【弟で悩み天岩戸に隠れる最高神】天照大御神-アマテラスオオミカミ-【日本神話】

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天照大御神
とと(父)

こんにちは!
今回は日本神話より天照大御神あまてらすおおみかみを紹介するよ!

ことと

天照大御神あまてらすおおみかみ
たしか日本を代表する女神さまよね

とと(父)

彼女は日本列島を統べる最高神だよ!

ヒヒ

太陽神にして至高神なる神格じゃ

とと(父)

ではさっそくいってみよう!

このシリーズでは、忙しいけど日本神話についてサクっと理解したいという方向けに、「かんたんわかりやすい」がテーマの神々の解説記事をお送りしています。

超個性的な八百万の神々が織りなす、笑いあり、涙ありのトンデモぶっ飛びストーリーが、あなたに新たなエンターテイメントとの出会いをお約束します。

人間味溢れる自由奔放な神々の色彩豊かで魅力的な物語に、ぜひあなたも触れてみてくださいね。

今回は、八百万やおよろずの神々のトップに位置する日本の総氏神そううじがみ天照大御神あまてらすおおみかみをご紹介します!

ヒヒ

忙しい人はコチラから本編にすっ飛びじゃ

この記事は、以下のような方に向けて書いています。

  • 日本神話にちょっと興味がある人
  • 日本神話に登場する神さまのことをざっくり知りたい人
  • とりあえず誰かにどや顔でうんちく話をしたい人
この記事を読むあなたのメリット
  • 日本神話に登場する「天照大御神あまてらすおおみかみ」について少し詳しくなります。
  • あなたのエセ教養人レベルが1アップします。
目次

そもそも「日本神話」って何?

日本神話」とは、ざっくり言うと「日本ってどうやって生まれたの?」を説明してくれる物語です。

原初の神々や日本列島の誕生、個性豊かな神さまが活躍する冒険譚や、彼らの血を引く天皇たちの物語が情緒豊かに描かれています。

現代の私たちが知る「日本神話」の内容は、『古事記こじき』と『日本書紀にほんしょき』という2冊の歴史書が元になっています。

これらは第四十代天武てんむ天皇の立案で編纂が開始され、それぞれ奈良時代のはじめに完成しました。

国家事業として作られた以上、政治的な色合いがあることは否めませんが、堅苦しくて小難しいかと思ったらそれは大間違い

強烈な個性を持つ神々がやりたい放題で引き起こすトラブルや恋愛模様は、あなたをすぐに夢中にさせることでしょう。

とと(父)

日本神話」の全体像は、以下で解説しているよ!

枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年
枝年昌『岩戸神楽之起顕』1889年 PD

さぁ、あなたも情緒あふれる八百万やおよろずの神々が住まう世界に、ともに足を踏み入れてみましょう。

天照大御神あまてらすおおみかみってどんな神さま?

天照大御神あまてらすおおみかみ(以下、アマテラス)がどんな神さまなのか、さっそく見ていきましょう。

ことと

いくぜっ!!

簡易プロフィール

正式名称天照大御神あまてらすおおみかみ
Amaterasu-Omikami
別称天照大神あまてらすおおかみ
天照皇大神あまてらすすめらおおかみ
天照坐大神あまてらいますおおかみ
大日孁貴神おおひるめのむちのかみほか
神格太陽神
皇祖神こうそしん
日本の総氏神そううじがみ
性別女性
勢力天津神あまつかみ
グループ1三貴子さんきし
伊邪那岐命いざなぎのみこと
伊邪那美命いざなみのみこと※『日本書紀のみ』
兄弟姉妹弟:月読命つくよみのみこと
弟:建速須佐之男命たけはやすさのをのみこと
配偶者なし
※ただし須佐之男すさのを誓約うけい上の夫と見なす場合も
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと
天之菩卑能命あめのほひのみこと
天津日子根命あまつひこねのみこと
活津日子根命いくつひこねのみこと
熊野久須毘命くまのくすびのみこと
神徳(ご利益)国土平安の守護
あらゆるものの生命力と成長のエネルギーを司る
※個別に箇条書きが出来ないほどの圧倒的に万能な神徳
神社伊勢神宮
天岩戸神社
各地の神名神社など
※別途詳述

誕生と家族

アマテラスは、日本神話に登場する八百万やおよろずの神々の頂点に君臨する女神さまで、日本の総氏神そううじがみ(総元締そうもとじめ)とも呼ばれるトップオブトップの存在です。

彼女は、父である伊邪那岐命いざなぎのみこと黄泉よみの国から戻った際、けがれをはらうためにみそぎを行ったことで誕生しました。

アマテラスには、同じタイミングで生まれた月読命つくよみのみこと建速須佐之男命たけはやすさのをのみことという2柱の弟がいます。

3姉弟はそれ以前に誕生した数多の神々の中でも特に尊い存在とされ、3柱を合わせて三貴子さんきしあるいは三貴神さんきしんとも呼びます。

歌川国貞『岩戸神楽ノ起顕』
歌川国貞『岩戸神楽ノ起顕』 PD

アマテラスには配偶者はいないというのが基本的な設定ですが、弟の須佐之男すさのをを形式上の夫と見なす場合もあります。

これは彼と行った誓約うけいと呼ばれる儀式によって、彼女が正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと天之菩卑能命あめのほひのみこと天津日子根命あまつひこねのみこと活津日子根命いくつひこねのみこと熊野久須毘命くまのくすびのみことという5柱の神々を子どもとして得ているためです。

とと(父)

このへんはストーリー編で詳述するよ!

Tips:「柱」って何?
ことと

さっきから「3柱」とか「5柱」とか言ってるけど、
どういう意味?

ヒヒ

」は神さまの数え方の単位なのじゃ

神さまの数を数える場面はそう多くはないでしょうから、この言葉は聞き慣れないかもしれません。

日本のように八百万の神々がいる世界観では、彼らを数える際に「」という単位を使います。

とと(父)

1柱ひとはしら2柱ふたはしら3柱みはしらと数えるよ!

由来には諸説あるようですが、古墳時代に天皇が崩御した際に供養のための柱を立てて、神さまをそこに招き入れる儀式を行ったことから来ているという説があります。

そのほかにも、古代日本には「柱には神さまが宿る」という信仰があったことから、彼らを「」という単位で数えるようになったとも言われています。

とはいえ当ブログはわかりやすさ重視で運営しており、真面目な解説の部分以外は普通に「人」を使ったりもしておりますのでご了承ください。

ことと

とりあえず分かるのが大事よね!

役割と名前の由来

アマテラスは父伊邪那岐いざなぎより高天原たかまがはらの統治を命ぜられた、日本神話における主神といえる女神さまです。

神道においては、私たちが住む日本列島はすべて彼女の支配下にあるとされています。

地域ごとに祀られている氏神うじがみは、アマテラスに各地方の統治を委任された存在であると見なされているのです。

彼女が生み出した神さまの系譜から初代神武じんむ天皇が誕生することから、アマテラス皇室の祖神としても祀られています。

またアマテラスの正式名称である天照大御神あまてらすおおみかみには、どのような意味が込められているのでしょうか。

一般には、

  • 天照」は文字通り”天に照り輝く太陽”を意味し、そのまんま太陽神であることを指している
  • 別名である「大日孁貴おおひるめのむち」の「おお」は尊称、「日孁ひるめ」は「日の女神」、「むち」は「高貴な者」を意味するが、「孁」の文字には「巫」と同じ意味があり、アマテラスはもともと巫女的な性質を持っていた

といったことが言われているようです。

ヒヒ

「日の神さま」とその「巫女」という個別の存在が、
いつしか同一化したという説もあるのじゃ

いくつかの説はあれど、アマテラス太陽の女神であることは疑う余地のない事実。

地球上に住むすべての生命は太陽を必要とし、日の光がなければ作物は育たず人間を含む動物たちは生きていくことすら出来ません。

そんな偉大な太陽を象徴するアマテラスが最高神のポジションにつくのは、いたって自然な流れなのかもしれません。

とと(父)

太陽神を至高の存在とする傾向は、
世界各地の神話に見られるよね!

ことと

「日の神さま」に「民族のご先祖さま」要素を
重ねたのはいかにも日本人らしいポイントかもね

天照大御神あまてらすおおみかみの役割まとめ

ヒヒ

アマテラスは重要な女神さまじゃ
その役割を改めてまとめておくぞい

アマテラスは、

  • 高天原たかまがはらから日本列島全土を支配する最高神
  • すべての生命が必要とする太陽神
  • 代々の天皇家のルーツとなる皇祖神こうそしん

です!

ことと

あらゆる角度から最高位のポジションを
確固たるものとしているわ

天照大御神あまてらすおおみかみの活躍シーン

とと(父)

アマテラスが活躍したシーンを見てみよう!

【前回までのあらすじ】

アマテラスの父である伊邪那岐命いざなぎのみことは亡き妻を求めて黄泉よみの国に降りましたが、さんざん状況を引っ掻き回した後にどうにか地上に逃げ帰ってきました。

彼が死者の国で身に付いたけがれをはらうためにみそぎを行うと、最も尊い神々であるアマテラス月読命つくよみのみこと建速須佐之男命たけはやすさのをのみことの3姉弟が誕生。

三貴子さんきしの誕生を喜んだ伊邪那岐いざなぎは、彼らに後の世の統治を丸投g…託すことにし、アマテラスには天の世界である高天原たかまがはらを治めるよう命じたのです。

ことと

ここから物語の主人公が交代するわよ!

ヒヒ

伊邪那岐いざなぎパパのこれまでの冒険譚は、以下で解説しておるぞい

荒れた弟に謎勝負を挑まれるも、設定が甘く負けたことにされる

伊邪那岐いざなぎに天界の統治を任されたアマテラスは、特にその采配に文句もなかったことから大人しく高天原たかまがはらに昇り、そこで自分の仕事にとりかかります。

彼女は高天原たかまがはらで田畑を耕し、養蚕ようさんを興して絹糸の生産法や織物の技術を授け、最高司令官として至極まっとうに八百万やおよろずの神々を統治していました。

アマテラス

よしなに~

天上の神々が平和に過ごしていたある日、突然大地を揺るがすような激しい轟音が鳴り響きました。

何が起こったのかとビビったアマテラスが様子を見てみると、海原の統治を任されたはずの弟建速須佐之男命たけはやすさのをのみことが、とんでもない足音を鳴らしながら高天原たかまがはらに昇ってきていたのです。

アマテラス

うわぁ~、めんどくせぇ…

須佐之男すさのをは生まれたその瞬間から荒れていたので、アマテラス彼奴きゃつが天界の支配権を奪いに来たのだと思い強く警戒します。

彼女は男装したうえで完全武装し、弓を引き絞った状態で弟を待ち受けました。

アマテラス

何しに来た!

スサノヲ

実はのぅ…

話によると須佐之男すさのをは、さっそく父である伊邪那岐いざなぎと一悶着起こしたそうで、なんと怒り狂った彼に追放されてしまったとのこと。

高天原たかまがはらには姉であるアマテラスに一言別れを告げに来たのだというのです。

アマテラス

信じられませんねぇ~…

スサノヲ

では誓約うけいで生まれてくる神さまで決めようぜ!

誓約うけい宇気比うけいとも表される古代の占いの一種で、結果がおおよそ均等に二分される事柄を選び、そのどちらが現れるかによって神の意志を判断します。

女の子

「う~らかお~も~て」みたいなもんね

男の子

「グッとパーでわかれましょ」でしょ

ことと

地域トークやめな~

ともかく彼らは誓約うけいをして子を生むことでなんらかの結果を出すことに合意し、お互いの持ち物を交換しました。

アマテラス須佐之男すさのをが身に帯びていた十拳剣とつかのつるぎを受け取り、彼には自分が身に着けていた勾玉まがたまの玉飾りを渡します。

まずアマテラスが剣を三つに折って口に含み、息吹のごとく吹き出すと3柱の女の神さまが誕生しました。

次に須佐之男すさのをが玉飾りを噛み砕いて吹き出すと、5柱の男の神さまが生まれてきたのです。

小林永濯『鮮斎永濯画譜』初篇「須佐之男命天ニ昇リ天照大御神ト問答シ盟ツテ御子産玉フノ図」
小林永濯『鮮斎永濯画譜』
初篇「須佐之男命天ニ昇リ天照大御神ト問答シ盟ツテ御子産玉フノ図」 PD

ここでアマテラスが、それぞれの神さまがどちらの子になるのかを、このタイミングで決めはじめました。

アマテラス

5柱の男神は私の玉飾りから生まれたので、あてくしの子

アマテラス

3柱の女神はあなたの剣から生まれたので、須佐之男すさのをの子

アマテラスの子となった5柱の神々は、以下の面々です。

スクロールできます
神名概要
正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命まさかつあかつかちはやひあめのおしほみみのみこと初代神武じんむ天皇のひいひいおじいちゃん
稲穂の神
農業神ほか
天之菩卑能命あめのほひのみこと農業神
養蚕の神
産業の神ほか
天津日子根命あまつひこねのみこと風の神
日の神
海の神ほか
活津日子根命いくつひこねのみこと農業神と思われる
熊野久須毘命くまのくすびのみこと火の神
とと(父)

それはそれで良いとして、何がどうなったら
どっちが正しいことになるんだ?

そうなのです。

彼女たちは誓約うけいを始める前に、どんな条件を満たしたら須佐之男すさのをの主張が正しいという事になるのか、詳細なルールをまったく固めていなかったのです。

そこに目を付けた須佐之男すさのをは、得意の大声でその場を丸め込みにかかりました。

スサノヲ

わしの心が清らかやけんこそ、
優しい女神が生まれたんじゃろがい!

スサノヲ

ということで、この勝負わしの勝ちじゃ~い!

アマテラス

えっ!?
ちょっとまっt…

スサノヲ

みなさ~ん、わしの身は潔白ですよ~!!!

アマテラス

あっ、えっ…

なし崩し的に負けたことにされたアマテラスは、結果として須佐之男すさのを高天原たかまがはら入りを許します。

なんだかんだ言っても血を分けた弟、本気で拒否するつもりはなかったのかもしれません。

アマテラス

まぁあたしってば根が優しいのよね

アマテラスのこの物語は、彼女が武力軍事力などの力強さをも象徴することを示しています。

アマテラス皇祖神こうそしんとして信仰されるようになり、王権と結びついたことから必要とされた男性的な側面であるとされています。

ことと

優しい大地母神であるだけでは、
国のトップは務まらなかったのね

荒れた弟の乱暴狼藉にドン引きして、洞窟の奥に引きこもる

須佐之男すさのを高天原たかまがはら滞在を許したアマテラスでしたが、彼女はほんの数日でこの判断を後悔することになります。

一方的な勝利宣言で舞い上がった須佐之男すさのをは、姉の統治する天界で乱暴狼藉をやりたい放題に働いたのです。

そんな彼のやらかし一覧はコチラ、

  • アマテラスが耕した田のあぜを破壊する
  • 灌漑用の溝をわざわざ埋める
  • せっかく実った稲穂を馬で踏み荒らす
  • アマテラス新嘗祭にいなめさいの新穀を食べる神殿で脱糞しまくる
スサノヲ

ヒャッハー!

ことと

うわぁ…

高天原たかまがはらの住民は困り果てて、アマテラス須佐之男すさのをの所業を訴えますが、

アマテラス

ま、まぁ、愛しい弟なりの考えがあるのよ多分、

と、彼を出迎えた時とは真逆の態度で、かなり無理のあるかばい方をし始めたのです。

そんな姉の気遣いに気付くはずもないのが須佐之男すさのを先輩、彼は咎められないのを良いことにさらに増長し、その暴れっぷりはますます酷いものになっていきました。

そんなある日、決定打となる大事件が起こります。

機織り女はたおりめたちが神に捧げる衣を織っているところに、須佐之男すさのをが皮を剥いだ血だらけの馬を投げ込んだのです。

名取春仙『天馬の皮を剥ぐ須佐之男』
名取春仙『天馬の皮を剥ぐ須佐之男』 PD

当然現場は阿鼻叫喚の大パニック、逃げ惑う機織り女はたおりめの1人が理性を失い、機織り機で身体を貫き命を落としてしまいました。

その現場を目撃したアマテラスは、現実を直視することをやめました。

アマテラス

アバババババ

アマテラス

もぅマヂ無理。。。
インキョしょ。。。

アマテラスはあまりのショックに、天岩戸あまのいわとを開くと洞窟の中に引きこもってしまったのです。

太陽神が身を隠すと、高天原たかまがはらはもちろん葦原中国あしはらのなかつくにまでがことごとく闇に覆われ、永遠の夜が続くことになりました。

そうなると多くの悪霊が跳梁跋扈ちょうりょうばっこするようになり、あらゆる場所で恐ろしい災いが起こり始め、世界中の治安が極端に悪化する事態に陥ったのです。

ヒヒ

これが有名な『天岩戸神話あまのいわとしんわ』じゃ

とと(父)

最高司令官が逃亡したら、そらそうなるわな~

八百万やおよろずの神々は事態を重く見て天安河原あまのやすかわらに集合し、この未曾有の大災害にどう対処するかを話し合いました。

ここで登場するのが深い思慮幅広い知恵に定評のある思金神おもいかねのかみ、原初の神である高御産巣日神たかみむすびのかみの息子です。

オモイカネ

アマテラス攻略法は、ありまぁす

知恵者の思金おもいかねは主要な神々を総動員して、以下のようなステップで準備を整えました。

オモイカネ

40秒で支度しな!

  • 鍛冶の神天津麻羅あまつまら伊斯許理度売命いしこりどめのみことに命じて鏡を作らせる
  • 玉祖命たまのおやのみことに命じて立派な玉飾りを作らせる
  • 天児屋命あめのこやねのみこと布刀玉命ふとだまのみことに命じて占いをさせ、使った榊に鏡と玉飾りを取り付ける
  • 天手力男神あめのたぢからをのかみを、アマテラスが引きこもっている天岩戸あまのいわとの陰に潜ませる
  • 常世長鳴鳥とこよのながなきどりをたくさん集めておく

これでおおむねの準備は完了、神々はアマテラスが隠れている岩戸の前に集い、ついに作戦が開始されます。

オモイカネ

アマテラス作戦発動!

ことと

日本中のエネルギーをあなたに預けるわ

月岡芳年『大日本名将鑑』
月岡芳年『大日本名将鑑』 PD

思金おもいかねはまず常世長鳴鳥とこよのながなきどりたちを鳴かせて、夜明けを告げさせました。

布刀玉ふとだまが鏡と玉飾りの付いた榊をアマテラスの引きこもった天岩戸あまのいわとに向けると、鏡は輝き、勾玉はさらさらと美しい音を立てます。

続いて天児屋あめのこやねが、アマテラスが出てくるように祝詞のりとを高らかに唱え始めました。

ここで満を持して登場するのが、本作戦における最重要要素、真打ちとなる天宇受売命あめのうずめのみことです。

彼女がご機嫌なリズムで踊りだすと、場の空気はだんだんと熱を帯びていきました。

おそらく天宇受売あめのうずめは、今でいう憑依型の役者だったのでしょう。

彼女の踊りは神がかりの様相を呈し、身にまとった服がはだけてもお構いなしに激しく踊り続けました。

それを見ていた神々も高天原たかまがはら全土を揺らすほどの大笑いで、祭りの盛り上がりは最高潮に達します。

一方その頃…

アマテラスは外の騒々しさを不審に思っていました。

アマテラス

えっ、なんか盛り上がってない…?

アマテラス

あたしがいなくなって世界は悲しみに
包まれているはずなんだが…?

気になって仕方がない彼女は、岩戸をうっすらと開けて天宇受売あめのうずめに何事かと尋ねました。

すると彼女はこう答えます。

アメノウズメ

あなたよりも~っと尊い神がいらしたので、
みんな喜んで歌い踊っているのですよ~

この言葉にアマテラスは若干カチンと来ていたことでしょう。

アマテラス

はぁ?
あたしより尊い?

アマテラス

面ぁ拝んだろやないかい!

ここですかさず布刀玉ふとだまが鏡と玉飾りの付いた榊をアマテラスの方向に向けると、彼女は鏡に映った自身の顔を見ることになります。

アマテラス

えっ、これがあたしより尊い神さま?
めっちゃ可愛いじゃんマジ推せる~♡

推しの顔を間近に見ようと一歩踏み出したアマテラスの腕を、脇に控えていた力自慢の天之手力男あめのたぢからをがむんずと掴み、やや強引に外に引きずり出しました。

そして布刀玉ふとだまが即座に洞窟の入口に注連縄しめなわを張り渡すと、ここには二度と入れないと宣言したのです。

ついにアマテラス天岩戸あまのいわとから連れ出され、高天原たかまがはら葦原中国あしはらのなかつくには再び明るい光に包まれました。

こうして思金おもいかねの作戦は見事に功を奏し、世界はようやく日常を取り戻したのです。

とと(父)

すごいね~、完璧な作戦勝ちじゃん

思金おもいかねはおそらく知っていたのでしょう。

いつもは慎ましやかに振舞っているアマテラスも、生まれた時から「三貴子さんきし」ともてはやされ、実はそれなりに自意識過剰な傾向を持っていたことを。

そんなアマテラスの深層心理を見事に逆手に取った思金おもいかねの作戦は、ものの見事に本人に刺さりまくり、こうして文句のつけようのない大成功をおさめたのでした。

オモイカネ

ああいうタイプはね、承認欲求さえ
満たしてやればちょろいのよ

ことと

アマテラスは令和に生まれた方がいろいろ向いてそうね!

アマテラス

あたしってほんとイケない子★
てへぺろ★

アマテラスのこの物語は、太陽のエネルギーが弱まってすべての生命力が衰弱し、再び復活して力を取り戻す流れを象徴しているそうです。

つまり、太陽が弱くなる「冬」と元気になる「夏」や、太陽が沈む「夜」と昇ってくる「朝」といった対比を物語にしているのです。

太陽の活動に「死と再生」を見出すのは日本特有の感覚ではなく、エジプト神話でもかなり強調して描かれています。

とと(父)

農業が主要な産業である文明に、この傾向が強いのかもね!

歌川国貞『岩戸神楽乃起顕』
歌川国貞『岩戸神楽乃起顕』 PD

アマテラスの主要な出番はここで一旦終わりますが、その後も有名な「国譲り」の場面などに再び登場します。

彼女が天岩戸あまのいわとの外に出てきたことで世界は平和を取り戻しますが、問題がすべて解決したわけではありません。

そもそもの元凶となった須佐之男すさのをは、神々の協議の結果、高天原たかまがはらを追放されることになりました。

ここからの日本神話の物語は当面の間、地上に降り立った彼を主人公に描かれていくのです。

とと(父)

次章からは荒くれ者の成長物語冒険譚だね!

ヒヒ

続きが気になるぞい

天照大御神あまてらすおおみかみを祀る神社ガイド

アマテラスは、数多くの神社で祀られています。

ことと

代表的な場所をご紹介するわね!

伊勢神宮

三重県伊勢市宇治館町

日御碕神社

 島根県出雲市大社町日御碕

天岩戸神社

宮崎県西臼杵郡高千穂町岩戸

西寒多神社

大分県大分市寒田

ほかにもアマテラスを祀る神名神社が多数です!

多すぎて掲載出来ませんでした!

おわりに

今回は、日本神話に登場する天照大御神あまてらすおおみかみについて解説しました。

ことと

最高神なのに引きこもったり騙されて出てきたり、
なかなかお茶目な女神さまね

とと(父)

神格は最強なのに完璧ではないのが彼女の魅力の一つだね!

パパトトブログ-日本神話篇-では、私たちの祖国に伝わる魅力的な神々や彼らの物語をご紹介していきます。

神さま個別のプロフィール紹介や神話の名場面をストーリー調で解説など、難しい言葉は出来るだけ使わずに、あらゆる角度から楽しんでもらえるようにしようと考えています。

これからも「日本神話」の魅力をどんどんご紹介してきますので、良ければまた読んでもらえると嬉しいです!

とと(父)

また来てね!

しーゆーあげん!

参考文献

  • 倉野憲司校注 『古事記』 岩波文庫 2010年
  • 島崎晋[監修] 日本博学倶楽部[著] 『日本の「神話」と「古代史」がよくわかる本』 PHP文庫 2010年
  • 由良弥生 『眠れないほど面白い『古事記』』 王様文庫 2014年
  • 由良弥生 『読めば読むほど面白い『古事記』75の神社と神さまの物語』 王様文庫 2015年
  • 歴史雑学研究倶楽部 『世界の神話がわかる本』 Gakken 2010年
  • 宮崎市神話・観光ガイドボランティア協議会編集 『ひむか神話伝説 全212話』 鉱脈社 2015年
  • 中村圭志 『図解 世界5大神話入門』 ディスカヴァー・トゥエンティワン 2020年
  • かみゆ歴史編集部 『マンガ面白いほどよくわかる!古事記』 西東社 2017年
  • 戸部民夫 『「日本の神様」がよくわかる本』 PHP文庫 2007年
  • 三浦佑之 『あらすじで読み解く 古事記神話』 文藝春秋 2013年
  • 國學院大學 「古典文化学」事業:https://kojiki.kokugakuin.ac.jp/research/
  • 茂木貞純監修『日本の神様ご利益事典』だいわ文庫 2018年
  • 武光誠『知っておきたい日本の神様』角川ソフィア文庫 2005年
  • 阿部正路監修『日本の神様を知る事典』日本文芸社 1987年

他…

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