こんにちは!
今回は日本神話より建速須佐之男命を紹介するよ!
建速須佐之男命?
いろいろな武勇伝を持ってるイメージだわ
彼は海の国を治める予定だったけど、
あちこちで破天荒な冒険をしているよ
複雑な性格が人気の荒神さまじゃ
ではさっそくいってみよう!
このシリーズでは、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたん・わかりやすい」がテーマの神々の解説記事をお送りしています。
超個性的な八百万の神々が織りなす、笑いあり、涙ありのトンデモぶっ飛びストーリーが、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。
人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。
今回は、日本神話の神々の中でも飛びぬけて多面的な性格を持つ荒神、建速須佐之男命をご紹介します!
忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ
この記事は、以下のような方に向けて書いています。
- 日本神話にちょっと興味がある人
- 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
- とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
- 日本神話に登場する「建速須佐之男命」について少し詳しくなります。
- あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
そもそも「日本神話」って何?
「日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。
原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。
現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記』と『日本書紀』という2冊の歴史書が元になっています。
これらは第四十代天武天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。
国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い。
強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。
「日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!
さぁ、あなたも情緒あふれる八百万の神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。
建速須佐之男命ってどんな神さま?
建速須佐之男命(以下、スサノヲ)がどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。
いくぜっ!!
簡易プロフィール
正式名称 | 建速須佐之男命 Susanoo-no-Mikoto |
---|---|
別称 | 素戔嗚尊 牛頭天王 |
神格 | 農業神 防災除疫の神 歌人の神 |
性別 | 男性 |
勢力 | 天津神のちに国津神 |
グループ1 | 三貴子 |
親 | 伊邪那岐命 伊邪那美命※『日本書紀のみ』 |
兄弟姉妹 | 姉:天照大御神 兄:月読命 |
配偶者 | 櫛名田比売命 神大市比売命 ※天照を誓約上の妻と見なす場合も |
子 | 多紀理毘売命 市寸島比売命 多岐都比売命 八島士奴美神 大年神 宇迦之御魂神 須勢理毘売命 大屋毘古神 (五十猛命) 大屋津姫命 枛津姫命 ほか子孫多数 |
神徳(ご利益) | ・水難、火難、病離除去 ・五穀豊穣 ・文学、学問上達 ・縁結びなど |
神社 | 八坂神社 氷川神社ほか ※別途詳述 |
誕生と家族
THE・メインどころのリア充グループの一員ね
櫛名田比売との間には八島士奴美神を、大市比売との間には大年神、宇迦之御魂神が誕生します。
また誕生の経緯は不明ですが、スサノヲはさらに後に須勢理毘売命という娘も得ています。
そのほか、姉の天照を形式上の妻と見なす場合もあります。
これは彼女と行った誓約と呼ばれる儀式によって、彼が多紀理毘売命、市寸島比売命、多岐都比売命という3柱の女神を子どもとして迎えているためです。
このへんはストーリー編で詳述するよ!
さっきから「3柱」とか「5柱」とか言ってるけど、
どういう意味?
「柱」は神さまの数え方の単位なのじゃ
神さまの数を数える場面はそう多くはないでしょうから、この言葉は聞き慣れないかもしれません。
日本のように八百万の神々がいる世界観では、彼らを数える際に「柱」という単位を使います。
1柱、2柱、3柱と数えるよ!
由来には諸説あるようですが、古墳時代に天皇が崩御した際に供養のための柱を立てて、神さまをそこに招き入れる儀式を行ったことから来ているという説があります。
そのほかにも、古代日本には「柱には神さまが宿る」という信仰があったことから、彼らを「柱」という単位で数えるようになったとも言われています。
とはいえ当ブログはわかりやすさ重視で運営しており、真面目な解説の部分以外は普通に「人」を使ったりもしておりますのでご了承ください。
とりあえず分かるのが大事よね!
役割と名前の由来
スサノヲほど「こんな役割を持つ神さまです!」と説明しにくいキャラクターは存在しないかもしれません。
彼は各地を渡り歩いてさまざまな武勇伝を残しており、その時々でまったく異なる性格を見せるからです。
ある時は乱暴狼藉を働いて「悪しきものの元祖」とまで呼ばれたり、またある時は怪物に悩まされる一家を救って絵に描いたようなスーパーヒーローになったり。
彼の表情があまりにも変化に富んでいることから、昔から謎の多い神さまとして認識されていたようです。
威厳のある神格かと思いきや人間的で俗っぽい雰囲気を持っていたり、こういった多重人格的な性格こそがスサノヲ固有の特徴であり、彼の根強い人気の根拠なのかもしれません。
秘密のあるキケンな男は魅力的なのかしら
とはいえ、スサノヲに明確な役割がなかったわけではありません。
詳細はストーリー編で解説しますが、彼には穀物の豊穣を司る素朴な農業神としての原像があったと考えられています。
また仏教伝来の影響により、スサノヲは水難や火難、疫病を退ける防災除疫の神さまとしても信仰されていました。
ところで、スサノヲの正式名称である建速須佐之男命には、どのような意味が込められているのでしょうか。
一般には、
- 「建」は勇猛、「速」は迅速を意味し、スサノヲの猛々しさを形容している
- 「スサノヲ」の名は「荒々しい」という意味を持つ「すさび」または「すすむ」などの言葉が語源となっている
- かつて存在した須佐郷などの地名が由来で、もともと彼はそれらの地方の守護神だった
といったことが言われているようです。
名前の由来からみても、スサノヲに関してはその役割を示すというより、「勢いのままに進む」という彼の性質面を表しているものがほとんどです。
スサノヲの奔放で多彩なある意味で破綻した人格は、古代日本人にとってもよほど印象が強かったのでしょう。
ここだけ見るとシンプルにヤベェ奴ね
建速須佐之男命の役割まとめ
スサノヲは重要な神さまじゃ
その役割を改めてまとめておくぞい
スサノヲは、
- 穀物の豊穣を守る農業神!
- あらゆる災厄を退ける防災除疫の神!
- 箇条書きではまとめきれない多彩でワケの分からない神!
です!
荒神兼トリックスターってところだろうか?
建速須佐之男命の活躍シーン
スサノヲが活躍したシーンを見てみよう!
ここから物語の主人公が交代するわよ!
伊邪那岐パパのこれまでの冒険譚は、以下で解説しておるぞい
生まれて5秒で親子喧嘩、姉を激怒させて引きこもらせる
~悪しき乱暴者時代~
父伊邪那岐によりそれぞれの役割を命じられた3姉弟は、各自持ち場について仕事にとりかかりましたが、スサノヲだけはまったく働こうとしませんでした。
彼はいつまでも駄々っ子のように大声を上げて泣きわめいているばかりで、顎髭は伸びっぱなしになり身なりもボロボロになっていました。
HEEEEYYYY
あァァァんまりだァァアァ
スサノヲが泣き続けるせいで青い山々は枯れ、海や河の水は彼の涙となって流れてしまい、あたり一帯はすっかり干上がってしまいました。
さらにこの異常事態に呼応した悪霊たちもうごめき始め、世界中であらゆる災いが起こり始めたのです。
さっそくのトラブルに見舞われた父伊邪那岐は、スサノヲになぜ泣いているのか尋ねました。
わ、わしゃぁ…
ママんに会いたいんじゃぁーー!!
スサノヲは母のいる根之堅洲國に行きたいと泣きわめいていたのです。
それを聞いた伊邪那岐は激怒し、スサノヲを地上から追放してしまいました。
ここでいう母とは、伊邪那美命のこと
だと思ってい良いみたいだね
そら合わす顔ないものね…
あれこれ暴露されても困るだろうしね
伊邪那岐パパの子どもに知られたくない黒歴史は、
以下で解説しておるぞい
根之堅洲國?
黄泉の国とは違うのかしら?
黄泉の国と根之堅洲國は、どちらも日本神話における死後の世界です。
このふたつは共に黄泉平坂を入り口として現世と繋がっており、また地下に存在するため、基本的には同じ場所であると考えて良いでしょう。
しかしながらこれらの場所には、以下のような明らかな設定の違いが存在します。
- 黄泉の国
- 根之堅洲國
-
- 死者の世界というよりはすべての生命が還っていく根源の国、祖先の霊が宿る場所というニュアンス
- 明るい世界※1で、人々の生活も地上と変わらない
- 後にスサノヲが統治することになるが、それ以外に支配者がいる描写は特にない
- 現世と隔たってはいるが、生きている者が行き来することが可能
細かい設定を見ていくと明らかな違いや矛盾が存在する事から、これらはそれぞれ別の場所に位置すると考える研究者も多いそうです。
もともとは異質のものである2つの世界を、『古事記』編纂にあたり、無理やりひとつにしようとしたという考え方もあるようです。
有名な民俗学者の柳田國男さんは、根之堅洲國は本来明るいイメージの世界だったと言っていたそうだよ!※1
話を戻して、父伊邪那岐に追い出されたスサノヲはこの後どうするかを考えました。
フーー
スッとしたぜ (スッキリ)
とりあえず姉貴のところに行ってみるか
スサノヲは思いついたままに、激しい足音を轟かせながら姉の天照が治める高天原へと昇りました。
うわぁ~、めんどくせぇ…
スサノヲの荒れた性格はすでに姉にも知られていたため、天照は弟が天界の支配権を奪いに来たのだと警戒し、武装した状態で彼を出迎えました。
二心がないことを証明し高天原に入れてもらうために、スサノヲはとある提案をします。
誓約で生まれてくる神さまで決めようぜ!
ま、まぁええけど…
誓約は宇気比とも表される古代の占いの一種で、結果がおおよそ均等に二分される事柄を選び、そのどちらが現れるかによって神の意志を判断します。
この方法で何らかの結果を出すことに合意した両者は、お互いの持ち物を交換しました。
スサノヲは姉が身に着けていた勾玉の玉飾りを受け取り、天照には自身が身に帯びていた十拳剣を渡します。
まず天照が剣を三つに折って口に含み、息吹のごとく吹き出すと3柱の女の神さまが誕生しました。
次にスサノヲが玉飾りを噛み砕いて吹き出すと、5柱の男の神さまが生まれてきたのです。
ここで天照が、それぞれの神さまがどちらの子になるのかを、このタイミングで決めはじめました。
5柱の男神は私の玉飾りから生まれたので、あてくしの子
3柱の女神はあなたの剣から生まれたので、スサノヲの子
スサノヲの娘となった3柱の女神は、以下の面々です。
神名 | 概要 |
---|---|
多紀理毘売命 | 海の神秘的な力の神格化 宗像三女神 |
市寸島比売命 | |
多岐都比売命 |
それはそれで良いとして、何がどうなったら
どっちが正しいことになるの?
そうなのです。
彼らは誓約を始める前に、どんな条件を満たしたらスサノヲの主張が正しいという事になるのか、詳細なルールをまったく固めていなかったのです。
そこに目を付けたスサノヲは、得意の大声でその場を丸め込みにかかりました。
わしの心が清らかやけんこそ、
優しい女神が生まれたんじゃろがい!
ということで、この勝負わしの勝ちじゃ~い!
えっ!?
ちょっとまっt…
みなさ~ん、わしの身は潔白ですよ~!!!
あっ、えっ…
計画通り
なし崩し的に勝ったことにしたスサノヲは意気揚々と高天原に乗り込み、一方的に宣言した勝利に酔いしれ、あろうことかとんでもない乱暴狼藉を働き始めました。
若気の至りでは済まされない彼のしくじり一覧はコチラ、
- 天照が耕した田の畔を破壊する
- 灌漑用の溝をわざわざ埋める
- せっかく実った稲穂を馬で踏み荒らす
- 天照が新嘗祭の新穀を食べる神殿で脱糞しまくる
WRYYYYYー
えぇ…
姉の天照は内心ドン引きしながらも、弟にも事情があるとスサノヲを必死でかばいますが、ついに限度を超えた大事件が勃発します。
機織り女たちが神に捧げる衣を織っているところに、スサノヲが皮を剥いだ血だらけの馬を投げ込んだのです。
当然現場は阿鼻叫喚の大パニック、逃げ惑う機織り女の1人が理性を失い、機織り機で身体を貫き命を落としてしまいました。
弟に落ち着いてほしいと思ってもまるで聞く耳を持たないので
――そのうち天照は、考えるのをやめた。
あまりにも酷い惨状に、やる気を失った姉の天照は天岩戸の奥に引きこもり、世界は闇に覆われてしまいました。
これが有名な『天岩戸神話』じゃ
ここからの詳しい話は、天照編を見てみてね!
紆余曲折あって事態はどうにか収束しましたが、スサノヲの罪が消えたわけではありません。
高天原の神々は協議の結果、彼に多額の賠償をさせたうえで髭と爪を切って穢れを祓い、天界から追放することに決めました。
こうしてスサノヲは天に住まう天津神全員から、事実上の絶縁宣言を食らったのです。
認めたくないものだな、自分自身の若さゆえの過ちというものを
若さのせいじゃなくてオメーの資質の問題だよ
「またオレ何かやっちゃいました?」
キレて暴れただけなのに『穀物起源神話』になる
高天原を追い出されたスサノヲは、ひとまず地上の世界である葦原中国に降りることにしました。
彼はその道すがら、ふと空腹を覚えたので、たまたまその辺にいた大気津比売神に食べ物を所望します。
なんか食べ物くれんかのう…
ええよ!
スサノヲはようやく人心地つけると喜びましたがそれもつかの間、彼はとんでもない光景を目撃することになります。
なんと大気津比売は鼻、口、尻など身体の穴という穴から食べ物をひねり出してスサノヲに差し出したのです。
ブリブリブリブリー
ただでさえ空腹でイライラしていたスサノヲは大激怒。
こんな汚ねぇもん食えるかぁぁぁ!!!
ひでぶ
彼は怒りのままに大気津比売をしばき倒し、ついにとどめを刺してしまいます。
すると彼女の頭から「蚕」が生まれ、目には「稲」が生じ、耳からは「粟」が出てきました。
さらに鼻からは「小豆」、股の間からは「麦」が、尻からは「大豆」が生じたのです。
スサノヲはぷりぷりしながらその場を立ち去りましたが、しばらくして彼を原初の神である神産巣日神が呼び止めました。
これ小僧、これを持って行きなさい
神産巣日は、大気津比売から生じた穀物を高天原に持ち帰って穢れを祓い、スサノヲに地上に持って行くようにと言い含めたのです。
スサノヲ自身は特に何も考えていませんでしたが、彼がこれらの穀物の種を地上にもたらしたことから、葦原中国で稲作をはじめとした農耕が始まったと伝えられています。
こうやって日本で農業が始まったんだね!
感謝の心を忘れちゃだめだね!
をい、ふざけんじゃねぇ
善意で食事を振舞ったにもかかわらず、ボコボコにされて放置されてしまった大気津比売。
後からやってきた神産巣日も、彼女の身体に生じた穀物を持って帰っただけで、大気津比売本体には目もくれませんでした。
『日本書紀』の方では、スサノヲの兄である月読命と保食神との間で極めてよく似たエピソードが展開されますが、こちらでも保食は発生した穀物だけ持ち帰られており、彼女の被害については一切フォローしてもらえていません。
これらのエピソード自体が春の種まきと秋の刈り入れを象徴したものらしいので、女神たちに人格的なものはないともいえるのかもしれませんが、正直切ない気持ちになりました。
それと同時に、こういった残酷なまでのシュールさは古代の神話に特有の魅力でもあるのかなと感じます。
さてはアンチだなオメー
月読と保食のストーリーは以下で解説しているよ!
それってあなたの感想ですよね
真の三貴子じゃないと高天原を追い出されたので、葦原中国でスーパーヒーローすることにしました
そんなこんなであちこちに無駄に爪痕を残しているスサノヲは、地上の葦原中国は出雲の地に降り立ちました。
彼がふと足元に目線を落とすと、川から箸が流れてきます。
上流に誰か住んでいるかもと、スサノヲは川をさかのぼっていくことにしました。
しばらくすると、彼は若い娘を中心に置いてしくしくと泣いている老夫婦に出くわします。
何してんの?
夫は山の神大山津見神の子足名椎命、その妻は手名椎命、そして娘は櫛名田比売命というそうです。
話を聞いてみると、この夫婦にはもともと8人の娘がいましたが、高志の八俣遠呂智なる存在が毎年現れては生贄を求め、1人ずつ娘をさらって喰ってしまったとのこと。
ついに最後の生き残りとなった櫛名田比売を狙って、もう間もなく遠呂智がやってくる頃合いになったので、家族は泣いていたのだというのです。
ほーん、どんな奴なん?
遠呂智は燃えるように真っ赤な目をした8つの頭と8つの尾をもつ大蛇で、その巨大さたるや8つの峰や谷を渡るほどの長さがあり、いつも腹から血をただれさせたおぞましい姿をしているとのこと。
ほ、ほーん、そんなもんなん(プルプルプル)
スサノヲも内心はビビっていたのかもしれませんが、それ以上に彼の意識を占有する存在がありました。
娘の櫛名田比売が彼の好みのタイプにド直球ストライクだったのです。
スサノヲは生存の危機に瀕している無力な家族の足元を見てこう言いました。
助けてもいいけど~
その子、嫁にもろてもよい?(チラッ
いくら困っているといっても、あまりに急な申し出に父親の足名椎も困惑を隠せません。
言うてもね~
どこの馬の骨かも分からもんに娘はやれんねぇ~
スサノヲもよほど櫛名田比売が気に入ったのでしょうか、なりふり構わず自分を天界から追放した姉を引き合いに出しました。
わしの姉貴なんじゃがのう…
天照大御神いうんじゃけど知っとる?(チラッ
ハハァ――――――――――
まっこともったいなきお話、ふつつかな娘ですが何卒よろしくお願い申し上げたてまつり――――――!!!
穏便に話が進んだところで、スサノヲは遠呂智撃退作戦のために各人に指示を出し、敵の到来に備えました。
女性に目がくらんだスサノヲが講じた作戦は、以下のようなものでした。
- 櫛名田比売を櫛に変えて自分の頭に刺し、安全を確保する
- 老夫婦に命じて8つの門と桟敷(演劇を観る時の一段高い特等席みたいなもの)を設営させる
- 老夫婦に命じてめちゃくちゃ強い酒を醸造させ、樽いっぱいに満たして②の桟敷にセットさせる
うわっ…わしらの負担、
重すぎ…?
そんなこんなで準備は完了、一同は遠呂智の襲来を今か今かと待ち構えています。
しばらくすると遠方から、ドシンドシンと凄まじい地響きが聞こえてきました。
いよいよ今シーズンのラスボス、八俣遠呂智がやってきたのです。
来たよ~
娘ちょうだいね~
遠呂智はいつもとは様子が違うことに若干の違和感を覚えましたが、何だかとても良い香りがするのに意識を奪われました。
良い匂い、お酒かな~
獺〇じゃね?獺〇!
お酒に目がない遠呂智は8つの頭全部を酒樽に突っ込むと、スサノヲが準備させた特製の酒を一息に飲み干してしまいました。
酔いが回った大蛇は気分が良いを通り越して眠くなり、その場で酔いつぶれて眠ってしまいます。
ここで満を持して登場するのがスサノヲです。
彼は十拳剣を鞘からぬらりと抜くと、眠って動かない遠呂智の頭をひとつひとつチョンチョンしていきました。
ヌルゲーだわ
頭の次に8つの尾をチョンチョンしていると、突然スサノヲの剣が欠けてしまいました。
彼が不審に思ってよく見てみると、なんとも妖しげなオーラを放つ不思議な剣が出てきたので、スサノヲはこれを持っておくことにしました。
この剣こそ後に天照大御神に献上されて、日本神話における三種の神器のひとつに数えられる、かの有名な草薙剣だったのです。
『日本書紀』では天叢雲剣と呼ばれるぞい
こうして八俣遠呂智を討伐したスサノヲは、予定通り櫛名田比売と結婚することが出来たのでした。
家族がふえるよ!!
やったねくしちゃん!!
この章で登場した遠呂智、正式名称高志之八俣遠呂智とはいかなる存在なのでしょうか?
彼(?)はスサノヲが降り立った出雲の国を流れる暴れ川、斐伊川の姿を神格化した恐ろしい川の神であるとされています。
実際に斐伊川は古くからたびたび洪水を起こし、近隣住民を困らせたと伝えられています。
一方でスサノヲが妻に迎えることになった櫛名田比売は、その別称である稲田姫命が示す通り、稲田の守護神です。
つまりこの物語は、スサノヲが暴れ川(遠呂智)を治めて稲の無事な実り(櫛名田比売)をもたらす、稲作の起源神話であると同時に、男女の結婚の起源を語る神話でもあると考えられているのです。
櫛名田比売視点でも解説しているよ!
メッセージ性が半端ねぇ
英雄になって安住の地を求め、多くの家族に恵まれる
若かりし頃はやらかしまくって黒歴史を量産したスサノヲですが、八俣遠呂智退治の功績により、今や彼も立派な英雄となりました。
彼は櫛名田比売命を伴い宮殿を造るにふさわしい土地を探し求め、須賀の地(島根県雲南市)を終の棲家とすることにします。
わしゃあここに来て、気分がすがすがしくなったよ
と言ったことが、この土地の名前の語源になったそうだよ
スサノヲは須賀の地に立ち昇る雲を見て、以下のような歌を詠んだとされています。
八雲立つ
出雲八重垣
妾籠みに
八重垣作る
その八重垣を
これは日本で最初に詠まれた和歌であるといわれています。
またスサノヲは義父である足名椎に宮殿の長となるよう命じ、以降彼は稲田宮主須賀之八耳神と呼ばれるようになりました。
スサノヲと櫛名田比売はその宮殿で結ばれ、子に八島士奴美神を得ます。
さらに彼は山の神大山津見神の娘である神大市比売命も妻に迎え、彼女との間には大年神と宇迦之御魂神が生まれます。
破天荒な荒神が辿った波乱万丈な冒険譚は、ここで一旦の終わりを迎えたのです。
ここからは、家庭内のギスギス物語ね!
野暮なことを言うでない
須賀の地に定住しはじめたところで、スサノヲの現役時代の出番は終わりを迎えますが、ここで完全にクランクアップではありません。
彼の6代後の子孫である大国主神の冒険譚がこの物語の後につづきますが、そこでスサノヲは根之堅洲國の統治者として再登場を果たします。
すっかりベテランとなったスサノヲは、若き神を試すやら導くやら、やはり一筋縄ではいかないキャラクターとして強烈な印象を残してくれるのです。
メインストーリーの続きはコチラ
次回の登場が楽しみだね!
仏教との関係
スサノヲは古くから厄除けや農業の神さまとして信仰されてきましたが、神仏習合に伴い疫病の神牛頭天王と同一視されるようになりました。
彼もまたスサノヲ同様に大変な荒神として知られていたことから、両者が結びつけられたと考えられています。
またスサノヲは高天原を追放される際にひげや爪を切られますが、これは一種の穢れを祓う儀式でもあったことから、疫病を退けるという神格と親和性が高かったとする考え方もあるようです。
「習合」ってどういう意味?
「習合(しゅうごう)」とは、さまざまな宗教の神さまや教義が合体したり融合したりする事をさす言葉で、神話界隈では頻出用語です。
日本神話においては基本的に、神さまが「仏教の影響を受けてこれまでと違う名前やビジュアル、役割を持つようになること」と覚えておけばOKでしょう。
建速須佐之男命を祀る神社ガイド
スサノヲは、いくつかの神社で祀られています。
代表的な場所をご紹介するわね!
- 八坂神社
-
京都府京都市東山区祇園町北側
- 氷川神社
-
埼玉県さいたま市大宮区高鼻町
- 津島神社
-
愛知県津島市神明町
- 日御碕神社
-
島根県出雲市大社町日御碕
- 須佐神社
-
島根県出雲市佐田町須佐
- 八重垣神社
-
島根県松江市佐草町
- 熊野大社
-
山形県南陽市宮内
などなど多数です!
おわりに
今回は、日本神話に登場する建速須佐之男命について解説しました。
噂に違わぬ破天荒キャラだったわね
日本の神さまの中でも特に人気が
あるのもうなずける表情の豊かさだったね!
パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。
神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。
これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!
また来てね!
しーゆーあげん!
参考文献
- 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
- 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
- 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
- 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
- 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
- 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
- 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
- かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
- 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
- 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
- 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
- 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
- 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
- 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年
他…
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