こんにちは!
忙しい人のための神話解説コーナーだよ!
この記事では、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、『古事記』をベースにした神話のメインストーリーをざっくりとご紹介していきます。
とりあえず主だった神さまの名前と、ストーリーラインだけ押さえておきたいという方向けのシリーズとなります。
『日本書紀』にのみ見られる独自の展開や、各地に伝わる『風土記』に記されたエピソードなどは、神さま個人(神)を紹介した個別記事をご覧ください。
とりあえず大まかな流れをつかむというコンセプトじゃ
補足情報は【Tips】として解説しとるが、読み飛ばしても全然OKじゃぞ
関連記事のリンクを貼っているから、
気になった方はそちらもチェックしてね
ではさっそくいってみよう!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 日本神話にちょっと興味がある人
- 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 日本神話のメインストーリーをざっくりと把握出来ます。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
まじで忙しい人のための結論
本気で忙しいあなたのために、今回ご紹介する物語のストーリーラインを、箇条書きでざっくりまとめておきます。
ぱっと見で把握してね
何ならここを読むだけでもOKじゃぞ
今回ご紹介する『天岩戸神話』のストーリー
- 伊邪那岐命の禊によって生まれた天照大御神は「高天原」を、月読命は「夜の国」を、建速須佐之男命は「海原」を治めるよう命じられる
- 須佐之男は役目を果たさず泣いてばかりいたので、激怒した父・伊邪那岐によって追放される
- 須佐之男は、姉の天照に別れを告げるために高天原を訪れ、誓約を行って天上界に滞在することを許される
- 高天原で乱暴狼藉の限りを尽くす須佐之男、ついに死者を出すほどの大事件を引き起こす
- 天照はショックのあまり、すべての責任を放棄して天岩戸の奥に引きこもる
- 思金神をはじめとした高天原の神々が力を合わせ、どうにか天照を洞窟の外に引きずり出す
- 神々の協議によって須佐之男には多額の罰金刑が科せられ、地上の世界へと追放される
そもそも「日本神話」って何?
「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。
原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。
現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記』と『日本書紀』という2冊の歴史書が元になっています。
これらは第四十代天武天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。
国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。
強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。
「日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!
さぁ、あなたも情緒あふれる八百万の神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。
主な登場人物
この物語の登場人物(神)をざざ~っと挙げておくぞい
エピソード2/失われた太陽と高天原の神々
―前回までのあらすじ
天の世界・高天原に生じた原初の神々の命により、国土の創世(修理固成)と、八百万の神々を生み出すという偉業を成し遂げた伊邪那岐命・伊邪那美命の夫婦。
多くの子孫にかこまれて幸せいっぱいの時間もつかの間、火之迦具土神を生んだ伊邪那美は身体に大やけどを負ってしまい、ついには命を落として黄泉国へと降ります。
夫の伊邪那岐も、亡き妻を追って生きながらにして死後の世界へと赴きますが、そこで彼が目にしたのは醜く変わり果てた妻・伊邪那美の姿でした。
恐怖におののき逃走する伊邪那岐と、禍々しい黄泉津大神と化して夫を追跡する伊邪那美。
伊邪那岐は黄泉比良坂に大岩を置いて道を塞ぐと、一度は心から愛した妻・伊邪那美に離縁を言い渡します(事戸を度す)。
こうして「生」と「死」の対立が明確化し、人間に「寿命」の概念が生まれました。
命からがら生還した伊邪那岐が、黄泉国の穢れを祓うために禊を行うと、三貴子とも呼ばれる天照大御神、月読命、建速須佐之男命の3神が生まれます。
高貴な神々の誕生を喜んだ伊邪那岐は、天照に「高天原」を、月読に「夜の国」を、須佐之男には「海原」を治めるよう命じ、自身は表舞台から去ることを選びました。
前回のストーリーはコチラ!
今回は天照と須佐之男を中心に描かれる、
高天原での大騒動をご紹介するよ!
有名な『天岩戸神話』のパートじゃな
ちなみに月読は、登場シーンがピークで
この後の物語には登場しないわよ
う~ん、世知辛い
『日本書紀』にはエピソードがあるよ!
荒ぶる三男坊、父親を激怒させて追放され、姉がいる高天原に駆け込む
伊邪那岐の禊によって誕生した天照、月読、須佐之男の3姉弟は、父親によりそれぞれが治めるべき領地を命じられました。
天照は天の世界「高天原」に、月読は「夜の国」にそれぞれ赴任して仕事にあたりましたが、「海原」の統治を任せられた須佐之男だけは、少し様子が違うようです。
HEEEEYYYY
あァァァんまりだァァアァ
須佐之男は大海原を治めるという自身の役割をまったく果たさず、顎鬚が長く伸びて胸元に垂れるほどになっても、子どものようにいつまでも泣きわめいていたのです。
荒々しい霊力をもつ彼が乱心した影響は大きく、その泣くさまは青い山々を枯れさせ、海や河の水は須佐之男の涙となって流れてゆき、あたり一帯はすっかり干上がってしまいました。
さらに、この機に乗じて有象無象の悪神たちが蠅のように蠢きはじめ、各地でありとあらゆる災いが起こります。
すんなり引退させてもらえるかと思った矢先、さっそくのトラブルに見舞われた父・伊邪那岐は、困り果てて荒ぶる三男坊のもとを訪ねました。
こりゃ!
仕事もせんで何をやっとるか!!
わ、わしゃぁ…
ママんに会いたいんじゃぁーー!!
どうやら須佐之男は、死後の世界である根之堅洲國に行って、すでに亡くなっている自身の母親に会いたいと訴えているようです。
…ん?
須佐之男の母親って誰になるの?
伊邪那美のこととされているよ
『日本書紀』では2神の間に彼が生まれているから、
その設定が『古事記』にも影響したようだね
ちなみに「死後の世界」の名称にも揺れが見られるのぅ
根之堅洲國?
黄泉国とは違うのかしら?
黄泉国と根之堅洲國は、どちらも日本神話における死後の世界です。
このふたつは共に黄泉比良坂を入り口として現世と繋がっており、また地下に存在するため、基本的には同じ場所であると考えて良いでしょう。
しかしながらこれらの場所には、以下のような明らかな設定の違いが存在します。
- 黄泉国
- 根之堅洲國
-
- 死者の世界というよりはすべての生命が還っていく根源の国、祖先の霊が宿る場所というニュアンス
- 明るい世界※1で、人々の生活も地上と変わらない
- 後に須佐之男が統治することになるが、それ以外に支配者がいる描写は特にない
- 現世と隔たってはいるが、生きている者が行き来することが可能
細かい設定を見ていくと明らかな違いや矛盾が存在する事から、これらはそれぞれ別の場所に位置すると考える研究者も多いそうです。
もともとは異質のものである2つの世界を、『古事記』編纂にあたり、無理やりひとつにしようとしたという考え方もあるようです。
有名な民俗学者の柳田國男さんは、根之堅洲國は本来明るいイメージの世界だったと言っていたそうだよ!※1
伊邪那美の現在の姿を知っている伊邪那岐は息子の望みを聞いて激怒し、須佐之男から天津神の身分を剥奪して追放を宣告してしまいました。
伊邪那岐はこれを機に完全な引退を決め、ため息交じりに淡海の多賀(滋賀県の多賀大社)に隠棲します。
はぁ~、あいつら大丈夫かのぅ…
伊邪那美の現在の姿はコチラ!
さて、生後間もなく父親から勘当されてしまった荒ぶる三男坊・須佐之男は、この後どうするかを考えることにしました。
フ――
スッとしたぜ (スッキリ)
とりあえず姉貴のところに行ってみるか
彼はこの国を去って根之堅洲國へと向かう前に、姉の天照に一言別れを告げようと思い立ったようです。
わしんとこには、来んのかーーーーい!
須佐之男は足取りも軽やかに天の世界・高天原へと昇りますが、何と言っても彼は荒神、その歩みのたびに雷鳴をとどろかせては大地を揺らし、山も川もことごとく響動めき立つほどに周囲に圧をかけました。
その轟音を耳にして焦ったのが、高天原を治める長女の天照です。
彼女は天上界で田畑を耕し、養蚕を興して絹糸の生産法や織物の技術を授け、最高司令官として至極まっとうに八百万の神々を統治していました。
そんな平和な自分の領地に、素行の悪さに定評のある弟が激しい足音を轟かせながら向かって来ているのです。
うわぁ~、めんどくせぇ…
あいつ、高天原を奪いに来たんじゃねぇの?
天照は須佐之男が領地を奪いに来たものと警戒し、男性のように髪を結い、完全武装した上で彼を待ち構えました。
須佐之男の姿が見えてくると、天照は強弓に矢をつがえ、きりきりと引き絞って標的を見据えます。
その踏み込みの強さは、彼女の足を地面にめり込ませてしまうほどでした。
天照のこの男性的な一面は、彼女が皇祖神として、武力や軍事力なども象徴することを示しています。
あんた!
いったい何をしに来たんね!!
姉者こっわ…!
わしの話を聞いてくれや~…
須佐之男は自分がここにやって来た理由を素直に話し、二心がないことを姉に信じてもらおうと試みます。
しかし、弟の悪評ばかり聞いていた天照はそれをすぐに信じることが出来ず、なかなか警戒を解こうとはしませんでした。
謀反の心がないとどうやって証明するね?
では誓約で生まれてくる神さまで決めようぜ!
ま、まぁええけど…
誓約は宇気比とも表される古代の占いの一種で、結果がおおよそ均等に二分される事柄を選び、そのどちらが現れるかによって神の意志を判断します。
この方法で何らかの結果を出すことに合意した両者は、お互いの持ち物を交換しました。
天照は須佐之男が身に帯びていた十拳剣を受け取り、彼には自分が身に着けていた勾玉の玉飾りを渡します。
まず天照が剣を三つに折って口に含み、息吹のごとく吹き出すと3柱の女の神さまが誕生しました。
次に須佐之男が玉飾りを噛み砕いて吹き出すと、5柱の男の神さまが生まれます。
ここで天照が、それぞれの神さまがどちらの子になるのかを、なぜかこのタイミングで決めはじめました。
5柱の男神は私の玉飾りから生まれたので、あてくしの子
3柱の女神はあなたの剣から生まれたので、須佐之男の子
天照の子となった5柱の神々は、以下の面々です。
神名 | 概要 |
---|---|
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命 | 初代神武天皇のひいひいおじいちゃん 稲穂の神 農業神ほか |
天之菩卑能命 | 農業神 養蚕の神 産業の神ほか |
天津日子根命 | 風の神 日の神 海の神ほか |
活津日子根命 | 農業神と思われる |
熊野久須毘命 | 火の神 |
そして以下の3柱の女神は、須佐之男の子ということになりました。
神名 | 概要 |
---|---|
多紀理毘売命 | 海の神秘的な力の神格化 宗像三女神 |
市寸島比売命 | |
多岐都比売命 |
それはそれで良いとして、
何がどうなったらどっちが正しいことになるの?
そうなのです。
彼らは誓約を始める前に、どんな条件を満たしたら須佐之男の主張が正しいという事になるのか、詳細なルールをまったく固めていなかったのです。
そこに目を付けた須佐之男は、すかさず得意の大声でその場を丸め込みにかかりました。
わしの心が清らかやけんこそ、
優しい女神が生まれたんじゃろがい!
ということで、この勝負わしの勝ちじゃ~い!
えっ!?
ちょっとまっt…
みなさ~ん、わしの身は潔白ですよ~!!!
あっ、えっ…
計画通り
なし崩し的に負けたことにされた天照は、結果として須佐之男が高天原に入ることを許します。
なんだかんだ言っても血を分けた弟、彼女も本気で拒否するつもりはなかったのかもしれません。
『日本書紀』のほうではあらかじめルールを決めているわよ
まぁあたしってば根が優しいのよね
暴れ狂う弟、現実から目を背け洞窟に引きこもる姉【天岩戸神話】
須佐之男に高天原への滞在を許した天照でしたが、彼女はほんの数日でこの判断を後悔することになります。
一方的な勝利宣言で舞い上がった須佐之男は、姉が統治する天界でありとあらゆる乱暴狼藉をやりたい放題に働いたのです。
若気の至りでは済まされない彼のやらかし一覧はコチラ、
- 天照が耕した田の畔を破壊する
- 灌漑用の溝をわざわざ埋める
- せっかく実った稲穂を馬で踏み荒らす
- 天照が新嘗祭の新穀を食べる神殿で脱糞しまくる
ヒャッハー!
うわぁ…
高天原の住民は困り果てて、天照に須佐之男の所業を訴えますが、
ま、まぁ、愛しい弟なりの考えがあるのよ多分…
と、彼女は弟を出迎えた時とは真逆の態度で、かなり無理のある庇い方をしてその場をしのぎます。
そんな姉の気苦労に気が付くはずもない須佐之男は、咎められないのを良いことにさらに増長し、その暴れっぷりをますますエスカレートさせていきました。
そしてついに、彼は取り返しのつかない大事件を引き起こします。
天照の管轄のもと、機織女たちが神衣を織っていた斎服殿に、須佐之男が皮を剥いだ血だらけの馬を投げ込んだのです。
当然現場は阿鼻叫喚の大パニック、逃げ惑う機織女の1人・稚日女命が理性を失って機から転げ落ち、手にしていた杼(横糸を通す道具)を局部に突き刺して命を落としてしまいます。
後の時代にも登場するよ!
アバババババ
もぅマヂ無理。。。
インキョしょ。。。
弟に落ち着いてほしいと思ってもまるで聞く耳を持たないので
――そのうち天照は、考えるのをやめた。
天照はショックのあまり、最高神としての責務からも自分が弟を高天原に入れたという責任からも目を背け、天岩戸を開くと洞窟の奥に引きこもってしまいました。
太陽神が身を隠すと、高天原はもちろん葦原中国までがことごとく闇に覆われ、永遠の夜が続くことになります。
さらには多くの悪霊が跳梁跋扈するようになり、あらゆる場所で恐ろしい災いが起こり始め、世界中の治安が極端に悪化する事態に陥ってしまいました。
最高神が逃亡したら、そらそうなるわな~
八百万の神々は事態を重く見て天安河原に集合し、この未曾有の大災害にどう対処するかを話し合います。
ここで登場するのが深い思慮と幅広い知恵に定評のある思金神、原初の神である高御産巣日神の息子です。
天照攻略法は、ありまぁす
知恵者の思金は主要な神々を総動員して、以下のようなステップで準備を整えました。
40秒で支度しな!
- 鍛人天津麻羅と伊斯許理度売命に命じて美しい鏡(八咫鏡)を作らせる
- 玉祖命に命じて立派な玉飾り(八尺瓊勾玉)を作らせる
- 天児屋命と布刀玉命に命じて占いをさせ、使った榊に八咫鏡と八尺瓊勾玉を取り付ける
- 天手力男神を、天照が引きこもっている天岩戸の陰に潜ませる
- 常世長鳴鳥をたくさん集めておく
天児屋と布刀玉の2神が行った占いとは、天香山に棲む大きな牡鹿の骨を抜き取り、同じく天香山に生えている波波迦(ウワミズザクラの古名)の皮でその肩骨を焼いて行う卜占のことをいいます。
これによって当プロジェクトの吉凶が占われ、上手くいくという答えがでたので、ついに天照奪還作戦が開始されました。
天照作戦発動!
日本中のエネルギーをあなたに預けるわ
思金は、まず常世長鳴鳥たちを鳴かせて夜明けを告げさせます。
布刀玉が天津麻羅と伊斯許理度売が協力して作った「八咫鏡」と、玉祖お手製の「八尺瓊勾玉」が付いた榊を、天照が引きこもった天岩戸に向けると、鏡は輝き勾玉はさらさらと美しい音を立てました。
やっぱりわしら、ええ仕事するのぅ~
んだんだ
あれは後の世に残るわよ
続いて天児屋が前に躍り出ると、彼は天照が表に出てくるように、美しく紡がれた祝詞を高らかに唱えます。
おお我らが太陽…
あまねく宇宙と神々を照らす至上の君よ…
あなたを失った世界はいまや
タコが入っていないタコ焼きのようなものだ…
――アメノコヤネ
ここで満を持して登場するのが、本作戦における最重要要素、真打ちとなる天宇受売命です。
彼女は天香山に生えていた日陰葛をたすきに掛けて、真析葛を髪飾りとして頭に巻き、同じく天香山に生えていた小竹の葉を束ねて手に持つと、天岩戸の戸の前に伏せて置いた桶の上に立ちました。
天宇受売が調子の良い足踏みの音を響かせながら踊り始めると、彼女自身の気分も高揚し、次第に神懸かりの様相を呈します。
彼女が身に着けていた装束もみるみるうちにはだけてしまい、身体の色んな部分がはみ出していますが、天宇受売はそんな些事にはお構いなしに踊り狂いました。
それを見ていた神々も高天原全土を揺らすほどの大笑いで、祭りの盛り上がりは最高潮に達します。
一方その頃…
天照は外の騒々しさを不審に思っていました。
えっ、ちょっと待ってなんかすごく楽しそう…?
あたしを失った世界は絶望に
打ちひしがれているはずなのですが…?
気になって仕方がない彼女は、岩戸をうっすらと開けて天宇受売に何事かと尋ねます。
すると彼女はこう答えました。
あなたよりも~っと尊い神がいらしたので、
みんな喜んで歌い踊っているのですよ~
この言葉に天照は、こめかみの血管がピクリと脈打つのを感じました。
はぁ?
あたしより尊い?
見せてもらおうか
高天原の新しい神の霊力とやらを…!
ここですかさず布刀玉が、鏡と玉飾りの付いた榊を天照の方向に向けると、彼女は鏡に映った自分自身の顔を見ることになります。
えっ、これがあたしより尊い神さま?
めっちゃ可愛いじゃんまじ推せる~♡
推しの顔を間近に見ようと一歩踏み出した天照の腕を、脇に控えていた力自慢の天之手力男がむんずと掴み、彼女をやや強引に外に引きずり出しました。
そぉぉぉ~~~~い!!
そして、布刀玉が即座に洞窟の入口に注連縄を張り渡すと、ここには二度と入れないと宣言したのです。
我、領域閉ジル、キープアウト…
ついに天照は天岩戸から連れ出され、高天原と葦原中国は再び明るい光に包まれました。
こうして思金の作戦は見事に功を奏し、世界はようやく日常を取り戻したのです。
彼はおそらく知っていたのでしょう。
いつもは慎ましやかに振舞っている天照も、生まれた時から「三貴子」ともてはやされ、実は極端に肥大化した自意識をもっていることを。
普段はリーダーとして真面目に業務をこなしていても、特に実績もないまま最高神の地位についたことで、心の底では自分が一番だとナチュラルに思っていることを。
そんな天照の深層心理を逆手に取った思金の作戦は、ものの見事に本人に刺さりまくり、こうして文句のつけようのない大成功をおさめたのでした。
ああいうタイプはね、
承認欲求さえ満たしてやればちょろいのよ
あたしってほんとイケない子★
てへぺろ★
ちょっと違う展開もあるよ!
いずれにしても、最高責任者の職務放棄という大ピンチに見舞われた八百万の神々は、互いに持てる力を発揮して協力することでこの難局を乗り越えました。
この天岩戸の物語は、冬至頃の弱った太陽のエネルギーが復活する様子を表しているとも、太陽の活力や天皇の魂の再生を祈念する鎮魂祭の起源を語っているとも考えられています。
偉大な霊力が再生するきっかけを作るのは、神懸かりした踊りで神さまの関心を引く、天宇受売が象徴する巫女の役割だったのでしょう。
また、すでにお気づきの方もいらっしゃるでしょうが、天津麻羅と伊斯許理度売が作った「八咫鏡」と、玉祖が作った「八尺瓊勾玉」は、後に天皇家の権威を象徴する「三種の神器」のひとつに数えられます。
3つのうち2つは『天岩戸神話』の文脈に登場していたのね~
さて、紆余曲折あって事態はどうにか収束しましたが、これで須佐之男の罪が消えたわけではありません。
高天原の神々は協議の結果、彼に「千座の置き戸」を負わせました。
「千座」とはたくさんの台、「置き戸」は罪や穢れを祓い償わせるために科する品物のことを言います。
つまり須佐之男は、とんでもなく多額の罰金刑を科せられたことになるのです。
さらに天の神々は須佐之男の髭を切り取り、手足の爪を剥がしてしまいました。
これにはもちろん「清め」の意味もありますが、再びよみがえるものを切り取ることで、彼の力を抑え込むという意図も含まれていたようです。
こうして須佐之男は、天に住まう天津神全員から事実上の絶縁宣言を食らい、高天原から完全に追放されてしまったのです。
認めたくないものだな、
自分自身の若さゆえの過ちというものを
若さのせいじゃなくてオメーの資質の問題だよ
これにて天の世界・高天原を舞台にした『天岩戸神話』は完結です。
続く神話の物語は地上の世界に舞台を移し、当面の間は荒ぶる三男坊・須佐之男の目線で描かれていきます。
次章からは荒くれ者の成長物語と冒険譚じゃ
…to be continued!!!
次回はコチラ!
おわりに
今回は、日本神話屈指の名場面、『天岩戸神話』について解説しました。
原初の神々と比べると、
人間臭くて破天荒な神さまのオンパレードだったわね
ここからもさらにカオスな物語が目白押しだよ!
神々の滅茶苦茶さが日本神話の魅力でもあるよね!
パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。
これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
- 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
- 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
- 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
- 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
- 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
- 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
- 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
- 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
- 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
- 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年
他…
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