのみこと火遠理命ほおりのみこと(別名:天津日高日子穂々手見命あまつひこひこほほでみのみこと)の3兄弟です。

前回のストーリーはコチラ!

とと(父)

今回は、邇邇芸ににぎ佐久夜毘売さくやびめの息子、
火照ほでり火遠理ほおりが主人公だよ!

ことと

古事記』ベースだと、火須勢理ほすせりは物語には登場しないわよ

ヒヒ

これまた有名な『海幸山幸うみさちやまさち神話』の場面じゃな

兄の大切な釣り針を失くした弟、途方に暮れて海底に行く【失われた釣針型神話】

邇邇芸命ににぎのみこと木花之佐久夜毘売命このはなのさくやびめのみことの間に誕生した火照命ほでりのみこと火遠理命ほおりのみことの兄弟は、それぞれ立派な若者に成長し、自分の得意分野で生活の糧を得て、独立した生活を送っていました。

兄の火照ほでりはまたの名を「海幸彦うみさちひこ」といい、海岸沿いを駆け巡っては得意のいさりを行って生活しています。

弟の火遠理ほおりは「山幸彦やまさちひこ」という名でも呼ばれ、山や野を走り回って狩猟を行うことを生業なりわいとしていました。

野原のイメージ

火照ほでりは魚や貝を獲って暮らす生活に満足していましたが、弟の火遠理ほおりは実はそうでもなかった様子。

毎日同じことの繰り返しに飽きてしまった彼はある日、兄・火照ほでりにこんな提案をしてきます。

ホオリ

兄者~、わしの弓矢と兄者の釣り具、1回交換してみようや~

ホデリ

絶対に嫌だ

火照ほでりにとってこの釣り具は、彼の生活と人生そのものを支える大切な道具、相手が弟とはいえ、そう簡単に人に渡せる物ではありません。

彼は弟の要求を断りますが、火遠理ほおりは一度決めたら絶対に退かない面倒な性格をしていました。

ホオリ

なんでや兄者…!
お互いの苦労や偉大さを知るええ機会やんけ…!

ホオリ

な~ええやろ?
兄者がどんなすごい仕事しとるのか、わし1回体験してみたいんじゃ~

再三にわたるにリクエストにうんざりしてしまった火照ほでりは、ついに4度目の交渉で折れ、弟に大切な釣り具を渡します。

ホデリ

まぁ、言うても弟やし…
そんな無茶はせんやろ…

火照ほでりはこう自分に言い聞かせますが、そんな彼の予想は見事に残念な形で裏切られるのでした。

ホオリ

ほっほ~、これでわしも海釣りデビューじゃ

海岸での釣りのイメージ
ホオリ

……

ホオリ

……

ホオリ

全然釣れんやんけ…って、あっ!!!

火遠理ほおりがいくら待てども獲物は一匹たりともかからず、それどころか兄の大事な釣り針を魚に持って行かれてしまいます。

ホオリ

ヤベェヨヤベェヨ…
ドウシヨウ…

テンパり過ぎて思考停止している火遠理ほおりの元に、手に馴染んだ道具がないことに寂しさを覚えた火照ほでりがやって来てこう言いました。

ホデリ

やっぱ自分のじゃないとだめだわ、あれ返して

ホオリ

あ、兄者、実はのう…

もはや万事休すの火遠理ほおり、素直に事の顛末を説明して頭を下げますが、当然ながら兄は大激怒。

もはや弟の謝罪の言葉も耳に入らない程に怒り狂った火照ほでりは、元の釣り針を取り戻してくるよう彼に命じ、そのまま突き放してしまいました。

火遠理ほおり火遠理ほおりで反省はしているようで、彼は愛用の十拳剣とつかのつるぎをつぶして500本の釣り針を用意しますが、火照ほでりはこれを受けとりません。

弟はさらに1,000本もの釣り針を持って謝罪に来ましたが、彼はこれも受け取りを拒絶してしまいました。

釣り針のイメージ

さすがの火遠理ほおりも対応に困って途方に暮れていまい、海辺に座ってぼんやりと大海原を眺めるほかありません。

【Tips】兄者、こだわり強過ぎね?
ことと

釣り針1,000本なら代わりとして十分じゃないの?

とと(父)

現実にもいるよね、不可能な原状回復を要求するタイプ

大事な釣り針を失くされたとはいえ、兄・火照ほでり火遠理ほおりに対する態度は、頑なで融通が利かなすぎる印象を受けるかもしれません。

ともすれば、兄が弟に意地悪をしているように感じる人もいるでしょう。

ヒヒ

それは、現代人ならではの感想じゃ

兄弟の名前にある「佐知さち」及び「さち」の語には、「獲物」という意味と同時に「獲物を捕るための道具」という意味も含まれています。

つまり彼らは、「さち」を使って「さち」を得ることで生存しているのです。

古代の論理で考えると、道具としての「さち」にはその持ち主にだけ効力を発揮する呪力のようなものが付されており、それによって獲物としての「さち」がもたらされることになります。

つまり火照ほでりにとっては、手に馴染んだ釣り針以外は何の恵みももたらさない無価値な鉄くずということになり、彼の激しい怒りもごもっとも、決して理不尽な振る舞いとは言えないことになるのです。

仮に全く逆の立場で物語が展開しても、火遠理ほおりは元の弓矢を返せとぶちギレていたに違いない、そういう類のお話ということになります。

ホオリ

コレじゃないとしっくりこないぜ~、ってあるよね!

ホデリ

わしの怒りにもちゃんと正当性があるのじゃ!

話を戻して、海辺にたたずんで途方に暮れている火遠理ほおり、彼にはもはや次に打つ手が思いつきません。

ホオリ

どうしたらええんや…

シオツチ

どうしたんね~??

死んだ魚のような目をして、今にも海に身を投げ出してしまいそうな青年の目の前に、渦巻く潮の中から年老いた見知らぬ神さまが姿を現しました。

潮のイメージ

彼の名は塩椎神しおつちのかみ、潮の流れを司る神さまで、迷える若者を導く的確なアドバイスに定評がある老人です。

火遠理ほおりの事情を聞いた彼は、竹を細かい目に編んだかごの小船を作り出し、絶望した青年に船に乗り込むよう促しました。

シオツチ

わしが押したらあとは流れに任せんしゃい
そのうち海神わたつみの宮に着くから
そこの娘がおぬしを助けてくれるはずじゃ

藁にも縋る思いの火遠理ほおりは、塩椎しおつちの助言通りに大人しく波に揺られて、海底にそびえ立つ海神わたつみの宮殿へと向かいます。

小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇「塩椎神」
小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇 PD
出典:次世代デジタルライブラリー

兄の大切な釣り針を失くした弟、海底の姫とよろしくやって3年も経過する

火遠理ほおりは潮の神さまである塩椎しおつちの力を借りて、海底に建造された不思議な宮殿へとたどり着きました。

彼が木の枝に座って誰かが来るのを待っていると、ちょうど侍女らしき女性が水を汲みにやって来たので、海の神さまの娘に会えるよう取り次いでもらうことにします。

一方その頃…

海底の宮殿にある一室に、1人の女神さまが佇んでいました。

彼女の名は豊玉毘売命とよたまびめのみこと、水を司る美しい女神さまで、この宮殿の主にして日本の海を支配する海神・大綿津見神おおわたつみのかみの娘です。

魚屋北渓『豊玉姫と玉依姫』
魚屋北渓『豊玉姫と玉依姫』PD

彼女が溜まったアニメを消化するために自室に引きこもり、ポテチやコーラを完備して怠惰な時間を過ごしていた時、慌てた様子の侍女が突然部屋に駆け込んできました。

侍女

姐さん、なんか変な奴が来とるんですわ

侍女

水が欲しい言うから玉器たまもい渡したったら、
飲まずに口に含んだ玉飾りを吐き出しよって…

侍女

それが玉器たまもいに引っ付いて離れんのですが、
その野郎、これを見せつけてドヤ顔しよるんですわ…

侍女

あっしにはもう意味が…

トヨタマビメ

は?なんやそれ、明らかにおかしい奴やんけ!
パパンに言って追い返してもらえばいいやん!

侍女

あ、でもそいつ、顔はめっちゃ整ってましたね…

トヨタマビメ

さぁ、お出迎えに行くわよ!
メイク落ちてない?大丈夫!?

海底のイメージ

豊玉毘売とよたまびめが例の男を確認するために外に出ると、侍女の言う通りのかなりのイケメンが、木の枝に座ってこちらを見ています。

さらに顔が良いだけでなく、彼の身なりから察するにかなり高貴なお家柄の出であることがうかがえました。

豊玉毘売とよたまびめの頭からは数分前の彼の奇行の記憶は消え失せ、彼女は瞬く間に謎の好青年の虜になってしまいます。

都合の良いことに火遠理ほおりの方もまんざらでもない様子なので、豊玉毘売とよたまびめは善は急げと、父・大綿津見おおわたつみの元に走りました。

トヨタマビメ

ねぇパパン、私めっちゃ良い人見つけたのよ~

オオワタツミ

こん人は天津日高あまつひこ(=邇邇芸ににぎ)
御子みこ虚空津日高そらつひこじゃ~い
(意)バチクソ良いところの坊ちゃんである

大綿津見おおわたつみもさすがは全ての海を掌握する大物、彼が天孫降臨てんそんこうりんした地上の統治者である邇邇芸ににぎの息子、火遠理ほおりであることを即座に見抜いてしまいます。

海底の親子は高貴な出自の若者を盛大に歓迎し、丁重にもてなしました。

さらに大綿津見おおわたつみの快諾も得たので話はとんとん拍子に進み、火遠理ほおり豊玉毘売とよたまびめはめでたく結婚することになります。

2人は非常に仲睦まじく、海底の宮殿で幸せに満ちた生活を送り、あっという間に3年もの月日が流れました。

十返舎一九『地神五代記』「豊玉姫」
十返舎一九『地神五代記』5巻 PD
出典:次世代デジタルライブラリー
ことと

3年!?!?!

とと(父)

火照ほでりはこの性格を分かってて道具を
貸したくなかったのかもね…

順調な夫婦生活に満足していた豊玉毘売とよたまびめですが、ここ最近夫が浮かない顔をして、頻繁にため息をつくのが気になっていました。

あまりにも元気のない様子が心配になった彼女は、思い切って夫にわけを尋ねてみます。

ホオリ

実は兄者の大切な釣り針をなくしてのう…
そもそもは助けてもらうためにここに来たんじゃ…

トヨタマビメ

あら、それは大変でしたね~
(えっ、3年経っとるけど……)

熱に浮かされたような恋心も次第に落ち着き、徐々に夫の粗が見え始めて複雑な心境の豊玉毘売とよたまびめですが、放っておくのもあまりに気の毒です。

彼女は父である大綿津見おおわたつみに、火遠理ほおりが抱えている事情を説明しました。

オオワタツミ

何や、そんなことかいな

海の統治者である大綿津見おおわたつみが大小の魚たちを集めて一斉捜査網を敷くと、のどに針が刺さって苦しんでいる鯛がいることが判明、そこから見事に火照ほでりの釣り針が発見されたのです。

たくさんの魚のイメージ
トヨタマビメ

(パパン、ほんとにすごい神さまやったのね…)

ホオリ

(お義父とうちゃん、ほんとにすごかったんやな…)

火遠理ほおりは義父にお礼を言って地上に戻ろうとしますが、大綿津見おおわたつみは彼を呼び止めてこう言い含めます。

オオワタツミ

この釣り針を返す時はちゃんとまじないを唱えるんじゃ

オオワタツミ

んでこれ、「塩盈珠しおみつたま」と「塩乾珠しおふるたま
潮の満ち引きを自在に操れるけぇ

オオワタツミ

これでおどれの兄ぃ、やったれやぁ

大綿津見おおわたつみから謎の呪文と謎のアイテムを授かった火遠理ほおりは、一尋和邇ひとひろわにの背中に乗って海を行き、たった1日で地上へと帰還しました。

小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇「一尋和邇」
小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇 PD
出典:次世代デジタルライブラリー

兄の大切な釣り針を失くした弟、海神にそそのかされて兄を完膚なきまでにボコボコにする

海の支配者・大綿津見おおわたつみの力を借りて兄・火照ほでりの釣り針を取り戻した火遠理ほおり

彼は、地上に戻るとその足で兄のもとに向かい、言われた通りのまじないを唱えて釣り針を返します。

ホオリ

この針は おぼ すす 貧鉤まぢち うる
※要するにめっちゃ悪口

ホデリ

3年も何やってたんですかね~…

ホデリ

ワケわからん呪文の前に「ごめんなさい」だろうが

なにはともあれ、命の次に大事な釣り針を取り戻した火照ほでり火遠理ほおりを許し、これまでと変わらない日常の生活に戻りました。

しかしそれからというもの、火照ほでりは海の幸からも田の実りからもすっかり見放されて、日に日に貧しくなっていきます。

それに対して弟の火遠理ほおりは絶好調で、狩猟も稲作も万事順調、兄弟の貧富の差はみるみるうちに開いてしまいました。

荒廃のイメージ
ホデリ

おかしい…
これは絶対に何かおかしい…

火照ほでりは知る由もありませんが、先日火遠理ほおりが返却してきた釣り針には、あらゆることが上手くいかなくなるまじないがかけられていたのです。

ことと

火遠理ほおり
こうして整理してみると、マジで
とんでもない性格をしているわね…

ホオリ

まぁ神話じゃし、フィクションじゃし、役じゃし?

そんな悪意に気付くはずもない火照ほでりは、日を追うごとに精神的な余裕をなくし、ついには火遠理ほおりを襲撃して富を奪ってしまおうと乱心します。

とと(父)

まぁ結論から言うと、正当性のある行動なんだけどね

しかし火遠理ほおりのバックには、すべての海を支配する偉大な神・大綿津見おおわたつみが付いていました。

火照ほでりが弟に襲い掛かろうとすると、火遠理ほおりは「塩盈珠しおみつたま」を掲げて海水を呼び出し、兄を濁流の中で溺れさせてしまいます。

たまりかねた火照ほでりが命乞いをすると、火遠理ほおりは「塩乾珠しおふるたま」を掲げて海水を引かせ、兄の命を助けました。

十返舎一九『地神五代記』「山幸彦」
十返舎一九『地神五代記』5巻 PD
出典:次世代デジタルライブラリー

火照ほでりは何度かリベンジを試みますが、数回もこのやり取りを繰り返すとさすがに心が折れてしまい、ついには降伏宣言をするに至ります。

ホデリ

降参じゃぁ…
今度からは昼も夜もお前さんに仕えると誓おう…

こうして火照ほでりの子孫は未来永劫火遠理ほおりの子孫に仕えることになり、彼自身は隼人阿多君はやとのあたのきみ(鹿児島県西部に住んでいた集団)の祖となったと伝えられています。

火遠理ほおりは兄を倒したことで山海の恵みの支配権を一挙にその手中におさめ、彼の子孫による地上の統治をより盤石なものとしたのです。

ホオリ

わっはっは、めでたしめでたし

【番外編】火照命ほでりのみことが気の毒過ぎる問題、その意味とは?

ヒヒ

まるごと【Tips】じゃから、飛ばしてもOKじゃ

今回ご紹介しているのは、日本神話でも特に有名な『海幸山幸うみさちやまさち神話』。

若者が海底の異世界を冒険し、美しいお姫様と出会って結婚、さらに海の神さまの不思議なパワーを受け継ぎ強者にレベルアップ。

地上に戻った彼は見事に敵を打ち破り、めでたく全世界を統べる王様になるという、シンプルながら王道の冒険物語です。

この手のわかりやすい英雄譚は、いつ見ても楽しく気分がスッキリしますよね。

とと(父)

ってなるかーい!!

ことと

率直な感想を言うけどこの話、マジでワケが分からないわ…

ホオリ

ですよね~

皆さんはこのお話を読んでどんな感想を抱きましたか?

冒頭だけ読めば多くの人が、

自分の過失で失くしてしまった物をどうにか取り戻して、
謝罪と共にお返しする道徳的なお話

を思い浮かべそうなものですが、ふたを開けてみるとその実、

  • 一方的な過失で兄の大切な物を失くした弟が、
  • 3年もの間その件を放置して自分は可愛い嫁とラブラブし、
  • 思い出したように他人の力で失くし物を見つけると、
  • 呪いもセットで返したことで兄を極貧生活に追いやり、
  • さすがに怒った兄を魔法アイテムで散々痛めつけ、
  • 未来永劫従うように誓わせる

という、何を食べて育てばこんなの思いつくのかと聞きたくなるような、無茶苦茶なストーリーが展開されていました。

しかしこれは「日本神話」の中で語られる物語、一見複雑なようでいて、実のところその理屈は極めてシンプルなものとなっています。

ヒヒ

いつも通り、政治じゃ

南さつま市笠沙町のリアス式海岸
南さつま市笠沙町のリアス式海岸

火照ほでりは本文中にもあるように、最終的に隼人阿多君はやとのあたのきみの祖となりました。

彼らは九州南部に住んでいた集団で、大和朝廷になかなかなびかず、彼らを手こずらせた人々です。

その他にも、人種や文化の異なる異民族や、王権による教化を受けていない化外けがい夷狄いてき(未開人)を、「隼人はやと」と呼んだとも考えられています。

一方で火遠理ほおりは、大和政権側を代表するキャラクターとして描かれています。

ここまで説明すればあとは簡単ですね。

この神話は、火遠理ほおり(朝廷)火照ほでり(隼人はやと)を出し抜いてボコボコにした上で、陸海空のすべてを手に入れましたよという、ゴリゴリに政治的な主張を全部盛りにした物語だったのです。

ホデリ

にしても雑ー!

記紀』の編纂当時、隼人はやとは皇居の周辺を警護し、宮廷儀礼において隼人舞はやとまい狗吠いぬぼえを行い邪気をはらうことで天皇に奉仕していました。

海幸山幸うみさちやまさち神話』はその由来を説明した物語で、特に隼人舞はやとまいの中では、火照ほでりが降伏の際に行った身体動作が詳細に再現されていると言われています。

ヒヒ

要するに、溺れ苦しむ様子を真似しとるのじゃ

ことと

なんとまぁ屈辱的な…

川の激しい流れ表す画像

この他にも、『海幸山幸うみさちやまさち神話』の由来には、以下のような説が唱えられています。

  • もともとは隼人はやと族に伝わる火照ほでりを主人公とした伝承だったが、大和王権視点のストーリーにリライトされた
  • 海人あま集団を統括した大綿津見神おおわたつみのかみ後裔こうえい氏族・安曇あずみ氏が、隼人はやとの伝承を材料にして、自分たちの王権への貢献をアピールする物語として成立させた
  • 海の神を祀る安曇あずみ氏の功績によって、王権が隼人はやとの制圧に成功した歴史が反映された
  • 狩猟採集時代から農耕社会への移行期において、王権の勢力が漁業集団を圧倒し、その支配下においた歴史が反映された
とと(父)

いずれにしても、政治的~☆

ヒヒ

ここまで露骨じゃと、むしろ清々しいまであるのぅ

かなり気の毒な役回りを押し付けられた火照ほでりですが、逆に言うと彼が率いる隼人はやと族は、大和朝廷にとっても決して無視はできない存在だったことが分かります。

古代の南九州に住んだ隼人はやとは非常に勇猛で、なかなか王権に服属せず、さらには特別な呪力をもつ集団であるとも考えられていました。

そんな彼らだからこそ、王朝が隼人はやとを完膚なきまでに打ち倒したという物語は、彼らの権力の正当性を主張する上で非常に重要な役割を果たしたのです。

ことと

強敵であればこそ、ボコボコにした実績がえるって話なのね

ヒヒ

出雲いずもの神々と似たパターンじゃな

ホデリ

フッ…
強すぎたが故に、損な役回りになっちまったぜ…

兄の大切な釣り針を失くした弟、自分は子に恵まれるも遠い祖先と全く同じてつ踏む

火遠理ほおり海神わたつみの宮から地上に戻り、兄の火照ほでりをしばき倒してからしばらく経ったある日のこと、海底から妻の豊玉毘売とよたまびめが夫を訪ねてやって来ました。

聞いてみると彼女は火遠理ほおりとの子を身ごもったようで、天津神あまつかみの直系の御子みこを海中で産むわけにもいかないからと、身重の体で地上まで揚がって来たのだそうです。

ホオリ

ほ!そらめでたい!
ちゃんとした産屋うぶやを建てちゃるけんね!

妊娠を喜んだ火遠理ほおりは、の羽根を屋根のかやいた立派な産屋うぶやの建築に着手します。

その様子を嬉しそうに見守る豊玉毘売とよたまびめですが、彼女は産屋うぶやの建設工事が完了する前に産気づいてしまいました。

トヨタマビメ

ヤヴァイ、生まれる…!
そこ貸しておくんなし…!

トヨタマビメ

異郷の者は元の姿に戻らんと出産できんのよ…
だからあんた、絶っっっ対に覗いたらダメよ…!

豊玉毘売とよたまびめは夫に厳重に言い聞かせ、自身は産屋うぶやの中にこもります。

最初こそ大人しく待機して無事な出産を祈っていた火遠理ほおりですが、しばらく時間が経つと、次第に妻の言葉の意味が気になってきました。

ホオリ

ん…?
元の姿ってどゆこと…?

気になり始めたら居ても立っても居られなくなってしまった火遠理ほおり、彼は豊玉毘売とよたまびめとの約束を破り、彼女の出産現場をこっそりと覗き見てしまいます。

小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇「豊玉毘売命」
小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇 PD
出典:次世代デジタルライブラリー

しかし火遠理ほおりの眼に入ったのは妻の姿ではなく、産屋うぶやの床でのたうち回る八尋和邇やひろわに(サメやフカのこと)だったのです。

トヨタマビメ

げっ、あいつ見るなって言ったのに!

ことと

そりゃぁ変身状態じゃお産に集中できないわよね~

豊玉毘売とよたまびめはどうにか無事に出産を終え、めでたく鵜葺草葺不合命うかやふきあえずのみことが誕生しました。

しかし彼女にとっては、今やそれ以上の重大事が残っています。

トヨタマビメ

本当はちょこちょこ地上に揚がってくるつもりやったけど…
こうなったらもう無理ですわ…

トヨタマビメ

永遠とわにさようならっ!

出産の現場を覗かれたうえ、真の姿まで目撃されてしまったことを深く恥じ入った豊玉毘売とよたまびめは、夫と生まれたばかりの子を地上に残し、海底の海神わたつみの宮へと1人帰ってしまいました。

さらに彼女は陸と海の境にある道を塞いでしまったので、これ以降、人間が地上と海の間を自由に行き来することが出来なくなったと伝えられています。

サメのイメージ
ホオリ

ちーん…

とはいえ豊玉毘売とよたまびめも、夫が恋しくもあり、自分が生んだ子のことが心配で気が気ではありません。

そんな彼女はある日、同じく水の女神さまで、自身の妹である玉依毘売命たまよりびめのみことにとんでもない要求をします。

トヨタマビメ

タマちゃん頼む!
地上に揚がってわしの子を見守ってくれや…!

タマヨリビメ

え~まだ見てない海外ドラマあるのに…
しゃーないのう…

憔悴しきった姉の姿を見ていられなかった玉依毘売たまよりびめは、しぶしぶその願いを聞き入れ、彼女に託された夫への歌を携えて地上へと揚がりました。

豊玉毘売とよたまびめが妹に託した歌には、夫・火遠理ほおりに対する恋慕の情が込められていたようです。

赤玉あかだま

さへひかれど

白玉しらたま

きみよそひし

たふとくありけり

真珠のイメージ

(意)赤い宝玉も綺麗やけど、真珠のように気高いあんたの姿が思い出されますわ

これを受けた火遠理ほおりも、愛する豊玉毘売とよたまびめに向けてこんな歌を詠みました。

おきとり

鴨著かもどしま

率寝ゐね

いもわすれじ

のことごとに

かもどく島のイメージ

(意)あんたと寝食を共にした日々のことは、生きている限り忘れんよ

この後、2人が再会することは二度とありませんでした。

ことと

珍しくまともに切ない話だけど…
なんか既視感があるわね…

ヒヒ

火遠理ほおりの遠い祖先である伊邪那岐命いざなぎのみことのことじゃな
「見るなの禁」と呼ばれる神話の類型じゃ

先祖の同じ失敗はコチラ

とと(父)

血は争えないというか、天津神あまつかみの悪い癖というか…

ホオリ

良い感じで終わらせといて欲しかったよね~

火遠理ほおりはその後、高千穂の宮で580歳まで生きてその生涯を終えました。

彼の御陵ごりょう(お墓)は、高千穂の山の西にあると伝えられています。

連綿と続く系譜、ついに登場する初代天皇

時計の針を少し戻して、姉の豊玉毘売とよたまびめの願いを聞き入れ、玉依毘売たまよりびめが地上に揚がってきたところからお話を再開しましょう。

ここでは、続く日本神話の物語の主人公となる、重要な人物が誕生します。

タマヨリビメ

仕方ないから来たよ~

ホオリ

助かる~
ワンオペまじエグかったんよ~

姉の家族のヘルプに参上した玉依毘売たまよりびめは、ここで火遠理ほおりと再会し、その息子である鵜葺草葺不合うかやふきあえずとの初顔合わせを果たしました。

こうして彼女は、義理の兄と甥っ子との3人での新生活をスタートさせることになったのです。

茅葺屋根のイメージ

それから幾年かののち、立派な若者に成長した鵜葺草葺不合うかやふきあえずは、ある日、玉依毘売たまよりびめにとんでもないことを申し出てきます。

ウカヤフキアエズ

タマちゃん頼む!
わしと結婚してくれや…!

タマヨリビメ

急にとんでもないこと言いよる!
親子やなぁ~…

タマヨリビメ

で、でもわし叔母やで…
ええんか…

倫理的にどうなのか少し考えた玉依毘売たまよりびめですが、結局彼女は甥でもある鵜葺草葺不合うかやふきあえずを夫として受け入れました。

十返舎一九『地神五代記』「鵜葺草葺不合命」
十返舎一九『地神五代記』5巻 PD
出典:次世代デジタルライブラリー

なんやかんや2神の仲は睦まじく、彼らの間には以下の4柱の神々が誕生します。

  • 五瀬命いつせのみこと
  • 稲氷命いなひのみこと
  • 御毛沼命みけぬのみこと
  • 若御毛沼命わけみけぬのみこと

子どもたちは成長すると、それぞれ自分の道を歩んでいきました。

御毛沼みけぬは海の遥か彼方にある常世国とこよのくにに渡り、稲氷いなひは母の故郷である海神わたつみの宮へと旅立ちました。

そこで長男の五瀬いつせと四男の若御毛沼わけみけぬ日向国ひむかのくに(宮崎県)高千穂たかちほの宮に残り、地上の世界・葦原中国あしはらのなかつくにの統治を父から引き継ぎます。

ところで四男の若御毛沼わけみけぬは、またの名を神倭伊波礼毘古命かむやまといわれびこのみことといい、数々の困難を乗り越えた彼が、後に初代神武じんむ天皇と称されることになるのです。

月岡芳年 神武天皇と八咫烏の肖像
月岡芳年
神武天皇と八咫烏の肖像 PD
ことと

おぉ~、ついに天皇家の物語に進んでいくのね

タマヨリビメ

初代天皇のママになってもうた

これにて、火遠理ほおり火照ほでりを中心に繰り広げられた『海幸山幸うみさちやまさち神話』の物語は完結です。

次回はいよいよ初代神武じんむ天皇が登場し、神話の物語も人間を中心とした時代に突入していきます。

神武天皇

やっとわしの出番じゃ

…to be continued!!!

次回はコチラ!

おわりに

今回は、日本神話の名場面にして迷場面、『海幸山幸うみさちやまさち神話』について解説しました。

ことと

ぶっ飛んだ話の多い日本神話の中でも、
飛びぬけてカオスな展開が光る場面だったわね

とと(父)

現代の感覚でみると政治的過ぎるあまりに破綻寸前だけど、
それだけに他にはない独特の勢いをもっているよね!

パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。

神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。

これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!

とと(父)

また来てね!

しーゆーあげん!

参考文献

  • 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
  • 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
  • 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
  • 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
  • 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
  • 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
  • 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
  • かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
  • 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
  • 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
  • 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
  • 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
  • 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
  • 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年

他…

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